So-net無料ブログ作成
前の30件 | -

ドゥテルテ政権は、誰の政権か? [フィリピンの政治経済状況]

ドゥテルテ政権の転換

1)NPAをテロ組織に認定、戒厳令を延長

 フィリピン上下院は12月13日特別合同会議を開催し、ミンダナオに敷かれた2017年12月末が期限の戒厳令を延長するドゥテルテ大統領の提案を審議。賛成240票、反対27票で可決し、2018年12月31までの延長を承認した。
 ミンダナオ・マラウィ市を占拠した「マウテ・グループ」は、約1,000人の死者を出し、6月の発生から5カ月後の10月に掃討鎮圧しており、戒厳令を敷いた理由はなくなったはずだったのに、解除せず、2018年末まで延長した。この奇妙な延長提案は、ただドゥテルテ政権側の都合によるものだし、そこに政権の意図や性格が現れていると見なければならない。

2)ドゥテルテ政権の明確な政治転換

 ドゥテルテは就任前や就任当初から、フィリピン共産党(CPP)、新人民軍(NPA)、モロ・イスラム解放戦線と和平交渉に取り組み、当初は良好な関係を結んだかに見えた。しかし、フィリピン国軍と共産勢力との武力衝突はやまず、すでに和平交渉は打ち切っている。
 その上、ドゥテルテ政権は12月5日には、CPPと傘下の軍事組織NPA をテロ組織と認定し、対決姿勢を打ち出した。ドゥテルテは議会にあてた書簡で「NPAが暴力的な手段で政府転覆を狙っている」として戒厳令延長の理由の一つに挙げていた。

 ドゥテルテは新たに共産勢力の制圧に乗り出す可能性をあからさまに示しており、反政府勢力に一層強硬な姿勢で臨むとみられる。戒厳令下では、治安当局は逮捕令状なしで容疑者を拘束できる。フィリピン国軍にとって、CPPとNPAに武力攻撃する準備が整ったと見るべきだろう。

3)ドゥテルテ政権の性格

 ドゥテルテ政権は、確かにこれまでの政権と違い、米国支配に従わず、東南アジアで影響力を増す中国との関係改善に舵を切った。背景には、フィリピン資本家層、支配層の支持がある。経済界は中国との関係改善のうちに経済発展を構想しているからである。
 フィリピン経済の最近の成長によって、現状のインフラ未整備がさらなる発展のネックになっていることは、誰の目にも明らかになっている。政権についたドゥテルテは経済成長を持続させるためのインフラ整備計画を公表し、中国政府やアジアインフラ投資銀行(AIIB)、日本のODAなどから資金を調達し、他方、長期にわたりインフラ整備に必要な新たな税収を得るための税制改革も行い、これまでの政権とは異なり確実に計画を実行している。

 フィリピンの資本家層、支配層の利益に沿った経済政策を採用しており、この点でもフィリピン経済界はドゥテルテを支持しているのは明らかだ。
 麻薬撲滅運動は政治的パフォーマンスであるが、押収した麻薬を転売や汚職の黒幕である警察を摘発せず、撲滅運動は警察の意向に沿って進めている。また、戒厳令の延長はフィリピン国軍主導のもとに反政府勢力に一層強硬な姿勢で臨む方針の提示である。いずれも、既存の支配勢力、暴力装置である警察とフィリピン国軍とともに、その合意の上で、政権運営にあたることを一層明確にしたととらえるべきである。政権の性格がより明確になった。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

アジアにおける中国の影響力 [世界の動き]

アジアにおける中国の影響力

 日本や東南アジア諸国にとって、戦後長らく輸出先のトップは、米国だった。ところが、リーマンショック以後(2010年以降)、中国向けがトップになった。
 ASEANからの対中国輸出(2016年):1,430億㌦、米向けより9%上回っている。(日経:1月6日)

 日本から台湾や香港向け輸出も、加工したうえで中国へ再輸出する場合も多く、香港・台湾はすでに中国経済圏といえる。日本からの中国・台湾・香港向け輸出は全輸出の30%近くに達する。一方、米国向けは約15%。

 東アジアにおける中国経済圏の及ぼす影響は、すでに米国を圧倒している。しかも、勢いは増すばかりだ。それどころか、ASEANが中国経済圏に融合しつつある。

 日本とて例外ではない。特に人件費増がすすむ中国では、製造業の省力化投資の潜在需要は大きく、日本の製造設備、自動化設備、産業用ロボットなどの資本財輸出が急増している。インフラや設備投資が底上げされ日本による対中機械輸出は大幅に増えている。

 安価な労働力を武器にした「世界の工場」としての中国の時代はすでに終わり、製造業の自動化をハイスピードで進め、「世界の工場」地位は保ち高度な産業国に変身しつつある。
 中国の指し示す「一帯一路」計画は、近い将来の一大経済圏構想の提示であり、周辺諸国にとって魅力的にうつり、経済の拡大統合が進む。

 かつては米国は、突出した経済力をベースに、東南アジアへの政治的影響力と支配力を行使した。しかし「アメリカがくしゃみをすれば、アジアは肺炎を患う」と表現された米国一強の時代は過去のものになろうとしている。

 日本の東アジアにおける地位も大きく変わりつつある。
 環太平洋経済連携協定(TPP)の狙いは、中国に対抗し環太平洋の巨大な経済圏をつくることにあった。ところが肝心の米国が離脱し、頓挫した。安倍政権派未だにその夢を追おうとしている。安倍首相の「中国封じ込め?」外交もASEAN諸国はどこも同調せず、見込みはたっていない。インドとオーストラリアに呼びかけ対中国警戒同盟を画策している。

 しかし、あれほど嫌っていたAIIBにもいずれ協力姿勢に転換せざるを得なくなるだろう。
 安倍首相はほとんど一人でトランプに強硬な立ち位置をとるように後押ししている。





nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

マニラに、慰安婦像が立つ! [元「慰安婦」問題]

マニラに、慰安婦像が立つ!

1)マニラに慰安婦像が立つ

 マニラのロハス大通り沿いの海岸遊歩道に、フィリピンで初めて「フィリピン人慰安婦像」が設置され、日本が太平洋戦争を始めた12月8日に除幕式が行われた。中国系フィリピン人でつくる財団(Tulay Foundation)やフィリピン元慰安婦団体リラ・ピリピーナが準備を進め、フィリピン政府機関の一つ、フィリピン国家歴史委員会(NHCP)が設置し、8日にマニラ市に引き渡された。
 目隠しをされた民族衣装姿のフィリピン女性が立ち、慰安婦被害者を象徴する。高さ約3メートル。台座には「日本統治下で虐待被害に遭ったフィリピン人女性の記憶である」と記されている。

フィリピン慰安婦像.jpg
<マニラ市ロハス通り沿いに立つ慰安婦像>

2)外務省がフィリピン政府に抗議した?!

 マニラの慰安婦像に対し、在フィリピン日本大使館は「日本政府の立場と相いれず、極めて残念だとフィリピン政府側に伝えた」とコメントし、菅官房長官は12日の記者会見で遺憾の意を表明した。
 日本政府にそのような申し入れを行う資格もなければ、権限もない。

 毎日新聞前ソウル支局長の記者、澤田克己が、在マニラ日本大使館がフィリピン政府に「『日本政府の立場と相いれない』と抗議した」ことに問題があると書いている。
 日本はこれまで中国や韓国に対して、歴史に対する捉え方は立場によって違いうるから、アジア太平洋戦争における日本の侵略についての中国や韓国の「歴史認識」を日本に押しつけるなと主張してきた。例えば、2013年2月の朴槿恵大統領就任式に出席した麻生太郎副総理兼財務相は「米国内でも南北戦争に対する評価は北部と南部で違う」ことを例に出して、歴史認識とは相対的なものであると説き、朴氏を激怒させたことがある。
 それなのに、フィリピンには日本の立場を押しつけて当然だという態度をとっているのだ。
 当然ながらフィリピン政府は「日韓合意」の当事者ではないから、「合意」の精神に反しているなどとは決して言えない。しかもマニラの像は在マニラ日本大使館前に立っているわけでもないので、外交上の儀礼も問題になりえない。

 日本大使館が抗議の根拠とした「日本政府の立場」とは何か、意味不明なので、澤田記者は問い合わせたところ、外務省は「フィリピンとの間ではサンフランシスコ講和条約で法的責任に関する問題はすべて解決済みというのが日本政府の立場だ」と答えたという。

 外務省の理屈からすれば、法的責任の問題が解決された後に慰霊碑を建てたらいけないことになる。だとすると、サンフランシスコ講和条約では日本も対米請求権を放棄し、法的責任の問題を解決させているから、米国政府から東京大空襲や原爆犠牲者の慰霊碑に文句を言われても致し方ないことになる。広島や長崎の原爆慰霊碑は、撤去すべきだというのか!
 
 もはや、日本政府、外務省の対応は、常識を逸している。日本政府内に「日韓合意」の拡大解釈が目立つ。しかもそれをフィリピン政府に押し付け、マニラの慰安婦像に抗議しているのだ! 
 外交上実に尊大な態度ではないか。日本政府にそのような抗議を行う資格もなければ、権限もない。そのことを知らなければならない。

 日本政府・外務省ばかりではない。12月にサンフランシスコ市議会が全会一致で慰安婦像の設置を決め、サンフランシスコ市長も賛成した。このことに抗議し、大阪市が姉妹都市を解消するに至っている。
 慰安婦被害は過去に存在したのであり、二度と繰り返さないことを願い「平和の像」を建てることは、抗議するようなことか! そうではなかろう。大阪市長がなすべきなのは、抗議することではなく、大阪市の土地に慰安婦像を建てるべきであろう。
 人権を尊重しない愚かな日本の政治と政治家を、世界中に晒しただけである。

3)各地で像が立つ

 慰安婦像設置は、韓国、中国、米国など各地に広がり、今回フィリピンに及んだ。私たちはこのような動きをうれしく思う、その広がりに勇気づけられる。そこには被害者を支持する人々の連帯がある。決して国家間の対立ではない、人権尊重という普遍的価値の訴えがある。

 慰安婦問題は日本軍、日本政府による国家犯罪であるから、日本政府が歴史的事実と法的責任を認め、公式謝罪と賠償を果たして初めて、根本的に解決する。責任を認めず、「アジア女性基金」や「日韓合意」による「癒し金」を配って被害者を黙らせてきた日本政府の態度こそ、長引かせるだけで、解決してこなかった原因なのだ。そのため、各地に像が立つ。

 上海市の像は、中国人、朝鮮人を象徴する被害者2人が並ぶ。サンフランシスコ市の像は、中国人、朝鮮人、フィリピン人被害者3人が手をつないで立つ。それを見て、私たちは思う。そこに日本人慰安婦被害者やほかの国々の被害者も加えた慰安婦群像を、ここ東京にこそ設置したい。
 慰安婦問題の根本的な解決を求める声が日本国内で広がるなかでそれは可能となる。







nice!(0)  コメント(1) 
共通テーマ:ニュース

機能不全、トランプのアメリカ [世界の動き]

機能不全、トランプのアメリカ

1)トランプは何に血迷ったか?

 トランプ政権の言うこと為すことが一貫しない。迷走している。どうしてか? 
 トランプは、米国支配層内で未だ主導権を握っておらず、それどころか「闇の政府(Deep State)」と争い、屈服しつつあるからだ。トランプ発言はまず国内政治を意識し、「闇の政府」の顔色を見ている。
 
 米国には「闇の政府」がある。軍産複合体(政治的代表者はネオコン)であり、ウォール街=金融資本であり、ユダヤ資本であり、さらに最近は巨大IT企業5社(アップル、フェイスブック、マイクロソフト、グーグル、アマゾン)が加わりつつある。これらは別個の存在ではなく融合している。

 この20数年、新自由主義によるグローバリゼイションにより、富は富裕層に蓄積し貧困層が増大した。アメリカ国民は、高額の医療費と教育費に苦しみ、福祉は削減され、アメリカ社会はかつてないほどに荒廃した。一方、アメリカ政治は右傾化し、政党も政治家もいっそう富裕層の所有物になりつつある。この点では、共和党民主党の違いはない。クリントン政権もオバマ政権も、伝統的なケインズ政策による富の再分配は採用せず、新自由主義によるグローバリゼイションを推し進め、金融資本、富裕層の利益を優先した。

 現在のアメリカの政治地図は、全体として右寄りのものになっている。かつては民衆の求めているものが政治の中心だったが、その要求は今では非常に「過激」で、急進的で、過激派だ、と見えるくらいに変わってしまっている。……現在の民主党は、かつては共和党穏健派と呼ばれていた人たちがとっていた政治姿勢まで右に行った。では共和党はどうかというと、あまりにも右に行きすぎてしまって、政治地図からはみ出てしまっている。もはや政党とは言えない存在になってしまっている。(ノーム・チョムスキー『アメリカンドリームの終わり』2017年)

2)トランプの公約と「闇の政府」への屈服
 
 米国支配者が、大統領として準備したのは、民主党はヒラリー・クリントンであり、共和党はブッシュ弟であった。ところが、あれよ、あれよという間に、トランプが勝ってしまった。アメリカの民衆は、CNN、ABC などのTVやニューヨークタイムズなどの大新聞の言うことを信じなかった。「あいつらは、エリートの持ち物だ、嘘ばっかりついてきた」。そして、トランプのtwitter やFox Newsによるエスタブリッシュ批判を支持した。

 トランプは「アメリカファースト」、すなわち「国内重視、軍隊を海外に送って他国の政治に干渉したり政権転覆したりすることをやめる、製造業を国内に戻す、TPPをやめる」と約束した。また「CIAの解体」、「NATO解体」も約束した。 
 これらは、「闇の政府」の怒りを買った。トランプ当選後、公約の実行を表立って妨害してきたのは、ヒラリー・クリントンを先頭とする民主党幹部だった。ヒラリーの背後には、米軍産複合体がおり、ユダヤ資本もマスメディアもいる。トランプは攻撃され、その材料の一つが「ロシア疑惑」なのだ。

 ヒラリーは敗北の理由を、米富裕層と結びついた自らの行動と政策ミスによるものだとは認めず、ロシアとトランプの共謀によるものだという荒唐無稽な理屈に執着して、アメリカ政治を機能停止に追い込んでいる。「闇の政府」はマスメディアを使ってヒラリーを動かした。

 トランプは「メキシコ国境に壁を建設する」と宣伝した。人種差別意識を広め助長するとんでもなく愚かな発言だ。トランプ政権になって、隠れていた人種差別、マイノリティへの迫害が公然と語られ、暴力事件も頻発している。
 ただ、確認しておかねばならないのは、イスラエルがガザへ建設した壁に、民主党も共和党も、誰も反対していないことだ。「メキシコの壁に反対する、ガザの壁にも反対する」こう叫ぶべきだ。民主党幹部やユダヤ資本、マスメディアに従っていたのでは、支配層内の政治的駆け引きに利用されるだけだ。

 トランプは大金持ちではあるが一介の不動産屋であり、これまで米国が行ってきた「汚れた戦争」に興味はなかった。だから、ロシアのプーチンと協力すれば、シリアのISを簡単に滅ぼすことができるし戦争も終結できる、米軍は撤退し軍事費を減らせると判断し、公約した。ISは傭兵集団であり、しかも雇い主はCIAでありサウジや湾岸諸国である。トランプは「雇い主」のことを「重く」考えなかった。

 もちろんオバマもヒラリーも、米軍を派遣すると批判が高まるので、傭兵に戦争させる「汚れた戦争」、公然と語れない裏の戦略をよく承知していた。リビアのカダフィ政権を倒す際に、NATO軍が制空権を握り、地上戦は傭兵であるイスラム過激集団LIFGに任せ、カダフィを殺した。ヒラリー国務長官(当時)は、その時リビアに立ち降り、シーザーに倣い「来た、見た、勝った」と宣言した。「独裁者とレッテルを貼れば侵略してもいい」という既成事実をつくった。明確な国連憲章違反、国際法違反である。うまくいったので、この「汚れた戦争」をシリアでも試みた。LIFGの戦闘員はシリアへ移動し、 ISと名前を変えた。

 このアメリカの長年にわたる軍事戦略、「汚れた戦争」を、トランプは何とロシアのプーチンと取引して「やめる」と公約したのだ。これが「ロシア疑惑」と騒がれる本当の理由だ。

3)トランプの「ロシア疑惑」とは何か?

 そもそも大統領候補やスタッフがロシア政府要人と会うことがなぜ犯罪なのか、理由が不明だ。プーチンと約束したのが問題だという。「ロシア疑惑」と騒ぐが、いまだにどこにも証拠は示されない。とにかく「怪しい」というキャンペーンである。「プーチンとの密約?」どころか、トランプは公約をすでに破っているが、このキャンペーンは何も問題にしない。

 (※:日本でも似たようなことがあった。米中との等距離外交に転換しようとした鳩山・小沢政権をつぶすために、「小沢一郎と陸山会はあやしい」キャンペーンをマスメディアが行った。米国に従属してきた日本の自民党政治家、官僚機構を含む支配グループが背後にいた。鳩山・小沢は政権から追われ、後を継いだ菅直人政権は米国一辺倒へと屈服した。のちに小沢は陸山会事件裁判で無罪になったが、政治的転換は元に戻っていない。日本のメディアも米国に従属してきたグループの支配下にあるし、これを境に一層従属を深めた。このような権力によるキャンペーンこそ「フェイクニュース」と呼ぶべき、重大な犯罪だ。権力の流す偽情報=「フェイクニュース」こそ大問題なのだ。)

 米軍産複合体にとって、ロシアや中国を敵視しなければ、敵視する世論がなければ、軍事費を増やせない。荒唐無稽な「ロシア疑惑」が、米支配層内の権力闘争と利権の材料になっている。米社会はもはやそれをただす力がない。

 政権発足直後、マイケル・フリン安全保障担当補佐官は辞任に追い込まれた。フリンはオバマ政権のDIA 局長であり、「ISはCIAが養成した」と本当のことを報告しオバマに解任されている。「戦争に介入するなどやめたほうがいい、北朝鮮に圧力をかけても無駄だ」と主張したバノン首席補佐官も辞任に追い込まれた。「従来の戦争政策、安全保障政策の変更はしてはならぬ」とばかリに、後任に元軍人のマティス国防長官、マクマスター安全保障特別補佐官を送り込まれ、戦争政策の維持を押しつけられ、トランプは屈服した。そして軍産複合体の要求通り軍事費を、2割も増やした。ただトランプは自分の主導権で実行したかのように装っている。

 トランプがイラン敵視発言や北朝鮮への軍事作戦も含めた軍事的圧力強化の態度をとるのも、軍産複合体やネオコンへの屈服である。「世界の警察官をやめる」と言っていた公約の放棄である。屈服ゆえに一貫しておらず、その結果、米外交は混乱している。

 こうしてトランプは今では「闇の政府」の操り人形になり、今ではロシア国境近くにNATO軍を終結させ、一触即発の危険な状況、核戦争の危機さえ生みだしている。北朝鮮には軍事的圧力をかけ続け、米韓軍事演習で公然と「金正恩斬首作戦」を行った。こちらもいつ核戦争が起きてもおかしくい状況だ。

4)いまだに続く主導権争い

 トランプ大統領は12月6日の演説でエルサレムをイスラエルの首都だと認めた。アメリカには「1995年エルサレム大使館法」という法律がある。「エルサレムをイスラエルの首都だと承認し、1999年5月31日までにエルサレムにアメリカ大使館を設置すべきだ」という内容。2017年6月5日に米上院はこの法律を再確認する決議を賛成90、棄権10で採択している。これまでの米大統領はその権限で法実施をとめてきたが、トランプはGoを出した。
 トランプは米国内政治での主導権争いを意識しており、ユダヤ資本の要求を先回りして主導権を発揮したつもりなのだが、これまでの米外交の経過、イスラム世界への影響は考慮しておらず、その結果12月6日以降、イスラム世界ではアメリカに対する批判が高まり、イスラム教徒が団結する雰囲気も出てきた。これまでPLOはイスラエルとの仲介をアメリカに求めてきたが、今回初めてロシアに求めた。このようなことは初めてだ。中東におけるアメリカの信頼と地位は失墜しているとともに、ISを滅ぼしシリア戦争を終結させたロシアの権威と信頼が上がっている。

 12月15日には、トランプは共和党「減税法案」をまとめ上げた。その結果、2018年から早速、連邦法人税率を35%→21%に引き下げることになる。国・地方を合わせた実効税率は、例えばカルフォルニア州の場合、40.75%→27.98% に下がる。
 米巨大資本、富裕層は空前の利益を上げているにもかかわらず、さらに法人税を下げさせた。貪欲さはとめどない。格差はさらに広がる。民衆にとっては裏切りだ。この結果、将来必ずや財政赤字が拡大し(財政赤字は10年間で1兆㌦=113兆円を超える見込み)、教育福祉医療予算は削られ、大多数のアメリカ民衆の貧困化がさらに進む。誰の目にも明らかだ。トランプは富裕層に尻尾を振って見せた。トランプの興味は、自分が主導権をとって実行するところにある。

 トランプは、12月18日「国家安全保障戦略」を公表し、国防予算の大幅増、ロシアと中国を現状秩序の破壊勢力と規定し、世界秩序の変更は認めない、「力による米世界支配」を目指すとしている。軍産複合体、ネオコンの望む通りの安保戦略となった。トランプはこれで完全に軍産複合体、ネオコンに屈服したことになる。
 これもまた、国内での主導権争いの結果であり、ますます国際関係、外交における「考慮」の欠けたものになっている。アメリカが国際社会における影響力が低下するなかで出てきた「国家安全保障戦略」であり、国際的にはいっそう信頼を失うであろうし、容易に地域戦争、核戦争に突入する極めて危険な兆候でもある。

 トランプの「やることなすこと」は「デタラメ」になっている。トランプの「デタラメ」は決してトランプ個人の資質にとどまらない。ほとんどのマスメディアはトランプ個人の資質によるものとして伝えている。アメリカの支配層、軍産複合体、ウォール街、ユダヤ資本たちのつくりだす新しい世界秩序、新自由主義による富裕層のための世界、傭兵を使い戦争を仕かけ支配する世界、その矛盾でありデタラメさである。アメリカのつくりだすデタラメな世界秩序に起因している。

 その「デタラメ」トランプに従い、尻馬に乗って北朝鮮への軍事的圧力を煽り、中国封じ込めを主張する安倍政権は、いつかトランプのアメリカに梯子をはずされ、アジアで孤立し信頼を失うのであろう。(2017年12月25日記、文責:林 信治)







nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

日本企業:[垂直統合システムの崩壊 [現代日本の世相]

日本企業:垂直統合システムの崩壊

 TVドラマ、『陸王』や『マチ工場の女』が流行るのはどうしてか?

1)ルネサス・エレクトロニクスの「小さな復活」

 12月22日の日経新聞によれば、経営不振に陥っていたルネサス・エレクトロニクスが復活してきたという。半導体製造受託の世界最大手・台湾積体電路製造(以下:TSMC)との連携によって、半導体の設計・開発に特化し、巨額の製造設備投資から自由になったことがその要因であり、日本企業の生き残る一つの道であろうと書いている。
 TSMCは、1987年設立。半導体製造に「受託生産」という「分業」を持ち込み、世界に浸透した。半導体の製造設備投資には巨額の資金が必要であり、その設備投資リスクを分散したい半導体開発会社に必要とされ、世界最大手の半導体製造受託会社となった。

2) 日本的「垂直統合」システム

 1970年~1990年代にかけて、日本の電機産業は、傘下に必ずしも資本関係のない下請け、部品会社、外注などの諸会社を組織したピラミッド型「垂直統合」システムで世界市場を支配してきた。「垂直統合」ピラミッドの頂点には、日本の電機独占企業が君臨した。コアの「要素技術」、「コア部品」の開発・生産は独占企業が担いながら、それ以外の部品や組み立ては「垂直統合」内の子会社や外注、下請け、部品会社、製造下請けに移管することで、生産を拡大し、またコスト削減も同時に実現してきた。またすぐれた「製造技術」を「垂直統合」の内部で磨き、蓄積していった。この「垂直統合」は低賃金の利用形態でもあり、ピラミッドの裾野は国境を越えて海外にまで広がった。産業の「垂直統合」への組織化のなかで日本の電機独占企業は支配者でいることができ、利益の大きな部分を手にすることができた。

 「垂直統合」の日本型生産システムは、決して一朝一夕にできあがったものではない。資本蓄積が極めて乏しかった、遅れて出発した資本主義であった日本の企業が長年にわたってつくりあげてきたものだった。

 戦前からの日本企業が戦ったのは、当時の先進の生産方式である「テイラー・システム」、「フォード生産方式」である。生産の上流に当たる製鉄工場から鉄板圧延、プレス、ゴム工場、タイヤ工場、ガラス工場・・・すべてに巨額の投資をし、あらゆる部品を集め組立て、数分間に1台のT型フォード生産を実現した。機械的大工業であり、品質も安定し、大量生産できた極めて合理的な生産方式だった。

 資本蓄積が極めて乏しかった日本企業は、必要な投資ができず、これをまねすることはできず、下請け・外注に似た部品をつくらせた。しかし、手工業がベースのため材質も悪く、品質も安定せず不良も多く、大量生産もできない。一つの例は、明治38年開発された38歩兵銃である。性能の劣る単発のこの銃を、第二次世界大戦まで採用し続けたのは、機械製大工業で生産するための巨大投資ができず、数々の手工業下請けで生産するしかなく、そこでは38歩兵銃しかつくれなかったからである。
 
 資本関係のない下請け・外注の利用は「垂直統合システム」の原型である。階層構造、支配―被支配の関係があり、下請け、外注化は低賃金の利用形態でもあった。ただし、品質の悪さ、不揃いには長年苦しんだ。長年にわたって金をかけず「人の工夫」、労務管理によって品質改善運動を実現しようとしてきた。不揃い部品をやめ、部品標準化も進めた。QC運動、「カイゼン」はその過程で生まれた。看板方式=トヨタ生産システムはここに源流がある。

 「垂直統合システム」は投資額をそもそも節約するため、市場の急激な変化、製品の急速な革新にも、「耐性」があった。実のところ、「損」を外注、下請けに押し付けることもあった。
 このようにして戦後日本の電機産業、自動車産業は、低価格で高品質の商品を世界市場に提供し、「テーラー・システム、フォード生産方式」を駆逐した。そして、日本の「垂直生産システム」は世界を席巻した。

3)「受託生産分業」が「垂直統合」を破壊した

 「垂直統合」をつくり上げた強みは、具体的には「要素技術」と「製造技術」にあった。

 半導体は電機産業にとって、最も大切な「要素技術」の一つであり、簡単に資本関係のない下請けや外注に任せることはできない部品だった。大切な要素技術を外に出せば、ライバルをつくることになる。

 半導体市場では、ピラミッドの頂点にいる電機独占企業が当初開発で先行し初期の部品調達、生産、販売を統合内で行い世界市場を支配した。ただ、半導体生産は、製造設備投資が巨額に上るとともに、製品の世代交代も早く、それに伴い製造設備の世代交代も頻繁に実施し続けなければならない産業に変化していった。

 半導体製造の設備投資は巨額の資本が必要となったし、製品の世代交代に伴い製造設備の更新も頻繁に実施しなくてはならなかった。将来の製品動向を見て、巨額の投資を常に繰り返し実行しなければならない。

 日本の半導体開発・製造企業は、1980年代当時数社で世界市場を独占しており、数社それぞれが巨額な設備投資を繰り返した。しかし、勝者はそのうちの一社か二社であり、それ以外は敗者となった。半導体産業はその成長と共に「勝者総取り」の「ハイリスク、ハイリターン」産業となった。結局、電機会社がそれぞれ半導体開発から部品調達、製造まで自前で手がけるのは、極めて「非効率」な事業となった。

 ひとつの典型例は、NAND型フラッシュメモリーだ。これこそ、巨額の設備投資を行う「ハイリスク、ハイリターン」事業だ。現在、これを生産しているのは、世界でサムソン、東芝、SKハイニックス、ウエスタン・デジタル(WD)の数社。当社開発した東芝以外の日本の電機会社はとうの昔に撤退した。

 液晶TV用の液晶パネル生産でも同じようなことが起こった。安くて品質のいい液晶パネルをいかに早く生産・供給する競争で先行した者が一人勝ちをする。サムソンとシャープの戦いは、サムソンの勝利で決着がついた。

 半導体や液晶などの「要素技術」ばかりではない。他方で、「製造委託」が徐々に進んだ。電機産業では製造コストの削減、品質の安定のために、長い時間をかけて「部品の標準化」と「生産の標準化・自動化」を進めてきた。その一つはチップマウンターによる部品装着組み立てである。携帯電話など分解してみればわかるが、虫の卵のような小さな部品(=チップ部品)が基盤にいっぱいくっついている。部品会社は同一形状の標準化された部品を供給し、電機会社はチップマウンターでチップ部品を自動で装着組立てている。

 部品の標準化と生産の自動化・標準化が進んだ結果、製造におけるノウハウが自動生産設備に徐々に組み込まれていった。製造のノウハウが秘密ではなくなった。チップマウンターは市場で販売され、そのことで「製造組立受託」の分業が生まれることになる。大量に受託生産すれば、購入部品・材料も多くなるのでより安く部品・材料を購入できる。自動組立機械に巨額の投資を行い、より多く生産受注した受注組立企業がさらに受注を得る「ハイリスク、ハイリターン」の市場が生まれた。鴻海精密工業のようなEMSの出現である。

 半導体製造でも、受託生産企業が現れた。上記のTSMCである。半導体製造に「受託生産」という「分業」(=「新しいやり方」)を持ち込み、その後世界に浸透した。巨額で機敏な製造設備に伴う「リスク」を引き受けることで、依頼が集中し事業が急速に拡大浸透した。半導体の開発では開発費だけを負担すればいいことになり、ベンチャー企業を含め多くの半導体開発会社が生まれた。TSMCは日本企業ばかりでなく、世界中の開発会社から、製造を請け負うようになった。最もたくさん請け負って製造したところが、巨額な設備投資を回収し、さらに利益を上げ勝者になる。競争を勝ち抜き、TSMCは世界最大手の半導体「受託生産企業」として残った。

 日本企業は、経営トップの判断、決定が極めて遅いうえに、無責任体制がはびこっている要因もあり、受託組立生産、半導体受託生産事業のような「ハイリスク、ハイリターン」事業からは徐々に退いていった。

 アップルは、PCやスマートフォンなどの新製品を開発してきたが、半導体生産も含め製造はすべて受託生産企業に任せている。そのことで巨額の製造設備投資をすることなく、今では世界の携帯電話市場やIT市場を支配し、時価総額100兆円(2017年末)の大企業になっている。ただ、アップルは、画期的な新製品を開発し続けなければならない。

 上述の過程は、日本の電機産業の「垂直統合」、ピラミッド支配が崩壊していった過程でもある。それまでは、日本の電機産業しか「安くて、高性能製品」を供給できなかったが、そのような関係は急速に崩れていった。

 日本の電機会社は、「要素技術」「製造技術」を内に持って垂直統合を組織し支配的地位を築いてきたが、「製造技術」は標準化・自動化がすすみ自動機として製品化さえされ、受託生産企業が出現し、「垂直統合システム」から独立したことで、誰でも利用できるようになった。「要素技術」のうちの半導体は上述の通り、開発と受託生産が分かれ、「垂直統合システム」から独立したことで、開発さえできれば容易に参入できるようになった。またデジタル設計化がすすみ、設計のユニット化、組み合わせが容易になり、これも容易に参入できるようになった。

 このため、新しい世界市場での競争は「要素技術」や「製造技術」そのものではなく、「要素技術」を使用し組み合わせ設計して、新しい製品を市場に送り出す「システム技術」での争いに変わった。1990年代半ばころには、アップルの生み出す魅力的な製品が市場を席巻した。韓国サムソン、LG電子の登場によって、あるいは携帯電話市場での欧州企業が登場し、各国政府の規制に沿った機敏な開発・販売により世界市場を支配した。他方、日本の経営者、経営システムはスピードに満ちた世界的競争にまったく適応できず、「システム技術」での争いにも適応できなかった。その結果、世界市場における日本の電機独占企業の出番はなくなった。
 
 その結果、日本の電機独占企業のいくつかは、製品寿命が長く競争が激しくなくて、従来の「垂直統合」が有効な、重厚長大産業、鉄道車両、運行システムやボイラー、インフラ整備、工場自動化設備・システム、住宅関連事業、医療・健康機器などにシフトしていった。

 他方、「垂直統合」の内部にいた日本電産、村田製作所、日東電工など優れた「要素技術」を持つ一部の電子部品会社は、「統合」から離れ、スマートフォン、電子化された自動車市場などを生産するグローバル企業への納入を拡大しており、さらに、AIや自動運転など世界的な産業再編のなかでバイプレイヤーとしての地位を確保しつつある。

4)自動車産業は?

 このような産業再編は、資本の論理で生まれているのだから、決して電機産業にとどまらない。
 
 世界の自動車産業においてトヨタ、日産、ホンダなど日本企業の地位は高い。自動車産業も長年かけて「垂直統合」の生産システムをつくり上げてきた。本社の配下に何層にもおよぶ組立子会社、部品会社などを組織している。日本国内だけでなく、たとえばタイでも「垂直統合」を組織し、配下に組立会社、部品会社を組織し、そのことで東南アジアにおいて高い市場占有率を実現している。
 トヨタが海外進出すれば、一部の部品会社もくっついて進出する。ただ、「垂直統合」は長い年数をかけて形成されるので、「垂直統合」にも形成途中だったり、不完全なものもある。

 自動車産業では、部品は3万点以上にも及ぶ。それぞれ規格内ではあれバラツキのある部品を組み立てながら、性能を一定の幅内におさめる「離れ業」を、「擦り合わせ型」と呼ばれる「製造工程」で実現してきた。「擦り合わせ型」製造工程にノウハウが詰まっており、完成車メーカーは生態系のピラミッドの頂点に君臨してきたのだ。「製造工程」では、生産の標準化、一部の自動化、部品の標準化は常に行われ進化しているものの、「人の腕」よるノウハウがまだ多くあり、製造設備の統一化・標準化にノウハウが組み入れられていないことも多く残っている。自動生産化が達成され、生産システムとして外部に販売する市場ができる水準まで達していない。製造設備の統一化、自動生産化を達成するには桁違いの巨額の設備投資がかかる事情が存在する。詳細は知らないが、溶接や塗装などは相対的には自動化が進んでいると思われるが、全体としてみれば「自動車の組立自動機の市場」はまだ成立はしていないようだ。

 ところがこれが、電気自動車EVになれば事情は一変する。部品点数は格段に減少し、電気部品が増え、製造・組立の簡略化も進み、自動車企業の蓄積してきた製造技術、生産ノウハウ、すなわち「擦り合わせ型」製造工程の「強味」の大部分が一挙に消滅しかねない。

 すでに電池会社やIT企業、ベンチャー企業がEV生産に名乗りを上げている。競争は製造工程よりも、まず、電池やモーターの性能など部品品質や、通信技術、AI,IoTなどの革新技術に移っており、製造工程に大革新が起きることはもはや明らかになった。 

 「生産委託という分業」を掲げ参入する企業も出てきかねない。機能とデザインを誇る設計会社と受託生産の二つのグループに分業が進むかもしれない。

 そうなれば、「垂直統合」という日本の自動車会社の不可侵のシステムが破壊され、トヨタや、日産,ホンダなどの支配的地位が崩壊しかねない。

 実際のところ、電気自動車生産に多くの企業が名乗りを上げているし、中国や欧州諸国は、二酸化炭素排出規制をうたいEVへの切り替えを国の方針として定めながら、その過程で既存の自動車会社の市場支配を覆し、自らの新規参入を狙っている。さらには自動運転、車のIoT化という技術革新も絡んで、一挙に激しい世界的な競争に突入している。
 そのような事情は、トヨタやホンダ、日産などの経営者が最もヒシヒシと危機感を感じているところだろう。

5)「受託製造という分業」の波は、ほかの産業にも及ぶ

 「受託製造という分業」の波は、ほかの産業にも及ぶ。製品寿命が短く、製造設備投資が巨額であればどの産業も「勝者総取り」、「ハイリスク、ハイリターン」の事業となるから、「受託製造という分業」は浸透する。資本主義の論理からすればそうなる。

 ソニーは採算が悪化したテレビ事業を、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業などへ製造委託し、液晶パネルも外部調達に切り替えた(日経12月22日)。 液晶パネルを安くつくる製造設備の投資競争では「勝てる見込みはない」、あるいは「ハイリスク、低リターン」であるから、この競争から降りると判断した。

 次世代テレビである有機ELの調達はLG電子から受けることになる。ソニーもシャープも有機ELパネルの量産にはいまだ成功していないし、今から開発し製造したとしても間に合わないとの判断がある。「社内の技術者は、4Kや有機ELの画質向上など他社との違いを打ち出すことに力を注ぐ」(日経12月22日)。 その方が開発費用は少なくてすむからだ。ただ、得られる利益は大きくはない。いわば「スキマ産業」という扱いだ。世界のテレビ事業で支配的地位を獲得することは、もはやない。採算がとれなくなったら、撤退するという扱いだ。

 このような事情=「スキマ産業」化、置かれている「地位」は、ソニーだけでなく、パナソニック、東芝などみな同じである。東芝はテレビ事業をハイセンスに売却した。

 バイオ・医薬品事業でも、製薬の研究開発に集中する製薬企業・ベンチャー企業と外部委託製造との二つに分業する産業モデルが広がりつつある。

 スイスの製薬大手ロシュは、自社開発したバイオ医薬品の製造を外部に委託する。微生物や細胞培養で高い製造技術が必要だ。委託先は、韓国サムソングループのサムソン・バイオロジクス社だという。「(製造委託の)市場でリーダーシップをとるには先行投資が必要で、半導体ビジネスと一緒だ」(サムソン・バイオロジクス・伊縞列常務、12月22日、日経)。

 日本の電機会社のいくつかは「要素技術」に特化し、部品供給で生き残ろうとしている。日本電産、村田製作所、日東電工などもともとの電子部品会社は好調だ。
 
 ただ、多くの日本企業は、このようなグローバル競争の現状から大きく遅れたように見える。TV番組で、『陸王』『マチ工場の女』(NHK)が流行っているが、それはグローバル競争から大きく遅れた「日本社会の現状」の一つの表現でもあり、現実を前にした「過去への哀愁」が人々の共感を呼んでいる面もあろうと思う。 (文責:林 信治)






nice!(0)  コメント(1) 
共通テーマ:ニュース

指導者だけ変わってもだめだ! [世界の動き]

指導者だけ変わってもだめだ!

スー・チー氏に期待するだけの民主化運動では
この先何も解決しない


1)ミャンマーのロヒンギャ問題

 着の身着のままでミャンマーからバングラディッシュに避難するロヒンギャ難民の姿が、連日報道された。
 発端は、2016年10月、ロヒンギャのイスラム過激派がミャンマーのラカイン州警察署を襲撃したとされる事件だという。2017年8月末にも同様の事件が発生したと伝えられた。真偽のほどは定かではない。
 これに対してミャンマー軍と治安機関が一斉に「反撃」し、ロヒンギャの集落を焼き払う焦土作戦を展開した結果、昨年から今年にかけて40万人を超えるロヒンギャ難民がバングラディッシュに避難するという大規模な人道危機を引き起こした。40万人とはとてつもない人数だ。

 ミャンマー連邦共和国は諸民族の連合体であるが、ロヒンギャは含まれていないとされる。ミャンマー政府はロヒンギャを国民と認めておらず、法的には不法滞在者として扱われ、無国籍者の状態に置かれてきた。
 仮にバングラディッシュから帰還を希望する難民がいても、国籍がないことを理由にミャンマー政府は帰国を認めない方針だ。これは歴代政府の立場であり、アウン・サン・スーチー国家顧問が率いる現政府でも同じだ。

2) スー・チー氏が率いるミャンマー政府に期待できるのか?

 人権、民主化を掲げて政権に就いたスー・チー政権(スー・チー氏は大統領ではなく国家顧問であるが、実質的には政権の権限を持つのでスー・チー政権とした)であるが、この人権問題に対してどう対処するのか、その方針が一向に明らかになっていない。沈黙を続け、態度を明確にしていないのだ。

 避難する大量のロヒンギャ難民の姿は、世界中に報道され、国連もその解決をミャンマー政府に要請した。
 ところがスー・チー氏は、2017年8月のASEAN創設50周年のマニラ会議を欠席し、9月の国連総会にも姿を見せなかった。おそらく海外からの批判・非難を避けるためであろう。

 ロヒンギャの集落を大規模に焼き払いミャンマーに帰還できないように焦土作戦を展開した軍の責任は極めて重い、厳しく糾弾されなければならないし、その対応は即刻改められなければならない。
 スー・チー氏、そしてミャンマー政府は、この先どのようなロヒンギャ問題にどのように対処していくべきなのか? どのように解決していくべきなのか? きちんと指し示さなければならない立場だ。

 はたして、スー・チー氏が率いるミャンマー政府に期待できるのか?

3)「今はとにかくスー・チー氏を支持すべき」なのか?

 今はとにかく、スー・チー氏とスー・チー政権を支持すべきだ、という以下のような考えをよく聞く。

 国防、治安、国境管理は憲法の規定で軍の専権事項とされており、大統領やスー・チー国家顧問には指揮権はない、のだそうだ。(『世界』11月号 竹田いさみ「ロヒンギャ難民を政治的に利用するプレイヤーたち」)
 スー・チー氏には軍の移動、撤退を命じる権限はないのだから、したがって、ロヒンギャ難民問題の責任はないと論評する人もいる。

 逆に言うと、ロヒンギャ問題を解決するためには、軍や治安機関の支配権もスー・チー氏が握るべきで、そのようにしてやっとロヒンギャ問題解決へ踏み出すことができる。あくまで諸悪の根源は軍であるという論評だ。 

 あるいは、仮にスー・チー氏に責任があるとしても、彼女に代わる指導者はおらず、退陣すればまた軍事政権となる。ロヒンギャ問題を早急に解決してほしいが、よりましな人物がいないので、いまは彼女に期待する以外にないと評する人もいる。(根本敬上智大学教授、「NHKクローズアップ現代」)
 
 さらには、スー・チー氏はロヒンギャ問題に対する国際社会の批判をよく理解しているので、国際社会がスー・チー氏は支持しながら、彼女がロヒンギャ問題を解決できるように圧力をかけ、解決していける国際環境をつくっていくことが重要だ、という主張も見受けられる。

 とにかく今はスー・チー氏を支持して見守るべきだというのだ。
 
 ミャンマーの現状と歴史をよく知らないので、判断がつかないのだが、果たして本当なのだろうか? それしかないのか? 

4)ミャンマーの民主化の実態が明らかになった!!

 ロヒンギャ問題を通じて、「ミャンマー民主化」の実態・実力、あるいはその欠点が暴露されたのは確かだろうと思う。

 民主化は軍事政権への批判として実現したが、ミャンマー民衆は軍ではなくスー・チー氏を新たに指導者に迎えるという選択をした。そこには、これまで禁止・弾圧されてきたこともあって民主化運動の実態が十分に伴っていないことが明らかになった。民衆は選挙に際し新しい指導者を選択する役割を果たしただけだった。下からの広範な人々の民主化運動とそのエネルギーが欠けていることが、今の局面を迎え問題となっている。

 したがって、指導者だけ代えてもだめだ、そんなんでは決して民主化は実現しない、ということではないか。スー・チー氏が自分たちの政治運動を、少数の上意下達の組織から、広範な下からの民衆が自主的で自発的に参加し闘っていく組織に早急に切り替えていかない限り、民主化を、民社的なミャンマー社会を、この先決して建設していくことができないということではないか。スー・チー氏に期待するだけの民主化運動ではこの先何も解決しないということだ。その点は、われわれも同じだ。

 どの程度なのかよくわからないのだけれど、今年になってスー・チー氏への失望感が広がり、ともに民主化を闘ってきた人々の一部がスー・チー支持から離れつつあるという。

 いずれにせよ、ロヒンギャ問題への対処においてスー・チー政権の真価が問われる。(文責:林 信治)




nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

コストコは、時給1,250円以上、「同一賃金同一労働」 [現代日本の世相]

コストコは、時給1,250円以上、「同一賃金同一労働」

 10月16日の読売新聞で面白い記事を見つけた。
現場から」シリーズ3:「人材不足と時短 板挟み」

 以下に一部を抜粋する。
・・・・・・

 東海地方を地盤とする岐阜県羽島市のホームセンターでは、人材不足が常態化している。レジ打ちや品出しを担当するパート社員は10人以上足りず、残業や休日出勤をお願いしている。  採用担当者(56)は「地元の人材はどんどん『コストコ』に流れている」と嘆く。  2年前米国系スーパー「コストコ」が開業した。コストコは正社員と非正規社員の待遇に差がない「同一労働同一賃金」に近い賃金制度を採用する。全国一律で1,250円以上の時給を保証しており、岐阜県の最低賃金800円を大きく上回る。  ホームセンターは時給を100円上げたがそれでも300円以上の開きがある。
・・・・・・

 日本の労働者は非正規化が拡大し、賃金格差は開くばかり。非正規社員の賃金は30年間ほとんど上がってこなかった。ところが、記事にある通り、コストコが進出したことで一挙に時給が上がったという、「同一労働同一賃金」も実現しているという。

 政府は一応、「同一労働同一賃金」、「長時間労働の是正」を改革の柱に掲げてきたが、掲げるだけで一向に改善されてこなかった。

 「格差是正を!」、「最低賃金の引き上げを!」といくら要求しても、経営者や日本政府が何やら理由をつけて実行しなかったのに、コストコが進出してきて実現するとは「笑い話」のようだ。やればできるということじゃあないのか!

 この30年間、日本経済はほとんど成長していない。GDPは500兆円前後で変わらない。資本家は獲得した利益を国内に投資しない、内部留保を拡大し海外に投資する。日本経済の生産性は向上していない。労働生産性を先進国で比べてみれば、日本は下位に沈んでいる。低成長時代を見据えて、生産性向上に投資してこなかったからだ。低い賃金の非正規社員、パートを増やし、さらに正社員を含む全社員の労働時間を延長するという、目先の対処に終始し、前近代的で原始的な手法(=実質に賃金を削る)で利益を上げようとしてきたのだ。「非正規化」と「長時間労働」は日本経済の特徴になってしまった。労働分配率は下がりっぱなしだ。

 特に、サービス業での生産性はこの数十年低いままで、ほとんど改善していない。ただ、企業への忠誠と奉仕、サービス労働を求め、契約社員、派遣社員、パート社員、外国人研修生になどの低賃金不安定雇用の労働者を発明し置き換え、賃金全体を削って利益を上げることしかしてこなかった。おかげさまで日本の労働者全体の賃金水準は上がらず、だから消費は増えず、日本経済全体が縮んでしまった。

 そんなところへ、サービス業で高生産性を実現したコストコが進出してきたのだ。生産性が高いので、より高い賃金でも利益が出る。人手不足なので1,250円以上の時給で募集するから、人材はコストコに流れ、日本の経営者は嘆いてみせるだけだ。

 日本は少子高齢化が進み、すでに2002年から労働人口は減少に転じている。人手不足になるのは予測できるのに、ただより低い賃金の労働者層を生み出すことで対処してきたのだ。今更嘆いてどうするんだい。低賃金の労働者層を利用しなければ経営が立ち行かない企業は、廃業しなければならないということだろう。これまでのやり方は破綻するのは当たり前だし、廃業しないならやり方を改めるしかない。その際に、労働者の犠牲が大きくならないように救済は必要だ。
 
 一部のサービス業分野では生産性を上げた大企業しか生き残れなくなるかもしれない。しかし、「同一労働同一賃金」で最低賃金を大幅に上回る時給(1,250円以上)の企業の出現は、歓迎する。
「同一労働同一賃金」は確実に格差を縮小するからだ。

 ただ、労働者や労働組合が要求も運動もしないで、労働者にとっていい、時給が上がったり、「同一労働同一賃金」が実現するはずはない。コストコとて資本の論理で人手不足に対応してきただけなのだ。連合を含む労働組合は、今の人手不足の状況を有効に利用し、労働者の大幅賃上げ、特に「同一労働同一賃金」を実現するところに、その活動を集中すべきなのではないか。(文責:林 信治)




 
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

安部公房『榎本武揚』を読む [読んだ本の感想]

安部公房『榎本武揚』を読む  1965年7月26日初版、中央公論社

 2017年10月6日、ある古書店で安部公房『榎本武揚』を見つけ買い求めた。すぐに読み終えた。ずいぶん前の作品であるが面白かったので評を書く。

1)きわめて独創的な才能

 豪快でユーモラスな表現、リズミカルでシャキッとした文体と日本語。それだけでも、めったにない、なかなかの才能と実力であると、あらためて思い知らせてくれる。
 明治維新という変動の時代を生きた榎本武揚が、いかに魅力的な人物であったかを、生き生きとした文体で描そうと試みた。
 
 文体だけにとどまらない。小説の構想は、極めて独創的である。そればかりではない、小説の構成もまたきわめて独創的であるし、野心的でさえある。読者をわくわくさせる。榎本武揚の思想と行動に、土方歳三の思想と行動を対抗させ、その奮闘でもって時代精神を描こうとした。忠節と転向として「対立」させて、表現している。しかもそこに、戦前に憲兵であった福地屋の主人の忠節と転向をも重ね合わせ、現代的課題として展開しようとしている。何という大胆さであるか。果たして、破綻せずに押しとおせるのだろうか?

 安部は何を描き出したのか?
 安部公房の描きだす榎本武揚は、むしろきわめて現代的な人物である。実にイキイキとしている。生きて眼前に存在する人物として思い浮かべることができる。安部公房の手腕である。もちろん、安部公房も、現代的に描き出す必要を見出したのであろう。
 どうしてなのか?

 安部公房は、執拗に『榎本武揚』に挑んでいる。それは当然のこと安部公房自身の現代に対する認識、批判が背景にある。1965年に書かれていることから、1965年当時の日本に対する批判も、当然のこと意識されているだろう。戦前の天皇制軍国主義日本に対する忠誠と戦後民主主義への「転向」の関係についての、安部公房の追究も重なっている。あるいは当時の共産党に対する忠誠とその批判をも視野に入っているかもしれない。

2)安倍公房は何を描き出したかったのか?

 安部公房は、何を書きたかったのだろうか。榎本の人物の大きさを描き出そうとしている。知の巨人であり、革命の実行者でさえある。現代においても、対置されるべき人物とその性質を、安部公房は提示したかったのだろうか? たぶんそうだろう。
 描き出された榎本武揚は現代に生きているがごとくイキイキとしている。土方歳三と対峙し、榎本武揚の大きさをさらに堂々と浮き上がらせている。叙述は、土方歳三の部下・浅井十三郎の考えと行動を通じて、榎本批判として叙述ははじめられる、しかし榎本武揚の「大きさ」が際立ってくる。

 土方歳三のあの変質的な執着は、徳川末期、滅びつつある封建制から生まれていると榎本に語らせている、その通り、適確な指摘である。土方歳三の駆使する「徳川への忠誠」は、崩壊を前にして自身の地位を守ることばかり考えている従来の武士たちへの批判であり告発であり、徳川体制内で土方が彼らを押しのけて成り上がっていく行動の指針である。しかし、徳川封建制はすでに崩れかかっていた。崩れかかっていたからこそ百姓の近藤勇や土方歳三が侍になれた。それ以前の盤石だった徳川の時代においては、近藤も土方も到底武士にはなれなかった。

 土方歳三の理念と行動は、徳川擁護を掲げているものの、あくまで建前で会って、徳川を擁護する道筋を通って土方が百姓から武士へ成り上がるところに重点があった。侍に成り上がることをそれ以外の思想、すなわち時代を変革するプランも理念も持ちあわせていなかった。世の中が見えていなかったのである。

 したがって、土方自身が、そして彼の理念と行動自体が、すでにアナクロニズムであった。徳川封建制は大きな社会的変動によって崩れかかっていた。薩摩も長州も、徳川打倒から近代的中央集権国家の建設を目指した。それまでの封建制を再建したのではない。したがって、土方や榎本に比べれば、とてつもない進歩であり、百姓や商人や下級武士など大多数の人びとの要求と希望を体現したのである。それは榎本の才能の大きさをも越えていた。もっともその近代中央集権国家は成立後、百姓や下級武士の要求を裏切ったのではあるが。

 百姓から侍になりたかった土方や近藤は、社会的に広範な支持を受ける時代的精神をその内に持っていなかった。それゆえ、彼らの理念と行動は社会的変革とはならなかった。革命的運動からは無縁であり、というより反革命勢力の手先、テロリストであった。滅びゆく人間であったし、滅ぶのは必然であった。このことを安部公房は、榎本武揚と対比して、見事に表現する。

3)安倍公房の目に映った榎本武揚

 他方、榎本武揚はどうか。
 榎本武揚は、見事に彫り上げられているか?
 土方ほど愚かではない。徳川の崩壊は必然と知っている。問題は、あるいは榎本の矛盾は、誰よりもよく歴史発展の方向を認識していながら、榎本自身の行動は運動の要素となりえなかったことである。

 安部公房は、榎本の「人物の大きさ」をあまりに強調する、時代を超えてさえ強調する。しかし、誰しも時代を超えることはできない。超えることができない榎本を描いていないところが、安部公房『榎本武揚』の欠点ではないかと思う。

 明治維新は、不完全な不徹底の民主主義革命である。榎本が西洋に遊学し学んだ新しい知識は貴重ではあるものの、幕府の役人である彼にとっては、徳川封建制を破壊する行動はとり得ず、革命において彼の知識は役立つ場所を得られなかった。得られなければいくら才能の大きさを誇ろうとも、意味はない。

 武闘派の新選組や彰義隊らを江戸から脱走させ、江戸を戦火から守ると同時に、武闘派を分散させ弱体化させたのが榎本の深謀遠慮であるかのように描くのは、単なる嘘である。
 「江戸を守るため、戦火を交えなかった」とは一つの口実であり、幕府旧勢力の一部が、何とか新政府の権力者の一員に加わりたい希望を表現している。守りたかったのは江戸ではなく、自身の地位であろう。勝海舟もその点は同じではないか。江戸で戦闘があったなら、幕府の旧権力機構はより徹底的に破壊しつくされただろう。そのことで明治新政府への権力移行は、ただスムーズに行われたろうし、変革はより徹底にしたものになったろう。

 明治維新のなかで、不徹底な、不完全な行動しかとれない榎本であったし、それは彼の立ち位置から来た。したがって、余るほどの新知識を身につけていたにもかかわらず、榎本の理念も行動もまっすぐに変革へと結びつかない。「知恵」があるように描くが、社会的実行と結びつかない、梃子を得ることができない「知恵」は、「知恵」ではない。「無用の人」、榎本武揚である。

 安部公房はこの点を知っていない、少なくともそのように見える。不思議なことである、また奇妙でもある。実に賢く才能のあふれる安部公房がこんなことに気づかないことがあるのか? きわめて残念に思うところである。

 榎本が「無用の人」に終わらざるを得ないのは、決して個人的性質からくるのではない。榎本の抱える時代的な矛盾に、安部公房は思い至らないようにみえるのである。
 しかし、想像するに、榎本武揚自身は、そのことを自覚していたのではないか。「無用の人」と何度も扱われ、そのたびに「悲しみ」を自覚しただろう。なぜその悲しみを描かないのか、「無用の人」榎本を描かないのか。
 
 徳川体制を徹底的に破壊すればするほど、変革は前に進む。それをまっすぐにできない榎本、そのような位置にいない榎本は、偉大な役割を果たすことはできない。立ち位置から、その歴史的役割は決まる。

 榎本が仮に、軍艦を引き連れて、官軍に寝返り、徳川体制破壊をより徹底的に実行すれば、明治政府内でより強力に変革を実行する権利を獲得するかもしれない。しかし、そのようになるには、理念と社会的運動が必要である。人々をとらえた運動なしに、一夜の裏切りで寝返っても、力にはならない。歴史は陰謀で動くものではない。榎本は背後に変革を求め支持する人々を組織しなかった。

 時代の要請は、個人の「知恵」の水準を越えている。「知恵」は個人の所有物でさえない。集団的社会的運動として、歴史的な役割を果たす。このような描写が、安部公房には欠けている、あくまでも「知の巨人」榎本である。非常に残念に思う。

 榎本武揚を「矛盾のなき人物」と描き出しているのであって、その限りでは偽りに転化しているであろう。榎本武揚は自分では解決しえない大きな矛盾を抱えている、にもかかわらず、安部公房の目はそこに向いていない。この点だけに限って言えば、「節穴」であったようにみえる。
 「無用の人」榎本武揚の悲しみを描いたならば、その人物像は、本当に大きな、時代的なものとなったろう。それを回避したから、「大きく」見せる工夫が必要となったろう。
 
 徳川に忠誠を誓う武士を集団で脱走させ、疲弊させ、蝦夷地にまで引き連れて、滅びやすくした、という安部公房の説明は、嘘だ。「偽り」そのものである。このような「知恵」を持つに人が、賢いのではない。そもそもそんなものは「知恵」ではない。あとからつくった「つくり話」である。ハッタリの一種で、人を驚かせるには役に立つだろう。一時は騙される者もいる、しかし、だまし続けることはできない。安部公房はだまし続けられると勘違いしたのだろうか。もしそうであれば、だまされているのは安倍公房自身である。
 
4)福地屋の主人の忠誠と転向

 安部公房は、榎本にみられる時代への忠誠と転向に、福地屋の主人の抱える「時代への忠誠」と重ねて描いている。ただ、この構成・構想は、大胆で魅力的であり、作者の才能の大きさを感じさせるが、残念なことに成功していない。

 厚岸に住む福地屋の主人は、戦前、憲兵であり、義弟を石原莞爾信奉者という理由で告発し死に至らしめた。本人は「時代に忠誠」を尽くしただけで悪意はないという、ただ敗戦により時代が変わり「忠誠」の中身が変わり、誠実に生きてきただけなのに非難されると嘆く。福地屋の主人は、その気持ちを徳川封建制から明治新政府へと時代が急激に変わったなかを取り残されて生きた土方歳三や榎本武揚の気持ちに重ねる。

 榎本武揚は、明治新政府に取りあげられ、のちにずいぶんと出世したことから、変節漢と非難される。土方歳三は、自身が「無用の人物」になっていることを薄々感じとりはしたが、『徳川への忠誠』なる理屈で生きるのを変えることはできなかった。福地屋の主人は、いずれに対しても自身の姿を重ねて、同情する。

 ただ、それが同情に落ちて、福地屋の主人の「時代への忠誠」、戦前と戦後のあいだの変革の意義をあいまいにするかのような取扱いに陥ってしまっているところは、はなはだよくない。
 それは、土方の「武士道」、「勇猛さ」に感心しているだけでは、戦前戦中の日本軍人の「玉砕精神」を褒め上げなくてはならなくなるのと似ている。また榎本の抱える時代的な矛盾を描きださない安部公房であれば、福地屋の主人の悔恨にただ同情するだけでなく擁護する方向へ傾いて終わるのは必然なのかもしれない。少し言い過ぎだとは思うが、榎本武揚を矛盾なき人物と描きだすことは、時代的精神から離反すること、行き過ぎた称揚に至るのであり、戦前に対する適切な批判に至らない結果をもたらしているようでさえあるのだ。

5)見上げた才能

 というような根本的な不満もあるけれど、構想通り、押し切って書き上げる才能と実力は、見上げたものである。表現もユーモアがあって、しゃれている。例えの文句が、リズミカルで具合がいい。美しく力強い日本語をつくりだしている。
 「歴史物」でありながら、時代的であり現代的だ。生きて再現されている。小説には時代を再現して目の前に突き出して見せる、小説でこのような表現や描写が可能なのだ、こんな可能性があるんだと、あらためて教えてくれる。読んだ後もなお興奮が残っている。(文責:児玉繁信)




nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

安倍の後釜を狙う! [現代日本の世相]

国民は安倍に飽きた
安倍の後釜を狙う小池

 安倍首相は、「国難突破解散だ」と言って急遽解散し、事態の突破をはかった。実際のところ、国会が始まれば森友・加計問題が再燃する。官僚は官邸の顔色を見て仕事をしており腐敗が目立つ。他方、野党の選挙体制も小池新党の候補者も整っていない。今のうちに選挙だ!と考えたのだ。誰でもわかる。それを北朝鮮のせいにして国難選挙だと。
 読売世論調査(9月30日)で、安倍支持率は43%に下落、前回9月8~10日は50%だった。「北朝鮮の脅威」は賞味期限切れ、安倍首相人気が浮上することはもうないのではないか。
 
 それを感じ取った一人が小池だ。小池は、「安倍晋三」に飽きた国民に、頭のすげ替えをアピールしている。小池は、日本会議のメンバーだし、米国とも親和性が高い。希望の党には超保守の中山恭子や米国べったりの長島昭久も加わる。

 それにしても、この間の経過はあまりにも急だ。前原代表が民進党解体、希望の党への合流を決めてしまった。党首として背信行為だ。当選しか頭にない民進党議員たちが了承し、党解体があっけなく決まってしまった。日本の政党政治が、当選した議員たちの既得権益を守るために行われており、選挙民は無視されていることの一つの証左だ。

 ところが、小池は、9月29日で、合流する民進党出身者を、憲法改正、安保関連法推進の踏み絵を踏ませ、「排除する」というのだ。一連の動きは極めて巧妙な、民進党リベラル潰しだ。

 排除される議員らが枝野代表代行を押し上げ、10月2日「立憲民主党」結成表明となった。「自民党vs希望の党」の選挙が、「自民・公明vs希望vs立憲民主党・社民・共産」の三択に変わったのだ。

 憲法を守り、安保関連法反対の党ができたことは、対立が明確になって結果的にはよかった。早速、希望の党は、維新には対立候補を立てないが、立憲民主党には立てるとし、あくまでリベラル潰しを貫く右派政党であることを表明にした。

 一方、国民は自民党や「希望の党」の政策を支持しているわけでない。ただ日本の選挙民は、不満は充満しているが自分で候補者を生み出すことをせず、出てきた者を支持するだけの役割に甘んじている。

 サンダース米民主党大統領候補が善戦したのは、下部の党員・活動家が戸別訪問して回ったからだ。英労働党が健闘したのも、下部組織がサンダース陣営のやり方を取り入れ活動したからだ。日本の政党政治には、下部の活動はほとんど存在しない、選挙民は幼く、メディアの言うことに振り回される人気投票になっている。「不満」は充満しているが、一人一人は孤立したままだし、議論もしない。この状態を打開する人々の活動が拡大しない限り、選挙は自分たちのものにならない。(文責:林 信治 10月3日記)



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

危機を煽るな!無条件で交渉に入れ! [世界の動き]


 かつて中央線に乗ると、チマチョゴリの女学生をよく見かけた。しかし、今どこに行っても、あの美しいチマチョゴリを見かけることはなくなった。日本会議など右翼団体のヘイトスピーチや暴力によって、在日の韓国朝鮮籍の人たちがおびえて暮らさなければならなくなっていることはまことに痛ましい。安倍政権が意図的に「拉致問題」を利用し、反北朝鮮の世論を煽り、反北朝鮮の気分が日本社会でかつてないほどに醸成されている。

 これまでの自民党政権、安倍政権は拉致問題の解決を叫びながら、この十数年、実際のところ何もして来なかった。北朝鮮に対する敵対的宣伝、排外主義をまき散らし、支持率を上げる道具として使ってきた。安倍晋三にとって拉致問題は政治的錬金術のようなもの。

 そればかりか、北朝鮮のミサイル開発、核実験に際して、トランプ米大統領とともに、北朝鮮を敵と見なし、ただ圧力をかけることを、主張し続けている。戦争の危険を煽るきわめてて危険な行為だ。

 確かに北朝鮮による相次ぐミサイル発射や核実験を私たちは支持できない、反対だ。しかし、日本政府やマスコミ各社のように、北朝鮮が一方的に武力の威嚇と緊張、戦争の危険をあおっているかのような決めつけや非難の繰り返しの宣伝、まるで戦争前夜であるかのような振る舞いは、尋常ではない。トランプ大統領や安倍首相は北朝鮮が「ならず者国家」であり、場合によっては戦争をふっかけて滅ぼしても仕方がないような宣伝をしているが、そんなことは国際法違反であるし、一国の大統領や首相が決して発言してはならないことだ。

 個人的には、ハリネズミのように武装を推し進める北朝鮮の金正恩体制の元で暮らしたいとは思わないし、その政治体制を肯定できない。しかし、だからと言って日本政府やアメリカ政府に北朝鮮政権を打倒する権利があるわけではない。

 今は圧力ではなく、無条件に交渉に入ることが何よりも必要だ。北朝鮮を一方的に悪者扱いにし、輸出入に重大な制約を課し追い詰める安保理決議は、実際には押しつけであり、交渉を遠ざける。双方の同意なしには交渉は不可能であり、力や圧力によって相手を屈服させ、交渉を押しつけることはできない。

 安倍首相が北朝鮮の脅威、「国難」などと称して、危機感をあおっているのは、これまでそうやって支持を拡大してきた国内政治での成功体験があるからだ。口先で煽るだけだから、何かするわけではない。まさに政治的な錬金術なのだ。そこには安倍晋三独自の現実の世界政治に役立たない「狭い政治」しかない。安倍政権にとって外交とは、米国にひたすら恭順の姿勢を示すこと、要するに米国丸投げだから、何にも考えることはない。安倍政権の狭い世界観は、米政府関係者も認識しており、したがって日本は重要視されていない。

 安倍政権は危機を煽る一方なのだが、本音では戦争が起きるとは少しも思っていないし、戦争の危険を除くが自身の仕事だとも思っていない。それが証拠に、北朝鮮と最も近い敦賀湾など、日本海側に23基もの原発を並べておきながら、停止させていないし防衛体制すらとっていない。仮に、ミサイルがこれらの原発に命中したら、ひとたまりもなく日本は滅びるのは確実であるにもかかわらず。
 やっていること言えば、Jアラートを鳴らし、ビルの陰に隠れるよう地方自治体職員や小中学生に避難訓練させている。まったく滑稽な光景。仮に核ミサイルだとして、ビルの陰に隠れれば被害がなくなるわけではない! 私たちは広島・長崎の悲惨な光景を知っている。あまりにも国民を馬鹿にした行為だ! そのうち、防空壕を掘れ!と言い出しかねない。
 日本の総理が今やるべきことは、戦争が起きることを回避だし、危険の除去だ。北朝鮮への圧力をトランプ以上に声高に主張することではない。やるべきは北朝鮮と無条件で交渉に入ることであって、PAC3追加配備やTHAAD配備ではない。

 まさしくロシアのプーチン大統領が、国連でのトランプと北朝鮮代表とのやりとりを「まるで幼稚園児のけんかだ」と言ったのはそのとおりだ。危ないのはトランプばかりじゃあない。安倍はトランプの尻馬に乗って、逆に戦争を煽るような言動に終始している。戦争となれば、真っ先に攻撃対象となるのは、米軍の兵站基地である沖縄であり、54基の原発であり、横田や厚木基地、米海軍の横須賀基地である。

 翻って、北朝鮮の側から見れば、毎年2回ずつの北朝鮮の目と鼻の先で行われる米韓合同演習は、極めて恐ろしい脅威なのである。これまで米軍の軍事演習に合わせて国内の軍を動員し配置してきた。費用も人員もかかる。最近では米軍は、最高指導者・金正恩軍事委員長の暗殺作戦が、軍事演習の一部として公然と行われている(北朝鮮国家を滅ぼすことを目的とする米韓共同作戦計画OPLAN5015)。
 軍事力を比較すれば、北朝鮮軍は米韓日に比べ、二世代も三世代も遅れた装備しかない。開戦と同時に、北朝鮮は制空権、制海権を失う。それに対抗できるのは、核ミサイルだけ。かつて米英軍はイラク・フセイン政権が大量破壊兵器を保持しているとの理由で戦争をしかけ、フセイン政権を打倒してしまった。その後に大量破壊兵器はなかったことが明らかになったが、フセイン政権は倒され、イラクは破壊されたままだ。リビアも米軍とNATO軍に破壊された。なのに米政府も国連も、誰も何の責任を取っていない。

 金正恩政権がハリネズミのように核武装に走るのも、米英政府、NATO軍のかつての侵略行為がその一因でもある。貧者の兵器が核ミサイルなのだ。金正恩は、ミサイルを撃つ時が自身が滅びる時であり、国そのものが消滅することは、十分に承知している。一発撃ったらお終いなのだが、ただでは死なない、少なくとも韓国や日本を破壊する、あるいはICBMで米国も道連れにすると叫んでいる。
 金正恩がひたすらに対米交渉を望んでいるのは、北朝鮮・金正恩政権の存続を保障させたいからだし、その約束ができるのは米政府しかいないと判断しているからだ。金正恩にとってそれがリアリズムであり、世界政治への現実的な対処の仕方なのである。

 したがって、米政府や国際社会は、北朝鮮に対して軍事的なオプションをとる(=軍事作戦で金正恩政権を打倒する)ことをまず放棄しなければならない。当たり前だが国際法違反である。米国と国際社会は、北朝鮮・金正恩政権の存続を保障することを前提に、核兵器、ミサイル廃棄の交渉に入る以外にない。そして、北朝鮮の現政権を認める米朝平和条約締結と朝鮮半島からの米軍の撤退を含む軍事的安定化と非核化に向けた取り組みが不可欠だろう。
 その方向に日本政府も立ち、協力することを国連や国際社会ではっきりと表明しなくてはならない。圧力を強化すべきだと言っている場合ではない。メルケル独首相でさえ、「制裁ではなく交渉を!」と言っているのに、戦争となるや真っ先に被害を被る日本の安倍首相が「圧力、制裁」と叫んでいるのは、きわめて奇異なことだし、危険だ。

 朝鮮半島に現実にある脅威は米による先制攻撃の可能性であり、それに加担して緊張をあおり、戦争に進んで参加する安倍政権の危険性である。
 たとえ、トランプが戦争を仕掛けようとしても、日本の首相であれば、憲法を盾に断固拒否すべきなのだが、安倍晋三という男は危機だけを煽る。もたらす結果については何一つ語ろうとしない、責任を取ろうとしない。これがこの国の現状である。安倍首相は日本の国難であると言ってはばからないが、安倍が首相である現状こそ我々にとって大いなる国難なのだ。(文責:林 信治)



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

ドゥテル政権の一年 [フィリピンの政治経済状況]

ドゥテル政権の一年


 ドゥテルテ政権が発足して1年以上が過ぎた。ドゥテルテは、これまでの大統領のようにエリート階層出身ではない、「汚い言葉」を平気で使う、そこに親しみを覚えた者も多い。一部の閣僚に左派の人たちを入れた。それらのことが相まって、高い人気を得た。80%にとどこうとする高い支持を背景にした、強権的な政治も目立つ。ただ1年を過ぎ、ドゥテルテの公約はなかなか実現されないままだ。他方、様子見をしていたこれまでの支配層の一部が動きはじめ、政権内の権力争いも起きつつあるようだ。

1)民族民主主義派が内閣から去る

 9月6日、フィリピンの政府閣僚の資格審査する議会の任命委員会は、マリアーノ農地改革相を承認しないと決定した。これまで不承認となったのは、ヤサイ前外相、ロペス前環境天然資源相、タギワロ社会福祉開発相の3人、マリアーノ氏で4人目。

 マリアーノ農地改革相(元下院議員、弁護士)はフィリピン農民運動(KMP)出身、社会福祉開発大臣だったタギワロ元フィリピン大学教授は女性解放運動の研究者。ロペス環境天然資源相は環境問題活動家。共産党に近い民族民主主義派の閣僚の不承認が続き、内閣から去っている。共産党、新人民軍との和平が頓挫し関係が悪化していることや、政権発足時の公約を実行する気がないのが徐々に明らかになってきたことが、背景にある。

 政権発足当初、ドゥテルテ大統領は、新人民軍(NPA)、モロイスラム解放戦線(MILF)と和平交渉を開始し、民族民主主義派を一部の閣僚に迎えた。これまでの政権とは違った「対応」を見せたのであるが、一年を経て、この「対応」が反故にされそうな状況なのだ。マリアーノ農地改革相は農地改革法を強力に推進していくと表明し、2016年10月には、2022年までに約6,210平方キロの農地を同法の対象者に分配する方針を示した。この方針も頓挫しそうだ。

2)経済成長の継続と外交の転換

 ドゥテルテ政権は、経済政策ではアキノ前政権の新自由主義政策をそのまま継承すると表明し、フィリピンの資本家層を安心させた。さらに国家予算や海外からの支援による大規模なインフラ整備計画(「Build Build Build」)をスタートさせ、7%程度の高い経済成長を維持するとしている。フィリピン資本家層の要求に沿った政策をとっている。

 7%の経済成長が続き、中間層は確実に増大している。一人当たりのGDPも3000ドルを突破した。ただ、新自由主義経済政策では貧富の差は拡大するばかりだ。

 ドゥテルテは、契約労働制度(5か月間の短期雇用、非正社員)を廃止すると公約したが、フィリピンのすべての資本家が反対している。実際のところ、実現に向けてなんの施策も打っていない。

 他方外交では、米国との同盟関係は維持しながらも、中露への接近を図った。米国が主導した南シナ海問題でのハーグ仲裁裁判所の判決を棚上げし、比中二国間交渉での解決へと転換した。
 米国・日本と距離を置き、中国と付き合うドゥテルテ政権のこのような動きを、中国市場と密接に結びついた方向に未来を描くフィリピン経済界はとりあえず支持しているし、アセアン諸国も同調している。

3)フィリピン軍はアメリカの影響下にある

 一方で、ドゥテルテの外交の転換は、東アジアでの危機を煽る米国のアジア政策に破綻をもたらしかねない。米国の焦燥と怒りは頂点に達している。それゆえ、ミンダナオ・マラウィに突然テロリストが現れ、戦闘を引き起こした。フィリピンにテロリストが現れれば、米政府と米軍がフィリピン政治に介入する口実ができるからだ。

 フィリピン軍は、歴史的に人脈、教育、装備などすべての面において米軍の影響下にあったし、現在もある。国防省・軍は米国を向いており、ロレンザーナ国防相も親米路線を重視している。そのことが、ミンダナオのテロとその後の国軍の対応で、あらためて明らかになった。ドゥテルテ大統領は、戒厳令を発令しテロ・グループの制圧を命じたが、テロ・グループ出現の背後に、米政府・米軍の意図を感じ取ったフィリピン軍はちぐはぐな動きを見せた。そして、わずか数百人規模のテロ・グループを未だ制圧ができず、対峙が続いている。

4)麻薬戦争

 8月16日、無抵抗の高校生キアンさんが、3人の警官によって射殺された。葬列は、超法規的殺人に抗議するプラカードがたくさん掲げられた。その後も政権への抗議デモが続いている。

 麻薬撲滅戦争で多くの死者が出ているが、死刑制度がないフィリピンでは、死者はすべてが警察官か自警団、麻薬組織などによる殺人。警察は「取り締まりや逮捕を妨害し、抵抗した場合のみ射殺している」と弁明するが、信じる人はまずいない。多くは口封じのため。警察は麻薬取引を摘発しても、わいろを受け取って容疑者を釈放したり、押収した覚せい剤を横流ししたりしてきた。麻薬撲滅を掲げる政権下でそうした悪事の発覚を恐れて関係者を殺している、巻き添えで殺された者もいる。麻薬撲滅のカギは、麻薬取引と密接にかかわる警察の腐敗と、密輸を見逃す税関当局をいかに浄化するかにある。
 麻薬戦争は、黒幕である警察、税関関係者を徹底的に摘発しなければ終わらない。しかし、ドゥテルテ政権の麻薬戦争は、警察や政府・自治体の大物を対象にしていない。

 当初、「麻薬戦争は半年で終わらせる」と言っていたが、いつまでたっても終わりそうにない。いずれ破綻するだろう。

5)この先 

 それなのに、現在までのところ、ドゥテルテ政権への支持は高いままだ。麻薬に絡む暴力沙汰、麻薬汚染の深刻さを身近に見てきたフィリピン人の多くは、ドゥテルテの麻薬戦争のパフォーマンスに未だ喝采を送っている。あるいはドゥテルテが醸しだす反エスタブリシュメントの雰囲気が、いまだ人気を呼んでいるのかもしれない。

 いずれ、ドゥテルテへの幻想は色あせる時が来るだろう。麻薬戦争はいつまでたっても終わらない、貧富の差は大きくなる、民主主義的な公約は一向に実現されない。一年を経て、人々への公約は幻想に終わらせそうなドゥテルテだが、フィリピン資本家層に忠実な大統領であることは明らかになった。ただ、人々の側がドゥテルテへの幻想を暴き、批判を組織していく運動はなかなか困難なようだ。

 ドゥテルテの支持率が下がれば、支配層内で、政権内での利害対立が表面に現れてくる。アメリカから横やりが入ってくる。そのようななかでドゥテルテは、今までと変わらない大統領に変身していくというのが、最もありえそうな結末のようだ。(文責:林 信治)

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

安倍首相は、「少女像」を直視できない! [元「慰安婦」問題]

安倍首相は、「少女像」を直視できない!


 戦後72年を迎えたこの夏、韓国では植民地時代の日本政府批判の動きが続きました。戦時中、日本に強制徴用された徴用工の像がソウルなどに建てられたのをはじめ、「慰安婦」問題を象徴する「平和の碑 少女像」(以下:「少女像」)が全国約10カ所で新たに除幕され、日本政府に謝罪と賠償を求める市民団体が次々と記者会見を開きました。

 ソウル中心部の清渓川(チョンゲチョン)広場では、市民団体が南北朝鮮などに在住していたとする元「慰安婦」500人分の「少女像」のミニチュア像を展示しました。

 文在寅(ムンジェイン)大統領は8月14日、大統領府で独立運動などにゆかりのある214人とともに、元「慰安婦」と元徴用工4人も特別に招きました。

 8月14日から、ソウル市内を循環するバスには「少女像」が乗車しました。151番路線バス34台のうち5台の座席に、9月末までの期間限定ながら、「少女像」が設置されたのです。

 さっそく、菅義偉官房長官が「未来志向の(日韓)関係を発展させる努力に水を差すことになりかねない、適切な対応」を韓国側に求めました。「日韓合意」後、日本政府のとった対応は、ソウル日本大使館前の「少女像」を撤去するよう執拗に求める一方、釜山領事館前に「少女像」が市民の手によって設置されると、対抗措置として駐韓大使と釜山総領事を三か月にわたって帰国させました。

 日本政府は、「少女像」を目の敵にしています。「少女」であることにも不満なようで外務省は「慰安婦の少女像」と呼んだりしています。

 安倍首相、日本政府は、「少女像」がなぜ少女なのか、理解できないのです。

 「少女像」のモデルがなぜ14歳なのか、理解できないのです。
 安倍首相や河野外相、菅官房長官、外務省は、理解したくないかもしれませんが、歴史事実をきちんと理解し認めなければなりません。

 日本政府が1925年に批准した「婦人及児童ノ売買禁止ニ関スル国際条約」は、21歳未満の女性の場合は、本人の承諾あるなしにかかわらず売春に従事させることを全面的に禁止し、成年であっても詐欺や強制的手段が介在しておれば刑事罰に問われることを定めています。ただ、この国際条約には植民地などに適用しなくてもよいとの規定がありました。日本政府と旧日本軍はこの規定を利用し、植民地である朝鮮と台湾にはこの条約を適用しないことにしました。すなわち、朝鮮と台湾の女性の徴集には国際法の制限はないとして、「慰安婦」の供給源としたのです。こうして未成年の女性や売春経験のない女性が多数徴集されました。(その後、このような適用はフィリピンやインドネシアなどの占領地でも同じように行われました。)

 このような歴史的経過が、14歳の少女を「少女像」のモデルとしている理由です。もちろん被害は「少女」だけに限られるものではありません。当時の植民地支配下の少女や女性たちの受けた被害に対する想像力を持とうとしない安倍晋三首相や日本政府、外務省には、この「少女像」が直視できません。直視せず、「癒し金」で黙らせようとする態度をとるから、かの地で「少女像」がどんどん増えていくのです。
 
 「少女像」の意味をまったく理解しないばかりか、「少女像」ではなく「慰安婦像」と呼称変更を求める声が、2017年1月29日、自民党・外交部会で相次ぎました。そこには、二重、三重の意味での無理解、無反省、人権意識の欠如が表現されています。

 「慰安婦」、「慰安所」という言葉は、戦前の日本政府・日本軍が、いかに女性の性を扱ったか、人権を蹂躙したかを示す「証拠」でもあります。「女性の性をもって兵士を慰安する」のが常識であったかつての日本軍、日本社会の姿を表現しています。海外のメディアのあいだに、”Comfort Woman”(=「慰安婦」)という呼称が定着したのも、「女性の性をもって兵士を慰安する」当時の日本軍の異様さが、呼称に表現されているからです。「少女像」ではなく「慰安婦像」と呼称変更を求めるのは、「慰安婦」制度、慰安所が「人道に対する犯罪」である歴史事実をまったく認めていない上に、反省もしていないからです。

 日本政府の無理解を咎めるように、国連の各人権委員会は、「慰安婦」制度=性奴隷制度と規定しています。
 
 安倍首相、日本政府、外務省、さらには自民党外交部会の議員が、「少女像」へ反発の気持ちを持つのはなぜでしょうか? 「少女像」が、日本軍の「慰安婦」「慰安所」制度の犯罪、人権侵害を暴露してしまうからです。少女や女性たちを「慰安所」に送り「慰安婦」とした歴史的事実を、隠してしまおうとしているからです。「少女像」を「慰安婦像」と呼称変更すれば、責任を逃れられるという考えすら持っています。
 
 安倍首相、「少女像」を直視してください。
 背後のある多数の「慰安婦」被害者の被害事実を直視してください。
 「慰安婦」制度が、日本政府・日本軍が犯した「人道に対する犯罪」であった歴史事実を直視してください。
 そうすれば、「少女像」を目の敵にするようなことはなくなります。(文責:林 信治)

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

KPD声明(7月4日) [フィリピンの政治経済状況]

KPD 声明を載せるにあたって

 7月4日付けのKPD声明が送られてきた。ドゥテルテ政権1周年を迎え、フィリピンの緊迫化した、その複雑な政治情勢を読み解こうとしている。同意しがたいところもあるが、一つの見方として紹介する。また、「声明」に書かれている事実関係の紹介も必要かと考え、補足も含め書き記した。

1)ミンダナオにテロリストが突然現れた理由

 イスラム過激組織、マウテ・グループが、数百人規模でミンダナオ南ラナオ収州マラウィ市で大規模な戦闘を起こし占拠し、フィリピン国軍と対峙している。避難民は60万人を超えた。マウテ・グループが高性能の米国製武器で武装しており、国外からの大きな力が働いているのは明らかだ。
 ドゥテルテ政権は、米国との同盟関係は維持しながらも、中ロへの接近を図ってきた。米国が主導した南シナ海問題でのハーグ仲裁裁判所の判決を無視し、比中二国間交渉での解決へと転換した。ドゥテルテはすでに二度も訪中したのに、ワシントンへは背を向けたままだ。東アジアで危機を煽る米国・日本と距離を置き、中国とも付き合うこのような動きは、フィリピンだけでなくアセアン主要国であるマレーシア、インドネシア、タイも同調しており、米国のアジア政策は破綻しかねない。米国の焦燥と怒りは頂点に達しているはずだ。
 それが、マラウィに突然テロリストが現れ、戦闘が始まった理由だと指摘している。フィリピンにテロリストが現れれば、米国政府と米軍がフィリピン政治に介入する理由ができる。
 このような批判は、KPDの声明に限らず、アメリカ政府、CIA情報に支配された大半の欧米ジャーナリズムに属さないジャーナリスト、権力と結びついたフェイクニュース以外のジャーナリズムが指摘してきた。特にISを使ってシリアを破壊したアメリカ政府、湾岸諸国、イスラエルへの批判として、何度も指摘されてきた。

 中東では、米軍とCIAがイスラム武装グループを訓練し、サウジアラビアと湾岸諸国が資金を出して、アルカイーダやISなどのテロリストを送り、リビアやエジプトなどで政権を転覆させてきたし、イラクやシリアを破壊してきた。米政府と米軍が直接介入しないで、傭兵を使ったのだ。ISが力を持ったのは、油田を占拠し巨大な資金を手にしたことで、兵士を雇い入れ最新の武器を調達したからだ。ISは雇い主の言うことも一部、聞かなくなった。侵略先の石油資源を盗掘し、戦費は米国やサウジの負担でなく、「自前」で戦争を継続したところに独自性がある。

 ミンダナオにおけるマウテ・グループとアブサヤフの突然の出現は、このパターンにぴたりと符合する。アメリカは、今やISを非難しているが、そもそもISを育てたのはアメリカ政府だ。だから、フィリピンへは名札を変えた「マウテ・グループ」が出現したのだ。
 アメリカ、サウジ・湾岸諸国とアルカイーダ、IS、アブサヤフ、マウテの関係は、バブル時の日本の銀行、ゼネコンと地上げ屋の関係とよく似ている。バブル崩壊後、地上げ屋は、銀行やゼネコンの言うことを、一部聞かなくなった。

2)ドゥテルテの戒厳令、支配層内の対立が顕在化

 この緊迫した情勢のなか、ドゥテルテはミンダナオに戒厳令を宣言した。しかし、フィリピン国軍、国防省は米軍の影響が強く、支配力も働いており、ドゥテルテの戒厳令に反対する動きを見せた。これまでの通り米国支配下のままか、没落する帝国・米国とは距離を置き中国、ASEANと密接に付き合うかという、フィリピン支配層内部での対立が一部顕在化した。
 KPDの声明は、フィリピン国内では、人々の側、民主主義の立場から、米国の介入に反対するとともに、ドゥテルテの戒厳令にも反対しているとしている。複雑な情勢を反映したものになっているものの、テロを口実とした米国の政治介入の危険性よりも、ドゥテルテの戒厳令批判に重点を置くと断言している。テロリストを使った戦争と混乱への危険を押しとどめようとするプランは見られない。

3)ドゥテルテの独裁への批判

 KPD声明の一つの特徴は、ドゥテルテ政権の権威主義、「麻薬撲滅」を掲げた強引な強権的な政権運営に対して、激しく批判している点にある。ドゥテルテは、かつてのマルコス大統領への「憧れ」を抱いており、公然とマルコス埋葬を行わせた。そのことに対し、厳しく批判している。
 また、ドゥテルテ政権は、政権発足に際し、国内武装組織、フィリピン共産党-新人民軍(CPP-NPA)、モロ・イスラム解放戦線(MILF)と和平協定を結んだ。また内閣の一部に、民族民主戦線(NDF)影響下の人物を迎えている。そのことをもって、「CPP-NPAはドゥテルテと連合した」と声明は非難している。
 あるいは、この30年左翼の組織は弱体化している現状を嘆き、一から人々を組織しなければならないと呼びかけている。

 ドゥテルテ政権が、国内武装組織と和平協定を結んだことは、それ自体ですべて解決したわけではないし、ドゥテルテ政権を全面的に信頼すべきというのではないが、フィリピンの人々にとって政治運動の基盤を保障することであり、私たちとしては歓迎すべきことととらえている。NDF影響下の人物が政権に入ることは、そこに取り込みや連合があるとしても、今後の政治運動はそのような水準で行われるようになったという「政治環境」の転換を示しており、その条件下で人々の信頼を獲得し組織し、いかなる政治運動を繰り広げるかに尽きると思われる。その方針、準備、活動こそが必要になっており、その方針と計画こそが提示されるべきだ。声明は触れていない。
 あるいは、「人々を一から組織する」と主張しているものの、その具体的な計画、行動には、触れていない。そのような批判は、清算主義的という指摘をまぬかれえない。

 上記のように、「声明」をそのまま評価しかねる点もある。ただ、一つの見方として紹介する。今後きちんと議論し検討していきたい。(文責:玉)

*****

2017年7月4日 KPD声明


1)マラウイでテロリストの突然の出現の意味、 ドゥテルテの戒厳令、どう対処すべきか?

 5月の末から、アメリカ兵の姿がミンダナオ・マラウイ市に現れた。米軍のP3オリオン偵察機が攻囲されたマラウイ市上空を定期的に飛行した。ドゥテルテは言った。「アメリカからの支援は求めていない」。しかし、フィリピン国防省とフィリピン国軍は早々とアメリカの役割を正当化した。「アメリカ政府は軍事技術と諜報支援を提供するが、このことに対し、フィリピン政府からの要請は不要である、というのは米比防衛安全保障協定で定められているからだ」。

 AFP通信社のレポートによると、「少数のアメリカ兵は、不可欠な監視活動に従事しており、戦闘の役割はないが、『最初に攻撃されたなら、反撃する』と、フィリピン軍スポークスマン、レスティチュート・パディーリャ准将は語った」のだという。きわめて危険だ。米軍によって戦闘は勝手に拡大されてしまう!!

 AFP通信社はさらに、以下の通り、述べた。
 「昨年、ロドリゴ・ドゥテルテが大統領になり、中国と友好関係を結び、アメリカ合衆国との軍事同盟の比重を低下させようとした時から、フィリピンにおける米軍の存在はとても微妙な問題になった。」

 ロレンツアーナ国防長官によれば、現在、米国ではなく、オーストラリア政府が、マラウイ市のみならず、中心ミンダナオ、バシランとスールー海をもカバーする2機の偵察機を送っている。 フィリピン政府とオーストラリア政府間には、フィリピンの広域上において、戦闘支援、空中監視するオーストラリア軍隊を含まない豪比相互軍訪問協定が存在している、という。 
 面白いことに、ドゥテルテがマラウイ戦闘での米国の役割にしぶしぶ言及する間、フィリピン大統領府はオーストラリア政府の申し入れを素早く歓迎したのだ。

 フィリピン国軍が主張する「ISISの感化を受けた」とは異なる「イスラム国との関係」をマウテ・グループが持っていると、ドゥテルテが彼の宣言No.216で主張したあと、米国とオーストラリアは明らかに介入する機会をつかんだ。 同時に、アジア太平洋地域、特に南シナ海地域において、アメリカ政府とその主要な同盟国(オーストラリアと日本)が軍事的緊張を高めつつあるという他の複雑な問題も、生起させつつある。 

 グローバル・リサーチ誌に定期的に記事を書いているアナリスト、トニー・カルタリッチによると、「テロ戦闘員らは米国の同盟国、サウジアラビアやその他の湾岸諸国から資金援助を受けており、イスラム国自体が明らかにアメリカ政府とペルシャ湾諸国が作り上げたものだ」というのだ。そして、「アメリカ政府とフィリピン政府の結びつきが弱くなり、アメリカの存在を高いレベルにおいてフィリピンから最終的に取り去るという刺戟的な政治転換が行われているちょうどその時に、テロリストがフィリピンで突然に、かつ見事に出現したことは、最近の騒乱が便利な偶然の一致以上のことを示している」と書いている。

 「フィリピンにおけるISISの突然の出現が、ちょうど今の時期と重なったことを、ワシントン以外はけっして正当化しない。アメリカ政府とアメリカ軍は、フィリピンにとって不当で不必要な存在と影響なのであって、単なる偶然の一致以上だ ? アメリカ政府がフィリピン地域における主導権を確保し、継続した存在であるために人為的に危機をつくりだすのは、これまでとってきた常套手段の一つなのだ。」 (トニー・カルタルッチ、フィリピン:「ISがアメリカ外交を再び救う」グローバル・リサーチ、 2017年6月15日)

 ドゥテルテがフィリピンにおける米軍プレゼンスに抵抗したけれども、米比防衛力強化協力協定(EDCA)が米国とフィリピンの間に結ばれているという事実を、彼は受け入れた。
ドゥテルテが、「さよならアメリカ」、「ようこそ中国とロシア」と外交方針の転換を表明し、一見深刻な状況になったように見えたが、フィリピン国軍と国防省は、それほど深刻にとらえていない。 特に国家安全保障と外交関係について、ドゥテルテは多くの声明を発し行動をとったが、内閣または関係部門と協議さえしなかったと、ロレンツアーナ国防長官は、数度にわたり、不満を表明した。 最新の不満表明は、フィリピン国軍と国防省は、ミンダナオでの戒厳令宣言を勧告していないという暴露だ。ドゥテルテが勝手に戒厳令を出したのであり、フィリピン国軍と国防省には意見を聞かれなかったというのだ。 ドゥテルテの独裁に向かっての歩みは、フィリピン支配層内の危機を表面化させた。

2)絶対権力へのドゥテルテの衝動 支配層内の対立が顕在化

 絶対権力へのドゥテルテの衝動は、2016年5月に彼の宣言にも見られたが、2016年6月30日に大統領として就任後、正式に始まった。ポピュリストであり、反民主主義的なリーダーシップをまとった元ダバオ市長ドゥテルテは、贔屓政治で独裁的な、権威主義的な特徴、行動スタイルを宣言する。ドゥテルテ政治が、民主主義にほど遠いことを日々経験をするフィリピンの社会生活において、人々の間に贔屓政治がはびこる「文化」はとても全面的なのだ。救世主や保護者であるかのように所有者に寄せる信念と信任に基づくフィリピン社会に根づく文化は、人々をより受動的に、脅された状態する。

  この文脈において、ドゥテルテは選挙に勝ち、一年後においても人気を維持している。「変革者」として、「決断力のある統治者」、「素早い判決官」であるかのようなポーズをとることによって、10万人から何百万人もの麻薬常用者と売人の殺害を約束することによって。そして、これまで8,000人以上の麻薬常用容疑者と売人容疑者の殺害を引き起こしたドゥテルテの「麻薬との戦い」はすでに悪夢のような現実になった。
 これらすべての徴候によって、起訴と禁固から超法規的な権力の行使において、捏造された告訴で、「中傷者」と「敵」を孤立させて虐げ沈黙させるために、 ドゥテルテの「麻薬との闘い」、「テロリストとの闘い」、「腐敗との闘い」は、中心となる方針なのである。

 より巨大な権力を志向するこの血塗られた大統領の衝動と血の言葉は、人々に恐れと受動性を植え付け、人々を扇動し分断している。その上で、自治、適法手続きと法の支配の原則をさえ覆すまで、ドゥテルテは至った。確立した法や裁判のプロセス、議会運営手続きは、すでにたたきつぶしている。ドゥテルテのリーダーシップのおかげで両院議会では多数派を占めており、特に彼に対する盲目的な忠義を示す下院においては、ドゥテルテは司法当局をほとんど無視する大君として振る舞うに至っている。

 ちょうど2日前(7月2日)、あるいは最高裁判所が戒厳令宣言に対し嘆願書への判決を下すことになっている3日前に、ドゥテルテは「戒厳令の批判者を投獄する」と警告した。彼は言った。「最高裁判所の気まぐれにかかわってはいられない。私は、彼らを信じなければならないのか? 状況はまだ混沌としていると私が判断しているこの時に、お前たちは戒厳令の解除を申し入れるのか? 私はお前たちを逮捕して、刑務所に入れる」と、ドゥテルテは地元当局を前にして語った。(newsinfo.inquirer.net/910319/duterte-threatens-to-jail-martial-law-critics#ixzz4leuulprQ) 

 彼はフィリピン国軍からだけは話を聞くと、ほのめかした。フィリピン国軍が戒厳令を提案しなかったことは、周知のことだ。このことは、ドゥテルテがテロリストと戦う意思がないことを示している。 結局のところ、憲法は戒厳令宣言の条件にテロリズムを含んでいない。ドゥテルテは、実のところより多くの権力、つまり、絶対権力を持つに至っている。

 ドゥテルテと司法省および議会における彼の手下が、法律と憲法の解釈を回避し、チェック・アンド・バランスの原則を捻じ曲げたことで、フィリピン国軍が憲法と国際条約によって定義される規則を守るように見えるということだ。 フィリピン国軍のもう一つの示差的特徴は、アメリカ軍との直接的な関係である。 フィリピン国軍はアメリカ軍が作り上げてきたものであり、アメリカ軍によって武装し、訓練を受けた。 フィリピンとアジアにおいてアメリカの利益が危うくなっている時はいつでも、この特徴はフィリピン国軍の役割を測るうえで、きわめて重要だ。

 フィリピン国軍は、数回、最高司令官であるドゥテルテをはねつけた。 1月に行った演説でドゥテルテは、たとえ人質が「副次的被害」を受けることになっても、フィリピン海軍と沿岸警備隊にアブサヤフを爆撃するよう命令した、と語った。しかし、フィリピン国軍スポークスマン、ジェン・パディラ准将はメディアの取材に、「明白な命令はない。しかし、命令があれば、軍隊は、その作戦のすべてにおいて被害がより少なくなるように追求し続ける」と語った。 
 二、三ヵ月前に管轄下のミンダナオにおいて、ドゥテルテが戒厳令を宣言したが、フィリピン軍は根拠がないとして戒厳令を拒絶した。 戒厳令宣言後、2、3時間経っても、フィリピン軍広報課エドワード・アレヴァロ大佐は、「マラウイ市の状況は順調である」という声明を読みあげた。
5月24日に、フィリピン国軍西ミンダナオ司令部は、「我々は、まだ宣言No.216の写しを受け取っておらず、その実施に関して命令とガイドラインを待っているところだ」という声明を出した。 声明は、「我々は、人権と国際的人道法を尊重し、法律に基づき、命令を実行する」と繰り返し述べた。

3)政府外のフィリピン支配層の動き

 民間軍隊の外で、国の機構は、カトリック教会、大企業、大メディア・ネットワークなどのそれ自身が強力な影響力を持つ組織である。
 彼らの社会的地位によって、彼らは政府だけでなく市民にも影響することができた。フィリピン・カソリック司教会議(CBCP)は、現在に至るまでドゥテルテ政権に批判的ながら協力する立場を維持している。特に人権侵害を無視し死刑制度を復活するドゥテルテに対し、批判的だ。ただ死刑制度復活は、すでの議会下院を通過した。 ミンダナオの戒厳令に関して、ミンダナオ地域のすべてのカトリック司教は、戒厳令への支持を表したと同時に、「一時的で」なければならないと強調した。
 私企業、特に大手の多国籍企業は、市民または政府の利益に従っていない。 多国籍企業は自身の個別の利益にしたがって行動する。 ビジネスが繁盛し利益が保証される最も良い条件がある限り、彼らは、どんなレベルででも、政府を「支える」。 大小さまざまの、ローカル資本であろうが外国資本だろうが、すべての私企業は、ドゥテルテ政権が契約労働制度を不法化しなかったことに満足している。 実際に、契約労働制度はさらに合法化した。 この前の1月19日に、事務局長サルバドル・メディアルデア(Salvador Medialdea)の事務所を通じて手紙で、ビジネス部門、特に海外の商工会議所は、12の改革を求める彼らの要求を提出した。 改革は、彼らの重要性によって、以下の通り:
・外国の資産規制を緩和する憲法改正;
・広範囲の税制改革一括法案;
・見習いプログラム改革;
・建設・運転・引渡し法改正;
・情報の自由;
・企業コードの改正;
・一般のサービス法改正;
・データ通信セクターの改革;
・水セクター改革;
・秘密法改正を保存;
・交通と輸送危機に対処する非常大権;
そして、・小売業法改正。
(ロイ・スティーブン・C・カニヴェル、「財界の指導者たちは政権のインフラ推進に楽観的」、フィリピン・デイリー・インクワイアラー紙、2017年7月4日)

 ちょうど外国資本を含む大企業がこれらの要求で団結するとき、競争はビジネス活動を定める基本法だ。 政府とのうまみのある契約や取引を得る方法を、買ったり支払ったりすることができる者が、必ずしも政府を支えるわけではない。 政治に関しては、大企業は、対立する政治的動向があれば両方に賭けるし、特に外国人投資家と債権者の利益において、経済全体を掌握するために、政府の安定性を重要視し、全体的な政治情勢を見越して投機する。

 今はまだドゥテルテが見返りを受けている期間だ。 大統領選挙での個人のドゥテルテ支持者、企業のドゥテルテへの賭けに対し、彼はまだ「好意」を返している状態だ。 うまみのある契約または譲歩以外のこととは、取締役会のメンバーのために内閣の職を用意することである。かつてフィリピン航空の最高経営責任者(CEO)であり、ユナイテッド・パラゴン鉱山社の取締役であったカルロス・ドミゲス(Carlos Dominguez)金融長官のように。

 それでも、企業は常に政府プログラムと政府プロジェクト、特に大きい予算プロジェクトについて慎重だ。 内閣の8兆ペソに上る「インフラ建設のための黄金時代」、または「建設、建設、建設」計画が、特に「複合型半官半民協力」に戻った今、資金を欠いているということを、誰でも知っている。 この複合型計画の下で、政府は資金を供給してインフラ建設をし、その上で後に入札が行われ、外部の民間会社が稼働させ経営することになる。

 政府の基金は、税収、二国間融資やODA 基金から供給される。 ファースト・パシフィック社、フィリピン長距離電信電話会社(PLDT)、メトロ・パシフィック社のマニー・パンギリナン(Manny Pangilinan)とメガワイド建設のオリバー・タン(Oliver Tan)によれば、税以外のより多く、すなわち「複合型PPPは、結局納税者によって払われなければならず、政府債務を増やすことになる」という。 タンは、「ODA資金によるインフラ整備は時間がかかり、プロジェクトが遅れればコストは上がる。ところが、民間部門主導であればより速い」と付け加えた。 経済界の懸念にもかかわらず、ドゥテルテ政権は、スローガン「建設、建設、建設」のスローガンを繰り返し、「ドゥテルテノミクス(ドゥテルテ経済)」を喧伝し続ける。」(アイリス・ゴンザレス、「複合型PPP計画を懸念する」、フィリピン・スター紙、2017年5月24日)。
 
 政府の優先順位は、現在のところ鉄道施設計画であり、最初の部分はCTRPである。 これが中国と日本からの「約束済の」ODA資金提供の主要な条件でもあるようだ。
 すべての民間資本のメディア機関は、商業的な企業として存在している。このことは、メディアの論調がなぜビジネス界寄りになるのかという理由を説明する。 ドゥテルテについてのメディア人の問題は、メディア人と彼らが働くネットワークとの喧嘩へと向かうドゥテルテの強い傾向にある。 ドゥテルテの権威主義的な性格と精密な考え方は、知的な質問を理解することや、特に批判したりコメントをすることを、難しくする。

 彼に批判的であるメディアはすべて閉鎖させるというドゥテルテの一貫した脅迫、例えばABS-CBNとフィリピン・デイリー・インクワイアラー紙は、ドゥテルテに批判的なメディア人を作ると批判されている。 メディア・ネットワークは麻薬との戦い、LNMBのマルコスの埋葬、マラウイの戦争、戒厳令、とりわけ、ドゥテルテの反米国の表明についてモニターしていて、しかも批判的なのだ。

4) 反動的な政治反対勢力はどう振る舞ったか?

 このような事態が進んだにもかかわらず、政治的な反対勢力は受動的だった。 アキノ政権時代に自由党に加わった人は、PDP-ラバンへ移ったか、ドゥテルテ政権に忠誠を誓った。その後、10人のうち1人は殺されている。 フィリピンの反動的な政治に特有なこの「裏切り主義」は、数少ない忠実な自由党メンバーがドゥテルテ体制を批判する行動を開始するのをより難しくする。

 現在のところ、自由党(LP)は、ミンダナオでの戒厳令宣言とLNMBでのマルコス埋葬に批判的な声明を出しただけだ。
 アキノ前大統領を含む自由党メンバーは、この2月、エドサ(EDSA)革命記念祝典の間、LNMBにマルコスを葬るというドゥテルテの決定に抗議するために、市民社会組織によって組織された大衆行動に加わった。 アキノは、ドゥテルテ政権1周年後に、ドゥテルテ政権についてコメントすると約束した。

 他方、ドゥテルテ政権は過去の内閣に対する告訴を準備しているだけではない、でっち上げられた薬物乱用の容疑で、ライラ・デ・リマ(Laila de Lima)前司法省長官、現上院議員を投獄した。 
 支配的システムそのものの矛盾、支配階級の政治的代表者の間の固有の対立は、ちょうどヒートアップしているところだ。

5)テロリズムと闘おう!戒厳令に反対しよう!
自主的自発的な人々の組織をつくろう!

 対国家、対非国家にかかわらずテロリズムに対する戦い、そして、本物の民主主義と社会的な変革のために闘わなければならない。テロリズムと闘おう! 特に国家のテロリズムに対して闘おう! 戒厳令に反対しよう!

 2016年11月18日~26日からのLNMBにおけるマルコス埋葬に反対する人々の自然発生的な行動は、先行する準備なしには、あるいは説明する期間や立場の一致がなければ、起こりえなかった。 LNMBにマルコスの死体の埋葬準備をするようにフィリピン国軍に命じた2016年7月の大統領府のメモのあと、建設を始める政治的合意がまとまったことが、メディアにより暴露された。
 LNMBへのマルコス埋葬嘆願書が8月上旬前に最高裁判所に提出されたあと、政治的合意がさらにまとまり、より多くの建設活動があとに続いた。 これらは最初の抗議行動を含んだ ― ある人が8月12日にマニラ・リサール公園(Luneta)開催した、そこに写真展示、マルコス独裁時代の闘いや人々の暮らしを表現した寸劇などを含んだフォーラムが一緒になった。

 マルコスが戒厳令を出した44年周年記念日の9月21日、活動はピークに達したし、その後もおさまらなかった。このような活動は、必要だった。LNMBへのマルコス埋葬反対し抗議していく人々の間に、まるで電気を流すかのように印象づけ行動を統一していくことになった。
 11月16日、最高裁はLNMBへのマルコス埋葬を9票の多数で決定した、専門用語上は単に内密の葬式とされながら、正式な軍隊と国家の栄誉に基づいた葬儀が催され、人々から多くの怒りを呼び起こした。 その時までは、「専制政治と闘え!」と、「マルコス-独裁者であり、英雄でない」とは直結していた。 全ミンダナオへの戒厳令宣言は、フィリピン国軍、PNP(フィリピン議会)、内閣の安全保障担当集団、そしてメディアを含むすべての人を驚かせた。 しかし、宣言216が対処している問題がマラウイ市でのテロリストによる攻撃であるので、戒厳令宣言に対する人々の反応は、ドゥテルテ支持と反戒厳令で分かれている。この対立は、ドゥテルテ支持と反ドゥテルテで分かれている。 

 戒厳令支持と反戒厳令の立場は、民主主義、法的憲法的なかつ実際的な問いかけによっても、分かたれる。
 革新的な人々、特に左翼は、統一的な行動に人々を導き、最も批判的な戦線を期待することになる。 しかし、人々の多数は、深刻に分裂対立した「左」からの、混乱した徴候とメッセージによって邪魔される。 現在30年以上もの間、「左翼」は異なる方向に歩んでいる。

 ドゥテルテの反人民的で反民主主義的な行動にもかかわらず、イニシアティブが常に政府の側にあった国内武装組織との「和平会談の開始や中断」で、フィリピン共産党―新人民軍ー民族民主戦線(以下:CPP-NPA-NDF)によって導かれる「左翼の主流」は、泥沼に陥っている。 CPP-NPA-NDFに影響された選挙上の「パーティ・リスト」が、ドゥテルテ内閣支持、ドゥテルテ連立に加わって以来ずっと、議会は闘いのための舞台であるのをやめた。

 フェルディナンド・マルコスが45年前戒厳令を宣言した時と比べ、現在の「左」の状況はまったく異なる。 マルコス時代には、「左翼」党と大衆組織は、一つの力に堅固に連合した。左翼側は、マルコス・ファシスト体制に抵抗することでイニシアティブをとることができたろうし、民主的で進歩的な集団に数千人もの人々が入って来ることもできたろうし、反マルコス復古派とのさえ同盟を築くこともできたろうが、それにもかかわらず今は小さな勢力にとどまっているままだ。

 現在は、非同盟の、あるいは独立した人々の間で団結を高めている進歩的で民主的な社会の要素を統一し、幅広い多数の人々との緊密な関係を樹立しいく、真の左翼に変わっていく時だ。

 政治的な自分たちによるイニシアティブを立ち上げよう!
 多数の人々の間で、組織化し動員し、宣伝し文化的活動を行い、行動し続けよう!

 2017年7月4日 
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

安倍首相とその周りは、こんな人たち [現代日本の世相]

安倍首相とその周りは、こんな人たち

 安倍政権が支配する現在の政府、官僚機構では、腐敗した政治家や官僚と手を組んだ一部の人間が国民の財産を不正、あるいは不公正な手段で手に入れて巨万の富を築いている。この「腐敗」の進行具合が相当ひどくなっている。国有地が格安の値段で学校法人に売却されても不思議ではない。

森友学園が買った用地は、近畿財務局から依頼された不動産鑑定士が更地価格を9億5600万円と算出。財務局は地下の廃材、生活ごみの撤去・処理費8億1900万円と撤去で事業が長期化する損失を差し引いた1億3400万円で、2016年6月に公共随意契約で森友学園へ売った。さらに国は除染費として森友学園に1億3200万円を支払い、結局実質200万円で売却した。9億5600億円相当の国有財産が実質ゼロ円で売却されるということは、通常ありえない。異常な政治的力が働いたとしか考えられない。
 では誰が影響を与えたか? 
 森友学園と緊密な関係がある安倍夫妻以外にない。
・安倍昭恵夫人が名誉校長、(事件発覚後の2017年2月24日に名誉校長を辞任)
・森友学園校が、安倍晋三記念学校になることについては、安倍昭恵夫人から、首相退任後の命名はOKと伝達。(昭恵夫人が講演で言及)
・安倍首相から小学校設立用に100万円寄付
・国有財産管理の責任者は理財局長。当時の理財局長は安倍首相と同郷の迫田理財局長。安倍政権になってからの抜擢。(以上、3月25日現在の情報)

 安倍政権になり、官庁の審議官以上の人事は内閣府が管理するようにしており、全官庁において安倍首相の意向を実施する人事体制ができあがっている。安倍首相とその周辺の意向を、事前に「忖度」して行動する官僚の態勢がすでにできている。今回は迫田理財局長がキーマンであろう。森友学園の事件から見えたのは、安倍政権の恐ろしい姿、腐敗ぶりだ。
 マスコミの報道は、森友学園の籠池理事長がいかにひどい人物であるかに集中している。そうではない。日本の全官庁が、その政策決定が法やルールを曲げ、単に安倍首相と周辺の意向で決定されているということ、腐敗に止めどがないこと、それこそが重要で、かつ危機的な問題だ。
 国を愛する気持ちを持っているのであれば、国有地を格安ではなく、標準価格よりも高い価格で買い国に貢献するとなるはずだが、国民には愛国心を説教するこの人たちは、愛国心を説教する自分たちだけ特別な存在であり、国から、国民の財産を略奪してもいい、と考える。(3月25日記)
nice!(0)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

新たな民主主義を打ち立てた韓国民衆運動 [元「慰安婦」問題]

新たな民主主義を打ち立てた韓国民衆運動
「日韓合意」を撤回させよう!
              
1)民衆運動の高揚が、朴罷免を決定した

 昨秋から2017月3月現在まで韓国民衆運動は、驚くばかりの高揚を見せ、韓国政治は大きく転換した。韓国民衆運動の高揚が朴槿恵大統領の罷免を決定した。2016年10月以降、市民の「ろうそくデモ」はソウルをはじめ韓国の様々な街を埋めた。3月1日節には多数の人々がデモに結集し、朴弾劾を叫んだ。このような民主運動の高揚を背景に、3月10日憲法裁判所は裁判官8名の全員位置一致で罷免を決めた。

 憲法裁判所は、朴槿恵大統領の弾劾訴追事由のうち「私人チェ・スンシルによる国政介入の許容と大統領権限の乱用」の一点だけで憲法と法律を違反した判断し弾劾を認め、罷免が確定した。
 「ろうそくデモ」の民衆運動は、勝利したことで韓国政治に新たな民主主義を打ち立てたと言える。そして今後の韓国政治において大きな「力」を獲得したことになる。民衆運動高揚のプロセスは、民主主義を実質のあるものにしていく、民主主義が力を獲得していくプロセスでもあった。このダイナミックな進展を、世界はなかば驚きながらも称賛をもって認めた。次のいずれの大統領候補も、民衆運動の力を考慮に入れないわけにはいかなくなった。

2)「平和の碑少女像」撤去阻止運動が生まれた!

 朴政権の退陣を求める民衆運動の高揚のなかで、朴政権の悪政の一つとして、2015年12月28日の「慰安婦」問題「日韓両政府間合意」(以下:「日韓合意」)が批判の的になった。「日韓合意」のなかで日本政府がソウル日本大使館前の「平和の碑少女像」撤去を韓国政府に要求し合意したものだから、韓国の人々の怒りを買い、各地で日本政府や朴政権から少女像を守れ!  少女像撤去絶対阻止!の運動が起こった。これまで「慰安婦」問題に参加していなかった人たちが自主的自発的に、少女像を守る団体を立ち上げ、各地で新たな少女像設立運動へと広げていった。韓国内にはすでに60体以上の少女像が設立され、韓国全体へと広がっている。日本政府による少女像撤去要求が直接的原因となり、少女像設立運動が広がったとさえ言える。「平和の碑 少女像」(以下:少女像)が公共造形物に指定される動きも広がりつつある。勝手に撤去させないという意味である。
 
3)日本政府は少女像への攻撃・妨害をやめ、「慰安婦」問題を解決せよ! 

 日本政府は1月6日、釜山領事館前の少女像設置への対抗措置として駐韓大使と釜山総領事の一時帰国を発表した。合わせて両国間で進めていた韓日通貨交換(スワップ)の協議を中断し、ハイレベル経済協議も延期した。

 長嶺安政・駐韓大使と森本康敬・釜山総領事を1月9日に日本に帰国させた。3月22日現在、いまだ帰任させていない。

 日本政府は、帰任させるタイミングを失った。こういう場合、何も解決できない日本政府はアメリカ政府内のジャパンハンドラーの人たちに頼み込み、韓国政府に圧力をかけて解決してきた。しかし、トランプ政権はいまだ閣僚やスタッフの任命が終わらず、それどころではない。他方、朴大統領は3月10日に罷免が決まり、大統領選挙の5月9日までのこの間、政治的空白の時期となり、さらにタイミングを失っている。

4)日本・外務省は機密費を使い、
 世界の各地で少女像設置への妨害、撤去工作を行ってきた!

 日本政府・外務省は、米カリフォルニア・グレンデール市でも豪州シドニー市でも、少女像撤去、妨害工作を行ってきた。国際社会のなかで、歴史を知らない国家、人権尊重をしない政府として、振る舞っている。日本政府は日本の右翼団体と一緒になって少女像を撤去するよう圧力をかけ、自ら進んで国際社会の笑いものになっている。これは加害者側による暴力であり、犯罪行為であるとともに、厳然たる平和に対する脅威、破廉恥な政治工作である。

 2015年12月28の「日韓合意」以降、日本政府によって繰り広げられている日本軍性奴隷制犯罪の否定、強制性の否定、法的責任の否認、そして少女像に向けた攻撃と歴史修正主義の主張と行為は、あらためて「日韓合意」の持つ犯罪的な意味を確認させた。「合意」は撤回、破棄されなければならないことが、より明確となった。

5)「日韓合意」の撤回が、具体的な政治課題になった

 すでに、韓国では「日韓合意」撤回が具体的な政治課題となっている。民衆運動の高揚のなかで「日韓合意」の内容――日本政府は「慰安婦」被害の事実を認めず、公式謝罪せず、賠償もしない、「癒し金」10億円を払う――があらためて、多くの人々の知るところとなり、被害を受けた韓国民の側からすれば「屈辱的な」合意であるという評価がしっかりと定着し、再交渉、撤回が叫ばれるようになった。 

 「屈辱的な」という表現には、過去の日本による朝鮮植民地支配への批判が反映している。植民地支配に対する反省も謝罪もない日本政府の態度に、韓国の人々は怒っている。日本政府が「慰安婦」被害という人権侵害への謝罪と賠償をしないことは、植民地支配を反省、謝罪しないことを意味するととらえた。日本政府に対する怒りが、韓国の人々の間に広がっている。全国民的なナショナリズムの様相さえ呈している。

 韓国政府、外交部と日本政府による移転要求に対抗し、釜山の少女像を守る釜山女性会のチャン・ソンファ代表は、「国民の名においての侵略と戦争犯罪を知らぬ存ぜぬで一貫する日本政府を糾弾する」と発言している。

 3月1日節の第18回目のろうそく集会に、日本軍「慰安婦」被害者の李容洙(イ・ヨンス)さんが舞台に上がった。「25年間、雨が降ろうが雪が降ろうが日本の謝罪を要求するデモを開いた。今回の韓日慰安婦合意を導いた朴槿恵大統領を弾劾させ、ユン・ビョンセ外交部長官を解任させなければならない」と述べた(聯合ニュース)。すでに、朴大統領は罷免が決定した。「日韓合意」を主導したユン・ビョンセ外交部長官への解任要求がすでに叫ばれている。

 大統領選挙は5月9日である。いずれの大統領候補も「日韓合意」の再交渉、または撤回を掲げるに至っている。5月9日までの大統領選の過程で、「日韓合意」は白紙撤回しかないことが、よりしっかりと確認されるだろう。そして、「日韓合意」撤回が具体的な政治課題となるだろう。

 私たちも、日本で「日韓合意」は元「慰安婦」被害者の人権侵害に対し、日本政府が謝罪していなければ賠償もしていないことを訴えるとともに、「日韓合意」押しつけるのでは決して解決しない事態となっており、「日韓合意」撤回を求めていかなくてはならない。(3月22日記)

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

いまだ混乱が続くトランプ政権 [世界の動き]

いまだ混乱が続くトランプ政権


1)「フリンを辞任に追い込み、対ロ政策を変えさせない!」

 ドナルド・トランプはロシアとの関係修復を訴え、大統領に当選した。その政策の象徴と言えるのが国務長官に就任したレックス・ティラーソンと国家安全保障担当補佐官になったマイケル・フリンだ。

 バラク・オバマは大統領を退任する直前、ロシアとの関係をできるだけ悪化させようとロシアを挑発した。昨年12月にロシアの外交官35名を含む96名のロシア人を国外へ追放したのはその一例。2017年1月6日にはアブラムズM1A1戦車87輌を含む戦闘車両をドイツへ陸揚げ、戦闘ヘリのブラック・ホーク50機、10機のCH-47、アパッチ24機なども送り込んだ。派兵されたアメリカ兵の人数は2200名。ただ、こうした挑発にロシア政府が乗らなかった。

 アメリカ欧州陸軍のベン・ホッジス司令官はポーランドに送り込まれたアメリカ軍の戦車に一斉射撃させた。ホッジス司令官によると、これはロシアに対する戦略的なメッセージなのだという。

 ウクライナではキエフ政権が1月下旬からウクライナ東部のドンバス(ドネツク、ルガンスク、ドネプロペトロフスク)に対する攻撃を激化させているが、その1カ月前にはクリントンを支持していたジョン・マケインとリンゼイ・グラハム、ふたりのネオコン上院議員がジョージア、バルト諸国、そしてウクライナを歴訪している。偶然ではない。

 フリンの辞任劇は、当然のこと、この流れの中で考えるべきだろう。ネオコン、CIA、NATO、軍産複合体、そしてアメリカの有力メディアがそのプレイヤーだ。

2) 対ロ政策の変更は何がまずいか?

 フリンはロシアと話し合って、ISを打ち滅ぼし、シリアへの戦争介入をやめようとしていた。フリンを追い落とした者たちとは、シリア戦争が終わってはまずい連中、ISを背後で操っていた連中、これまでロシアに戦争挑発を仕かけてきており、トランプ政権によるロシアとの和平協議の動きを破壊しなければならない連中ということになる。
 ネオコンであり、軍産複合体であり、ユダヤ資本こそ、シリアでの戦争介入、ロシアへの戦争挑発を進めてきたし、そこで莫大な利益も得てきた。ロシアとの和平は、その巨大プロジェクトを中止しかねない。

3) 盗聴とリークを誰が行ったか?

 辞任劇はワシントン・ポスト紙の記事で幕を開けた。トランプが大統領に就任する1カ月ほど前、フリンがセルゲイ・キスリャクと話をし、その中でアメリカがロシアに対して行っている「制裁」を話題にしたこと、これを副大統領に報告しなかったことが問題だと報じた。

 スノーデンの指摘する通り、CIA、NSA、FBIはあらゆる世界の政治家、資本家そのほかすべてを大規模に盗聴している。ワシントン・ポスト紙の記事通りなら、フリンとセルゲイ・キスリャクの会話を盗聴した人物がいることになる。盗聴したのはCIA、NSA、FBIといったところだが、盗聴内容を切り取って、メディアに漏らして報道させ、盗聴行為に対する責任を負わないように対応した。

 こんなことが可能ならば、自分に都合に悪い情報は無視しておいて、誰かしら政治的な敵を貶める情報だけを選んで暴露し、追い落とすことが可能になる。自分に都合のいい情報だけリークし、ライバルを追い落とせばいいのだから、政治権力を握るのも可能である。

 実際に、ネオコンはこれまでそのようにしてきた。ユーゴスラビアで深刻な人権侵害があると偽情報を流して、戦争介入しユーゴを破壊してしまった。大量破壊兵器があるという偽情報でイラク戦争を実行しイラクを破壊しつくした。結局、破綻国家をつくって、アメリカ軍とその傀儡、傭兵が支配する国や地域に変わった。いまだに修復し得ないところまで破壊しつくした。

 このようにすれば、あらゆる政治を操ることができる。情報機関はまさに政治的に自分たちの利益を守ろうとして対応している。情報機関だけでなくその背後に巨大な利益集団の存在がある。

 有り体に言えば、アメリカを牛耳る現支配層による何らかの情報操作、リークは許されるが、それに従わない政治家は許さないし、支配層にとって都合の悪い情報の公開は許さない、従わない者は情報操作によって政治的に屈服させる、ということだ。

4) 機能不全のトランプ政権

 はっきりしているのは、盗聴したCIA、FBI、NSAなどの情報機関、および有力メディアが、トランプ政権に従っておらず、それどころか政権外部のネオコン、軍産複合体の支配下にあり、トランプ政権を屈服させようと闘っている最中だということだ。

 トランプはフリンを慰留しなかった。トランプ屈服の第一歩だろう。
 その後、トランプは6兆円もの軍事費増大を表明した。明らかにネオコンや軍産複合体などのこれまで戦争を進めてきた勢力に対する「妥協」を意味している。

 しかし、ネオコンや軍産複合体はいまだ満足しておらず、トランプへの攻撃を止めていない。トランプがネオコンや軍産複合体に完全に屈服するまで続けるつもりだ。

 トランプは選挙中、オバマ陣営がトランプを盗聴したと非難している。これに対し、有力マスメディアは「証拠がない」と反論?[?]のキャンペーンを行っている。滑稽なのは、これを「トランプの横暴vsジャーナリズム」の対立として描き出していることだ。ワシントン・ポストをはじめとする有力メディアが、CIAとその背後にいるネオコン、軍産複合体に操られていることこそが何よりも問題だ。ジャーナリズムはその「汚れた関係」をまず告発しなければならない。

 ネオコン、戦争ビジネス、巨大金融資本を含む好戦派、反トランプ陣営に加わっている有力メディアと、民主党「リベラル派」は関係が深く、少なくともヒラリーやオバマなど一部は資金などの支援を受けている。トランプを批判するネオコンなどに「リベラル派」が従っている。だから、決して「トランプ対リベラル」の対立というわけでもない。

 こんなことで、トランプ政権の混乱は続き、いまだ機能していない。CIA、FBI、NSAなどの情報機関が、トランプのいうことを聞かないのだから、機能しない。政策を担ってきた国防省、国務省も様子眺めだろう。(3月22日記)
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

年金は富裕者の食い物か! [現代日本の世相]

年金は富裕者の食い物か!

               
 日本経済新聞(2月2日)は、日米首脳会談で安倍首相は米トランプ政権ににじり寄り、トランプ政権の政策の一つ、巨大なインフラ投資にGPIF資金を提案した、と報道した。 「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が米国のインフラ事業に投資することなどを通じ、米で数十万人の雇用創出につなげる」と報じ、国際的にも話題になった。GPIF資産、約130兆円のうち5%(6.5兆円)までを国外のインフラ・プロジェクトに使うというのだ。

 それに対し、GPIF髙橋則広理事長は次のようにコメントした。 「本日、一部報道機関より、当法人のインフラ投資を通じた経済協力に関する報道がなされておりますが、そのような事実はございません。GPIFは、インフラ投資を含め、専ら被保険者の利益のため、年金積立金を長期的な観点から運用しており、今後とも、その方針に変わりはありません。なお、政府からの指示によりその運用内容を変更することはありません。」

 安倍首相が、このような発言をしたのは初めてではない。2014年1月にスイスのダボスで開かれた世界経済フォーラムで安倍首相は「日本の資産運用も大きく変わるでしょう。1兆2000億ドルの運用資産をもつGPIF。そのポートフォリオの見直しをして、成長への投資に貢献します。」と宣言し、2014年10月にはGPIFの運用資産割合の変更を決定させた。国内債券を60%から35%に引き下げ、国内株式と外国株式を12%から25%に、外国債券を11%から15%へそれぞれ引き上げた。
 
 実際のところ、GPIFは資産約130兆円のうちの25%、約32.5兆円はすでに外国株式で運用している。髙橋理事長のコメントは、決して安倍首相の発言を拒否したのではない。政府の指示で投資先を決めるのではなく、「GPIFの意思」で投資先を選ぶのであり、結果的にそれがアメリカのインフラ投資になることもある、ということを言っているに過ぎない。
 
 特に国内株式、海外株式への資産運用をそれぞれ25%にしたことは問題だ。
 資産割合を変更した2014年以降から現在までは株価上昇の局面なので、国内外株式を50%に増やしたGPIFの総資産は増大してはいる。しかし、すでに2008-09サブプライム恐慌から景気拡大局面は8年を経過しており、次の恐慌が近い。

 アメリカでトラック運転士組合の年金が破綻状態だと伝えられている。ほかの年金のなかにも似たような危機的な状況の年金も多い。
 GPIFは、資産が巨大なこともあり機動的な資産運用はできないし、そもそも短期の売買の繰り返しはしない。「年金積立金を長期的な観点から運用」しているのである。
 ということは、急激な市場の変化の際に、ヘッジファンドなどの標的となり「売り」を仕かけられ、巨大な損の引き受け手となる可能性が大きいのだ。この場合、誰も責任を負わない。支給される年金額が減るだけだ。
 
 本来、年金はリタイアした後の庶民の生活を支えるものだが、実際はその資産を巨大企業や富裕層への投資へと流し込む仕組みが出来上がっている。構造的に国民の資産を利用する(=言葉は「運用」)仕組みができている。リスクのより多い資産への投資に踏み込んでいる。
 そればかりではない。安倍首相は年金を国民の資産だと思っていないのだろう。トランプ政権に対して、「アメリカへの投資資金は十分ありますよ」とささやき、自身の政治政策、「経済協力」に利用しているのだ。(3月19日記)
 
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

「安倍からのミサイル供与申し出は断った」?? [フィリピンの政治経済状況]

?「安倍からのミサイル供与申し出は断った」??

グラフィックス1.png
<共同記者発表を終え、握手するフィリピンのドゥテルテ大統領(右)と安倍晋三首相=12日午後4時57分、マニラのマラカニアン宮殿>
 
 安倍晋三首相は12日、フィリピンの首都マニラを訪問し、ドゥテルテ大統領と会談した。フィリピンと中国が領有権を主張する南シナ海問題で、日比政府が連携を強化していくことを安倍は主張し、今後5年間で、1兆円規模の支援を行うことも表明した。

 安倍政権は、アメリカの対中国政策に従い、日米の側にフィリピンを取り込み、南シナ海の問題で中国に対峙させようと腐心している。そのために日本外交の伝統的手法、あるいは「得意技」である経済援助を提示し、わざわざ南シナ海を巡視する巡視船も提供した。
 果たして、安倍はドゥテルテを取り込んだか?

 これには後日談がある。
 「第3次世界大戦をみたくないから、安倍晋三首相からのミサイル供与の申し出を断った――」 
 ドゥテルテ大統領がこんな「発言」をしたと、現地の日刊英字紙フィリピン・スターが15日に報じ、波紋が広がったのだ。
 報道のもとになったのは、ドゥテルテが15日、ダバオ市商工会議所の総会で行ったスピーチ。英語とタガログ語で、首脳会談をしたばかりの安倍首相の名前を挙げ、「安倍には、軍事同盟は必要ではないと言ったんだ。私は外国の軍人がいない国を目指したい。・・・・・・安倍にも言ったんだ、ミサイルは必要としていないと」。 

 もちろん、日本政府はミサイルなど供与しない。明らかな間違いである。あるいはドゥテルテはわざと「ミサイル」と「言い間違えた」のかもしれない。いずれにせよ、「安倍の狙いは承知しているよ!」というメッセージのようだ。

 ドゥテルテが言いたかったことは、「支援はありがたくいただくが、日米の側に立って中国と対立し、戦争になるのは嫌だ」ということである。



nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

トランプ政権が誕生した意味 [世界の動き]

トランプ政権が誕生した意味、新政権の動静

1)米国トランプ政権の動静、国内問題

1)-A、トランプが勝利した背景

 新自由主義が、アメリカを荒廃させた。この荒廃がトランプを登場させた。ただアメリカ社会は一様に荒廃しているのではない、深刻な分断がそこにある。富裕層と貧困層、権力エリートと大衆の分断、グローバル化で潤う東西両海岸と中西部、ラストベルト地域の分断である。

 1980年代以降アメリカを含む世界中で、レーガノミックスに代表されるような市場原理主義への回帰が起きた。社会主義を解体したため、社会主義制度に対抗する労働者の権利拡充や福祉政策を実行する必要がなくなった。1970年代、法人税は各国とも50%程度がほとんどだったが、今や引き下げ競争が止まらず、トランプは15%にすると公言している。人々に対しては自己責任を押し付け、緊縮財政、福祉・公共サービスなどの縮小、公営事業の民営化の「小さな政府」がいいと宣伝し、他方、大資本のためにグローバル化を前提とした経済政策、規制撤廃による競争促進、労働者保護廃止などの経済政策、法人税の低減、富裕層のために所得税の減免を推し進めてきた。経済恐慌に際しては「大きすぎて潰せない」として、政府が金融資本を救済した。「小さな政府」「自己責任」の原則は、大資本には適用しなかった。

 金融資本、巨大企業、軍産複合体はそれ以前にくらべても巨大な富を獲得し、失業などの敗者を生み出した。厚い層をなしていた中間層は徐々に解体・没落した。これを「経済効率を求める新システム」と呼んだ。現実には勝者が敗者を補う機能はまったく果たされず、敗者の貧困化の過程を促進した。「トリクル・ダウン効果」(trickle-down effect:「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富がトリクルダウン(滴り落ちる)」とする経済効果)という「偽りの甘い言葉」を政府や経済学者が語り、貧困化、格差拡大に何も対策せず放置した。

 これに対してアメリカの一般国民の不満が蓄積し、即物的な形をとって爆発し始めた。この不満はいまだ「無自覚」であり、政治勢力として結集してはいない。トランプ誕生、英国のEU離脱、欧州での右翼政党台頭、韓国大統領弾劾などの一連の現象は、新自由主義がもたらした荒廃、分断、不満が根底にある。

1)-B、トランプは果たして期待に応えることができるか?

 新自由主義のもたらしたアメリカ社会の荒廃は、トランプによって米国内の白人労働者層の貧困問題に還元された上に、原因あるいは「敵」はもっぱら「不法移民」、「イスラム」、「中国」などの外部の他者とこれまでの政治家、「パワー・エリート」であるとし、有権者ではない国民国家にとっての他者になすりつけ、他方、白人労働者階級の一部が抱く人種的優越主義を刺戟しながら「偉大なアメリカを復活する」という愛国心を鼓舞する選挙キャンペーンを行った。これが功を奏して得られた支持である。新自由主義により貧困化したのは、アメリカの白人労働者ばかりではない。アメリカの非白人労働者、さらには新興国、発展途上国の労働者を、より大量かつ深刻に貧困化させたきた。人種的優越主義をもち「偉大なアメリカ」を叫ぶアメリカの白人労働者層は、ナショナリズムや排外主義にとらわれてるのであり、非白人労働者者や新興国や途上国の労働者のことは考慮の外にあり、連帯感などは欠如している。不満はすでに操られている。

 多くのアメリカ国民は、ウオール街、金融界、軍産複合体、マスメディアを中心としたアメリカのパワーエリート勢力に対する反発や批判を蓄積したが、トランプはこれを、「不法移民」、「中国」、「イスラム」など外部の敵への攻撃に取り込んで、うまく利用した。矛先は、ウオール街、金融界、軍産複合体、ユダヤ資本などに向かないように巧妙に工夫されている。

 トランプ自身は不動産業を営む有数の富豪であり、貧困層の利益を体現しているわけではない。次々に政権の閣僚を任命しているが、その顔ぶれは、富豪、金融資本の代表や高級軍人。彼らの考えは、決して貧困・中間層の価値観と一致していない。

 トランプが、中国やイスラムや不法移民を非難するのは、何ら根本的な解決ではなく、一種の「気晴らし」である。外部の他者に責任をなすりつけて、貧困化する白人労働者層の不満を一時的にそらせる以上の意味を持たない。効果がある限り、繰り返し続けるだろうが、「気晴らし」がいつまでも有効であるはずはない。

1)-C、トランプの経済政策

 トランプは掲げる経済政策、すなわち、大幅減税、大型インフラ投資、そのための財政出動、シェールオイル開発などのための環境規制撤廃、保護主義、金融緩和・ドル安を、大げさに表明してきた。これらは金融資本やビジネスに有利ととらえられ投資家は期待を抱き、11月以降株価はいったん上昇した。

 しかし、実際にこれらの経済政策を実施するとなると難しい。

 大幅減税、財政出動し大規模にインフラを整備するとすでに表明し期待も膨らんでいるが、現在
でも財政赤字であるのに、さらなる赤字の拡大、金融緩和は信用不安、恐慌をもたらすから、おのずと限界がある。

 トランプがツィッターで自動車会社にアメリカ国内生産を促し、自動車会社の経営者は戦々恐々としているが、市場に近いところで安く生産することを追求しできあがったのが現生産体制であって、白人労働者のためだからといってミシガンやイリノイに工場を戻すことは、やらないしできない。またメキシコから様々な部品・製品を輸入しており、メキシコからの輸入車だけ狙い撃ちにして高い関税をかけることも不可能だ。

 当面、実行できそうなのは、金融緩和・ドル安とし、アメリカ製造業の輸出拡大くらいである。
 これらの経済政策は、「親富裕層」、「親ビジネス」、「親金融資本」的であり、たとえ実行されたとしても貧困層の状態が改善しはしないし、ラストベルト地域の抱える問題も解決しはしない。TPP離脱を表明したことは歓迎するが、そのことで貧困層の抱える問題が解決するわけではない。

 トランプの主張が何の解決ももたらさないと、どの時点で、貧困・中間層が強い反発を示すかが、アメリカ国内政治の次の焦点となる。

2)アメリカの外交、国際問題はどうなる?

 対外関係では、対ロシア、中東、中国が特に注目される。

2)-A、最大の争点、対ロ政策

 対ロ政策では、トランプ路線と既存の対ロシア政策は、明確に対立している。オバマ政権では、ネオコン勢力が対ロシア政策、対中東政策を牛耳ってきた。国務省を牛耳っていたネオコン・グループはウクライナで危機を創造し、ロシアとの対決に持ち込んだ。ネオコンが支配するNATOは、関東軍化(第二次世界大戦前の日本の関東軍)しており、ウソの情報を流し宣伝し、しきりにロシアや中東で戦争挑発を仕かけてきた。

 その結果が、ウクライナの破綻国家化であり、シリア戦略の失敗・シリア反政府軍の敗退、トルコの離反、欧州への中東移民の大量流入である。バルト三国、ポーランドはウクライナとともに、ネオコンのロシア挑発政策にそのまま従い、NATO軍配備を歓迎すると各政権とも「自発的に」表明してきた。今やロシア政策は手詰まりになり、アメリカのロシア政策の転換が検討されている。

 オバマは政権を去る直前の1月13日に、ポーランドに3,500名のアメリカ軍配備を決め、次期政権の手を縛った。ネオコンに従ってきたこれら諸国政府は不安にかられているだろう。ロシア政策の転換は、その利用が終わるからだ。

 一方、トランプはロシア内のホテル建設、高級マンション建設等の関係で有力ロシア経済人との交流を持つ。国務長官として、米石油大手エクソンモービル会長兼最高経営責任者(CEO)のティラーソンを起用。ティラーソンは北海石油開発、サハリン石油開発等を通じロシアと協同してきたし、ロシアに対する融和政策を主張している。

 ロシアと協調し資源開発をすすめ利益を上げようとするグループが、アメリカ支配層内に存在しており、ネオコン、イスラエルロビーが推し進めてきたロシアへの戦争介入、敵視政策の失敗を前にして、ロシアとの「協調」への転換が模索されている。

 ただ、ネオコンは国防省国務省から放逐されたわけではない。オバマは、何の証拠も示すことなくロシアがサイバー攻撃でアメリカ大統領戦に介入したと断定し、またロシア外交官35名はスパイだと決めつけ帰国させた。これは、オバマ政権と国務省が今なおネオコンに支配されており、トランプ次期政権に難題を押しつけたことを意味する。ロシア外交官追放に対し、プーチンは対抗措置をとらなかった。そのことにトランプはツィッターで「すばらしい対応」とし、対ロ政策での違いを表明した。

 トランプ政権で最初の政権内路線争いは、対ロ政策になろう。

2)-B、 中東政策の転換

 シリア反政府軍が敗退し、ダーイッシュ(あるいはISと表記)は弱体化、トルコもアメリカから離反した。アメリカの手先が弱体化・離反したことで、中東での影響力が大きく後退した。中東戦略は、敗退したところから出発することになる。

 シリアにおいては、米国抜き、ロシア、トルコ、イラン主導で、アサド政権存続を前提とした停戦合意がすでに成立した。これに新政権はどう対応するか。停戦合意した7反政府勢力のうち、5グループはアメリカの支援を得ていた。中東はすでに、ロシア、トルコ、イラン、シリア対アメリカ、サウジ、イスラエルの対立構造に変わっている。

 シリア反政府軍、ダーイッシュを使って、戦争介入するオバマ政権のやり方が失敗した後、どのように立て直すのか注目される。「世界の警察官であり続けることはない」とするトランプ政権だが、政権入りしたマティス国防長官等多くの軍関係者は、中東への軍事介入支持者であり、統一性はとれていない。ここでも路線争いがあるだろう。

2)-C、中国は最も複雑な構図

 トランプにとって中国非難は、対中国の貿易赤字が大きいので口先介入しているのだが、実際に関税をかけることは難しく、有利な取引条件を引き出そうとしているくらいだろう。ただ中国非難は、トランプ支持者であるアメリカ大衆のプライドをくすぐるための材料でもある。アメリカ国民に対して発せられており、言葉通りに受け取れない場合もある。

 オバマ政権は「アジアへのリバランス戦略」を掲げ、中東からアジアへ軍事力をシフトしてきた。南シナ海でのフィリピンやベトナムと中国との領土領海問題に介入してきたが、フィリピン・ドゥテルテ政権が親中政策へ転換し、アメリカの戦略はここでも思い通りいっておらず、立て直しが迫られている。

 アメリカ支配層にはアメリカ軍、軍産複合体、ネオコンを中心とする対中強硬派と、中国市場に参入している産業界、金融界の融和派が存在する。トランプは米国国内の産業の育成を主張しており、米国産業の擁護の観点から、貿易戦争の再来もありうる。

 アメリカ軍は、軍産複合体の都合もあり、対中国強硬路線を継続しているが、実際に強硬路線をとることができるかどうかは、中東での軍事介入がどうなるかとも関連している。二正面作戦をとることは難しく、中東への軍事介入継続であれば、中国への策は薄れる。

2)-D、欧州への関与

 英国のEU離脱の基本合意はいまだできていない。欧州もアメリカ社会と同じく新自由主義により社会が荒廃、分断しており、他方、中東からの移民の増大を契機に、ナショナリズムが欧州全域に広がりつつあり、ナショナリズムや排外主義を掲げた右翼政党が台頭している。仏の大統領選挙、ドイツの首相の動向などにすでに影響を与えている。

 トランプ政権の欧州への関心は前政権に比べ小さく、口先介入はあるにしても全体として後退するだろう。NATOの動きが変わるか注目される。

2)-E、日本への影響

 アメリカの中東への軍事介入が強まれば、自衛隊派遣への圧力が強まる。中東への軍事介入がトーンダウンすれば、対中対決に本腰になり、当然日本の参加を強化することが求められる。ただ、いまだ方向は定まっていない。

 対中国、対アジア政策が定まらなければ、今までアメリカに従って懸命に努めてきた安倍政権の立場は宙に浮く。それゆえ安倍政権は、これまでアメリカ政府の「番頭」のような役割を進んで果たしてきたのに、トランプ政権はその「忠義」を理解してくれていないと嘆き、理解を求めアピールが重要だとしきりに愚痴をこぼしている。

 トランプは、日本をそれほど重視していない。「どのようにも扱うことができる政府であり国である」ととらえており、優先順位は低い。しかし、アメリカの世界政策の変更・転換は、安倍政権にとって大きな影響を及ぼす。   (文責:林 信治、1月20日記)




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

日本社会の中国観、韓国観 [世界の動き]

現代日本社会の中国観、韓国観

 
 現代日本の常識は、世界の非常識である。最も代表的なものが「中国観・韓国観」だ。

 日本社会では、日本では70~80%の人が中国の浮上を日本の潜在的脅威として把握し、これに備えるために日米同盟を強化して、中国と東南アジア諸国に対処するのが当然だととらえている。可能ならば韓国、東南アジア諸国連合、オーストラリア、インドなどの周辺国を日米同盟の側に引き込み、中国と対峙し、東南アジアを影響下に治め、戦後の長い時期そうであったように、アメリカと一緒になって日本が特別な地位を占めるのが当然だと考えている。さらに安倍政権は、対米協調の枠内で海外での軍事的貢献も積極的に引き受けるところに踏み出すべきだと主張するに至っている。日本は西欧の一員で、中国、韓国、東南アジアは未熟な国々という認識だ。

 しかし、そのように考えているのは日本政府と日本社会だけだ。ASEAN諸国は、米中関係が改善し、東南アジアの安全保障がゆるがないことを願い、勃興する中国を認めたうえで平和的互恵的な国際関係を望んでいる。アメリカ政府の傀儡だったフィリピン政府は、中国との友好関係へと転換した。中国と領土問題を抱えているベトナムにしても、平和的互恵的な関係を主張する立場である。

 日本政府と日本社会だけが違う。
 安倍政権や外務省の振りまくの偏った誤った中国観を、日本の知識人やメディアが宣伝し、情報操作した結果、国民の間で何となく「嫌中論」がひろがり、政権に都合のいい薄っぺらな「中国観」を持つに至っている。
 そして日本政府は、アメリカの「アジアへのリバランス戦略」に忠実に従い、アメリカともに中国を敵視し対峙する政策をとっているのである。

 「韓国観」も「中国観」と同様で、韓国の台頭は日本にとって「生意気」であるし、日本とは違って未熟な国という認識だ。
 この中国観、韓国観を持った安倍政権は、中国に近づいた韓国を日米韓同盟にしっかりとつなぎとめようと腐心してきた。安倍晋三首相が2015年11月、朴槿恵大統領との首脳会談で「慰安婦問題が両国関係発展の障害物」になっていると言明したのは、アメリカ政府のリバランス戦略、対中国政策を、安倍政権なりに実行しようとしたからだ。

 朴槿恵政権はアメリカ政府、日本政府の圧力に負け、2015年12月28日には、日本軍「慰安婦」問題に対する日韓政府間合意を強引に締結した。2016年7月には中国政府の強い反対にもかかわらず韓国へのTHHAD(高高度防衛ミサイル)配備を決定し、2016年11月には日韓軍事情報保護協定(GSOMIA)を締結した。中国に対抗し、日米韓軍事協力を強化する方向に、朴槿恵政権は舵を切ったのだ。

 韓国社会の立場は、朴槿恵政権のこの転換と微妙に食い違っている。韓国社会も中国の急速な浮上に「不安」を感じつつも、中国を「戦略的互恵関係」としてとらえている人々が多数を占める。実際に中国との経済貿易関係は韓国経済の大半を占めており、中国との友好関係なしに先行きはないことは、日本以上により確かなのだ。
 
 朴槿恵政権が、国民の大多数から支持を失い機能停止に陥っている要因の一つは、中国との「戦略的互恵関係」を揺るがし、日米の側にあまりに傾いたことによる。

 北朝鮮核問題の解決のために何が必要か、対話と協力を通じて南北関係を安定的に維持することが賢明だ。それ以外にはない。北朝鮮核問題に、「THAAD」配備しても何も解決しないし、より危険になる。誰でも冷静に考えればわかる。韓国社会でも多数の人々はそのように考えている。
 しかし「THAAD」配備は、アメリカ政府の強い意向であった。配備は、北朝鮮ばかりでなく中国も含めた東アジアの安全保障に重大な危険をもたらす。そんなことは明白なのに、朴政権は受け入れてしまった。

 日本の大多数の知識人は、アメリカに従って中国や東南アジアに対処する次元で、韓国や東南アジア諸国の政策を評価し、自分たちのフレームに合わない姿を「未熟な中国、韓国、東南アジア諸国」として描き出す。日本政府の政策に進んで「理解」を示し、日本はアメリカの背後にくっついてその脅威を使って、中国や韓国、アジア諸国に対処するのが当然ととらえている。

 その点では「アメリカには敗けたが、中国や朝鮮に敗けたわけではない」とする歴史観(元関東軍参謀・服部卓四郎が書いた『大東亜戦争戦史』)が、自民党政治家を通じて日本社会のなかに、現在に至ってもなお生き延び続けているとさえ言えるのである。

 このようにして日本政府と日本社会はアジアから孤立する道を歩んでいる。日本社会は孤立する道を選んでいることに無自覚なままだ。   (1月9日、記)
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

新薬「オプジーボ」は「遠い夢の薬」 [現代日本の世相]

新薬オプジーボ、日本以外では「遠い夢の薬」

 読売新聞は、医療ルネサンス特集で5回にわたり新薬オプジーボについて記事を載せている。以下は1月9日の記事。

 ******
 2016年12月上旬、オーストリア・ウィーン、世界肺癌会議があり、日本の肺がん患者団体「ワンステップ」代表、長谷川一男さん(45)は、患者支援活動に贈られる「アドボカシー・アワード」の受賞式に出席した。
 長谷川さんには、世界各国から集まる患者たちに、ぜひ聞いてみたいことがあった。オプジーボをどう思っているのか―――。だがその問いは、肩すかしにあう。・・・・・・
 「オプジーボ」は超高額新薬である。こうした超高額薬を使える国は、日本以外ほとんどないという現実を改めて認識させられた。オプジーボの薬価は日本の2割から4割に抑えられているのに、それでも使うことができない。・・・・・・
 多くの国で、「オプジーボは」は「遠い夢の薬」だ。東欧の患者からは、「通常の抗がん剤」でさえ高価で満足に使えない」と聞いた。
 米国は無保険者が15%おり、莫大な医療費を自己負担できる患者は一部の富裕層に限られる。
 英国では、高額薬について、費用対効果の観点から国立医療技術評価機構(NICE)が、厳しい審査を行う。オプジーボが肺癌治療で公的医療制度の対象にするかどうかの結論はまだ出ていない。
 ・・・・・・

 海外でのオプジーボの薬価(100㎎の薬価、厚生労働省) 
   英国:約14万円、
   ドイツ:約20万円、
   米国:約30万円
   日本:約73万円、2017年2月から約36万円になる。それでも海外より高い。
 ****
 
 日本で開発された新薬「オプジーボ」が、これまでの抗がん剤とは異なり画期的な効果があったという肺がん患者の闘病記録などを含む読売新聞の特集記事を、この数日読んできた。

 また、新薬「オプジーボ」は、京都大学・本庶佑(ほんじょ・たすく)研究室が開発を牽引したこと、癌細胞のブレーキを解除して免疫を再活性化する仕組みの記事や、患者団体を結成し患者同士交流し励ましあいながら、癌と闘っている記事など、興味深く読んだ。

 ただ、1月9日の上記の記事を読み、医学や薬学上の問題ではない、ある意味より深刻な社会的要因を考えさせられた。

1)新薬「オプジーボ」は「遠い夢の薬」

 小野薬品工業の新薬「オプジーボ」が、肺癌にも効果があるということで、注目を浴びている。薬価が超高額であるとして官邸が介入し、100㎎あたり現状約73万円が、2017年2月から半額の36万円になるという。それでも超高額薬だ。患者によって異なるが、日本の場合、1か月治療すると約300万円、1年間だと約3,500万円かかる。大半は健康保険から支払われる。

 官邸が介入し半額に値下げしてもなお、海外での薬価よりも高いのは少々不思議だが、海外での価格も、けっして安いとはいえず、記事にある通り、富裕層以外には使えない高額薬なのだ。

 新薬が開発され効果があっても、高額な費用を患者が負担しない限り、実際の医療には使われないという事態が、私たちの生きる世界では「当たり前」となっている。資本が儲けることを通じて、あらゆる社会活動が行われる。「儲けること」が「治療」より優先されるという転倒した事態が起きている。

2)医療も薬も、儲ける手段!

 ここに、弱者である患者を切り捨てる世界的な社会構造が、透けて見える。
 科学者が研究し癌を撲滅する新薬を開発しても、製薬会社が莫大な富を得ることが優先される社会構造が確固たるものとして存在する。資本をもうけさせることを通じて、医療活動を含むあらゆる社会活動が行われるのが、資本主義社会。新自由主義の下で、資本の活動は規制という制限を次々に取っ払い、世界的な製薬会社がますます力を得て医療活動を支配する関係が広がりつつある。恐ろしいばかりだ。

3)日本の国民皆保険制度が狙われている!

 日本では、この超高額薬を使うことができる。国民皆保険制度によって、高額新薬も含む高額医療費の一部だけを負担すればいいからだ。日本の国民皆保険制度は世界に誇る優れた制度である。日本以外の国々の患者にとって、日本の国民皆保険は、夢のような制度なのだ。

 しかし、この保険制度は今、高額新薬を含む高額医療によって、破壊されかねない事態に直面している。

 日本以外の国では富裕層以外に高額新薬の費用を支払うことができないので、その人数は限られる。ところが、日本の国民皆保険制度は、制度がある限り支払うことができるので、世界の製薬資本にとっては、狙い撃ちする対象となる。日本の国民皆保険制度は、支払ってくれる「大きな財布」なのだ。

 日本の医療費を含む福祉予算は、年間40兆円を超えさらに増大している。財政的負担に耐えられなくなれば、破壊されてしまう。

 TPPには、世界的な製薬資本が利益を上げる権利を擁護する条項がある。TPPを推し進める安倍政権は、この優れた国民皆保険制度を護るつもりがない。極めて危険だ。

 癌で苦しむ患者を、さらに病気以上に社会的に苦しめることになる。(1月9日、記)



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

オバマ政権のシリア戦略の破綻 [世界の動き]

アレッポの敗北、
オバマ政権のシリア戦略の失敗

1)アレッポでの敗北は、何を意味するか? 
オバマ政権のシリア戦略の破綻である161212 シリア勢力地図 アレッポ奪還.jpg
<シリア勢力地図 アレッポ奪還>
 
 シリア政府軍がアレッポを制圧した。アレッポはシリア最大の都市で人口200万。反政府軍の支配下にあった。
 シリア政府とロシアは、シリア反政府軍の兵士とその家族が武器を捨てて撤退することを認めた。12月16日、アレッポからシリア政反府軍の兵士とその家族がバスや救急車で撤退を始めたと伝えられている。

 シリア反政府軍のアレッポでの敗北は、何を意味するか?
 オバマ政権のシリア戦略の破綻である。
 シリア反政府軍のアレッポの敗退によって、戦局は大きく変化した。

 アレッポはシリア反政府軍の最大重要な拠点であったが、シリア反政府軍はこれを失った。シリア反政府軍は、アメリカやイギリスの手駒であり、アメリカやイギリスは戦闘員を訓練し、武器を供給し、侵略を仕かけてきた。アレッポにはアメリカやイギリス、イスラエルなどの特殊部隊、将校もいて、多数捕虜になった模様だ。シリア反政府軍の指揮系統、アメリカ、イギリス、イスラエル、サウジやカタールの特殊部隊の指揮系統でもあるが、これがいったん破壊されたことになる。もはやこれまでのような戦争介入は困難になった。

2)アメリカ抜き、ロシア、トルコ、イラン、シリアで停戦合意
   オバマ政権のシリア戦略破綻をさらに確定した
  
 さらに重要なことは、ロシアとトルコが12月29日にシリアにおける停戦で合意したことだ。アメリカ抜きの合意だ。イランも停戦合意文書の作成に参加、シリア政府や反シリア政府の7組織(戦闘員総数約6万人)も署名、国連もこの合意を認めたようだ。12月に入り、カタールはシリアへの侵略戦争から離脱、平和交渉にはエジプトも加わると見られている。

 アメリカやサウジとともに、戦争介入してきたトルコ・エルドアン政権は、クーデター騒ぎでアメリカへの不信を極大化させたこともあって、アメリカとともにシリアに戦争介入しても、この先見込みがないと判断した。そしてこれまでの態度を転換し、ロシアやイランと協議を開始し、アサド政権を認めたうえでのシリア和平協議に加わった。

 オバマ政権は、エルドアンの態度変更を止めることができなかった。12月19日、トルコ駐在のロシア大使、アンドレイ・カルロフが12月19日にアンカラで射殺された事件が起きたにもかかわらず、ロシアとトルコの新しい関係は壊れなかった。ロシアとトルコの接近は、アメリカやサウジ、イスラエルにとってはぜひとも阻止しなければならなかった。しかし、阻止できなかった。ロシアとトルコの新しい関係を破壊する目的で大使暗殺は仕かけられたことを、プーチンもエルドアンも理解したのである。

 アメリカやサウジ、イスラエルにとって、トルコを巻き込んだ停戦が成立するのは困る。だから、テロリストを使って暗殺事件を起こしたのだ。ついでにいえば、テロリストはアメリカやイギリス、サウジ、イスラエルの手駒であることをも証明した。

 停戦の妨害は、12月19日のアンドレイ・カルロフ露大使射殺だけではない。12月28日と29日にはダマスカスのロシア大使館が攻撃された。トルコとロシアの停戦合意を破壊する目的だったろうが、成功しなかった。また、12月23日にオバマ大統領はシリアの「反対者」への武器供給を認める法律に署名した。アル・カイダ系武装集団やダーイシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)に対する支援を、トランプ次期政権に押しつけたということだろう。
 オバマ政権がネオコンに支配されていることの証明でもある。

 トルコが停戦合意したことは、戦術的に重大な意味を持つ。
 アメリカやサウジはシリア反政府軍やダーイシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)へ資金を援助したが、武器や食料、特殊部隊はすべてトルコ国境を通じて供給された。シリア反政府軍、ダーイシュの兵站が絶たれるのだ。トルコ国境は、シリア反政府軍やダーイッシュやアル・カイダ系武装集団(AQI、アル・ヌスラ、ファテー・アル・シャム/レバント征服戦線と名称を変更したが、その実態は同じ)の兵站線であり、ここから武器が供給され、武装集団の財源となった盗掘原油が運び出された。

 ダーイッシュが強大になったのは、支配地域で石油を盗掘し、その資金で武器を買い、戦闘員を雇ったからだ。盗掘原油の販売も武器購入もトルコ国境を通じて行われた。ダーイッシュを倒す方法は明白で、盗掘原油を買わせないこと、武器の供給を止めることである。2015年9月30日からのロシアによる空爆は、これを行った。油田地域から追い払われ、アメリカやサウジから武器支給がされなくなったダーイッシュは、この先必ず弱体化する。

 シリア反政府軍はアレッポから西のイドリブへ撤退しているが、もはや戦闘継続も難しいだろう。いずれシリア反政府軍は壊滅し、シリア政府軍の支配下にはいるだろう。 

 この停戦合意には、アル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュは参加していない。アメリカ、フランス、イギリス、サウジアラビアも停戦には参加していない。シリア介入の手駒を失ったアメリカは、影響力をもはや行使できないということなのだ。オバマ政権は政権移行期にあり、茫然自失状態に陥っている。

3)シリア反政府軍とは何か?戦闘員は誰か?

 シリア反政府軍の戦闘員とは、アメリカ、イギリス、フランス、トルコのNATO加盟国、サウジアラビアやカタールのようなペルシャ湾岸産油国、そしてイスラエルが使ってきた傭兵である。シリア国民はほとんどいない。したがって、この戦闘は内戦ではない。外部からの戦争介入であり、国際法違反の不当な介入である。

 テロ集団を雇い戦争をしかけ、「反テロ戦争」を理由に戦争介入し、崩壊国家にし支配するというのが、オバマ政権が推し進めてきた中東支配である。リビアではカダフィを倒したが、シリアでは失敗に終わったということだ。
 
 アメリカ政府はシリア反政府軍を、ダーイッシュとは違う「穏健派勢力」と区別しようとしているが、「穏健派」とはネオコンとその支配下にあるマスメディアがつけた名札にすぎない。また戦闘員は、敗退するシリア反政府軍から逃れ、ダーイッシュやヌスラ戦線に雇い主を変えるものも多く出ている。

 ダーイッシュが傭兵集団であり、雇い主がアメリカ政府と同盟国(サウジ、カタール、イスラエル、英その他)であるという証拠の一つは、2012年8月にアメリカ軍の国防情報局(以下:DIA、当時の局長はマイケル・フリン中将)が作成した報告書である。報告書は、「シリア反政府軍はサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてAQI(イラクのアル・カイダ)が主力だとし、AQIはアル・ヌスラ(今はファテー・アル・シャム)と同じだ」と説明している。

4) この先どうなるか? 
  トランプ新政権はネオコンと手を切れるか?

 テロ傭兵集団を育成し、戦争介入し、崩壊国家にし、アメリカが支配する戦略を推し進めてきたのはネオコンである。バラク・オバマやヒラリー・クリントンはネオコンの影響下、支配を受けている。

 オバマ政権で、マイケル・フリン中将(2012年~2014年国防情報局局長、以下:DIA局長)は、武装集団の利用の危険性を訴えたが、オバマ大統領から解任された。このマイケル・フリン元中将は、トランプ新政権の安全保障担当補佐官であり、11月に安倍晋三がトランプタワーで面会した際、同席した人物である。

 ダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL)が傭兵集団であり、雇い主がアメリカ政府と同盟国であるとする指摘は、DIA報告書以外にいくつもある。アメリカ空軍のトーマス・マッキナニー中将は2014年9月にアメリカがダーイッシュを組織する手助けをしたと発言した。マーティン・デンプシー統合参謀本部議長(当時)はアラブの主要同盟国がダーイッシュに資金を提供していると議会で語り、2014年10月にはジョー・バイデン米副大統領がハーバード大学で中東におけるアメリカの主要な同盟国がダーイッシュの背後にいると述べている。2015年にはクラーク元欧州連合軍最高司令官もアメリカの友好国と同盟国がダーイッシュを作り上げたと語った。

 テロリストを雇い、戦争をしかけ、反テロ戦争として介入する、カダフィ政権やアサド政権を倒し、崩壊国家と混乱状態をつくりだし支配する、これがオバマ政権の推進してきた中東戦略であり、実際に主導権をとり推し進めたのはネオコン、イスラエルロビーだ。オバマやヒラリーはこれを制止するどころか、政権の主要な戦略とし、中東ばかりではなくウクライナ、オセチアでも同じことを行ってきた。オバマは、口先だけの凡庸な人物であり、安々とネオコンの支配を受け入れた。シリアではアメリカの支持したシリア反政府軍は敗退し、トルコは離反し、ウクライナは崩壊国家になり、修復しようのない事態に陥った。オバマの中東戦略は、失敗し破綻に終わろうとしている。
 
 トランプ新政権が、マイケル・フリン元中将を安全保障担当補佐官に迎え、ロシアと関係を改善し、中東戦略を改めようとしているのは、これまでのネオコンの戦略が、すでに失敗に終わっており、現実性がないこと、その継続は極めて危険であることが明らかだからだ。アメリカ社会はこれ以上の戦争政策、戦争介入に耐えられないという事情もある。ロシアを追い詰めるのではなくビジネスを拡大すべきだ判断するアメリカ支配層に、トランプ新政権は依拠している。

 アメリカ次期政権の安全保障担当補佐官マイケル‣フリン元DIA局長は、アル‣カイダ系武装集団やダーイッシュが一時期勢力を拡大させたのはオバマ政権の政策によると認識している。退役後にアル‣ジャジーラの番組へ出演した際、フリン元中将はオバマ政権がDIAの警告を無視して反シリア政府軍を支援、その決定がダーイッシュの支配地域を拡大させたと語っている。

 トランプ新政権はダーイッシュやサラフ主義者/ワッハーブ派やムスリム同胞団を中心とする武装集団を危険視しており、ロシアと手を組んで戦うべきだという考えを表明している。そのことはアサド政権存続を前提にした政策への転換であり、これまでの戦争介入政策の撤回である。

 ただ、トランプ新政権がネオコン影響を排除し、中東戦略を全面的に改めることができるかどうかはまだ定まっていない。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

トランプ勝利の意味、今後の行方 [世界の動き]

トランプ勝利の意味、今後の行方

 アメリカ大統領選挙結果は、驚くべきものだった。ドナルド・トランプに対する悪質なマスコミ・キャンペーンにもかかわらず、オリガーキー(1%の支配者)の代理人、ヒラリー・クリントンは敗北した。マスコミと、既存政党支配体制は、もはやアメリカ国民の信頼を得ていないことを示した。

1)反テロ戦争継続と軍産複合体・ネオコン支配にうんざり!

 トランプは戦争をやめることができるか!

 米国民は、2003年のイラク戦争以来延々と続く「反テロ戦争」にうんざりしているのだ。イラク戦争以降約7,000名の米兵士が戦死し、負傷者はその数倍以上にのぼる。負傷した退役軍人の生活は保障されておらず、みじめなものだ。そのことを、地方に住む多くの米国民は見てきた。戦争を煽るネオコンや軍産複合体に、嫌気がさしている。そんなことより、アメリカ国民の生活をよくしろ! 中東やウクライナにかかわるな! これが多数のアメリカ国民の声だった。

 ネオコンがオバマ政権を主導し、ISなどの傭兵集団を利用し一方でテロをしかけ、他方で「反テロ戦争」を続け、軍産複合体に毎年1兆ドル(約100兆円)もの収入を保障してきた。トランプを選んだ米国民はこの戦争政策継続を拒否したのだ。

 もし2003年に、イギリスとアメリカ合州国がイラクを侵略していなければ、イラクやシリアがISに占領され、戦争で荒廃してはいなかった。大規模な難民が発生し、欧州に押し寄せることはなかった。

 米政府を牛耳るネオコンと軍産複合体は、ISなどの傭兵を利用し、リビア・カダフィ政権を転覆した。同じやり方で、シリア・アサド政権を交替させようと戦争を継続してきた。ロシアを追い詰めるため、ウクライナのネオナチに政権をとらせ、ロシアとの戦争をけしかけてきた。オバマは、ネオコンや軍産複合体に妥協するばかりだった。国防長官やNATO司令官をネオコンに替えた。中東やウクライナへの戦争介入で、ロシアとの核戦争の危機さえもたらした。アメリカ社会はこのような戦争政策を続けることができなくなっているのだ。
 
 ヒラリーは、上院議員として、イラクでの大虐殺に賛成した。2008年に、オバマに対抗して立候補した際には、イランを“完全に消し去る”と脅した。オバマ政権の国務長官として、彼女は、リビアとホンジュラス政府破壊に共謀し、中国攻撃の手筈を整えた。ヒラリーは、ロシアとの戦争挑発である、シリアでの飛行禁止空域を支持すると誓ってきた。彼女はネオコンときわめて親和的だ。ヒラリーの実績はすでに証明済みなのだ。

 他方、トランプは、「世界の警察官であり続けることはできない」と表明した。ネオコンや軍産複合体による戦争政策継続の拒否である。日本の軍事費負担を増やせと言ってきたのも、米政府の軍事費負担を減らすことに目的がある。戦争継続が、米国社会を荒廃させたこと、中流層を崩壊させ、特に地方の白人層の生活を破壊してきたと認識しており、この転換を企てている。

 トランプが、ワシントンの権力者に嫌われているのは、彼の反抗的な振る舞いや発言ではない。ネオコンや軍産複合体が実行してきた戦争戦略の変更を、平気で唱えているからだ。トランプはアメリカの21世紀計画(=戦争をしかけ、不安定にし、支配する)に対する障害なのだ。
 ワシントンの軍国主義者連中にとって、トランプの問題は、ロシアや中国との戦争を望んでいないように見えることだ。彼はプーチン・ロシア大統領と戦うのではなく、交渉をしたがっているし、中国の習近平と話し合いたいと言っている。

 トランプは、選挙資金は自前でまかなった。ヒラリー・クリントンと違ってユダヤ資本、ウォール街の金融資本や軍産複合体から資金を得ていない。コントロールできていないのである。

 トランプ新政権が、ネオコンを政権から放逐できるか、ユダヤ資本やウォール街と手を切れるか、軍産複合体を押さえつけることができるかが、今後の焦点だ。妥協してしまえば、戦争政策をやめることはできない。
 
2)日米同盟、アジアへの「リバランス戦略」の変更は、歓迎すべき!

 オバマ政権はアジアへの「リバランス戦略」を掲げ、中国との対立を煽り、東アジアを不安定状態にし、介入しようとしてきた。ASEAN諸国はすべて、中国との対立を煽る米政府の戦略に反対している。米政府の言うなりに動いたフィリピン・アキノ前政権は、ハーグ仲裁裁判所に調停を申し立てた。仲裁裁判所の裁定は、どの環礁も「岩」であるとし、中比双方の領有を認めなかった。勝利者は、結局のところ、米政府だった。米国の都合=「リバランス戦略」に沿った裁定だったのである。米国は、裁定により、計画通り南シナ海での「自由航行作戦」を実行し、介入してきたのである。

 このような対立を煽る政策は、ネオコンや軍産複合体の戦略に従ったものだとトランプは判断している。トランプが中国やロシアとの協調を呼びかけているのは、リバランス戦略の拒否である。

 リチャード・アーミテージ元国務次官補、ジョセフ・ナイ元ハーバード大学長、マイケル・グリーンら共和党系のロビイスト・政策集団は、長らく日本を操ってきた「ジャパン・ハンドラー」と呼ばれており、米政府の東アジア政策を主導してきた。彼らは共和党系ながら、ヒラリー支持を表明した。そのため、トランプの勝利は、新政権で対日政策を実行する「顔ぶれ」ががらりと変わることを意味する。

 日本政府、安倍政権は、アメリカのお先棒を担いで中国との対立を煽る役割を果たしてきた。9月のG20での対応をみれば明らかだが、すでに中国政府は安倍政権をまともに相手にしていない。トランプ新政権が戦略を変更すれば、安倍政権ははしごを外された形となり、東アジアで孤立することになる。

 トランプ新政権による、日米同盟、アジアへの「リバランス戦略」見直し、変更は、きわめて歓迎すべきことだ。そもそも米戦略にとってさえ、辺野古に米海兵隊基地は不要である。沖縄・辺野古新基地建設を阻止する上で、良い条件が生まれるかもしれない。

3)信頼を失ったマスメディア、世論操作したマスメディア

 ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストなど大手新聞、NBC、CBS、CNNなどの主要放送局はすべて、ヒラリー支持だった。各マスメディアが実施した世論調査はすべてヒラリー優勢だった。しかしそれは嘘だった。世論調査と称して世論捜査を行ったことが明らかになった。

 選挙結果はトランプの勝利であり、米支配層の思惑がまったく外れたのである。マスメディアは、詐欺集団であることが証明された。ジャーナリズムが米支配層に大がかりに買収されている実態を暴露してしまったのである。

 今回の選挙で、米国民の多くが、1%の支配層による米国支配を心底から嫌った。そしてマスメディアの報道をまったく信用しなかった。マスメディアが、米支配層の道具に転化していること米国民はすでに知っていたし、マスメディアは信頼できない存在だと宣告されたのである。マスコミと既存政党支配体制は、もはやアメリカ国民の信頼を得ていない。

 アメリカ・マスコミが完全に信用を失った姿、影響力と信憑性の消滅した姿を確認するのは、実に痛快だ。

 ちなみに、日本のメディア報道は、米大手マスメディアのそのままの繰り返した。米大手マスメディアを信用したのは、日本の大手マスメディアだけだということ。そのことは、日本のメディアも支配層の道具であるとあらためて証明したことになる。現在は騙せおおせていても、いずれ日本のメディアも信頼を失うだろう。朝日、読売、毎日の大手新聞は、すでに部数を大幅に減らしている。

4)ヒラリーは、1%の代表

 トランプは、選挙資金を自分で準備した。1%の支配を受け入れていない。ヒラリーは、オリガーキー(1%の支配層)の手先である。オリガーキーは、トランプを支配できる自信がなかったので、トランプをホワイトハウスの主にしたくなかった。マスメディアを使って、ヒラリーを大統領にしようとしたが、米国民は拒否するという予想外の結果になった。これから先、オリガーキーはトランプへ「支配の手」を伸ばしてくるだろう。

 政権準備委員会ではすでに、ネオコン、軍産複合体、ユダヤ資本の代表者を、押し込むか排除するか、の争いが始まっている。

5)TPPは、完全になくなった

 ヒラリーもTPP反対を公言していたが、彼女はユダヤ資本、ウォール街、軍産複合体の支配下にあるから、大統領になれば撤回する可能性が高かった。トランプになって、その可能性はきわめて小さくなった。これは歓迎すべきことだ。日本国民にとって、あるいはTPP参加国の人々にとっては、きわめて喜ばしいことだ。

 TPPは、金融資本、ユダヤ資本、軍産複合体に、あるいは日本の独占企業、金融資本に新たな支配と利益をもたらすが、そのことは他方で、米国民の多数をのみならず、加盟国の人々を貧困化させる。国家主権をも侵して、世界的独占企業の利益を優先させる「自由化」なのだ。トランプは、TPPは米国民の多数の貧困化させる、と正しくも認識した。そして、地方の中間層、白人層を貧困化から救うために、TPPを阻止すると主張し、支持を得た。ヒラリーでは、貧困化は止まらないと米国民の多数は判断した。

 トランプ政権は、TPPから離脱するだろう。しかし、TPPを離脱しても貧困化を解決するわけではない。他方で、新政権はユダヤ資本、ウォール街、軍産複合体、世界的大企業の利害と対峙することになる。政権内でこれら支配層であるオリガーキーの影響力を排除するのは容易ではない。政権発足までの準備がまず重要となる。

6) トランプの移民排斥発言、反イスラム発言 
ヒラリーの「人種差別反対、フェミニズム支持」の意味 

 ヒラリーは、人種差別反対で、フェミニズムを支持し、性的少数者支持を表明している。しかし、フェミニズムを語りながら、生存権を含め、無数の女性たちの権利を無視する飽くことを知らない戦争を支持している。イラクやシリア、アフガンの女性の権利などまったく考慮していない。
 オバマ政権で国務長官を務めたヒラリーは、何十億ドルもの兵器を売ってきた。欧米にとっての上客であるサウジアラビアは、余りに貧しく、最良の時期ですら子どもの半数が栄養不足だったイエメンを、現在破壊している。ヒラリーにとって、人種差別反対、フェミニズムはまさに言葉だけの表明にすぎない。
  
 問題は、トランプ政権になってどうなるか、である。米国民の多くは、トランプの乱暴な移民排斥、反イスラム発言もあるがこれに目をつむり、彼が荒廃した米社会と生活を改善することに期待した。米国内の人種間の対立、移民排斥は、激しくなるかもしれない。移民問題、人種対立に対し、トランプは「調子のいい発言」だけで、解決策を示していない。

 トランプ政権は、国内問題への対処をどのようにするか、まず問われる。ここで成果を上げなければトランプ政権の安定はない。ただ、トランプ政権が内向きになることは、迷惑を振りまかれてきたアメリカ以外の人々にとって、米国の影響力が低下するのであるから、いいことではある。

7)トランプ新政権、第一幕

 投票日前日に掲載されたトランプ政治広告の一つは、ジョージ・ソロス、連邦準備金制度理事会議長、ジャネット・イエレンや、ゴールドマン・サックスのCEOロイド・ブランクファインは、全員“労働者階級や国民の富をはぎ取り、その金を、ごく少数の大企業や、政治組織の懐に流した経済判断の責任を負うグローバル権力構造”だと述べていた。ソロスと彼の手先は、すぐさま、とんでもないことに、広告を“反ユダヤ主義”だとして攻撃した。(Wayne MADSEN  2016年11月11日)

 トランプが、アメリカの雇用を回復し、ロシア、中国、シリアやイランと、友好的で礼儀をわきまえた関係を確立するという目標に仕える閣僚を選び、任命できるかどうかはまだわからない。

 トランプの勝利に対し、オリガーキー(ネオコン、軍産複合体、金融資本、イスラエルロビー)が一体どう対応するのか、判明していないし、トランプがどう対処するのかも明確になっていない。

 ヒラリーは敗れたが、オリガーキーが敗れたわけではない。もしトランプが、融和的になり、手を貸して、ネオコンや軍産複合体、金融資本など既成支配層を政権に採用するようになれば、米国民はまたもや失望することになろう。

 政権準備委員会においてすでに戦いは始まっている。閣僚の顔ぶれで戦いの第一幕の行方はほぼ判断されるだろう。(11月15日記)
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

アメリカから離脱するフィリピン [フィリピンの政治経済状況]

アメリカから離脱するフィリピン

1)中比の緊張、和らぐ

 10月のドゥテルテ習近平首脳会談で南シナ海問題を、二国間交渉で平和的に解決することで合意し、状況は見事に改善した。フィリピンと中国が領有権を争う南シナ海スカロボー礁(中国名:黄岩島)での両国の緊張が緩和しつつある。フィリピン漁民が操業を再開したが、中国の妨害は起きていない。

 中国外務省の華春宝・副報道局長は10月31日の記者会見で、「中比関係は全面的に改善している。このような情勢下でドゥテルテ大統領が関心を持つ問題について、中国側は中比友好に基づいて適切に処理している」と述べた。

2)どうやって、改善したか?

 ドゥテルテはどうやって中比関係を改善したか?
 ハーグ仲裁裁判所の裁定に固執せず、中国とフィリピンとの二国間交渉で(アメリカや日本の域外国を排除して)解決する姿勢で臨み、南沙諸島スカボロー礁の領有権問題を棚上げにし、他方で中比経済関係拡大を合意したからだ。
 これはまったく正しいやり方だ。南シナ海の領有権問題については、中国は常に紛争は棚上げして、共同開発を進めるという原則を提唱してきたが、ドゥテルテはこれに応じたのである。
 同時に、ドゥテルテは交渉にあたり、米比軍事同盟や米比関係の重視しない姿勢を示した。ドゥテルテが実際に、米比軍訪問協定(以下:VFA)や米比相互防衛協定(以下:EDCA)を凍結、廃棄するか、あるいはできるかは不明だが、米国との軍事同盟、米国の影響力が、南シナ海領有権問題の真の対立要因であることは間違いない。彼はそのことをよく理解している。
 VFAやEDCAの廃棄、米国の影響力の低減が実現すれば、東アジアの軍事的緊張を緩和し、さらにASEANと中国が南シナ海の非軍事化と非核化を達成するための交渉に進むことができるだろう。

3)和解を優先

 国際海洋法機関は、当事者同士の和解を最優先し、和解結果の内容が海洋法にそぐわないものであってもそれを支持することになっている。中比が交渉で合意するならば、その合意はハーグ仲裁裁判所の裁定よりも尊重されるのである。中比が合意すれば、「中国は裁定を受け入れ、埋め立てた環礁を元に戻し、南シナ海から撤退しろ」と求める日米などの主張も根拠を失う。
 そもそもハーグ仲裁裁判所の裁定は、スカボロー礁は「岩」だとし中比双方の領有を認めなかった。裁定の影の勝利者は米国であり、この地域を勝手に航行する「根拠」を強引につくった。米国政府は「航行の自由作戦」と称し、早速米海軍を航行させ、二国間問題へ強引に割り込んだ。安倍政権はこの米国戦略のお先棒を担ぎ、中国を非難し対立を煽ったのである。

4)尖閣領有権問題との対比

 改善した中比関係と、悪化したままの現在の日中関係と対比してみれば、ドゥテルテの判断と行動が、いかに画期的であるかが判明する。
 1972年、当時の田中角栄首相と周恩来首相は、尖閣諸島領有権問題を棚上げし、日中共同声明を成立させた。1978年には鄧小平と園田直外相は日中平和友好条約を締結したが、この時も尖閣問題の棚上げを再確認した。

 しかし、日本政府・外務省は2000年代になって、「尖閣諸島の領有権問題を棚上げした事実はない、尖閣は日本固有の領土である」と交渉経緯を一方的に改竄し、尖閣諸島の領有を一方的に宣言し、日中関係を悪化させた。政府外務省と日本支配層が、米国好戦派の意向に従い、中国包囲策へ計画的意図的に転換したのが事実だろう。
 日本では、東アジア共同体構想を掲げ、米中二国との友好関係を築こうとした、鳩山・小沢の政治路線はつぶされているのだ。

5)アメリカから離脱するフィリピン

 ドゥテルテは、フィリピンがアメリカの影響下からの離脱する方向に一歩踏み出した。そのことは、これまでの世界からの構造的転換でもある。
 北京での交渉の数日前、ドゥテルテは、フィリピン・マスコミに 南シナ海を巡る中国との紛争に関し、「戦争は選択肢にない、その逆は何だろう? 平和的な交渉だ」と語った。その上で、「金を持っているのは、アメリカではなく中国だ」と言い放った。下品な表現だが、ドゥテルテ特有の現実感覚を見せている。

 中国との交渉で、ドゥテルテとフィリピン企業との政府代表団は、135億ドルもの額の様々な契約に調印した。習主席は中国とフィリピンに触れ、両国のことを「敵意や対決の理由がない海を隔てた隣国」と呼んだ。

 他方で、ドゥテルテは、前任者アキノのように、ワシントンの傀儡になるつもりはないと何度も発言した。米国の影響下から離れることは、平和的な交渉を行い中国やロシアと付き合うことと一体なのだ。

 ホワイト・ハウスと欧米マスコミは、あけすけなフィリピン新大統領の発言を、「利害にさとい取引のための態度」として描こうとしたが、けっしてそれだけではなかった。ドゥテルテの交渉とその後の進展は、フィリピンがアメリカから離脱するプロセスの一環であり、より深い意味を持っていることを示唆している。

 ドゥテルテは、わずかな外遊と交渉で、フィリピンの大きな転換を成し遂げた。しかも、ドゥテルテの登場は、アメリカは世界の警察官であり続けることはできないと表明したトランプ新政権となり、国内重視の政策に転換する時期と重なったのである。ドゥテルテにとって幸運だったようだ。以前なら、クーデターでつぶされていただろう。

 ドゥテルテ大統領はアジア歴訪を行い、まず中国、そして日本を訪問した。間もなくロシアのプーチンとも会談する。中国を軍事的に包囲することを狙ったペンタゴンのアジア基軸に、彼は巨大な穴を開け始めたように見える。(11月16日記)
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

宵越しの金を持つようになったフィリピン [フィリピンの政治経済状況]

宵越しの金を持つようになったフィリピン社会?

フィリピンで貯蓄率急増

 フィリピン経済は、7%の成長を続けており、消費が引き続き好調である。それとともに、貯蓄や投資が急速に増えている。貯蓄や投資を拡大しているのは、経済成長で増えてきた都市の中間層。投資や貯蓄という新たなマネーの動きの主役となっているという。

 フィリピン株式市場へ投資する個人顧客が増え、野村證券とフィリピン最大手銀行BDOユニバンクとの合弁証券会社など多くの証券会社がビジネスを始めた。オンライン証券口座は急速に増えており、多くは18歳~44歳の比較的若い層だそうである。18歳~44歳の年齢層は、比較的収入が安定しており、金融機関も主要顧客として狙いを定めているらしい。
 これに加え海外で働く労働者からの送金も増えており、貯蓄率の向上につながっている。

 ただし、海外で働く労働者数は、1000万人を超えてから、その増加ペースは明らかに落ちてきた。頭打ちだ。国内での中間層が増えれば、わざわざ海外で働く必要も小さくなっていく。

 そのことは、これまで手元にある金はすぐに使いきってしまうのがフィリピン人と社会の一つの傾向であったが、「宵越しの金」を持つようになった中間層が生まれつつあるらしいのだ。

 もっとも、フィリピン社会の貧困層は3割、すなわち約3,000万人に及び、この人たちには縁のない話。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

映画「二つの判決」を観る [映画・演劇の感想]

映画「二つの判決」を観る

 今年の1月、中野ポレポレ座で、「二つの判決」を見た。
 袴田巌「名張毒ぶどう酒事件」死刑囚・奥西勝の二人の冤罪を描いている。

  
 袴田巌は、死刑囚ながら、釈放されているので、その日常を映してはいるが、長年にわたる拘禁による障害が残っている。長期にわたる拘禁による心身への傷害や妄想もある、最初の半年は、外へ出ようせず、家の中だけを歩き回っていたという。今もなお家の中を歩き回っている。獄中で、歩きまわり体の好調を維持してきた習慣を、そのまま繰り返している。
 したがって、自身で、冤罪を告発することができない。被害者の声を拾おうにも、拾うことができない。姿を映しても、冤罪の全貌を描き出すことはできない。そのため、支援する家族の姿を映すことになる。

 最近、外での生活に少し慣れ、姉・秀子と一緒なら、外出できるようになったという。ボクシングの試合を見に出かけた。ボクシング協会は袴田を支援し、協会として無実を訴えている。試合前にリング上に招待され、客に手を振る袴田の表情は晴れやかだ。
 将棋はよく覚えているらしい。映画監督と指すそうで、袴田が74戦全勝だという。将棋に勝った時の袴田のうれしそうな表情が印象に残る。普段は無表情なのだ。
 自分の好きなことには、興味を示すようになった。その意味では、ゆっくりであるが、回復しつつある。79歳(?)の年齢から回復はゆっくりに見える。

 徐々に回復を見せていることは感動的だけれども、一人では生きていけない状態であり、自立した社会生活を送ることができるできるまで回復するかどうかは疑問だ。年齢も高い。彼が失った人生の貴重な時間はもはや取り戻すことはできない。

 なんと残酷なことをしたことか。

 警察・検察がいったん捜査方針を決めたら、これを覆さない。そのような態度がつくりだした冤罪である。その責任は大きい。

 姉の秀子さんは、袴田巌が出てきた時に生活に困らないように、貯蓄し9,000万円のローンを組んで4階建てマンションを一棟購入した。3階は袴田姉弟が住んでいるが、そのほかの部屋は、貸に出しており、その家賃収入で暮らしているようである。このような家族の支えがあって、袴田巌は出てきても働かなくても生活には困らない状況がつくりだされている。そのためにどれほどの犠牲や負担があったことか。
 袴田は、無罪になっていないので、国民健康保険もなければ、年金もない。そのうえ、拘禁による症状は続いている。警察・検察の犯罪であるが、何の責任も取らない。

 「名張毒ぶどう酒事件」。
 映画は、ぶどう酒瓶の王冠を新証拠として紹介している。当時は奥西は王冠を歯で開けたそうで、歯形が残っているという。毒ぶどう酒事件は、村の公民館?での会合で起きた。公民館の囲炉裏のようなところから、ぶどう酒の王冠はいくつもは発見されている。弁護側が示した新証拠は、王冠に残った歯形は奥西の歯形と一致しない、そう指摘している。
 袴田巌の姿は映像で見ることができるが、奥西勝は獄中(八王子医療刑務所)に拘束されており、その姿を映すことができない。しかも2015年10月だったと思うが、すでに亡くなったので、映像で残すことができない。これも残酷ではないか。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

さまよう民意 [世界の動き]

さまよう民意

 米大統領選は、不動産王トランプネオコン・イスラエルと親しいクリントンの一騎打ちとなり、大金を懸けた醜い中傷合戦の終盤戦に突入している。
 これまでの候補者選びで浮き彫りになったのは、アメリカの中低所得者層のため込んだ怒りの大きさだった。新自由主義のもと、超大国アメリカの内部で経済格差が拡大し、さらにこれを是正しない政治への憤りが広がっている。この「憤り」は、解決の処方箋を見いだせていない。
 
 2014年のアメリカ連邦議会選では、人口の0.01%、32,000人の献金額が12億ドルに達し、献金全体の3割を占めた。「金持ちが政治を支配する」構図ができあがった。これが資本主義における代議制民主主義の一つの帰結なのだろうか。

 あまり笑ってもいられない。
 日本でも同じ問題を抱える。低中所得者層は経済的な不満を内にためながら、社会的にはより孤立し、内向きな志向を強めつつある。その裏面として、マスメディアを使った舛添都知事の「せこさ」を笑うつくられた「劇場型政治」のようなものが、題材を変えては何度も繰り返される。一時的に鬱憤をはらして終わる。格差は拡大するばかりで何も解決しない。(9月2日記)
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

ドゥテルテ政権、アメリカとぎくしゃく? [フィリピンの政治経済状況]

ドゥテルテ政権、アメリカとぎくしゃく?
ーアメリカの影響力低下ー

1) ダバオのテロ事件

ドゥテルテ2.png
<ドゥテルテ大統領>

 フィリピン第三の都市ダバオ中心部で9月2日夜、爆弾が爆発し14人が死亡、67人が負傷する事件が起きた。3日、アブ・サヤフが犯行声明を出した.。ドゥテルテ大統領はフィリピン全土に「無法状態宣言」を出して、犯人の逮捕、同種事件の再発防止、アブ・サヤフの壊滅に徹底的に乗り出す方針を表明した。

 6月30日の大統領就任演説で示した「過去は過去として忘れよう」というドゥテルテの新方針に基づき、7月25日には「我々は平和を求めている」と施政方針演説をおこない、反政府各組織に停戦を呼びかけ和平交渉の開始を求めた。

 この背景には、経済発展するフィリピンにとって、マニラ周辺だけではすでに限界であり、ミンダナオを含めた地方の発展が必要であるとという、ドゥテルテの判断がある。そのためには国内治安問題やテロ問題を「過去を水に流してとにかく和平にこぎつけ」る方針なのである。それは国民の多くが望むとともに、フィリピンの資本家層の要求でもある。他方で、ドゥテルテ政治の「最大の課題」である「麻薬問題解決」をテーマに、劇場型政治ショウを行い、支持率を高めるために全力投球したいとの考えがあった。

 紆余曲折があったものの新人民軍は和平交渉に応じる姿勢を示し、ノルウェーのオスロで5年ぶりに再開した交渉の末、8月26日には「無期限停戦を盛り込んだ共同声明」の発表にまで漕ぎつけた。

 これに対しアブサヤフは一向に停戦の呼びかけに応じる気配をみせず、8月26日にはミンダナオ地方のスルー州パティクルで国軍と大規模な交戦が勃発、アブ・サヤフの戦闘員19人が殺害される事態となった。アブ・サヤフは依然として外国人を含む10人以上の人質を拉致しており、前任のベニグノ・アキノ政権下では米軍と共同で掃討作戦を実施したこともある。

2)テロ事件の意味

 誤解してはならないのは、アブ・サヤフは、イスラム、およびイスラム教とは何の関係もない。アブ・サヤフ自身は、ISと関係があると自称しているが、実際にはアルカイーダやIS同様、アメリカの好戦派やCIAに育成され、雇われたテログループであり、今回のテロ事件もアメリカ政府内の好戦派の指示によるものだろうと推測される。ドゥテルテもアメリカの「意図」に気づいているだろう。これまで何度も、テロ事件を起こしてはアメリカ軍が介入してきた。彼はそのやり口をずっとダバオにいて見てきたのである。

 ドゥテルテ新政権が発足してすぐに、しかもドゥテルテがダバオに滞在しているその時を狙ってテロ事件を起こせば、新政権は何らかの対応をしなければならない。しかし、テログループを逮捕し壊滅させるのは容易ではない。したがって、テロ事件は掃討作戦実施を名目に、米軍がミンダナオに進駐する政治的理由をつくったのであり、新政権にアメリカ政府から共同掃討作戦の打診があったはずなのだ。ドゥテルテをアメリカ政府の影響下に引き込むための見え見えの策である。

 しかし、アメリカ政府の「もくろみ」は、なかなか思い通りには進んでいない。ドゥテルテに対し、影響力を行使できていない。

3)ドゥテルテによるオバマ侮蔑発言

 ドゥテルテ政権は、麻薬の密売人は即、殺しても構わないとする強引な麻薬撲滅作戦を実行して
おり、大統領就任から6月30日までに、警察によって殺害された麻薬の密売人は2,000名を超える。法律によって裁かない超法規的殺人であり、明白な人権侵害である。すでに国連やアムネスティなどから批判を受けていた。ドゥテルテ政権の無法な殺人は許されることではない。

 この件で、東アジア首脳会議(EAS)首脳会談において、オバマ大統領から批判されると察知したドゥテルテ大統領が、事前の記者会見での記者の質問に、オバマ大統領をさして「くそったれ(son of a bitch)の意見は聞かない」と発言したという。そのことで、今回の米比会談がキャンセルとなった。もちろん翌日には、フィリピン政府はオバマ大統領個人を侮蔑したのであれば後悔すると声明し、米比会談は後日開かれることになった。

 麻薬撲滅をテーマとしたドゥテルテ政権の「劇場型政治」は、今のところ国民から高く支持されており、この高支持率がドゥテルテの政治的基盤であるので、自身の政治スタイルへの批判に、我慢がならなかったのだろう。

4)ドゥテルテの発言内容

 いくつかの報道をみたが、ほとんどは「オバマ大統領へ侮蔑発言を行った」と書くだけで、発言内容を伝るものは少なかった。マスメディアのこのような姿勢は、情報操作にほかならない。探した限りでは読売新聞9月7日、ハンチングトン・ポストが発言内容の一部を伝えていた。

<ドゥテルテ大統領の発言要旨>(9月5日、ダバオでの記者会見で)

 「フィリピンは属国ではない。私はフィリピン国民だけに答えるが、彼(オバマ大統領)は、何様だ。我々が植民地だったのは遠い昔だ。私の主人はフィリピン国民だけだ。敬意がしめされなければならない。質問や声明を投げかけるだけではいけない。米国はフィリピンで多くの悪事を働いてきたが、今まで謝罪したことがない。米国は我が国を侵略し、我々を支配下に置いた。裁判なしに人を殺してきたひどい記録が皆にあるのに、なぜ犯罪と戦うことを問題視するのか。」(読売新聞、9月7日
 「私は独立国家フィリピンの大統領だ。植民地としての歴史はとっくに終わっている。フィリピン国民以外の誰からも支配を受けない。一人の例外もなくだ。私に対して敬意を払うべきだ。簡単に質問を投げかけるな。このプータン・イナ・モ(くそったれ)が。もし奴が話を持ち出したら会議でののしってやる」(The Huffington Post、9月6日)

 発言内容を見れば、「プータン・イナ・モ(くそったれ)」以外は、それほど問題ではない。むしろ、独立国家フィリピン大統領を、支配しようとするな!植民地のように扱うな!と言っており、長年にわたるアメリカによるフィリピン社会の支配に対する反発、怒りが直截に表現されている。

4)ドゥテルテ政権の外交方針、ぎくしゃくする米比関係

 前のアキノ政権は親米でアメリカ政府の言いなりだったが、ドゥテルテ大統領は米国一辺倒だった政治外交経済関係を改め、中国と関係改善し、さらなる経済発展のため中国資本の投資を呼び込みたいと、当選前に公言していた。これまでの外交方針をあらため、中国とアメリカを天秤にかけると表明したに他ならない。そして現在までのところ、確かに天秤にかけている。 

 アメリカ・オバマ政権からするならば、アキノ政権を使って南シナ海問題で国際仲裁裁判所に訴えさせ、中国へ圧力をかけるキャンペーンを行ってきたわけで、侮蔑発言をしたからと言ってドゥテルテ政権と関係を断てば、米比間の協力関係に悪影響が及びそうだし、それ以上にフィリピン政府を中国側に追いやってしまいかねない。

 ドゥテルテ大統領が、「アメリカからの投資はあまり見込めない。これからは中国だ」と公言したり、麻薬撲滅作戦での超法規的殺人へのオバマ大統領による批判に噛みつく、こういう事態が起きている。

 このようなことは、これまでなかったし、想像さえできなかった。明らかにアメリカの影響力、支配力が弱まっている。「アメリカ人はけっして好かれてはいなかった、力を持っているし金を持ってくるから、ニコニコ歓迎していたが、そうでなくなれば用はない」というわけだ。

 ドゥテルテ大統領の「反米感情」が、どこに政治的基盤を持つのか不明なところがあるし、それゆえどれほど確固としたものか、測りかねるところもある。支持できないところもある。ただ、そこに東アジアの政治経済秩序の新しい変化が現れているのも確かなようだ。(9月8日記、文責:林 信治)
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

小野田帰還、日本政府は何を恐れたか! [フィリピン元「慰安婦」]

「42年目の真実」が暴き出した真実

残留日本兵 小野田寛郎 ―7月26日 NHK放送―

 7月26日NHKは「42年目の真実」と題して、敗戦後29年間、フィリピン・ルパング島に潜伏し続けた小野田寛郎元少尉が発見され帰国した際の、日本政府とフィリピン政府間の外交交渉文書が情報公開され、当時の極秘の交渉内容が明らかになったと、放送した。

ルパンぐ島に30年潜伏.jpg
<1974年フィリピン・ルパング島で、投降する小野田元少尉>

 この放送を見て、まずあきれた、「被害事実と法的責任は認めない、決して賠償しない、見舞金を支払って済ませる」、「被害者は相手にしないで、政府とだけ交渉する」という小野田帰還に際し日本政府がとった態度に対して。

 これは、日本政府外務省の戦後一貫した態度であり、慰安婦問題での2015年末の「日韓合意」の内容とまったくそっくりなのである。
 そしてNHKが、日本政府のこの立場・主張を、無批判にただ報道したことに、再びあきれた。
 放送は下記の内容を紹介していた。

1)埋もれていた極秘の外交文書

 日本とフィリピンの戦後史を研究している広島市立大学の永井均教授が、残留日本兵小野田元少尉の帰国に関する日本政府の極秘文書670枚を情報公開請求で初めて入手したという。元少尉の帰国を巡り、日本とフィリピン政府との間で極秘の交渉が行われていた。

 公開された文書には、
「小野田氏ら元日本兵により30人が殺され、100人が傷つけられた」
「何らかの手を打たなければ、フィリピン側の世論も納得しない」

 と記されており、「戦争の終結を知らない」残留日本兵らが、地元の住民に深刻な被害を与えていたことが公文書で初めて確認された、という。

 小野田寛郎ら残留日本兵は、敗戦後、29年間継続した戦闘行為によって、30人以上を殺したが、実際に殺傷したのは武器を持たない現地住民が大半だった。そればかりか、住民の畑から作物を盗み、大切な財産である農耕牛(小野田の主張では野生牛)を捕獲し食料にしている。戦争終結後の行為は、フィリピン法に照らして犯罪である。否定しているものの、小野田は敗戦・戦争の終結を知っていたと推測される。(小野田が戦争終結を知らなかったと強弁したのは、敗戦後の30人以上の住民殺害、100人もの傷害が、強盗、殺人、傷害であると自覚したうえで実行したことになるからである。)

2)賠償ではなく「見舞い金」3億円

 交渉の中で、フィリピン政府による被害への補償有無の打診に対し日本政府は1956年の日比賠償権協定で解決済みとの立場を崩さなかった。現地では殺され傷つけられた被害者や遺族も現存していたし、敗戦後の小野田らによる殺人・傷害・窃盗がフィリピン法によって裁かれる可能性もあった。日本政府が最も気にしたのは、フィリピン政府や住民から被害を訴えられ賠償請求されることだった。戦時賠償を恐れたし、そこにしか関心はなかった。

 外交文書は、そのような「真実」を明らかにしたにもかかわらず、NHKはまったく能天気に、日本政府・外務省の主張をそのまま報道したのである。

 結局、「賠償ではない見舞金」をフィリピン政府に支払い、小野田の住民殺人・傷害に対しては当時のマルコス大統領から恩赦を取り付けた。このとき日本政府は、見舞金としながらも、ルパング島の被害住民・遺族を交渉相手にしないで、フィリピン政府、当時のマルコス政権とだけ交渉し、政府に金を支払って住民を黙らせることにした。

 「被害者らは、損害賠償請求権を行使するおそれがある。見舞金は、請求権行使を思い止まらせる効果をもつであろう」。このように交渉記録には、見舞金支出の日本政府の目的が赤裸々に記されている。

 「損害賠償請求権を行使させないために見舞金を支払う」のである。日本政府にとっては、被害者に謝罪するとか、賠償することが重要なのではない。法的責任を認めない、賠償しないことが何よりも重要なのだ。「見舞い金を拠出」し、「フィリピン政府への感謝を表明」しながらも、被害を謝罪し賠償することは決してしない方針を、小野田帰還の際にも貫いたことが確認された。「加害責任は認めない、賠償も果たさない」、その上での「見舞、お詫び、感謝」である。日本政府にとってはそれが「未来志向」であり、「日本側の誠意」の示し方であった。(当時、交渉に携わり、後に外務事務次官を務めた竹内行夫氏が、穏やかなでありながら本当のところ「非情な」卑劣な、そのような言葉でインタビューに答えている。)

 見舞金を管理・運営するのはフィリピン政府から委託された日比友好協会であり、見舞金の管理運営に日本政府は関与しないし、責任を負わない、そのようにも決めている。

 2015年12月の「日韓合意」に際しても、日本政府は「未来志向」という言葉を繰り返した。「加害責任は認めない、賠償も果たさない」、その上での「見舞、お詫び、癒し」である。侵略し加害の過去を消し去ることが、日本政府にとって一貫した「未来志向」の意味なのである。


訃報 小野田寛郎 91歳.jpg
<投降時の衣服・靴の一部>

3)3億円の使途は?

 比日友好協会は3億円を何に使ったのか?
 元日比友好協会関係者は、日本語学校の運営や、日本への留学生の支援に充てたと語った。一方、NHKの取材に対し、ルパング島の被害者遺族は、「見舞金を受け取っていいないどころか、見舞金の存在さえ知らなかった」と語り、ルバング島元町長は、「3億円が住民や島のために使われた事実はない」と答えた。

 小野田帰還に対する日比交渉の結果、結局、被害者や遺族は、日本政府から公式謝罪されることもなければ、賠償されもしなかったのである。

 これは、誰が悪いのか? 何が問題なのか?
 3億円を勝手に使った日比友好協会が悪いのであって、日本政府に責任はないことになるのか?

投降命令を受ける小野田さん1974.jpg
<1974年、フィリピン、ルパング島、元上官から投降命令を受ける小野田寛郎元陸軍少尉>

4)1956年の日比賠償権協定で解決済?

 日本政府・外務省は戦時賠償については、各国との賠償権協定で解決済との立場をとり続けている。各国との請求権協定で「完全かつ最終的に解決された」と定めていることを根拠に、すでに法的責任はなく、賠償責任もない、だから新たに、あるいは追加して賠償することは禁止されており、それゆえ見舞金としてしか拠出できないという立場をとっている。個人賠償請求権問題も法的に解決済みであるとし、法的には被害者個人に賠償することが禁じられているかのように主張するのである。

 このような日本政府の理解と主張は、きわめて身勝手なものであり、国際基準から外れている。慰安婦問題では国連の人権委員会は日本政府に対し、被害事実を認め、法的責任を認め、政府が公式謝罪し、賠償することを、永年にわたって勧告し続けている。

 2016年6月には、日中戦争時に強制連行され過酷な労働を強いられた中国人被害者や遺族が三菱マテリアル(旧三菱鉱業)に対して損害賠償と謝罪を中国で求めていた問題で、同社は、生存する被害者(三菱側によると3,765人)に直接謝罪し、賠償する和解文書に調印した。謝罪も賠償も拒否してきた日本政府の主張には従わないで、民間レベルでの歴史問題の解決方法を示した。

5)個人賠償請求権は消滅していない!

 日本政府の立場、主張は、日本の司法の判断とも食い違っている。

 中国人の戦時中の強制連行を巡る訴訟が、日本の裁判所に多く起こされたが、原告側の敗訴が相次いで確定している。日本の最高裁は2007年4月、「1972年の日中共同声明で個人の請求権も放棄された」との判断を示したが、一方、最高裁は関係者に被害者救済も促しており、この点では日本政府・外務省の主張とは、食い違っている。
 
 また、2007年、中国人「慰安婦」訴訟において、日本の最高裁は、サンフランシスコ平和条約第14条(b)及び日中共同声明第5項における「請求権を放棄する」の意味について、被害者の個人賠償請求権を「実体的に消滅させる」ことではなく、「裁判上訴求する権能」を失わせるにとどまると解するのが相当であると判示した。この最高裁の論理に照らしても、個人賠償請求権は、「裁判上訴求する権能」を失ったものの、「実体的に消滅」していないのであるから、日本政府が賠償するつもりがあればできるのであって、決して禁止されているわけではない。

 日本政府・安倍政権は、アジア太平洋戦争における法的責任は認めない、賠償も決して認めない、認めたくないという歴史修正主義の政治路線、イデオロギーに憑りつかれているというのがより適切かもしれない。

 そしてNHKは、この日本政府の主張・立場を、まったく無批判に報道した。国営放送、外務省の宣伝機関の役目を果たした例を、この夜も確認したのだ。(8月22日記、文責:児玉 繁信)
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

?? 「9条は日本人がつくった」?? [現代日本の世相]

9条は日本人がつくった? 
だから押しつけ憲法ではない??

1)半藤一利「憲法9条は日本人がつくった」?

 半藤一利氏は2013年6月、「憲法9条は幣原喜重郎がマッカーサーに提案した」ことをもって、マッカーサーではなく日本人がつくったと指摘し、「押しつけ憲法だから改憲だ」という自民党の主張に反論している。半藤氏は『文藝春秋』編集長を務めた文芸評論家であるが、その戦争体験から、安倍政権の改憲の動きに反対している。
 護憲グループのなかには、この半藤氏の論拠、「押しつけではない、日本人がつくった」を利用しようとする人もいる。
 半藤によればその根拠は、マッカーサーは、「幣原が提案した」と語っており、幣原は、「自分がつくった」と語っていないものの、否定はしていないからだとしている。そして、幣原が9条を持ち出した背景は、1928年のパリ不戦条約の精神であろうという半藤の解釈を披歴している。不戦条約は、第一条において、国際紛争解決のための戦争の否定と国家の政策の手段としての戦争の放棄を宣言しており、調印に関わった幣原は、同条項の影響を強く受けていた、敗戦に際し「この精神を取り戻す」べきだと考えた幣原の提案に、マッカーサー氏は感動し、同意したという歴史解釈を披歴している。

2)「報道ステーション」で幣原説を報道

 テレビ朝日「報道ステーション」が2016年2月と5月の2回にわたって、憲法9条の発案者は当時の首相幣原喜重郎であるという説を取り上げ、半藤一利氏と同様に、「日本国憲法は日本人がつくった、押しつけ憲法ではない」と主張し、注目を集めた。
 根拠として、1957年に岸信介首相(当時)が作った憲法調査会の録音データの中に、幣原発案説を裏付ける証言があったと指摘した。第9条の発案者は?という質問に対して幣原自身が、「それは私であります。私がマッカーサー元帥に申上げ、第9条という条文になったんだ」と語っているという。
 さらに5月3日の放送では、幣原の盟友・大平駒槌が幣原から直接聞いた話を記録したノートでも、幣原がマッカーサーに提案したと書かれているという。

幣原喜重郎02.jpg
<幣原喜重郎>

3)幣原説は正しいか? 

 マッカーサーは、「幣原が提案した」と語っているが、マッカーサーの回顧録は後の時代から自身を正当化する発言や記述が指摘されており、「マッカーサーが語った」ことをそのまま根拠にすることはできない。マッカーサーは、憲法草案が発表された当時、占領軍が草案を起草した事実を、極東委員会に対しても、日本国民に対しても、隠さなければならない立場にあった。
 幣原は、個人として行動したのではない。1945年10月には首相となり、天皇の側近としてマッカーサーと交渉したのであって、幣原個人の考え(=9条)をマッカーサーに伝える立場になかったし、その権限も持っていなかった。幣原はこのとき、天皇への戦犯追及を絶対に阻止し、何としても天皇制を存続させようと交渉したし、そのためには東条と軍部のせいにして責任追及を乗りきろうとした。これは、天皇と幣原を含む側近グループの公式の政治的立場でもあった。このような歴史を忘れてはならない。憲法9条、すなわち旧日本軍の武装解除とこの先の戦争放棄、戦力の不保持は、1945年敗戦直後において天皇制存続のための条件であり、裕仁は天皇制維持のためこの条件を受け入れたのである。

 幣原が、パリ不戦条約の精神に感化されたとする半藤の解釈は、現実の政治を離れた牧歌的な歴史解釈である。
 しかも「憲法9条は日本人がつくった」と勝手に言い換えている。「日本人」ではない。マッカーサーと交渉したのは、東条のせいにして、天皇への戦犯追究を回避し天皇制を存続させようとした天皇と側近グループであると、正確に規定しなければならない。日本人とあいまいに書いてはならない。幣原にとって9条は目的ではなく、天皇制存続のための条件なのだ。それを取り違えてはならない。

 当時の内外の政治状況からすれば、憲法草案を、マッカーサー占領軍が起草したとするのは都合が悪い。日本側、すなわち当時マッカーサーと会見した数少ない日本人である幣原が提案したことにする必要があった。
 半藤の新しい解釈は、敗戦直後の、世界的な情勢の考察が欠けている。

4)敗戦直後、裕仁と天皇周辺のパワーエリートたちは、どのように振る舞ったか?

 敗戦直後、天皇周辺の権力者たちにとって、天皇への戦犯追及を避け、天皇制を維持することこそ、最重要な課題であった。それは裕仁本人の意思でもあった。東京大空襲などの日本人の戦災死、被害、原爆による民間人の大量死、被害などは、深刻だけれども、天皇と権力者は、戦争であれば避けることはできない犠牲であると考えており、それよりも重要なことは「国体護持=天皇制の存続」であった。ポツダム宣言を受け入れ降伏する際にも、敗戦直後においても、変わらなかった。

 そのために敗戦直後、天皇周辺がとった対応は、東条英機、軍にすべての責任を負わせて、天皇の戦犯追及から逃げおおせ、国体護持=天皇制の維持を目指した。裕仁は退位さえも拒否した。敗戦の1945年、裕仁と側近たちは、そのように対処することにしたし、実際に対処した。幣原はその政治的目的の中で動いている。(幣原説を唱える人は、幣原の個人的考えを実行したかのように描き出している、歴史家として失格である。)

 裕仁と天皇周辺の権力者たちは、敗戦から1945年末までに、マッカーサーと交渉し、天皇の戦犯追及をしないこと、天皇制維持の確約を得た。その結果が、日本国憲法でもあるのだ。天皇裕仁は、日本国憲法を受け入れ(=天皇制維持を約束されたも同然)、その際にマッカーサーに感謝を表明している。

 したがって、裕仁は「押しつけ憲法」などと現憲法を批判したことは一度もない。感謝して受け入れたのが歴史的事実である。そのことをまずきちんと確認してしておかなくてはならない。安倍晋三や自民党・日本会議の政治家たちは、現憲法を「押しつけ憲法」と非難しているが、天皇裕仁の意に反しているのである。

 日本国憲法をよく見なければならない。憲法9条はその前の1条から8条、すなわち天皇制維持と一体である。天皇制を象徴天皇制として維持したうえで、9条、すなわち戦争放棄と戦力不保持が述べられている。旧日本軍に責任を負わせて、日本軍は武装解除し、戦争放棄する。裕仁は責任を負わないで天皇制は維持する。武装解除した後、天皇制を共産主義の脅威から護るのは米軍と米政府ということになる、少なくとも裕仁はそのように認識した。そのためには米軍は日本にいてもらわなければならない。のちに裕仁は沖縄を米軍に差し出すのである。

 憲法9条を提起したのは幣原ではない。幣原には、平和主義や国民主権の思想はない。あったとしても、天皇を戦犯追及から守るため東条と軍び責任を負わせて武装解除させ、天皇制維持のための「方便」の一つである。そのためにマッカーサーとの間で打ち合わせた芝居であった。それ以上に評価してはならない。

20140909-OYT1I50004-L.jpg
<マッカーサーと天皇裕仁、1945年9月27日 第一回会談>

5)マッカーサーとアメリカ政府は?

 マッカーサーとアメリカ政府にとって、重要だったのは、米国のイニシアティブで日本を占領支配し、アメリカの同盟国にすることだった。そこにソ連の影響を排除しなければならなかった。敗戦直後の世界情勢がそこに反映している。すでに対ソ戦は始まっていた。
 マッカーサーはあくまで「連合軍司令官」であり、形の上では極東委員会が日本の軍国主義・ファシズムを払拭し再出発させる責任を負っていた。極東委員会は、日本が二度と戦争を引き起こさないように、軍国主義、ファシズムの根源である軍の解体、天皇制・財閥の解体、地主制度の廃止・農地解放、日本社会の民主化、国民主権の国家として再出発することを要求していた。

 しかし、マッカーサーにとっては何よりも、ソ連やオーストラリアなど極東委員会が日本占領の方針・方向を決める前に、アメリカによる日本の再生、支配、占領の実績をつくってしまおうとした。極東委員会にイニシアティブをとらせないために、直前に急いで日本国憲法を制定させて、日本はすでに自力で民主化に踏み出した実績をつくり、極東委員会に「介入」させないようにした。その結果、米軍による日本の単独占領支配を実現し、そのことで後に日本をアメリカの同盟国にしたのである。アメリカ政府からするならば、これはマッカーサーの第一の「功績」である。

 マッカーサーは、軍に責任を負わせて解体しながら、日本の支配層と官僚、警察、司法などの支配機構をそのまま利用することにした。従来の支配機構を利用するには、その頂点たる天皇と天皇制を利用すべきと判断した。マッカーサーは実際にその通りに実行した。そして、日本国憲法はマッカーサーの構想とも矛盾していないのである。

 日本を朝鮮、台湾の背後に位置する対ソの根拠地にする、その占領支配をつくりあげていくうえで、既存の権力=天皇を利用することはマッカーサーにとってきわめて「合理的」であった。占領軍=米軍、米国への反発は、天皇の権威を利用し抑えることができた。占領軍の戦力さえ当初の予定より大幅に削減できた。

 マッカーサーにとって憲法9条は、日本軍を武装解除し、米軍が軍事支配するのだから、何ら問題はなかった。決してマッカーサーの「平和主義」「理想主義」を表現しているわけではない。

※「マッカーサーは9条を含む憲法をつくるとき、理想主義者になった。そのあと、普通の「常識」に戻った」。(ダグラス・ラミス『経済成長がなければ私たちは豊かになれないのだろうか』)。このように書いている人もいる。これもまた、牧歌的な,能天気な解釈だろう。
 マッカーシズムのあとに育ったアメリカ知識人に典型的に観察される歴史認識を欠いた解釈である。


6)日本国民にとっては? 


 日本国民は、日本国憲法を制定する過程でほとんど関与していない。そのイニシアティブをとってはいない。

 しかし、日本国憲法、憲法9条が公表された時、これを熱烈に歓迎し受け入れた。それはマッカーサーや天皇裕仁の意図を超えて、熱烈に歓迎し支持した。戦争の時代を過ごし、家族の誰かが戦死し、また空襲や原爆で多くの人々が死傷した。戦争中の窮乏生活は我慢がならなかった。そのような日本国民は、国民主権、平和主義の憲法を熱烈に歓迎し支持したのである。そのあとも日本国民の平和志向や平和運動は9条を護り続け、平和運動は護憲運動と一体化した。9条は、マッカーサー・米国政府や天皇の意図を超えて、日本国民に支持され、平和を希求し戦争被害・原爆被害を告発してきた歴史をつくり上げてきたし、憲法擁護運動は、戦後日本社会をつくりあげてきたのである。そのつくりあげられてきた戦後の歴史のなかに、私たちは生まれている。その現実を無視するわけにはいかない。

 ただ、9条を擁護する日本国民や平和運動は、9条と一体であった1~8条、すなわち天皇制条項への批判を、まったく不十分にしかしてこなかった。

 日本国憲法はそもそもその出発から、当時の歴史的な背景に規定された矛盾を抱えているのである。憲法の基調は、平和主義、国民主権、基本的人権の尊重であるが、平和主義や国民主権とは反対物である天皇によって象徴されている。天皇と天皇制は、天皇主権=独裁=民主主義の反対物であり、また戦争、特に明治以降の侵略戦争と結びついた「平和の反対物」である。そのようなもので新憲法を象徴する合理的な論理は存在しない。

 戦後日本社会では、この矛盾を批判すること、あるいは言及することさえも、多くの場合、避けてきた。憲法擁護の平和運動内でもほとんど触れてこなかった。マスメディアは絶対に触れない。天皇制批判にたいして、NHKは絶対にやらない。真実を明らかにする意志が欠けている、歴史認識の中で天皇制要因を、勝手に削除して報道するのが日本のジャーナリズムとなっている。

 国民の多くも触れない。平和運動団体の多くも触れない。明白に日本の平和運動の欠陥であるが、誰もそのことに触れようとしないで、「9条を守ろう」と、こう主張してきた。1~8条と、9条とを切り離して強調したり、主張しても何も問題ないという判断がそこに見える。もちろん、決して切り離すことはできない。

 日本国憲法、9条は、決して天から与えられたものではない。第二次世界大戦の結果、ファシズム、日本の軍国主義が敗北し、平和を希求する世界中の人たちの犠牲と戦いがあって、もたらされた。しかし、戦争で多大な犠牲を強いられたもののファシズムや軍国主義と戦わなかった日本国民の多くにとっては、日本国憲法、9条はまるで天から授かったもののように思えたし、未だに思っている。

 裕仁は新憲法制定に際し、マッカーサーに感謝を表明している。天皇制を存続させてくれたからだ。裕仁が感謝して受け入れたことから、憲法は押しつけ憲法ではないと言えよう。しかしそのことは、「押しつけかどうか」が本質的な問題ではないことも同時には示している。

 また、日本国民は、憲法起草の段階ではとんど関与していないが、草案が公表された時、日本国民はこれを熱烈に支持した。国民が支持し受け入れた時点で、押しつけ憲法ではないし、押しつけは問題にならない。それで十分なのだ。「押しつけ憲法ではない」と主張するために、そもそも幣原説は不要なのだ。

 憲法9条を擁護するためなら、どのような理論も解釈も利用すべきという御都合主義、プラグマティズムは感心しない。「幣原が9条を提案した」という説が、自民党や右翼の「押しつけ憲法」だから改憲という主張への反論になると考えるのは、あまりにも政治的に幼いであろう。

 半藤氏や「幣原説」を唱える人たちが、改憲に反対していることは尊重し敬意を表するが、御都合主義の歴史解釈や説明には賛成できない。

 日本国民ではなく、幣原喜重郎(=天皇の側近であり天皇の政治的意思を実行した敗戦直後のパワーエリート)が、自分が提案したと書き残したから、「押しつけ憲法ではない」と言えるのではないのだ。そのことをよく弁えておかなければならない。

 私たちは憲法を擁護する、憲法の基調が、平和主義であり、国民主権であり、基本的人権の尊重しているからである。(文責:児玉繁信)

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース
前の30件 | -

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。