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安倍首相とその周りは、こんな人たち [現代日本の世相]

安倍首相とその周りは、こんな人たち

 安倍政権が支配する現在の政府、官僚機構では、腐敗した政治家や官僚と手を組んだ一部の人間が国民の財産を不正、あるいは不公正な手段で手に入れて巨万の富を築いている。この「腐敗」の進行具合が相当ひどくなっている。国有地が格安の値段で学校法人に売却されても不思議ではない。

森友学園が買った用地は、近畿財務局から依頼された不動産鑑定士が更地価格を9億5600万円と算出。財務局は地下の廃材、生活ごみの撤去・処理費8億1900万円と撤去で事業が長期化する損失を差し引いた1億3400万円で、2016年6月に公共随意契約で森友学園へ売った。さらに国は除染費として森友学園に1億3200万円を支払い、結局実質200万円で売却した。9億5600億円相当の国有財産が実質ゼロ円で売却されるということは、通常ありえない。異常な政治的力が働いたとしか考えられない。
 では誰が影響を与えたか? 
 森友学園と緊密な関係がある安倍夫妻以外にない。
・安倍昭恵夫人が名誉校長、(事件発覚後の2017年2月24日に名誉校長を辞任)
・森友学園校が、安倍晋三記念学校になることについては、安倍昭恵夫人から、首相退任後の命名はOKと伝達。(昭恵夫人が講演で言及)
・安倍首相から小学校設立用に100万円寄付
・国有財産管理の責任者は理財局長。当時の理財局長は安倍首相と同郷の迫田理財局長。安倍政権になってからの抜擢。(以上、3月25日現在の情報)

 安倍政権になり、官庁の審議官以上の人事は内閣府が管理するようにしており、全官庁において安倍首相の意向を実施する人事体制ができあがっている。安倍首相とその周辺の意向を、事前に「忖度」して行動する官僚の態勢がすでにできている。今回は迫田理財局長がキーマンであろう。森友学園の事件から見えたのは、安倍政権の恐ろしい姿、腐敗ぶりだ。
 マスコミの報道は、森友学園の籠池理事長がいかにひどい人物であるかに集中している。そうではない。日本の全官庁が、その政策決定が法やルールを曲げ、単に安倍首相と周辺の意向で決定されているということ、腐敗に止めどがないこと、それこそが重要で、かつ危機的な問題だ。
 国を愛する気持ちを持っているのであれば、国有地を格安ではなく、標準価格よりも高い価格で買い国に貢献するとなるはずだが、国民には愛国心を説教するこの人たちは、愛国心を説教する自分たちだけ特別な存在であり、国から、国民の財産を略奪してもいい、と考える。(3月25日記)
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新たな民主主義を打ち立てた韓国民衆運動 [元「慰安婦」問題]

新たな民主主義を打ち立てた韓国民衆運動
「日韓合意」を撤回させよう!
              
1)民衆運動の高揚が、朴罷免を決定した

 昨秋から2017月3月現在まで韓国民衆運動は、驚くばかりの高揚を見せ、韓国政治は大きく転換した。韓国民衆運動の高揚が朴槿恵大統領の罷免を決定した。2016年10月以降、市民の「ろうそくデモ」はソウルをはじめ韓国の様々な街を埋めた。3月1日節には多数の人々がデモに結集し、朴弾劾を叫んだ。このような民主運動の高揚を背景に、3月10日憲法裁判所は裁判官8名の全員位置一致で罷免を決めた。

 憲法裁判所は、朴槿恵大統領の弾劾訴追事由のうち「私人チェ・スンシルによる国政介入の許容と大統領権限の乱用」の一点だけで憲法と法律を違反した判断し弾劾を認め、罷免が確定した。
 「ろうそくデモ」の民衆運動は、勝利したことで韓国政治に新たな民主主義を打ち立てたと言える。そして今後の韓国政治において大きな「力」を獲得したことになる。民衆運動高揚のプロセスは、民主主義を実質のあるものにしていく、民主主義が力を獲得していくプロセスでもあった。このダイナミックな進展を、世界はなかば驚きながらも称賛をもって認めた。次のいずれの大統領候補も、民衆運動の力を考慮に入れないわけにはいかなくなった。

2)「平和の碑少女像」撤去阻止運動が生まれた!

 朴政権の退陣を求める民衆運動の高揚のなかで、朴政権の悪政の一つとして、2015年12月28日の「慰安婦」問題「日韓両政府間合意」(以下:「日韓合意」)が批判の的になった。「日韓合意」のなかで日本政府がソウル日本大使館前の「平和の碑少女像」撤去を韓国政府に要求し合意したものだから、韓国の人々の怒りを買い、各地で日本政府や朴政権から少女像を守れ!  少女像撤去絶対阻止!の運動が起こった。これまで「慰安婦」問題に参加していなかった人たちが自主的自発的に、少女像を守る団体を立ち上げ、各地で新たな少女像設立運動へと広げていった。韓国内にはすでに60体以上の少女像が設立され、韓国全体へと広がっている。日本政府による少女像撤去要求が直接的原因となり、少女像設立運動が広がったとさえ言える。「平和の碑 少女像」(以下:少女像)が公共造形物に指定される動きも広がりつつある。勝手に撤去させないという意味である。
 
3)日本政府は少女像への攻撃・妨害をやめ、「慰安婦」問題を解決せよ! 

 日本政府は1月6日、釜山領事館前の少女像設置への対抗措置として駐韓大使と釜山総領事の一時帰国を発表した。合わせて両国間で進めていた韓日通貨交換(スワップ)の協議を中断し、ハイレベル経済協議も延期した。

 長嶺安政・駐韓大使と森本康敬・釜山総領事を1月9日に日本に帰国させた。3月22日現在、いまだ帰任させていない。

 日本政府は、帰任させるタイミングを失った。こういう場合、何も解決できない日本政府はアメリカ政府内のジャパンハンドラーの人たちに頼み込み、韓国政府に圧力をかけて解決してきた。しかし、トランプ政権はいまだ閣僚やスタッフの任命が終わらず、それどころではない。他方、朴大統領は3月10日に罷免が決まり、大統領選挙の5月9日までのこの間、政治的空白の時期となり、さらにタイミングを失っている。

4)日本・外務省は機密費を使い、
 世界の各地で少女像設置への妨害、撤去工作を行ってきた!

 日本政府・外務省は、米カリフォルニア・グレンデール市でも豪州シドニー市でも、少女像撤去、妨害工作を行ってきた。国際社会のなかで、歴史を知らない国家、人権尊重をしない政府として、振る舞っている。日本政府は日本の右翼団体と一緒になって少女像を撤去するよう圧力をかけ、自ら進んで国際社会の笑いものになっている。これは加害者側による暴力であり、犯罪行為であるとともに、厳然たる平和に対する脅威、破廉恥な政治工作である。

 2015年12月28の「日韓合意」以降、日本政府によって繰り広げられている日本軍性奴隷制犯罪の否定、強制性の否定、法的責任の否認、そして少女像に向けた攻撃と歴史修正主義の主張と行為は、あらためて「日韓合意」の持つ犯罪的な意味を確認させた。「合意」は撤回、破棄されなければならないことが、より明確となった。

5)「日韓合意」の撤回が、具体的な政治課題になった

 すでに、韓国では「日韓合意」撤回が具体的な政治課題となっている。民衆運動の高揚のなかで「日韓合意」の内容――日本政府は「慰安婦」被害の事実を認めず、公式謝罪せず、賠償もしない、「癒し金」10億円を払う――があらためて、多くの人々の知るところとなり、被害を受けた韓国民の側からすれば「屈辱的な」合意であるという評価がしっかりと定着し、再交渉、撤回が叫ばれるようになった。 

 「屈辱的な」という表現には、過去の日本による朝鮮植民地支配への批判が反映している。植民地支配に対する反省も謝罪もない日本政府の態度に、韓国の人々は怒っている。日本政府が「慰安婦」被害という人権侵害への謝罪と賠償をしないことは、植民地支配を反省、謝罪しないことを意味するととらえた。日本政府に対する怒りが、韓国の人々の間に広がっている。全国民的なナショナリズムの様相さえ呈している。

 韓国政府、外交部と日本政府による移転要求に対抗し、釜山の少女像を守る釜山女性会のチャン・ソンファ代表は、「国民の名においての侵略と戦争犯罪を知らぬ存ぜぬで一貫する日本政府を糾弾する」と発言している。

 3月1日節の第18回目のろうそく集会に、日本軍「慰安婦」被害者の李容洙(イ・ヨンス)さんが舞台に上がった。「25年間、雨が降ろうが雪が降ろうが日本の謝罪を要求するデモを開いた。今回の韓日慰安婦合意を導いた朴槿恵大統領を弾劾させ、ユン・ビョンセ外交部長官を解任させなければならない」と述べた(聯合ニュース)。すでに、朴大統領は罷免が決定した。「日韓合意」を主導したユン・ビョンセ外交部長官への解任要求がすでに叫ばれている。

 大統領選挙は5月9日である。いずれの大統領候補も「日韓合意」の再交渉、または撤回を掲げるに至っている。5月9日までの大統領選の過程で、「日韓合意」は白紙撤回しかないことが、よりしっかりと確認されるだろう。そして、「日韓合意」撤回が具体的な政治課題となるだろう。

 私たちも、日本で「日韓合意」は元「慰安婦」被害者の人権侵害に対し、日本政府が謝罪していなければ賠償もしていないことを訴えるとともに、「日韓合意」押しつけるのでは決して解決しない事態となっており、「日韓合意」撤回を求めていかなくてはならない。(3月22日記)

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いまだ混乱が続くトランプ政権 [世界の動き]

いまだ混乱が続くトランプ政権


1)「フリンを辞任に追い込み、対ロ政策を変えさせない!」

 ドナルド・トランプはロシアとの関係修復を訴え、大統領に当選した。その政策の象徴と言えるのが国務長官に就任したレックス・ティラーソンと国家安全保障担当補佐官になったマイケル・フリンだ。

 バラク・オバマは大統領を退任する直前、ロシアとの関係をできるだけ悪化させようとロシアを挑発した。昨年12月にロシアの外交官35名を含む96名のロシア人を国外へ追放したのはその一例。2017年1月6日にはアブラムズM1A1戦車87輌を含む戦闘車両をドイツへ陸揚げ、戦闘ヘリのブラック・ホーク50機、10機のCH-47、アパッチ24機なども送り込んだ。派兵されたアメリカ兵の人数は2200名。ただ、こうした挑発にロシア政府が乗らなかった。

 アメリカ欧州陸軍のベン・ホッジス司令官はポーランドに送り込まれたアメリカ軍の戦車に一斉射撃させた。ホッジス司令官によると、これはロシアに対する戦略的なメッセージなのだという。

 ウクライナではキエフ政権が1月下旬からウクライナ東部のドンバス(ドネツク、ルガンスク、ドネプロペトロフスク)に対する攻撃を激化させているが、その1カ月前にはクリントンを支持していたジョン・マケインとリンゼイ・グラハム、ふたりのネオコン上院議員がジョージア、バルト諸国、そしてウクライナを歴訪している。偶然ではない。

 フリンの辞任劇は、当然のこと、この流れの中で考えるべきだろう。ネオコン、CIA、NATO、軍産複合体、そしてアメリカの有力メディアがそのプレイヤーだ。

2) 対ロ政策の変更は何がまずいか?

 フリンはロシアと話し合って、ISを打ち滅ぼし、シリアへの戦争介入をやめようとしていた。フリンを追い落とした者たちとは、シリア戦争が終わってはまずい連中、ISを背後で操っていた連中、これまでロシアに戦争挑発を仕かけてきており、トランプ政権によるロシアとの和平協議の動きを破壊しなければならない連中ということになる。
 ネオコンであり、軍産複合体であり、ユダヤ資本こそ、シリアでの戦争介入、ロシアへの戦争挑発を進めてきたし、そこで莫大な利益も得てきた。ロシアとの和平は、その巨大プロジェクトを中止しかねない。

3) 盗聴とリークを誰が行ったか?

 辞任劇はワシントン・ポスト紙の記事で幕を開けた。トランプが大統領に就任する1カ月ほど前、フリンがセルゲイ・キスリャクと話をし、その中でアメリカがロシアに対して行っている「制裁」を話題にしたこと、これを副大統領に報告しなかったことが問題だと報じた。

 スノーデンの指摘する通り、CIA、NSA、FBIはあらゆる世界の政治家、資本家そのほかすべてを大規模に盗聴している。ワシントン・ポスト紙の記事通りなら、フリンとセルゲイ・キスリャクの会話を盗聴した人物がいることになる。盗聴したのはCIA、NSA、FBIといったところだが、盗聴内容を切り取って、メディアに漏らして報道させ、盗聴行為に対する責任を負わないように対応した。

 こんなことが可能ならば、自分に都合に悪い情報は無視しておいて、誰かしら政治的な敵を貶める情報だけを選んで暴露し、追い落とすことが可能になる。自分に都合のいい情報だけリークし、ライバルを追い落とせばいいのだから、政治権力を握るのも可能である。

 実際に、ネオコンはこれまでそのようにしてきた。ユーゴスラビアで深刻な人権侵害があると偽情報を流して、戦争介入しユーゴを破壊してしまった。大量破壊兵器があるという偽情報でイラク戦争を実行しイラクを破壊しつくした。結局、破綻国家をつくって、アメリカ軍とその傀儡、傭兵が支配する国や地域に変わった。いまだに修復し得ないところまで破壊しつくした。

 このようにすれば、あらゆる政治を操ることができる。情報機関はまさに政治的に自分たちの利益を守ろうとして対応している。情報機関だけでなくその背後に巨大な利益集団の存在がある。

 有り体に言えば、アメリカを牛耳る現支配層による何らかの情報操作、リークは許されるが、それに従わない政治家は許さないし、支配層にとって都合の悪い情報の公開は許さない、従わない者は情報操作によって政治的に屈服させる、ということだ。

4) 機能不全のトランプ政権

 はっきりしているのは、盗聴したCIA、FBI、NSAなどの情報機関、および有力メディアが、トランプ政権に従っておらず、それどころか政権外部のネオコン、軍産複合体の支配下にあり、トランプ政権を屈服させようと闘っている最中だということだ。

 トランプはフリンを慰留しなかった。トランプ屈服の第一歩だろう。
 その後、トランプは6兆円もの軍事費増大を表明した。明らかにネオコンや軍産複合体などのこれまで戦争を進めてきた勢力に対する「妥協」を意味している。

 しかし、ネオコンや軍産複合体はいまだ満足しておらず、トランプへの攻撃を止めていない。トランプがネオコンや軍産複合体に完全に屈服するまで続けるつもりだ。

 トランプは選挙中、オバマ陣営がトランプを盗聴したと非難している。これに対し、有力マスメディアは「証拠がない」と反論?[?]のキャンペーンを行っている。滑稽なのは、これを「トランプの横暴vsジャーナリズム」の対立として描き出していることだ。ワシントン・ポストをはじめとする有力メディアが、CIAとその背後にいるネオコン、軍産複合体に操られていることこそが何よりも問題だ。ジャーナリズムはその「汚れた関係」をまず告発しなければならない。

 ネオコン、戦争ビジネス、巨大金融資本を含む好戦派、反トランプ陣営に加わっている有力メディアと、民主党「リベラル派」は関係が深く、少なくともヒラリーやオバマなど一部は資金などの支援を受けている。トランプを批判するネオコンなどに「リベラル派」が従っている。だから、決して「トランプ対リベラル」の対立というわけでもない。

 こんなことで、トランプ政権の混乱は続き、いまだ機能していない。CIA、FBI、NSAなどの情報機関が、トランプのいうことを聞かないのだから、機能しない。政策を担ってきた国防省、国務省も様子眺めだろう。(3月22日記)
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年金は富裕者の食い物か! [現代日本の世相]

年金は富裕者の食い物か!

               
 日本経済新聞(2月2日)は、日米首脳会談で安倍首相は米トランプ政権ににじり寄り、トランプ政権の政策の一つ、巨大なインフラ投資にGPIF資金を提案した、と報道した。 「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が米国のインフラ事業に投資することなどを通じ、米で数十万人の雇用創出につなげる」と報じ、国際的にも話題になった。GPIF資産、約130兆円のうち5%(6.5兆円)までを国外のインフラ・プロジェクトに使うというのだ。

 それに対し、GPIF髙橋則広理事長は次のようにコメントした。 「本日、一部報道機関より、当法人のインフラ投資を通じた経済協力に関する報道がなされておりますが、そのような事実はございません。GPIFは、インフラ投資を含め、専ら被保険者の利益のため、年金積立金を長期的な観点から運用しており、今後とも、その方針に変わりはありません。なお、政府からの指示によりその運用内容を変更することはありません。」

 安倍首相が、このような発言をしたのは初めてではない。2014年1月にスイスのダボスで開かれた世界経済フォーラムで安倍首相は「日本の資産運用も大きく変わるでしょう。1兆2000億ドルの運用資産をもつGPIF。そのポートフォリオの見直しをして、成長への投資に貢献します。」と宣言し、2014年10月にはGPIFの運用資産割合の変更を決定させた。国内債券を60%から35%に引き下げ、国内株式と外国株式を12%から25%に、外国債券を11%から15%へそれぞれ引き上げた。
 
 実際のところ、GPIFは資産約130兆円のうちの25%、約32.5兆円はすでに外国株式で運用している。髙橋理事長のコメントは、決して安倍首相の発言を拒否したのではない。政府の指示で投資先を決めるのではなく、「GPIFの意思」で投資先を選ぶのであり、結果的にそれがアメリカのインフラ投資になることもある、ということを言っているに過ぎない。
 
 特に国内株式、海外株式への資産運用をそれぞれ25%にしたことは問題だ。
 資産割合を変更した2014年以降から現在までは株価上昇の局面なので、国内外株式を50%に増やしたGPIFの総資産は増大してはいる。しかし、すでに2008-09サブプライム恐慌から景気拡大局面は8年を経過しており、次の恐慌が近い。

 アメリカでトラック運転士組合の年金が破綻状態だと伝えられている。ほかの年金のなかにも似たような危機的な状況の年金も多い。
 GPIFは、資産が巨大なこともあり機動的な資産運用はできないし、そもそも短期の売買の繰り返しはしない。「年金積立金を長期的な観点から運用」しているのである。
 ということは、急激な市場の変化の際に、ヘッジファンドなどの標的となり「売り」を仕かけられ、巨大な損の引き受け手となる可能性が大きいのだ。この場合、誰も責任を負わない。支給される年金額が減るだけだ。
 
 本来、年金はリタイアした後の庶民の生活を支えるものだが、実際はその資産を巨大企業や富裕層への投資へと流し込む仕組みが出来上がっている。構造的に国民の資産を利用する(=言葉は「運用」)仕組みができている。リスクのより多い資産への投資に踏み込んでいる。
 そればかりではない。安倍首相は年金を国民の資産だと思っていないのだろう。トランプ政権に対して、「アメリカへの投資資金は十分ありますよ」とささやき、自身の政治政策、「経済協力」に利用しているのだ。(3月19日記)
 
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「安倍からのミサイル供与申し出は断った」?? [フィリピンの政治経済状況]

?「安倍からのミサイル供与申し出は断った」??

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<共同記者発表を終え、握手するフィリピンのドゥテルテ大統領(右)と安倍晋三首相=12日午後4時57分、マニラのマラカニアン宮殿>
 
 安倍晋三首相は12日、フィリピンの首都マニラを訪問し、ドゥテルテ大統領と会談した。フィリピンと中国が領有権を主張する南シナ海問題で、日比政府が連携を強化していくことを安倍は主張し、今後5年間で、1兆円規模の支援を行うことも表明した。

 安倍政権は、アメリカの対中国政策に従い、日米の側にフィリピンを取り込み、南シナ海の問題で中国に対峙させようと腐心している。そのために日本外交の伝統的手法、あるいは「得意技」である経済援助を提示し、わざわざ南シナ海を巡視する巡視船も提供した。
 果たして、安倍はドゥテルテを取り込んだか?

 これには後日談がある。
 「第3次世界大戦をみたくないから、安倍晋三首相からのミサイル供与の申し出を断った――」 
 ドゥテルテ大統領がこんな「発言」をしたと、現地の日刊英字紙フィリピン・スターが15日に報じ、波紋が広がったのだ。
 報道のもとになったのは、ドゥテルテが15日、ダバオ市商工会議所の総会で行ったスピーチ英語とタガログ語で、首脳会談をしたばかりの安倍首相の名前を挙げ、「安倍には、軍事同盟は必要ではないと言ったんだ。私は外国の軍人がいない国を目指したい。・・・・・・安倍にも言ったんだ、ミサイルは必要としていないと」。 

 もちろん、日本政府はミサイルなど供与しない。明らかな間違いである。あるいはドゥテルテはわざと「ミサイル」と「言い間違えた」のかもしれない。いずれにせよ、「安倍の狙いは承知しているよ!」というメッセージのようだ。

 ドゥテルテが言いたかったことは、「支援はありがたくいただくが、日米の側に立って中国と対立し、戦争になるのは嫌だ」ということである。



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トランプ政権が誕生した意味 [世界の動き]

トランプ政権が誕生した意味、新政権の動静

1)米国トランプ政権の動静、国内問題

1)-A、トランプが勝利した背景

 新自由主義が、アメリカを荒廃させた。この荒廃がトランプを登場させた。ただアメリカ社会は一様に荒廃しているのではない、深刻な分断がそこにある。富裕層と貧困層、権力エリートと大衆の分断、グローバル化で潤う東西両海岸と中西部、ラストベルト地域の分断である。

 1980年代以降アメリカを含む世界中で、レーガノミックスに代表されるような市場原理主義への回帰が起きた。社会主義を解体したため、社会主義制度に対抗する労働者の権利拡充や福祉政策を実行する必要がなくなった。1970年代、法人税は各国とも50%程度がほとんどだったが、今や引き下げ競争が止まらず、トランプは15%にすると公言している。人々に対しては自己責任を押し付け、緊縮財政、福祉・公共サービスなどの縮小、公営事業の民営化の「小さな政府」がいいと宣伝し、他方、大資本のためにグローバル化を前提とした経済政策、規制撤廃による競争促進、労働者保護廃止などの経済政策、法人税の低減、富裕層のために所得税の減免を推し進めてきた。経済恐慌に際しては「大きすぎて潰せない」として、政府が金融資本を救済した。「小さな政府」「自己責任」の原則は、大資本には適用しなかった。

 金融資本、巨大企業、軍産複合体はそれ以前にくらべても巨大な富を獲得し、失業などの敗者を生み出した。厚い層をなしていた中間層は徐々に解体・没落した。これを「経済効率を求める新システム」と呼んだ。現実には勝者が敗者を補う機能はまったく果たされず、敗者の貧困化の過程を促進した。「トリクル・ダウン効果」(trickle-down effect:「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富がトリクルダウン(滴り落ちる)」とする経済効果)という「偽りの甘い言葉」を政府や経済学者が語り、貧困化、格差拡大に何も対策せず放置した。

 これに対してアメリカの一般国民の不満が蓄積し、即物的な形をとって爆発し始めた。この不満はいまだ「無自覚」であり、政治勢力として結集してはいない。トランプ誕生、英国のEU離脱、欧州での右翼政党台頭、韓国大統領弾劾などの一連の現象は、新自由主義がもたらした荒廃、分断、不満が根底にある。

1)-B、トランプは果たして期待に応えることができるか?

 新自由主義のもたらしたアメリカ社会の荒廃は、トランプによって米国内の白人労働者層の貧困問題に還元された上に、原因あるいは「敵」はもっぱら「不法移民」、「イスラム」、「中国」などの外部の他者とこれまでの政治家、「パワー・エリート」であるとし、有権者ではない国民国家にとっての他者になすりつけ、他方、白人労働者階級の一部が抱く人種的優越主義を刺戟しながら「偉大なアメリカを復活する」という愛国心を鼓舞する選挙キャンペーンを行った。これが功を奏して得られた支持である。新自由主義により貧困化したのは、アメリカの白人労働者ばかりではない。アメリカの非白人労働者、さらには新興国、発展途上国の労働者を、より大量かつ深刻に貧困化させたきた。人種的優越主義をもち「偉大なアメリカ」を叫ぶアメリカの白人労働者層は、ナショナリズムや排外主義にとらわれてるのであり、非白人労働者者や新興国や途上国の労働者のことは考慮の外にあり、連帯感などは欠如している。不満はすでに操られている。

 多くのアメリカ国民は、ウオール街、金融界、軍産複合体、マスメディアを中心としたアメリカのパワーエリート勢力に対する反発や批判を蓄積したが、トランプはこれを、「不法移民」、「中国」、「イスラム」など外部の敵への攻撃に取り込んで、うまく利用した。矛先は、ウオール街、金融界、軍産複合体、ユダヤ資本などに向かないように巧妙に工夫されている。

 トランプ自身は不動産業を営む有数の富豪であり、貧困層の利益を体現しているわけではない。次々に政権の閣僚を任命しているが、その顔ぶれは、富豪、金融資本の代表や高級軍人。彼らの考えは、決して貧困・中間層の価値観と一致していない。

 トランプが、中国やイスラムや不法移民を非難するのは、何ら根本的な解決ではなく、一種の「気晴らし」である。外部の他者に責任をなすりつけて、貧困化する白人労働者層の不満を一時的にそらせる以上の意味を持たない。効果がある限り、繰り返し続けるだろうが、「気晴らし」がいつまでも有効であるはずはない。

1)-C、トランプの経済政策

 トランプは掲げる経済政策、すなわち、大幅減税、大型インフラ投資、そのための財政出動、シェールオイル開発などのための環境規制撤廃、保護主義、金融緩和・ドル安を、大げさに表明してきた。これらは金融資本やビジネスに有利ととらえられ投資家は期待を抱き、11月以降株価はいったん上昇した。

 しかし、実際にこれらの経済政策を実施するとなると難しい。

 大幅減税、財政出動し大規模にインフラを整備するとすでに表明し期待も膨らんでいるが、現在
でも財政赤字であるのに、さらなる赤字の拡大、金融緩和は信用不安、恐慌をもたらすから、おのずと限界がある。

 トランプがツィッターで自動車会社にアメリカ国内生産を促し、自動車会社の経営者は戦々恐々としているが、市場に近いところで安く生産することを追求しできあがったのが現生産体制であって、白人労働者のためだからといってミシガンやイリノイに工場を戻すことは、やらないしできない。またメキシコから様々な部品・製品を輸入しており、メキシコからの輸入車だけ狙い撃ちにして高い関税をかけることも不可能だ。

 当面、実行できそうなのは、金融緩和・ドル安とし、アメリカ製造業の輸出拡大くらいである。
 これらの経済政策は、「親富裕層」、「親ビジネス」、「親金融資本」的であり、たとえ実行されたとしても貧困層の状態が改善しはしないし、ラストベルト地域の抱える問題も解決しはしない。TPP離脱を表明したことは歓迎するが、そのことで貧困層の抱える問題が解決するわけではない。

 トランプの主張が何の解決ももたらさないと、どの時点で、貧困・中間層が強い反発を示すかが、アメリカ国内政治の次の焦点となる。

2)アメリカの外交、国際問題はどうなる?

 対外関係では、対ロシア、中東、中国が特に注目される。

2)-A、最大の争点、対ロ政策

 対ロ政策では、トランプ路線と既存の対ロシア政策は、明確に対立している。オバマ政権では、ネオコン勢力が対ロシア政策、対中東政策を牛耳ってきた。国務省を牛耳っていたネオコン・グループはウクライナで危機を創造し、ロシアとの対決に持ち込んだ。ネオコンが支配するNATOは、関東軍化(第二次世界大戦前の日本の関東軍)しており、ウソの情報を流し宣伝し、しきりにロシアや中東で戦争挑発を仕かけてきた。

 その結果が、ウクライナの破綻国家化であり、シリア戦略の失敗・シリア反政府軍の敗退、トルコの離反、欧州への中東移民の大量流入である。バルト三国、ポーランドはウクライナとともに、ネオコンのロシア挑発政策にそのまま従い、NATO軍配備を歓迎すると各政権とも「自発的に」表明してきた。今やロシア政策は手詰まりになり、アメリカのロシア政策の転換が検討されている。

 オバマは政権を去る直前の1月13日に、ポーランドに3,500名のアメリカ軍配備を決め、次期政権の手を縛った。ネオコンに従ってきたこれら諸国政府は不安にかられているだろう。ロシア政策の転換は、その利用が終わるからだ。

 一方、トランプはロシア内のホテル建設、高級マンション建設等の関係で有力ロシア経済人との交流を持つ。国務長官として、米石油大手エクソンモービル会長兼最高経営責任者(CEO)のティラーソンを起用。ティラーソンは北海石油開発、サハリン石油開発等を通じロシアと協同してきたし、ロシアに対する融和政策を主張している。

 ロシアと協調し資源開発をすすめ利益を上げようとするグループが、アメリカ支配層内に存在しており、ネオコン、イスラエルロビーが推し進めてきたロシアへの戦争介入、敵視政策の失敗を前にして、ロシアとの「協調」への転換が模索されている。

 ただ、ネオコンは国防省国務省から放逐されたわけではない。オバマは、何の証拠も示すことなくロシアがサイバー攻撃でアメリカ大統領戦に介入したと断定し、またロシア外交官35名はスパイだと決めつけ帰国させた。これは、オバマ政権と国務省が今なおネオコンに支配されており、トランプ次期政権に難題を押しつけたことを意味する。ロシア外交官追放に対し、プーチンは対抗措置をとらなかった。そのことにトランプはツィッターで「すばらしい対応」とし、対ロ政策での違いを表明した。

 トランプ政権で最初の政権内路線争いは、対ロ政策になろう。

2)-B、 中東政策の転換

 シリア反政府軍が敗退し、ダーイッシュ(あるいはISと表記)は弱体化、トルコもアメリカから離反した。アメリカの手先が弱体化・離反したことで、中東での影響力が大きく後退した。中東戦略は、敗退したところから出発することになる。

 シリアにおいては、米国抜き、ロシア、トルコ、イラン主導で、アサド政権存続を前提とした停戦合意がすでに成立した。これに新政権はどう対応するか。停戦合意した7反政府勢力のうち、5グループはアメリカの支援を得ていた。中東はすでに、ロシア、トルコ、イラン、シリア対アメリカ、サウジ、イスラエルの対立構造に変わっている。

 シリア反政府軍、ダーイッシュを使って、戦争介入するオバマ政権のやり方が失敗した後、どのように立て直すのか注目される。「世界の警察官であり続けることはない」とするトランプ政権だが、政権入りしたマティス国防長官等多くの軍関係者は、中東への軍事介入支持者であり、統一性はとれていない。ここでも路線争いがあるだろう。

2)-C、中国は最も複雑な構図

 トランプにとって中国非難は、対中国の貿易赤字が大きいので口先介入しているのだが、実際に関税をかけることは難しく、有利な取引条件を引き出そうとしているくらいだろう。ただ中国非難は、トランプ支持者であるアメリカ大衆のプライドをくすぐるための材料でもある。アメリカ国民に対して発せられており、言葉通りに受け取れない場合もある。

 オバマ政権は「アジアへのリバランス戦略」を掲げ、中東からアジアへ軍事力をシフトしてきた。南シナ海でのフィリピンやベトナムと中国との領土領海問題に介入してきたが、フィリピン・ドゥテルテ政権が親中政策へ転換し、アメリカの戦略はここでも思い通りいっておらず、立て直しが迫られている。

 アメリカ支配層にはアメリカ軍、軍産複合体、ネオコンを中心とする対中強硬派と、中国市場に参入している産業界、金融界の融和派が存在する。トランプは米国国内の産業の育成を主張しており、米国産業の擁護の観点から、貿易戦争の再来もありうる。

 アメリカ軍は、軍産複合体の都合もあり、対中国強硬路線を継続しているが、実際に強硬路線をとることができるかどうかは、中東での軍事介入がどうなるかとも関連している。二正面作戦をとることは難しく、中東への軍事介入継続であれば、中国への策は薄れる。

2)-D、欧州への関与

 英国のEU離脱の基本合意はいまだできていない。欧州もアメリカ社会と同じく新自由主義により社会が荒廃、分断しており、他方、中東からの移民の増大を契機に、ナショナリズムが欧州全域に広がりつつあり、ナショナリズムや排外主義を掲げた右翼政党が台頭している。仏の大統領選挙、ドイツの首相の動向などにすでに影響を与えている。

 トランプ政権の欧州への関心は前政権に比べ小さく、口先介入はあるにしても全体として後退するだろう。NATOの動きが変わるか注目される。

2)-E、日本への影響

 アメリカの中東への軍事介入が強まれば、自衛隊派遣への圧力が強まる。中東への軍事介入がトーンダウンすれば、対中対決に本腰になり、当然日本の参加を強化することが求められる。ただ、いまだ方向は定まっていない。

 対中国、対アジア政策が定まらなければ、今までアメリカに従って懸命に努めてきた安倍政権の立場は宙に浮く。それゆえ安倍政権は、これまでアメリカ政府の「番頭」のような役割を進んで果たしてきたのに、トランプ政権はその「忠義」を理解してくれていないと嘆き、理解を求めアピールが重要だとしきりに愚痴をこぼしている。

 トランプは、日本をそれほど重視していない。「どのようにも扱うことができる政府であり国である」ととらえており、優先順位は低い。しかし、アメリカの世界政策の変更・転換は、安倍政権にとって大きな影響を及ぼす。   (文責:林 信治、1月20日記)




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日本社会の中国観、韓国観 [世界の動き]

現代日本社会の中国観、韓国

 
 現代日本の常識は、世界の非常識である。最も代表的なものが「中国観・韓国観」だ。

 日本社会では、日本では70~80%の人が中国の浮上を日本の潜在的脅威として把握し、これに備えるために日米同盟を強化して、中国と東南アジア諸国に対処するのが当然だととらえている。可能ならば韓国、東南アジア諸国連合、オーストラリア、インドなどの周辺国を日米同盟の側に引き込み、中国と対峙し、東南アジアを影響下に治め、戦後の長い時期そうであったように、アメリカと一緒になって日本が特別な地位を占めるのが当然だと考えている。さらに安倍政権は、対米協調の枠内で海外での軍事的貢献も積極的に引き受けるところに踏み出すべきだと主張するに至っている。日本は西欧の一員で、中国、韓国、東南アジアは未熟な国々という認識だ。

 しかし、そのように考えているのは日本政府と日本社会だけだ。ASEAN諸国は、米中関係が改善し、東南アジアの安全保障がゆるがないことを願い、勃興する中国を認めたうえで平和的互恵的な国際関係を望んでいる。アメリカ政府の傀儡だったフィリピン政府は、中国との友好関係へと転換した。中国と領土問題を抱えているベトナムにしても、平和的互恵的な関係を主張する立場である。

 日本政府と日本社会だけが違う。
 安倍政権や外務省の振りまくの偏った誤った中国観を、日本の知識人やメディアが宣伝し、情報操作した結果、国民の間で何となく「嫌中論」がひろがり、政権に都合のいい薄っぺらな「中国観」を持つに至っている。
 そして日本政府は、アメリカの「アジアへのリバランス戦略」に忠実に従い、アメリカともに中国を敵視し対峙する政策をとっているのである。

 「韓国観」も「中国観」と同様で、韓国の台頭は日本にとって「生意気」であるし、日本とは違って未熟な国という認識だ。
 この中国観、韓国観を持った安倍政権は、中国に近づいた韓国を日米韓同盟にしっかりとつなぎとめようと腐心してきた。安倍晋三首相が2015年11月、朴槿恵大統領との首脳会談で「慰安婦問題が両国関係発展の障害物」になっていると言明したのは、アメリカ政府のリバランス戦略、対中国政策を、安倍政権なりに実行しようとしたからだ。

 朴槿恵政権はアメリカ政府、日本政府の圧力に負け、2015年12月28日には、日本軍「慰安婦」問題に対する日韓政府間合意を強引に締結した。2016年7月には中国政府の強い反対にもかかわらず韓国へのTHHAD(高高度防衛ミサイル)配備を決定し、2016年11月には日韓軍事情報保護協定(GSOMIA)を締結した。中国に対抗し、日米韓軍事協力を強化する方向に、朴槿恵政権は舵を切ったのだ。

 韓国社会の立場は、朴槿恵政権のこの転換と微妙に食い違っている。韓国社会も中国の急速な浮上に「不安」を感じつつも、中国を「戦略的互恵関係」としてとらえている人々が多数を占める。実際に中国との経済貿易関係は韓国経済の大半を占めており、中国との友好関係なしに先行きはないことは、日本以上により確かなのだ。
 
 朴槿恵政権が、国民の大多数から支持を失い機能停止に陥っている要因の一つは、中国との「戦略的互恵関係」を揺るがし、日米の側にあまりに傾いたことによる。

 北朝鮮核問題の解決のために何が必要か、対話と協力を通じて南北関係を安定的に維持することが賢明だ。それ以外にはない。北朝鮮核問題に、「THAAD」配備しても何も解決しないし、より危険になる。誰でも冷静に考えればわかる。韓国社会でも多数の人々はそのように考えている。
 しかし「THAAD」配備は、アメリカ政府の強い意向であった。配備は、北朝鮮ばかりでなく中国も含めた東アジアの安全保障に重大な危険をもたらす。そんなことは明白なのに、朴政権は受け入れてしまった。

 日本の大多数の知識人は、アメリカに従って中国や東南アジアに対処する次元で、韓国や東南アジア諸国の政策を評価し、自分たちのフレームに合わない姿を「未熟な中国、韓国、東南アジア諸国」として描き出す。日本政府の政策に進んで「理解」を示し、日本はアメリカの背後にくっついてその脅威を使って、中国や韓国、アジア諸国に対処するのが当然ととらえている。

 その点では「アメリカには敗けたが、中国や朝鮮に敗けたわけではない」とする歴史観(元関東軍参謀・服部卓四郎が書いた『大東亜戦争戦史』)が、自民党政治家を通じて日本社会のなかに、現在に至ってもなお生き延び続けているとさえ言えるのである。

 このようにして日本政府と日本社会はアジアから孤立する道を歩んでいる。日本社会は孤立する道を選んでいることに無自覚なままだ。   (1月9日、記)
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新薬「オプジーボ」は「遠い夢の薬」 [現代日本の世相]

新薬オプジーボ、日本以外では「遠い夢の薬」

 読売新聞は、医療ルネサンス特集で5回にわたり新薬オプジーボについて記事を載せている。以下は1月9日の記事。

 ******
 2016年12月上旬、オーストリア・ウィーン、世界肺癌会議があり、日本の肺がん患者団体「ワンステップ」代表、長谷川一男さん(45)は、患者支援活動に贈られる「アドボカシー・アワード」の受賞式に出席した。
 長谷川さんには、世界各国から集まる患者たちに、ぜひ聞いてみたいことがあった。オプジーボをどう思っているのか―――。だがその問いは、肩すかしにあう。・・・・・・
 「オプジーボ」は超高額新薬である。こうした超高額薬を使える国は、日本以外ほとんどないという現実を改めて認識させられた。オプジーボの薬価は日本の2割から4割に抑えられているのに、それでも使うことができない。・・・・・・
 多くの国で、「オプジーボは」は「遠い夢の薬」だ。東欧の患者からは、「通常の抗がん剤」でさえ高価で満足に使えない」と聞いた。
 米国は無保険者が15%おり、莫大な医療費を自己負担できる患者は一部の富裕層に限られる。
 英国では、高額薬について、費用対効果の観点から国立医療技術評価機構(NICE)が、厳しい審査を行う。オプジーボが肺癌治療で公的医療制度の対象にするかどうかの結論はまだ出ていない。
 ・・・・・・

 海外でのオプジーボの薬価(100㎎の薬価、厚生労働省) 
   英国:約14万円、
   ドイツ:約20万円、
   米国:約30万円
   日本:約73万円、2017年2月から約36万円になる。それでも海外より高い。
 ****
 
 日本で開発された新薬「オプジーボ」が、これまでの抗がん剤とは異なり画期的な効果があったという肺がん患者の闘病記録などを含む読売新聞の特集記事を、この数日読んできた。

 また、新薬「オプジーボ」は、京都大学・本庶佑(ほんじょ・たすく)研究室が開発を牽引したこと、癌細胞のブレーキを解除して免疫を再活性化する仕組みの記事や、患者団体を結成し患者同士交流し励ましあいながら、癌と闘っている記事など、興味深く読んだ。

 ただ、1月9日の上記の記事を読み、医学や薬学上の問題ではない、ある意味より深刻な社会的要因を考えさせられた。

1)新薬「オプジーボ」は「遠い夢の薬」

 小野薬品工業の新薬「オプジーボ」が、肺癌にも効果があるということで、注目を浴びている。薬価が超高額であるとして官邸が介入し、100㎎あたり現状約73万円が、2017年2月から半額の36万円になるという。それでも超高額薬だ。患者によって異なるが、日本の場合、1か月治療すると約300万円、1年間だと約3,500万円かかる。大半は健康保険から支払われる。

 官邸が介入し半額に値下げしてもなお、海外での薬価よりも高いのは少々不思議だが、海外での価格も、けっして安いとはいえず、記事にある通り、富裕層以外には使えない高額薬なのだ。

 新薬が開発され効果があっても、高額な費用を患者が負担しない限り、実際の医療には使われないという事態が、私たちの生きる世界では「当たり前」となっている。資本が儲けることを通じて、あらゆる社会活動が行われる。「儲けること」が「治療」より優先されるという転倒した事態が起きている。

2)医療も薬も、儲ける手段!

 ここに、弱者である患者を切り捨てる世界的な社会構造が、透けて見える。
 科学者が研究し癌を撲滅する新薬を開発しても、製薬会社が莫大な富を得ることが優先される社会構造が確固たるものとして存在する。資本をもうけさせることを通じて、医療活動を含むあらゆる社会活動が行われるのが、資本主義社会。新自由主義の下で、資本の活動は規制という制限を次々に取っ払い、世界的な製薬会社がますます力を得て医療活動を支配する関係が広がりつつある。恐ろしいばかりだ。

3)日本の国民皆保険制度が狙われている!

 日本では、この超高額薬を使うことができる。国民皆保険制度によって、高額新薬も含む高額医療費の一部だけを負担すればいいからだ。日本の国民皆保険制度は世界に誇る優れた制度である。日本以外の国々の患者にとって、日本の国民皆保険は、夢のような制度なのだ。

 しかし、この保険制度は今、高額新薬を含む高額医療によって、破壊されかねない事態に直面している。

 日本以外の国では富裕層以外に高額新薬の費用を支払うことができないので、その人数は限られる。ところが、日本の国民皆保険制度は、制度がある限り支払うことができるので、世界の製薬資本にとっては、狙い撃ちする対象となる。日本の国民皆保険制度は、支払ってくれる「大きな財布」なのだ。

 日本の医療費を含む福祉予算は、年間40兆円を超えさらに増大している。財政的負担に耐えられなくなれば、破壊されてしまう。

 TPPには、世界的な製薬資本が利益を上げる権利を擁護する条項がある。TPPを推し進める安倍政権は、この優れた国民皆保険制度を護るつもりがない。極めて危険だ。

 癌で苦しむ患者を、さらに病気以上に社会的に苦しめることになる。(1月9日、記)



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オバマ政権のシリア戦略の破綻 [世界の動き]

アレッポの敗北、
オバマ政権のシリア戦略の失敗

1)アレッポでの敗北は、何を意味するか? 
オバマ政権のシリア戦略の破綻である161212 シリア勢力地図 アレッポ奪還.jpg
<シリア勢力地図 アレッポ奪還>
 
 シリア政府軍がアレッポを制圧した。アレッポはシリア最大の都市で人口200万。反政府軍の支配下にあった。
 シリア政府とロシアは、シリア反政府軍の兵士とその家族が武器を捨てて撤退することを認めた。12月16日、アレッポからシリア政反府軍の兵士とその家族がバスや救急車で撤退を始めたと伝えられている。

 シリア反政府軍のアレッポでの敗北は、何を意味するか?
 オバマ政権のシリア戦略の破綻である。
 シリア反政府軍のアレッポの敗退によって、戦局は大きく変化した。

 アレッポはシリア反政府軍の最大重要な拠点であったが、シリア反政府軍はこれを失った。シリア反政府軍は、アメリカイギリスの手駒であり、アメリカやイギリスは戦闘員を訓練し、武器を供給し、侵略を仕かけてきた。アレッポにはアメリカやイギリス、イスラエルなどの特殊部隊、将校もいて、多数捕虜になった模様だ。シリア反政府軍の指揮系統、アメリカ、イギリス、イスラエル、サウジやカタールの特殊部隊の指揮系統でもあるが、これがいったん破壊されたことになる。もはやこれまでのような戦争介入は困難になった。

2)アメリカ抜き、ロシア、トルコ、イラン、シリアで停戦合意
   オバマ政権のシリア戦略破綻をさらに確定した
  
 さらに重要なことは、ロシアとトルコが12月29日にシリアにおける停戦で合意したことだ。アメリカ抜きの合意だ。イランも停戦合意文書の作成に参加、シリア政府や反シリア政府の7組織(戦闘員総数約6万人)も署名、国連もこの合意を認めたようだ。12月に入り、カタールはシリアへの侵略戦争から離脱、平和交渉にはエジプトも加わると見られている。

 アメリカやサウジとともに、戦争介入してきたトルコ・エルドアン政権は、クーデター騒ぎでアメリカへの不信を極大化させたこともあって、アメリカとともにシリアに戦争介入しても、この先見込みがないと判断した。そしてこれまでの態度を転換し、ロシアやイランと協議を開始し、アサド政権を認めたうえでのシリア和平協議に加わった。

 オバマ政権は、エルドアンの態度変更を止めることができなかった。12月19日、トルコ駐在のロシア大使、アンドレイ・カルロフが12月19日にアンカラで射殺された事件が起きたにもかかわらず、ロシアとトルコの新しい関係は壊れなかった。ロシアとトルコの接近は、アメリカやサウジ、イスラエルにとってはぜひとも阻止しなければならなかった。しかし、阻止できなかった。ロシアとトルコの新しい関係を破壊する目的で大使暗殺は仕かけられたことを、プーチンもエルドアンも理解したのである。

 アメリカやサウジ、イスラエルにとって、トルコを巻き込んだ停戦が成立するのは困る。だから、テロリストを使って暗殺事件を起こしたのだ。ついでにいえば、テロリストはアメリカやイギリス、サウジ、イスラエルの手駒であることをも証明した。

 停戦の妨害は、12月19日のアンドレイ・カルロフ露大使射殺だけではない。12月28日と29日にはダマスカスのロシア大使館が攻撃された。トルコとロシアの停戦合意を破壊する目的だったろうが、成功しなかった。また、12月23日にオバマ大統領はシリアの「反対者」への武器供給を認める法律に署名した。アル・カイダ系武装集団やダーイシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)に対する支援を、トランプ次期政権に押しつけたということだろう。
 オバマ政権がネオコンに支配されていることの証明でもある。

 トルコが停戦合意したことは、戦術的に重大な意味を持つ。
 アメリカやサウジはシリア反政府軍やダーイシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)へ資金を援助したが、武器や食料、特殊部隊はすべてトルコ国境を通じて供給された。シリア反政府軍、ダーイシュの兵站が絶たれるのだ。トルコ国境は、シリア反政府軍やダーイッシュやアル・カイダ系武装集団(AQI、アル・ヌスラ、ファテー・アル・シャム/レバント征服戦線と名称を変更したが、その実態は同じ)の兵站線であり、ここから武器が供給され、武装集団の財源となった盗掘原油が運び出された。

 ダーイッシュが強大になったのは、支配地域で石油を盗掘し、その資金で武器を買い、戦闘員を雇ったからだ。盗掘原油の販売も武器購入もトルコ国境を通じて行われた。ダーイッシュを倒す方法は明白で、盗掘原油を買わせないこと、武器の供給を止めることである。2015年9月30日からのロシアによる空爆は、これを行った。油田地域から追い払われ、アメリカやサウジから武器支給がされなくなったダーイッシュは、この先必ず弱体化する。

 シリア反政府軍はアレッポから西のイドリブへ撤退しているが、もはや戦闘継続も難しいだろう。いずれシリア反政府軍は壊滅し、シリア政府軍の支配下にはいるだろう。 

 この停戦合意には、アル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュは参加していない。アメリカ、フランス、イギリス、サウジアラビアも停戦には参加していない。シリア介入の手駒を失ったアメリカは、影響力をもはや行使できないということなのだ。オバマ政権は政権移行期にあり、茫然自失状態に陥っている。

3)シリア反政府軍とは何か?戦闘員は誰か?

 シリア反政府軍の戦闘員とは、アメリカ、イギリス、フランス、トルコのNATO加盟国、サウジアラビアやカタールのようなペルシャ湾岸産油国、そしてイスラエルが使ってきた傭兵である。シリア国民はほとんどいない。したがって、この戦闘は内戦ではない。外部からの戦争介入であり、国際法違反の不当な介入である。

 テロ集団を雇い戦争をしかけ、「反テロ戦争」を理由に戦争介入し、崩壊国家にし支配するというのが、オバマ政権が推し進めてきた中東支配である。リビアではカダフィを倒したが、シリアでは失敗に終わったということだ。
 
 アメリカ政府はシリア反政府軍を、ダーイッシュとは違う「穏健派勢力」と区別しようとしているが、「穏健派」とはネオコンとその支配下にあるマスメディアがつけた名札にすぎない。また戦闘員は、敗退するシリア反政府軍から逃れ、ダーイッシュやヌスラ戦線に雇い主を変えるものも多く出ている。

 ダーイッシュが傭兵集団であり、雇い主がアメリカ政府と同盟国(サウジ、カタール、イスラエル、英その他)であるという証拠の一つは、2012年8月にアメリカ軍の国防情報局(以下:DIA、当時の局長はマイケル・フリン中将)が作成した報告書である。報告書は、「シリア反政府軍はサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてAQI(イラクのアル・カイダ)が主力だとし、AQIはアル・ヌスラ(今はファテー・アル・シャム)と同じだ」と説明している。

4) この先どうなるか? 
  トランプ新政権はネオコンと手を切れるか?

 テロ傭兵集団を育成し、戦争介入し、崩壊国家にし、アメリカが支配する戦略を推し進めてきたのはネオコンである。バラク・オバマやヒラリー・クリントンはネオコンの影響下、支配を受けている。

 オバマ政権で、マイケル・フリン中将(2012年~2014年国防情報局局長、以下:DIA局長)は、武装集団の利用の危険性を訴えたが、オバマ大統領から解任された。このマイケル・フリン元中将は、トランプ新政権の安全保障担当補佐官であり、11月に安倍晋三がトランプタワーで面会した際、同席した人物である。

 ダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL)が傭兵集団であり、雇い主がアメリカ政府と同盟国であるとする指摘は、DIA報告書以外にいくつもある。アメリカ空軍のトーマス・マッキナニー中将は2014年9月にアメリカがダーイッシュを組織する手助けをしたと発言した。マーティン・デンプシー統合参謀本部議長(当時)はアラブの主要同盟国がダーイッシュに資金を提供していると議会で語り、2014年10月にはジョー・バイデン米副大統領がハーバード大学で中東におけるアメリカの主要な同盟国がダーイッシュの背後にいると述べている。2015年にはクラーク元欧州連合軍最高司令官もアメリカの友好国と同盟国がダーイッシュを作り上げたと語った。

 テロリストを雇い、戦争をしかけ、反テロ戦争として介入する、カダフィ政権やアサド政権を倒し、崩壊国家と混乱状態をつくりだし支配する、これがオバマ政権の推進してきた中東戦略であり、実際に主導権をとり推し進めたのはネオコン、イスラエルロビーだ。オバマやヒラリーはこれを制止するどころか、政権の主要な戦略とし、中東ばかりではなくウクライナ、オセチアでも同じことを行ってきた。オバマは、口先だけの凡庸な人物であり、安々とネオコンの支配を受け入れた。シリアではアメリカの支持したシリア反政府軍は敗退し、トルコは離反し、ウクライナは崩壊国家になり、修復しようのない事態に陥った。オバマの中東戦略は、失敗し破綻に終わろうとしている。
 
 トランプ新政権が、マイケル・フリン元中将を安全保障担当補佐官に迎え、ロシアと関係を改善し、中東戦略を改めようとしているのは、これまでのネオコンの戦略が、すでに失敗に終わっており、現実性がないこと、その継続は極めて危険であることが明らかだからだ。アメリカ社会はこれ以上の戦争政策、戦争介入に耐えられないという事情もある。ロシアを追い詰めるのではなくビジネスを拡大すべきだ判断するアメリカ支配層に、トランプ新政権は依拠している。

 アメリカ次期政権の安全保障担当補佐官マイケル‣フリン元DIA局長は、アル‣カイダ系武装集団やダーイッシュが一時期勢力を拡大させたのはオバマ政権の政策によると認識している。退役後にアル‣ジャジーラの番組へ出演した際、フリン元中将はオバマ政権がDIAの警告を無視して反シリア政府軍を支援、その決定がダーイッシュの支配地域を拡大させたと語っている。

 トランプ新政権はダーイッシュやサラフ主義者/ワッハーブ派やムスリム同胞団を中心とする武装集団を危険視しており、ロシアと手を組んで戦うべきだという考えを表明している。そのことはアサド政権存続を前提にした政策への転換であり、これまでの戦争介入政策の撤回である。

 ただ、トランプ新政権がネオコン影響を排除し、中東戦略を全面的に改めることができるかどうかはまだ定まっていない。
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トランプ勝利の意味、今後の行方 [世界の動き]

トランプ勝利の意味、今後の行方

 アメリカ大統領選挙結果は、驚くべきものだった。ドナルド・トランプに対する悪質なマスコミ・キャンペーンにもかかわらず、オリガーキー(1%の支配者)の代理人、ヒラリー・クリントンは敗北した。マスコミと、既存政党支配体制は、もはやアメリカ国民の信頼を得ていないことを示した。

1)反テロ戦争継続と軍産複合体・ネオコン支配にうんざり!

 トランプは戦争をやめることができるか!

 米国民は、2003年のイラク戦争以来延々と続く「反テロ戦争」にうんざりしているのだ。イラク戦争以降約7,000名の米兵士が戦死し、負傷者はその数倍以上にのぼる。負傷した退役軍人の生活は保障されておらず、みじめなものだ。そのことを、地方に住む多くの米国民は見てきた。戦争を煽るネオコンや軍産複合体に、嫌気がさしている。そんなことより、アメリカ国民の生活をよくしろ! 中東やウクライナにかかわるな! これが多数のアメリカ国民の声だった。

 ネオコンがオバマ政権を主導し、ISなどの傭兵集団を利用し一方でテロをしかけ、他方で「反テロ戦争」を続け、軍産複合体に毎年1兆ドル(約100兆円)もの収入を保障してきた。トランプを選んだ米国民はこの戦争政策継続を拒否したのだ。

 もし2003年に、イギリスとアメリカ合州国がイラクを侵略していなければ、イラクやシリアがISに占領され、戦争で荒廃してはいなかった。大規模な難民が発生し、欧州に押し寄せることはなかった。

 米政府を牛耳るネオコンと軍産複合体は、ISなどの傭兵を利用し、リビア・カダフィ政権を転覆した。同じやり方で、シリア・アサド政権を交替させようと戦争を継続してきた。ロシアを追い詰めるため、ウクライナのネオナチに政権をとらせ、ロシアとの戦争をけしかけてきた。オバマは、ネオコンや軍産複合体に妥協するばかりだった。国防長官やNATO司令官をネオコンに替えた。中東やウクライナへの戦争介入で、ロシアとの核戦争の危機さえもたらした。アメリカ社会はこのような戦争政策を続けることができなくなっているのだ。
 
 ヒラリーは、上院議員として、イラクでの大虐殺に賛成した。2008年に、オバマに対抗して立候補した際には、イランを“完全に消し去る”と脅した。オバマ政権の国務長官として、彼女は、リビアとホンジュラス政府破壊に共謀し、中国攻撃の手筈を整えた。ヒラリーは、ロシアとの戦争挑発である、シリアでの飛行禁止空域を支持すると誓ってきた。彼女はネオコンときわめて親和的だ。ヒラリーの実績はすでに証明済みなのだ。

 他方、トランプは、「世界の警察官であり続けることはできない」と表明した。ネオコンや軍産複合体による戦争政策継続の拒否である。日本の軍事費負担を増やせと言ってきたのも、米政府の軍事費負担を減らすことに目的がある。戦争継続が、米国社会を荒廃させたこと、中流層を崩壊させ、特に地方の白人層の生活を破壊してきたと認識しており、この転換を企てている。

 トランプが、ワシントンの権力者に嫌われているのは、彼の反抗的な振る舞いや発言ではない。ネオコンや軍産複合体が実行してきた戦争戦略の変更を、平気で唱えているからだ。トランプはアメリカの21世紀計画(=戦争をしかけ、不安定にし、支配する)に対する障害なのだ。
 ワシントンの軍国主義者連中にとって、トランプの問題は、ロシアや中国との戦争を望んでいないように見えることだ。彼はプーチン・ロシア大統領と戦うのではなく、交渉をしたがっているし、中国の習近平と話し合いたいと言っている。

 トランプは、選挙資金は自前でまかなった。ヒラリー・クリントンと違ってユダヤ資本、ウォール街の金融資本や軍産複合体から資金を得ていない。コントロールできていないのである。

 トランプ新政権が、ネオコンを政権から放逐できるか、ユダヤ資本やウォール街と手を切れるか、軍産複合体を押さえつけることができるかが、今後の焦点だ。妥協してしまえば、戦争政策をやめることはできない。
 
2)日米同盟、アジアへの「リバランス戦略」の変更は、歓迎すべき!

 オバマ政権はアジアへの「リバランス戦略」を掲げ、中国との対立を煽り、東アジアを不安定状態にし、介入しようとしてきた。ASEAN諸国はすべて、中国との対立を煽る米政府の戦略に反対している。米政府の言うなりに動いたフィリピン・アキノ前政権は、ハーグ仲裁裁判所に調停を申し立てた。仲裁裁判所の裁定は、どの環礁も「岩」であるとし、中比双方の領有を認めなかった。勝利者は、結局のところ、米政府だった。米国の都合=「リバランス戦略」に沿った裁定だったのである。米国は、裁定により、計画通り南シナ海での「自由航行作戦」を実行し、介入してきたのである。

 このような対立を煽る政策は、ネオコンや軍産複合体の戦略に従ったものだとトランプは判断している。トランプが中国やロシアとの協調を呼びかけているのは、リバランス戦略の拒否である。

 リチャード・アーミテージ元国務次官補、ジョセフ・ナイ元ハーバード大学長、マイケル・グリーンら共和党系のロビイスト・政策集団は、長らく日本を操ってきた「ジャパン・ハンドラー」と呼ばれており、米政府の東アジア政策を主導してきた。彼らは共和党系ながら、ヒラリー支持を表明した。そのため、トランプの勝利は、新政権で対日政策を実行する「顔ぶれ」ががらりと変わることを意味する。

 日本政府、安倍政権は、アメリカのお先棒を担いで中国との対立を煽る役割を果たしてきた。9月のG20での対応をみれば明らかだが、すでに中国政府は安倍政権をまともに相手にしていない。トランプ新政権が戦略を変更すれば、安倍政権ははしごを外された形となり、東アジアで孤立することになる。

 トランプ新政権による、日米同盟、アジアへの「リバランス戦略」見直し、変更は、きわめて歓迎すべきことだ。そもそも米戦略にとってさえ、辺野古に米海兵隊基地は不要である。沖縄・辺野古新基地建設を阻止する上で、良い条件が生まれるかもしれない。

3)信頼を失ったマスメディア、世論操作したマスメディア

 ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストなど大手新聞、NBC、CBS、CNNなどの主要放送局はすべて、ヒラリー支持だった。各マスメディアが実施した世論調査はすべてヒラリー優勢だった。しかしそれは嘘だった。世論調査と称して世論捜査を行ったことが明らかになった。

 選挙結果はトランプの勝利であり、米支配層の思惑がまったく外れたのである。マスメディアは、詐欺集団であることが証明された。ジャーナリズムが米支配層に大がかりに買収されている実態を暴露してしまったのである。

 今回の選挙で、米国民の多くが、1%の支配層による米国支配を心底から嫌った。そしてマスメディアの報道をまったく信用しなかった。マスメディアが、米支配層の道具に転化していること米国民はすでに知っていたし、マスメディアは信頼できない存在だと宣告されたのである。マスコミと既存政党支配体制は、もはやアメリカ国民の信頼を得ていない。

 アメリカ・マスコミが完全に信用を失った姿、影響力と信憑性の消滅した姿を確認するのは、実に痛快だ。

 ちなみに、日本のメディア報道は、米大手マスメディアのそのままの繰り返した。米大手マスメディアを信用したのは、日本の大手マスメディアだけだということ。そのことは、日本のメディアも支配層の道具であるとあらためて証明したことになる。現在は騙せおおせていても、いずれ日本のメディアも信頼を失うだろう。朝日、読売、毎日の大手新聞は、すでに部数を大幅に減らしている。

4)ヒラリーは、1%の代表

 トランプは、選挙資金を自分で準備した。1%の支配を受け入れていない。ヒラリーは、オリガーキー(1%の支配層)の手先である。オリガーキーは、トランプを支配できる自信がなかったので、トランプをホワイトハウスの主にしたくなかった。マスメディアを使って、ヒラリーを大統領にしようとしたが、米国民は拒否するという予想外の結果になった。これから先、オリガーキーはトランプへ「支配の手」を伸ばしてくるだろう。

 政権準備委員会ではすでに、ネオコン、軍産複合体、ユダヤ資本の代表者を、押し込むか排除するか、の争いが始まっている。

5)TPPは、完全になくなった

 ヒラリーもTPP反対を公言していたが、彼女はユダヤ資本、ウォール街、軍産複合体の支配下にあるから、大統領になれば撤回する可能性が高かった。トランプになって、その可能性はきわめて小さくなった。これは歓迎すべきことだ。日本国民にとって、あるいはTPP参加国の人々にとっては、きわめて喜ばしいことだ。

 TPPは、金融資本、ユダヤ資本、軍産複合体に、あるいは日本の独占企業、金融資本に新たな支配と利益をもたらすが、そのことは他方で、米国民の多数をのみならず、加盟国の人々を貧困化させる。国家主権をも侵して、世界的独占企業の利益を優先させる「自由化」なのだ。トランプは、TPPは米国民の多数の貧困化させる、と正しくも認識した。そして、地方の中間層、白人層を貧困化から救うために、TPPを阻止すると主張し、支持を得た。ヒラリーでは、貧困化は止まらないと米国民の多数は判断した。

 トランプ政権は、TPPから離脱するだろう。しかし、TPPを離脱しても貧困化を解決するわけではない。他方で、新政権はユダヤ資本、ウォール街、軍産複合体、世界的大企業の利害と対峙することになる。政権内でこれら支配層であるオリガーキーの影響力を排除するのは容易ではない。政権発足までの準備がまず重要となる。

6) トランプの移民排斥発言、反イスラム発言 
ヒラリーの「人種差別反対、フェミニズム支持」の意味 

 ヒラリーは、人種差別反対で、フェミニズムを支持し、性的少数者支持を表明している。しかし、フェミニズムを語りながら、生存権を含め、無数の女性たちの権利を無視する飽くことを知らない戦争を支持している。イラクやシリア、アフガンの女性の権利などまったく考慮していない。
 オバマ政権で国務長官を務めたヒラリーは、何十億ドルもの兵器を売ってきた。欧米にとっての上客であるサウジアラビアは、余りに貧しく、最良の時期ですら子どもの半数が栄養不足だったイエメンを、現在破壊している。ヒラリーにとって、人種差別反対、フェミニズムはまさに言葉だけの表明にすぎない。
  
 問題は、トランプ政権になってどうなるか、である。米国民の多くは、トランプの乱暴な移民排斥、反イスラム発言もあるがこれに目をつむり、彼が荒廃した米社会と生活を改善することに期待した。米国内の人種間の対立、移民排斥は、激しくなるかもしれない。移民問題、人種対立に対し、トランプは「調子のいい発言」だけで、解決策を示していない。

 トランプ政権は、国内問題への対処をどのようにするか、まず問われる。ここで成果を上げなければトランプ政権の安定はない。ただ、トランプ政権が内向きになることは、迷惑を振りまかれてきたアメリカ以外の人々にとって、米国の影響力が低下するのであるから、いいことではある。

7)トランプ新政権、第一幕

 投票日前日に掲載されたトランプ政治広告の一つは、ジョージ・ソロス、連邦準備金制度理事会議長、ジャネット・イエレンや、ゴールドマン・サックスのCEOロイド・ブランクファインは、全員“労働者階級や国民の富をはぎ取り、その金を、ごく少数の大企業や、政治組織の懐に流した経済判断の責任を負うグローバル権力構造”だと述べていた。ソロスと彼の手先は、すぐさま、とんでもないことに、広告を“反ユダヤ主義”だとして攻撃した。(Wayne MADSEN  2016年11月11日)

 トランプが、アメリカの雇用を回復し、ロシア、中国、シリアやイランと、友好的で礼儀をわきまえた関係を確立するという目標に仕える閣僚を選び、任命できるかどうかはまだわからない。

 トランプの勝利に対し、オリガーキー(ネオコン、軍産複合体、金融資本、イスラエルロビー)が一体どう対応するのか、判明していないし、トランプがどう対処するのかも明確になっていない。

 ヒラリーは敗れたが、オリガーキーが敗れたわけではない。もしトランプが、融和的になり、手を貸して、ネオコンや軍産複合体、金融資本など既成支配層を政権に採用するようになれば、米国民はまたもや失望することになろう。

 政権準備委員会においてすでに戦いは始まっている。閣僚の顔ぶれで戦いの第一幕の行方はほぼ判断されるだろう。(11月15日記)
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アメリカから離脱するフィリピン [フィリピンの政治経済状況]

アメリカから離脱するフィリピン

1)中比の緊張、和らぐ

 10月のドゥテルテ習近平首脳会談で南シナ海問題を、二国間交渉で平和的に解決することで合意し、状況は見事に改善した。フィリピンと中国が領有権を争う南シナ海スカロボー礁(中国名:黄岩島)での両国の緊張が緩和しつつある。フィリピン漁民が操業を再開したが、中国の妨害は起きていない。

 中国外務省の華春宝・副報道局長は10月31日の記者会見で、「中比関係は全面的に改善している。このような情勢下でドゥテルテ大統領が関心を持つ問題について、中国側は中比友好に基づいて適切に処理している」と述べた。

2)どうやって、改善したか?

 ドゥテルテはどうやって中比関係を改善したか?
 ハーグ仲裁裁判所の裁定に固執せず、中国とフィリピンとの二国間交渉で(アメリカや日本の域外国を排除して)解決する姿勢で臨み、南沙諸島スカボロー礁の領有権問題を棚上げにし、他方で中比経済関係拡大を合意したからだ。
 これはまったく正しいやり方だ。南シナ海の領有権問題については、中国は常に紛争は棚上げして、共同開発を進めるという原則を提唱してきたが、ドゥテルテはこれに応じたのである。
 同時に、ドゥテルテは交渉にあたり、米比軍事同盟や米比関係の重視しない姿勢を示した。ドゥテルテが実際に、米比軍訪問協定(以下:VFA)や米比相互防衛協定(以下:EDCA)を凍結、廃棄するか、あるいはできるかは不明だが、米国との軍事同盟、米国の影響力が、南シナ海領有権問題の真の対立要因であることは間違いない。彼はそのことをよく理解している。
 VFAやEDCAの廃棄、米国の影響力の低減が実現すれば、東アジアの軍事的緊張を緩和し、さらにASEANと中国が南シナ海の非軍事化と非核化を達成するための交渉に進むことができるだろう。

3)和解を優先

 国際海洋法機関は、当事者同士の和解を最優先し、和解結果の内容が海洋法にそぐわないものであってもそれを支持することになっている。中比が交渉で合意するならば、その合意はハーグ仲裁裁判所の裁定よりも尊重されるのである。中比が合意すれば、「中国は裁定を受け入れ、埋め立てた環礁を元に戻し、南シナ海から撤退しろ」と求める日米などの主張も根拠を失う。
 そもそもハーグ仲裁裁判所の裁定は、スカボロー礁は「岩」だとし中比双方の領有を認めなかった。裁定の影の勝利者は米国であり、この地域を勝手に航行する「根拠」を強引につくった。米国政府は「航行の自由作戦」と称し、早速米海軍を航行させ、二国間問題へ強引に割り込んだ。安倍政権はこの米国戦略のお先棒を担ぎ、中国を非難し対立を煽ったのである。

4)尖閣領有権問題との対比

 改善した中比関係と、悪化したままの現在の日中関係と対比してみれば、ドゥテルテの判断と行動が、いかに画期的であるかが判明する。
 1972年、当時の田中角栄首相と周恩来首相は、尖閣諸島領有権問題を棚上げし、日中共同声明を成立させた。1978年には鄧小平と園田直外相は日中平和友好条約を締結したが、この時も尖閣問題の棚上げを再確認した。

 しかし、日本政府・外務省は2000年代になって、「尖閣諸島の領有権問題を棚上げした事実はない、尖閣は日本固有の領土である」と交渉経緯を一方的に改竄し、尖閣諸島の領有を一方的に宣言し、日中関係を悪化させた。政府外務省と日本支配層が、米国好戦派の意向に従い、中国包囲策へ計画的意図的に転換したのが事実だろう。
 日本では、東アジア共同体構想を掲げ、米中二国との友好関係を築こうとした、鳩山・小沢の政治路線はつぶされているのだ。

5)アメリカから離脱するフィリピン

 ドゥテルテは、フィリピンがアメリカの影響下からの離脱する方向に一歩踏み出した。そのことは、これまでの世界からの構造的転換でもある。
 北京での交渉の数日前、ドゥテルテは、フィリピン・マスコミに 南シナ海を巡る中国との紛争に関し、「戦争は選択肢にない、その逆は何だろう? 平和的な交渉だ」と語った。その上で、「金を持っているのは、アメリカではなく中国だ」と言い放った。下品な表現だが、ドゥテルテ特有の現実感覚を見せている。

 中国との交渉で、ドゥテルテとフィリピン企業との政府代表団は、135億ドルもの額の様々な契約に調印した。習主席は中国とフィリピンに触れ、両国のことを「敵意や対決の理由がない海を隔てた隣国」と呼んだ。

 他方で、ドゥテルテは、前任者アキノのように、ワシントンの傀儡になるつもりはないと何度も発言した。米国の影響下から離れることは、平和的な交渉を行い中国やロシアと付き合うことと一体なのだ。

 ホワイトハウスと欧米マスコミは、あけすけなフィリピン新大統領の発言を、「利害にさとい取引のための態度」として描こうとしたが、けっしてそれだけではなかった。ドゥテルテの交渉とその後の進展は、フィリピンがアメリカから離脱するプロセスの一環であり、より深い意味を持っていることを示唆している。

 ドゥテルテは、わずかな外遊と交渉で、フィリピンの大きな転換を成し遂げた。しかも、ドゥテルテの登場は、アメリカは世界の警察官であり続けることはできないと表明したトランプ新政権となり、国内重視の政策に転換する時期と重なったのである。ドゥテルテにとって幸運だったようだ。以前なら、クーデターでつぶされていただろう。

 ドゥテルテ大統領はアジア歴訪を行い、まず中国、そして日本を訪問した。間もなくロシアのプーチンとも会談する。中国を軍事的に包囲することを狙ったペンタゴンのアジア基軸に、彼は巨大な穴を開け始めたように見える。(11月16日記)
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宵越しの金を持つようになったフィリピン [フィリピンの政治経済状況]

宵越しの金を持つようになったフィリピン社会?

フィリピンで貯蓄率急増

 フィリピン経済は、7%の成長を続けており、消費が引き続き好調である。それとともに、貯蓄や投資が急速に増えている。貯蓄や投資を拡大しているのは、経済成長で増えてきた都市の中間層。投資や貯蓄という新たなマネーの動きの主役となっているという。

 フィリピン株式市場へ投資する個人顧客が増え、野村證券とフィリピン最大手銀行BDOユニバンクとの合弁証券会社など多くの証券会社がビジネスを始めた。オンライン証券口座は急速に増えており、多くは18歳~44歳の比較的若い層だそうである。18歳~44歳の年齢層は、比較的収入が安定しており、金融機関も主要顧客として狙いを定めているらしい。
 これに加え海外で働く労働者からの送金も増えており、貯蓄率の向上につながっている。

 ただし、海外で働く労働者数は、1000万人を超えてから、その増加ペースは明らかに落ちてきた。頭打ちだ。国内での中間層が増えれば、わざわざ海外で働く必要も小さくなっていく。

 そのことは、これまで手元にある金はすぐに使いきってしまうのがフィリピン人と社会の一つの傾向であったが、「宵越しの金」を持つようになった中間層が生まれつつあるらしいのだ。

 もっとも、フィリピン社会の貧困層は3割、すなわち約3,000万人に及び、この人たちには縁のない話。

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映画「二つの判決」を観る [映画・演劇の感想]

映画「二つの判決」を観る

 今年の1月、中野ポレポレ座で、「二つの判決」を見た。
 袴田巌「名張毒ぶどう酒事件」死刑囚・奥西勝の二人の冤罪を描いている。

  
 袴田巌は、死刑囚ながら、釈放されているので、その日常を映してはいるが、長年にわたる拘禁による障害が残っている。長期にわたる拘禁による心身への傷害や妄想もある、最初の半年は、外へ出ようせず、家の中だけを歩き回っていたという。今もなお家の中を歩き回っている。獄中で、歩きまわり体の好調を維持してきた習慣を、そのまま繰り返している。
 したがって、自身で、冤罪を告発することができない。被害者の声を拾おうにも、拾うことができない。姿を映しても、冤罪の全貌を描き出すことはできない。そのため、支援する家族の姿を映すことになる。

 最近、外での生活に少し慣れ、姉・秀子と一緒なら、外出できるようになったという。ボクシングの試合を見に出かけた。ボクシング協会は袴田を支援し、協会として無実を訴えている。試合前にリング上に招待され、客に手を振る袴田の表情は晴れやかだ。
 将棋はよく覚えているらしい。映画監督と指すそうで、袴田が74戦全勝だという。将棋に勝った時の袴田のうれしそうな表情が印象に残る。普段は無表情なのだ。
 自分の好きなことには、興味を示すようになった。その意味では、ゆっくりであるが、回復しつつある。79歳(?)の年齢から回復はゆっくりに見える。

 徐々に回復を見せていることは感動的だけれども、一人では生きていけない状態であり、自立した社会生活を送ることができるできるまで回復するかどうかは疑問だ。年齢も高い。彼が失った人生の貴重な時間はもはや取り戻すことはできない。

 なんと残酷なことをしたことか。

 警察・検察がいったん捜査方針を決めたら、これを覆さない。そのような態度がつくりだした冤罪である。その責任は大きい。

 姉の秀子さんは、袴田巌が出てきた時に生活に困らないように、貯蓄し9,000万円のローンを組んで4階建てマンションを一棟購入した。3階は袴田姉弟が住んでいるが、そのほかの部屋は、貸に出しており、その家賃収入で暮らしているようである。このような家族の支えがあって、袴田巌は出てきても働かなくても生活には困らない状況がつくりだされている。そのためにどれほどの犠牲や負担があったことか。
 袴田は、無罪になっていないので、国民健康保険もなければ、年金もない。そのうえ、拘禁による症状は続いている。警察・検察の犯罪であるが、何の責任も取らない。

 「名張毒ぶどう酒事件」。
 映画は、ぶどう酒瓶の王冠を新証拠として紹介している。当時は奥西は王冠を歯で開けたそうで、歯形が残っているという。毒ぶどう酒事件は、村の公民館?での会合で起きた。公民館の囲炉裏のようなところから、ぶどう酒の王冠はいくつもは発見されている。弁護側が示した新証拠は、王冠に残った歯形は奥西の歯形と一致しない、そう指摘している。
 袴田巌の姿は映像で見ることができるが、奥西勝は獄中(八王子医療刑務所)に拘束されており、その姿を映すことができない。しかも2015年10月だったと思うが、すでに亡くなったので、映像で残すことができない。これも残酷ではないか。
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さまよう民意 [世界の動き]

さまよう民意

 米大統領選は、不動産トランプネオコン・イスラエルと親しいクリントンの一騎打ちとなり、大金を懸けた醜い中傷合戦の終盤戦に突入している。
 これまでの候補者選びで浮き彫りになったのは、アメリカの中低所得者層のため込んだ怒りの大きさだった。新自由主義のもと、超大国アメリカの内部で経済格差が拡大し、さらにこれを是正しない政治への憤りが広がっている。この「憤り」は、解決の処方箋を見いだせていない。
 
 2014年のアメリカ連邦議会選では、人口の0.01%、32,000人の献金額が12億ドルに達し、献金全体の3割を占めた。「金持ちが政治を支配する」構図ができあがった。これが資本主義における代議制民主主義の一つの帰結なのだろうか。

 あまり笑ってもいられない。
 日本でも同じ問題を抱える。低中所得者層は経済的な不満を内にためながら、社会的にはより孤立し、内向きな志向を強めつつある。その裏面として、マスメディアを使った舛添都知事の「せこさ」を笑うつくられた「劇場型政治」のようなものが、題材を変えては何度も繰り返される。一時的に鬱憤をはらして終わる。格差は拡大するばかりで何も解決しない。(9月2日記)
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ドゥテルテ政権、アメリカとぎくしゃく? [フィリピンの政治経済状況]

ドゥテルテ政権、アメリカとぎくしゃく?
ーアメリカの影響力低下ー

1) ダバオのテロ事件

ドゥテルテ2.png
<ドゥテルテ大統領>

 フィリピン第三の都市ダバオ中心部で9月2日夜、爆弾が爆発し14人が死亡、67人が負傷する事件が起きた。3日、アブ・サヤフが犯行声明を出した.。ドゥテルテ大統領はフィリピン全土に「無法状態宣言」を出して、犯人の逮捕、同種事件の再発防止、アブ・サヤフの壊滅に徹底的に乗り出す方針を表明した。

 6月30日の大統領就任演説で示した「過去は過去として忘れよう」というドゥテルテの新方針に基づき、7月25日には「我々は平和を求めている」と施政方針演説をおこない、反政府各組織に停戦を呼びかけ和平交渉の開始を求めた。

 この背景には、経済発展するフィリピンにとって、マニラ周辺だけではすでに限界であり、ミンダナオを含めた地方の発展が必要であるとという、ドゥテルテの判断がある。そのためには国内治安問題やテロ問題を「過去を水に流してとにかく和平にこぎつけ」る方針なのである。それは国民の多くが望むとともに、フィリピンの資本家層の要求でもある。他方で、ドゥテルテ政治の「最大の課題」である「麻薬問題解決」をテーマに、劇場型政治ショウを行い、支持率を高めるために全力投球したいとの考えがあった。

 紆余曲折があったものの新人民軍は和平交渉に応じる姿勢を示し、ノルウェーのオスロで5年ぶりに再開した交渉の末、8月26日には「無期限停戦を盛り込んだ共同声明」の発表にまで漕ぎつけた。

 これに対しアブサヤフは一向に停戦の呼びかけに応じる気配をみせず、8月26日にはミンダナオ地方のスルー州パティクルで国軍と大規模な交戦が勃発、アブ・サヤフの戦闘員19人が殺害される事態となった。アブ・サヤフは依然として外国人を含む10人以上の人質を拉致しており、前任のベニグノ・アキノ政権下では米軍と共同で掃討作戦を実施したこともある。

2)テロ事件の意味

 誤解してはならないのは、アブ・サヤフは、イスラム、およびイスラム教とは何の関係もない。アブ・サヤフ自身は、ISと関係があると自称しているが、実際にはアルカイーダやIS同様、アメリカの好戦派やCIAに育成され、雇われたテログループであり、今回のテロ事件もアメリカ政府内の好戦派の指示によるものだろうと推測される。ドゥテルテもアメリカの「意図」に気づいているだろう。これまで何度も、テロ事件を起こしてはアメリカ軍が介入してきた。彼はそのやり口をずっとダバオにいて見てきたのである。

 ドゥテルテ新政権が発足してすぐに、しかもドゥテルテがダバオに滞在しているその時を狙ってテロ事件を起こせば、新政権は何らかの対応をしなければならない。しかし、テログループを逮捕し壊滅させるのは容易ではない。したがって、テロ事件は掃討作戦実施を名目に、米軍がミンダナオに進駐する政治的理由をつくったのであり、新政権にアメリカ政府から共同掃討作戦の打診があったはずなのだ。ドゥテルテをアメリカ政府の影響下に引き込むための見え見えの策である。

 しかし、アメリカ政府の「もくろみ」は、なかなか思い通りには進んでいない。ドゥテルテに対し、影響力を行使できていない。

3)ドゥテルテによるオバマ侮蔑発言

 ドゥテルテ政権は、麻薬の密売人は即、殺しても構わないとする強引な麻薬撲滅作戦を実行して
おり、大統領就任から6月30日までに、警察によって殺害された麻薬の密売人は2,000名を超える。法律によって裁かない超法規的殺人であり、明白な人権侵害である。すでに国連やアムネスティなどから批判を受けていた。ドゥテルテ政権の無法な殺人は許されることではない。

 この件で、東アジア首脳会議(EAS)首脳会談において、オバマ大統領から批判されると察知したドゥテルテ大統領が、事前の記者会見での記者の質問に、オバマ大統領をさして「くそったれ(son of a bitch)の意見は聞かない」と発言したという。そのことで、今回の米比会談がキャンセルとなった。もちろん翌日には、フィリピン政府はオバマ大統領個人を侮蔑したのであれば後悔すると声明し、米比会談は後日開かれることになった。

 麻薬撲滅をテーマとしたドゥテルテ政権の「劇場型政治」は、今のところ国民から高く支持されており、この高支持率がドゥテルテの政治的基盤であるので、自身の政治スタイルへの批判に、我慢がならなかったのだろう。

4)ドゥテルテの発言内容

 いくつかの報道をみたが、ほとんどは「オバマ大統領へ侮蔑発言を行った」と書くだけで、発言内容を伝るものは少なかった。マスメディアのこのような姿勢は、情報操作にほかならない。探した限りでは読売新聞9月7日、ハンチングトン・ポストが発言内容の一部を伝えていた。

<ドゥテルテ大統領の発言要旨>(9月5日、ダバオでの記者会見で)

 「フィリピンは属国ではない。私はフィリピン国民だけに答えるが、彼(オバマ大統領)は、何様だ。我々が植民地だったのは遠い昔だ。私の主人はフィリピン国民だけだ。敬意がしめされなければならない。質問や声明を投げかけるだけではいけない。米国はフィリピンで多くの悪事を働いてきたが、今まで謝罪したことがない。米国は我が国を侵略し、我々を支配下に置いた。裁判なしに人を殺してきたひどい記録が皆にあるのに、なぜ犯罪と戦うことを問題視するのか。」(読売新聞、9月7日
 「私は独立国家フィリピンの大統領だ。植民地としての歴史はとっくに終わっている。フィリピン国民以外の誰からも支配を受けない。一人の例外もなくだ。私に対して敬意を払うべきだ。簡単に質問を投げかけるな。このプータン・イナ・モ(くそったれ)が。もし奴が話を持ち出したら会議でののしってやる」(The Huffington Post、9月6日)

 発言内容を見れば、「プータン・イナ・モ(くそったれ)」以外は、それほど問題ではない。むしろ、独立国家フィリピン大統領を、支配しようとするな!植民地のように扱うな!と言っており、長年にわたるアメリカによるフィリピン社会の支配に対する反発、怒りが直截に表現されている。

4)ドゥテルテ政権の外交方針、ぎくしゃくする米比関係

 前のアキノ政権は親米でアメリカ政府の言いなりだったが、ドゥテルテ大統領は米国一辺倒だった政治外交経済関係を改め、中国と関係改善し、さらなる経済発展のため中国資本の投資を呼び込みたいと、当選前に公言していた。これまでの外交方針をあらため、中国とアメリカを天秤にかけると表明したに他ならない。そして現在までのところ、確かに天秤にかけている。 

 アメリカ・オバマ政権からするならば、アキノ政権を使って南シナ海問題で国際仲裁裁判所に訴えさせ、中国へ圧力をかけるキャンペーンを行ってきたわけで、侮蔑発言をしたからと言ってドゥテルテ政権と関係を断てば、米比間の協力関係に悪影響が及びそうだし、それ以上にフィリピン政府を中国側に追いやってしまいかねない。

 ドゥテルテ大統領が、「アメリカからの投資はあまり見込めない。これからは中国だ」と公言したり、麻薬撲滅作戦での超法規的殺人へのオバマ大統領による批判に噛みつく、こういう事態が起きている。

 このようなことは、これまでなかったし、想像さえできなかった。明らかにアメリカの影響力、支配力が弱まっている。「アメリカ人はけっして好かれてはいなかった、力を持っているし金を持ってくるから、ニコニコ歓迎していたが、そうでなくなれば用はない」というわけだ。

 ドゥテルテ大統領の「反米感情」が、どこに政治的基盤を持つのか不明なところがあるし、それゆえどれほど確固としたものか、測りかねるところもある。支持できないところもある。ただ、そこに東アジアの政治経済秩序の新しい変化が現れているのも確かなようだ。(9月8日記、文責:林 信治)
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小野田帰還、日本政府は何を恐れたか! [フィリピン元「慰安婦」]

「42年目の真実」が暴き出した真実

残留日本兵 小野田寛郎 ―7月26日 NHK放送―

 7月26日NHKは「42年目の真実」と題して、敗戦後29年間、フィリピン・ルパング島に潜伏し続けた小野田寛郎元少尉が発見され帰国した際の、日本政府とフィリピン政府間の外交交渉文書が情報公開され、当時の極秘の交渉内容が明らかになったと、放送した。

ルパンぐ島に30年潜伏.jpg
<1974年フィリピン・ルパング島で、投降する小野田元少尉>

 この放送を見て、まずあきれた、「被害事実と法的責任は認めない、決して賠償しない、見舞金を支払って済ませる」、「被害者は相手にしないで、政府とだけ交渉する」という小野田帰還に際し日本政府がとった態度に対して。

 これは、日本政府外務省の戦後一貫した態度であり、慰安婦問題での2015年末の「日韓合意」の内容とまったくそっくりなのである。
 そしてNHKが、日本政府のこの立場・主張を、無批判にただ報道したことに、再びあきれた。
 放送は下記の内容を紹介していた。

1)埋もれていた極秘の外交文書

 日本とフィリピンの戦後史を研究している広島市立大学の永井均教授が、残留日本兵小野田元少尉の帰国に関する日本政府の極秘文書670枚を情報公開請求で初めて入手したという。元少尉の帰国を巡り、日本とフィリピン政府との間で極秘の交渉が行われていた。

 公開された文書には、
「小野田氏ら元日本兵により30人が殺され、100人が傷つけられた」
「何らかの手を打たなければ、フィリピン側の世論も納得しない」

 と記されており、「戦争の終結を知らない」残留日本兵らが、地元の住民に深刻な被害を与えていたことが公文書で初めて確認された、という。

 小野田寛郎ら残留日本兵は、敗戦後、29年間継続した戦闘行為によって、30人以上を殺したが、実際に殺傷したのは武器を持たない現地住民が大半だった。そればかりか、住民の畑から作物を盗み、大切な財産である農耕牛(小野田の主張では野生牛)を捕獲し食料にしている。戦争終結後の行為は、フィリピン法に照らして犯罪である。否定しているものの、小野田は敗戦・戦争の終結を知っていたと推測される。(小野田が戦争終結を知らなかったと強弁したのは、敗戦後の30人以上の住民殺害、100人もの傷害が、強盗、殺人、傷害であると自覚したうえで実行したことになるからである。)

2)賠償ではなく「見舞い金」3億円

 交渉の中で、フィリピン政府による被害への補償有無の打診に対し日本政府は1956年の日比賠償権協定で解決済みとの立場を崩さなかった。現地では殺され傷つけられた被害者や遺族も現存していたし、敗戦後の小野田らによる殺人・傷害・窃盗がフィリピン法によって裁かれる可能性もあった。日本政府が最も気にしたのは、フィリピン政府や住民から被害を訴えられ賠償請求されることだった。戦時賠償を恐れたし、そこにしか関心はなかった。

 外交文書は、そのような「真実」を明らかにしたにもかかわらず、NHKはまったく能天気に、日本政府・外務省の主張をそのまま報道したのである。

 結局、「賠償ではない見舞金」をフィリピン政府に支払い、小野田の住民殺人・傷害に対しては当時のマルコス大統領から恩赦を取り付けた。このとき日本政府は、見舞金としながらも、ルパング島の被害住民・遺族を交渉相手にしないで、フィリピン政府、当時のマルコス政権とだけ交渉し、政府に金を支払って住民を黙らせることにした。

 「被害者らは、損害賠償請求権を行使するおそれがある。見舞金は、請求権行使を思い止まらせる効果をもつであろう」。このように交渉記録には、見舞金支出の日本政府の目的が赤裸々に記されている。

 「損害賠償請求権を行使させないために見舞金を支払う」のである。日本政府にとっては、被害者に謝罪するとか、賠償することが重要なのではない。法的責任を認めない、賠償しないことが何よりも重要なのだ。「見舞い金を拠出」し、「フィリピン政府への感謝を表明」しながらも、被害を謝罪し賠償することは決してしない方針を、小野田帰還の際にも貫いたことが確認された。「加害責任は認めない、賠償も果たさない」、その上での「見舞、お詫び、感謝」である。日本政府にとってはそれが「未来志向」であり、「日本側の誠意」の示し方であった。(当時、交渉に携わり、後に外務事務次官を務めた竹内行夫氏が、穏やかなでありながら本当のところ「非情な」卑劣な、そのような言葉でインタビューに答えている。)

 見舞金を管理・運営するのはフィリピン政府から委託された日比友好協会であり、見舞金の管理運営に日本政府は関与しないし、責任を負わない、そのようにも決めている。

 2015年12月の「日韓合意」に際しても、日本政府は「未来志向」という言葉を繰り返した。「加害責任は認めない、賠償も果たさない」、その上での「見舞、お詫び、癒し」である。侵略し加害の過去を消し去ることが、日本政府にとって一貫した「未来志向」の意味なのである。


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<投降時の衣服・靴の一部>

3)3億円の使途は?

 比日友好協会は3億円を何に使ったのか?
 元日比友好協会関係者は、日本語学校の運営や、日本への留学生の支援に充てたと語った。一方、NHKの取材に対し、ルパング島の被害者遺族は、「見舞金を受け取っていいないどころか、見舞金の存在さえ知らなかった」と語り、ルバング島元町長は、「3億円が住民や島のために使われた事実はない」と答えた。

 小野田帰還に対する日比交渉の結果、結局、被害者や遺族は、日本政府から公式謝罪されることもなければ、賠償されもしなかったのである。

 これは、誰が悪いのか? 何が問題なのか?
 3億円を勝手に使った日比友好協会が悪いのであって、日本政府に責任はないことになるのか?

投降命令を受ける小野田さん1974.jpg
<1974年、フィリピン、ルパング島、元上官から投降命令を受ける小野田寛郎元陸軍少尉>

4)1956年の日比賠償権協定で解決済?

 日本政府・外務省は戦時賠償については、各国との賠償権協定で解決済との立場をとり続けている。各国との請求権協定で「完全かつ最終的に解決された」と定めていることを根拠に、すでに法的責任はなく、賠償責任もない、だから新たに、あるいは追加して賠償することは禁止されており、それゆえ見舞金としてしか拠出できないという立場をとっている。個人賠償請求権問題も法的に解決済みであるとし、法的には被害者個人に賠償することが禁じられているかのように主張するのである。

 このような日本政府の理解と主張は、きわめて身勝手なものであり、国際基準から外れている。慰安婦問題では国連の人権委員会は日本政府に対し、被害事実を認め、法的責任を認め、政府が公式謝罪し、賠償することを、永年にわたって勧告し続けている。

 2016年6月には、日中戦争時に強制連行され過酷な労働を強いられた中国人被害者や遺族が三菱マテリアル(旧三菱鉱業)に対して損害賠償と謝罪を中国で求めていた問題で、同社は、生存する被害者(三菱側によると3,765人)に直接謝罪し、賠償する和解文書に調印した。謝罪も賠償も拒否してきた日本政府の主張には従わないで、民間レベルでの歴史問題の解決方法を示した。

5)個人賠償請求権は消滅していない!

 日本政府の立場、主張は、日本の司法の判断とも食い違っている。

 中国人の戦時中の強制連行を巡る訴訟が、日本の裁判所に多く起こされたが、原告側の敗訴が相次いで確定している。日本の最高裁は2007年4月、「1972年の日中共同声明で個人の請求権も放棄された」との判断を示したが、一方、最高裁は関係者に被害者救済も促しており、この点では日本政府・外務省の主張とは、食い違っている。
 
 また、2007年、中国人「慰安婦」訴訟において、日本の最高裁は、サンフランシスコ平和条約第14条(b)及び日中共同声明第5項における「請求権を放棄する」の意味について、被害者の個人賠償請求権を「実体的に消滅させる」ことではなく、「裁判上訴求する権能」を失わせるにとどまると解するのが相当であると判示した。この最高裁の論理に照らしても、個人賠償請求権は、「裁判上訴求する権能」を失ったものの、「実体的に消滅」していないのであるから、日本政府が賠償するつもりがあればできるのであって、決して禁止されているわけではない。

 日本政府・安倍政権は、アジア太平洋戦争における法的責任は認めない、賠償も決して認めない、認めたくないという歴史修正主義の政治路線、イデオロギーに憑りつかれているというのがより適切かもしれない。

 そしてNHKは、この日本政府の主張・立場を、まったく無批判に報道した。国営放送、外務省の宣伝機関の役目を果たした例を、この夜も確認したのだ。(8月22日記、文責:児玉 繁信)
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?? 「9条は日本人がつくった」?? [現代日本の世相]

9条は日本人がつくった? 
だから押しつけ憲法ではない??

1)半藤一利「憲法9条は日本人がつくった」?

 半藤一利氏は2013年6月、「憲法9条は幣原喜重郎がマッカーサーに提案した」ことをもって、マッカーサーではなく日本人がつくったと指摘し、「押しつけ憲法だから改憲だ」という自民党の主張に反論している。半藤氏は『文藝春秋』編集長を務めた文芸評論家であるが、その戦争体験から、安倍政権の改憲の動きに反対している。
 護憲グループのなかには、この半藤氏の論拠、「押しつけではない、日本人がつくった」を利用しようとする人もいる。
 半藤によればその根拠は、マッカーサーは、「幣原が提案した」と語っており、幣原は、「自分がつくった」と語っていないものの、否定はしていないからだとしている。そして、幣原が9条を持ち出した背景は、1928年のパリ不戦条約の精神であろうという半藤の解釈を披歴している。不戦条約は、第一条において、国際紛争解決のための戦争の否定と国家の政策の手段としての戦争の放棄を宣言しており、調印に関わった幣原は、同条項の影響を強く受けていた、敗戦に際し「この精神を取り戻す」べきだと考えた幣原の提案に、マッカーサー氏は感動し、同意したという歴史解釈を披歴している。

2)「報道ステーション」で幣原説を報道

 テレビ朝日「報道ステーション」が2016年2月と5月の2回にわたって、憲法9条の発案者は当時の首相幣原喜重郎であるという説を取り上げ、半藤一利氏と同様に、「日本国憲法は日本人がつくった、押しつけ憲法ではない」と主張し、注目を集めた。
 根拠として、1957年に岸信介首相(当時)が作った憲法調査会の録音データの中に、幣原発案説を裏付ける証言があったと指摘した。第9条の発案者は?という質問に対して幣原自身が、「それは私であります。私がマッカーサー元帥に申上げ、第9条という条文になったんだ」と語っているという。
 さらに5月3日の放送では、幣原の盟友・大平駒槌が幣原から直接聞いた話を記録したノートでも、幣原がマッカーサーに提案したと書かれているという。

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<幣原喜重郎>

3)幣原説は正しいか? 

 マッカーサーは、「幣原が提案した」と語っているが、マッカーサーの回顧録は後の時代から自身を正当化する発言や記述が指摘されており、「マッカーサーが語った」ことをそのまま根拠にすることはできない。マッカーサーは、憲法草案が発表された当時、占領軍が草案を起草した事実を、極東委員会に対しても、日本国民に対しても、隠さなければならない立場にあった。
 幣原は、個人として行動したのではない。1945年10月には首相となり、天皇の側近としてマッカーサーと交渉したのであって、幣原個人の考え(=9条)をマッカーサーに伝える立場になかったし、その権限も持っていなかった。幣原はこのとき、天皇への戦犯追及を絶対に阻止し、何としても天皇制を存続させようと交渉したし、そのためには東条と軍部のせいにして責任追及を乗りきろうとした。これは、天皇と幣原を含む側近グループの公式の政治的立場でもあった。このような歴史を忘れてはならない。憲法9条、すなわち旧日本軍の武装解除とこの先の戦争放棄、戦力の不保持は、1945年敗戦直後において天皇制存続のための条件であり、裕仁は天皇制維持のためこの条件を受け入れたのである。

 幣原が、パリ不戦条約の精神に感化されたとする半藤の解釈は、現実の政治を離れた牧歌的な歴史解釈である。
 しかも「憲法9条は日本人がつくった」と勝手に言い換えている。「日本人」ではない。マッカーサーと交渉したのは、東条のせいにして、天皇への戦犯追究を回避し天皇制を存続させようとした天皇と側近グループであると、正確に規定しなければならない。日本人とあいまいに書いてはならない。幣原にとって9条は目的ではなく、天皇制存続のための条件なのだ。それを取り違えてはならない。

 当時の内外の政治状況からすれば、憲法草案を、マッカーサー占領軍が起草したとするのは都合が悪い。日本側、すなわち当時マッカーサーと会見した数少ない日本人である幣原が提案したことにする必要があった。
 半藤の新しい解釈は、敗戦直後の、世界的な情勢の考察が欠けている。

4)敗戦直後、裕仁と天皇周辺のパワーエリートたちは、どのように振る舞ったか?

 敗戦直後、天皇周辺の権力者たちにとって、天皇への戦犯追及を避け、天皇制を維持することこそ、最重要な課題であった。それは裕仁本人の意思でもあった。東京大空襲などの日本人の戦災死、被害、原爆による民間人の大量死、被害などは、深刻だけれども、天皇と権力者は、戦争であれば避けることはできない犠牲であると考えており、それよりも重要なことは「国体護持=天皇制の存続」であった。ポツダム宣言を受け入れ降伏する際にも、敗戦直後においても、変わらなかった。

 そのために敗戦直後、天皇周辺がとった対応は、東条英機、軍にすべての責任を負わせて、天皇の戦犯追及から逃げおおせ、国体護持=天皇制の維持を目指した。裕仁は退位さえも拒否した。敗戦の1945年、裕仁と側近たちは、そのように対処することにしたし、実際に対処した。幣原はその政治的目的の中で動いている。(幣原説を唱える人は、幣原の個人的考えを実行したかのように描き出している、歴史家として失格である。)

 裕仁と天皇周辺の権力者たちは、敗戦から1945年末までに、マッカーサーと交渉し、天皇の戦犯追及をしないこと、天皇制維持の確約を得た。その結果が、日本国憲法でもあるのだ。天皇裕仁は、日本国憲法を受け入れ(=天皇制維持を約束されたも同然)、その際にマッカーサーに感謝を表明している。

 したがって、裕仁は「押しつけ憲法」などと現憲法を批判したことは一度もない。感謝して受け入れたのが歴史的事実である。そのことをまずきちんと確認してしておかなくてはならない。安倍晋三や自民党・日本会議の政治家たちは、現憲法を「押しつけ憲法」と非難しているが、天皇裕仁の意に反しているのである。

 日本国憲法をよく見なければならない。憲法9条はその前の1条から8条、すなわち天皇制維持と一体である。天皇制を象徴天皇制として維持したうえで、9条、すなわち戦争放棄と戦力不保持が述べられている。旧日本軍に責任を負わせて、日本軍は武装解除し、戦争放棄する。裕仁は責任を負わないで天皇制は維持する。武装解除した後、天皇制を共産主義の脅威から護るのは米軍と米政府ということになる、少なくとも裕仁はそのように認識した。そのためには米軍は日本にいてもらわなければならない。のちに裕仁は沖縄を米軍に差し出すのである。

 憲法9条を提起したのは幣原ではない。幣原には、平和主義や国民主権の思想はない。あったとしても、天皇を戦犯追及から守るため東条と軍び責任を負わせて武装解除させ、天皇制維持のための「方便」の一つである。そのためにマッカーサーとの間で打ち合わせた芝居であった。それ以上に評価してはならない。

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<マッカーサーと天皇裕仁、1945年9月27日 第一回会談>

5)マッカーサーとアメリカ政府は?

 マッカーサーとアメリカ政府にとって、重要だったのは、米国のイニシアティブで日本を占領支配し、アメリカの同盟国にすることだった。そこにソ連の影響を排除しなければならなかった。敗戦直後の世界情勢がそこに反映している。すでに対ソ戦は始まっていた。
 マッカーサーはあくまで「連合軍司令官」であり、形の上では極東委員会が日本の軍国主義・ファシズムを払拭し再出発させる責任を負っていた。極東委員会は、日本が二度と戦争を引き起こさないように、軍国主義、ファシズムの根源である軍の解体、天皇制・財閥の解体、地主制度の廃止・農地解放、日本社会の民主化、国民主権の国家として再出発することを要求していた。

 しかし、マッカーサーにとっては何よりも、ソ連やオーストラリアなど極東委員会が日本占領の方針・方向を決める前に、アメリカによる日本の再生、支配、占領の実績をつくってしまおうとした。極東委員会にイニシアティブをとらせないために、直前に急いで日本国憲法を制定させて、日本はすでに自力で民主化に踏み出した実績をつくり、極東委員会に「介入」させないようにした。その結果、米軍による日本の単独占領支配を実現し、そのことで後に日本をアメリカの同盟国にしたのである。アメリカ政府からするならば、これはマッカーサーの第一の「功績」である。

 マッカーサーは、軍に責任を負わせて解体しながら、日本の支配層と官僚、警察、司法などの支配機構をそのまま利用することにした。従来の支配機構を利用するには、その頂点たる天皇と天皇制を利用すべきと判断した。マッカーサーは実際にその通りに実行した。そして、日本国憲法はマッカーサーの構想とも矛盾していないのである。

 日本を朝鮮、台湾の背後に位置する対ソの根拠地にする、その占領支配をつくりあげていくうえで、既存の権力=天皇を利用することはマッカーサーにとってきわめて「合理的」であった。占領軍=米軍、米国への反発は、天皇の権威を利用し抑えることができた。占領軍の戦力さえ当初の予定より大幅に削減できた。

 マッカーサーにとって憲法9条は、日本軍を武装解除し、米軍が軍事支配するのだから、何ら問題はなかった。決してマッカーサーの「平和主義」「理想主義」を表現しているわけではない。

※「マッカーサーは9条を含む憲法をつくるとき、理想主義者になった。そのあと、普通の「常識」に戻った」。(ダグラス・ラミス『経済成長がなければ私たちは豊かになれないのだろうか』)。このように書いている人もいる。これもまた、牧歌的な,能天気な解釈だろう。
 マッカーシズムのあとに育ったアメリカ知識人に典型的に観察される歴史認識を欠いた解釈である。


6)日本国民にとっては? 


 日本国民は、日本国憲法を制定する過程でほとんど関与していない。そのイニシアティブをとってはいない。

 しかし、日本国憲法、憲法9条が公表された時、これを熱烈に歓迎し受け入れた。それはマッカーサーや天皇裕仁の意図を超えて、熱烈に歓迎し支持した。戦争の時代を過ごし、家族の誰かが戦死し、また空襲や原爆で多くの人々が死傷した。戦争中の窮乏生活は我慢がならなかった。そのような日本国民は、国民主権、平和主義の憲法を熱烈に歓迎し支持したのである。そのあとも日本国民の平和志向や平和運動は9条を護り続け、平和運動は護憲運動と一体化した。9条は、マッカーサー・米国政府や天皇の意図を超えて、日本国民に支持され、平和を希求し戦争被害・原爆被害を告発してきた歴史をつくり上げてきたし、憲法擁護運動は、戦後日本社会をつくりあげてきたのである。そのつくりあげられてきた戦後の歴史のなかに、私たちは生まれている。その現実を無視するわけにはいかない。

 ただ、9条を擁護する日本国民や平和運動は、9条と一体であった1~8条、すなわち天皇制条項への批判を、まったく不十分にしかしてこなかった。

 日本国憲法はそもそもその出発から、当時の歴史的な背景に規定された矛盾を抱えているのである。憲法の基調は、平和主義、国民主権、基本的人権の尊重であるが、平和主義や国民主権とは反対物である天皇によって象徴されている。天皇と天皇制は、天皇主権=独裁=民主主義の反対物であり、また戦争、特に明治以降の侵略戦争と結びついた「平和の反対物」である。そのようなもので新憲法を象徴する合理的な論理は存在しない。

 戦後日本社会では、この矛盾を批判すること、あるいは言及することさえも、多くの場合、避けてきた。憲法擁護の平和運動内でもほとんど触れてこなかった。マスメディアは絶対に触れない。天皇制批判にたいして、NHKは絶対にやらない。真実を明らかにする意志が欠けている、歴史認識の中で天皇制要因を、勝手に削除して報道するのが日本のジャーナリズムとなっている。

 国民の多くも触れない。平和運動団体の多くも触れない。明白に日本の平和運動の欠陥であるが、誰もそのことに触れようとしないで、「9条を守ろう」と、こう主張してきた。1~8条と、9条とを切り離して強調したり、主張しても何も問題ないという判断がそこに見える。もちろん、決して切り離すことはできない。

 日本国憲法、9条は、決して天から与えられたものではない。第二次世界大戦の結果、ファシズム、日本の軍国主義が敗北し、平和を希求する世界中の人たちの犠牲と戦いがあって、もたらされた。しかし、戦争で多大な犠牲を強いられたもののファシズムや軍国主義と戦わなかった日本国民の多くにとっては、日本国憲法、9条はまるで天から授かったもののように思えたし、未だに思っている。

 裕仁は新憲法制定に際し、マッカーサーに感謝を表明している。天皇制を存続させてくれたからだ。裕仁が感謝して受け入れたことから、憲法は押しつけ憲法ではないと言えよう。しかしそのことは、「押しつけかどうか」が本質的な問題ではないことも同時には示している。

 また、日本国民は、憲法起草の段階ではとんど関与していないが、草案が公表された時、日本国民はこれを熱烈に支持した。国民が支持し受け入れた時点で、押しつけ憲法ではないし、押しつけは問題にならない。それで十分なのだ。「押しつけ憲法ではない」と主張するために、そもそも幣原説は不要なのだ。

 憲法9条を擁護するためなら、どのような理論も解釈も利用すべきという御都合主義、プラグマティズムは感心しない。「幣原が9条を提案した」という説が、自民党や右翼の「押しつけ憲法」だから改憲という主張への反論になると考えるのは、あまりにも政治的に幼いであろう。

 半藤氏や「幣原説」を唱える人たちが、改憲に反対していることは尊重し敬意を表するが、御都合主義の歴史解釈や説明には賛成できない。

 日本国民ではなく、幣原喜重郎(=天皇の側近であり天皇の政治的意思を実行した敗戦直後のパワーエリート)が、自分が提案したと書き残したから、「押しつけ憲法ではない」と言えるのではないのだ。そのことをよく弁えておかなければならない。

 私たちは憲法を擁護する、憲法の基調が、平和主義であり、国民主権であり、基本的人権の尊重しているからである。(文責:児玉繁信)

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ハーグ仲裁裁判所は、仲裁ではなく対立を煽った [フィリピンの政治経済状況]

ハーグ仲裁裁判所は、仲裁ではなく対立を煽った

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<ドゥテルテ大統領>

1)審理されるべきではなかった訴訟、法的拘束力はない裁定

 ハーグ仲裁裁判所は、7月12日、中国沿岸とフィリピンの間の“九段線”の内側にある様々な島々や岩に対する、中国の主張に不利な裁定をした。これに乗じてアメリカ政府は、中国に対する“国際法の尊重”要求をもっともらしく主張した。同時にペンタゴンは、挑発的にも、ドイツ連邦共和国海軍を巻き込み、中国を排除して、国際的海軍演習“リムパック2016”をこの地域で開始した。事態は益々険悪になりつつある。
 
 ハーグ仲裁裁判所とその裁定について、虚偽の宣伝が広がっている。
 ハーグ仲裁裁判所は、紛争中の両当事者と協力して、仲裁者の選任を促進するための、国際海洋法裁判所(ITLOS)所長配下にある官僚機構にすぎない。海洋法の仲裁機関は、当事国どうしが話し合いで紛争を解決する際の仲裁のために設置された機関であって、国内裁判所とかなり異なる。法的拘束力を持たない仲裁委員会が裁定を出す過程全体がそもそも違法だ。

 中国は、仲裁過程への参加も、仲裁委員会の管轄権を認めることも拒否し続けている。
 仲裁には、対立する主張の解決を求める両当事者(中国政府とフィリピン政府)が、お互いの対立する主張を解決すべく、中立的な仲裁人に救いをもとめることに同意する必要があるが、この手続きを欠いている。

 今回の場合、一方の当事国の中国が仲裁に同意しておらず、外交的な二国間交渉の継続を望んだにもかかわらず、アキノ前大統領政権がオバマ政権の指示のもと、一方的にハーグでの仲裁を進め、7月12日、仲裁廷の特別に選ばれた5人の裁判官が、中国とフィリピン間で対立している、南シナ海の、大半が無人の島々の一部に関して裁定を出してしまったのである。

 したがって、そもそも審理されるべきではなかった訴訟であり、裁定は無効であり、法的拘束力もない。そのようなことをすべて知ったうえで、中国非難の国際的宣伝を組織し対立をつくりだすために、フィリピン政府に訴えさせ、生まれた裁定である。

2)アメリカのアジア戦略

 東アジアは世界で最も成長を続けている地域だ。それゆえ南シナ海は経済的にも軍事的にも重要である。ここは、世界の日々の海運の約半分、世界の石油海運の三分の一、液化天然ガス海運の三分の二の通路であり、世界の漁獲高の10%以上を占めている。

 アジアへのリバランス戦略を掲げるアメリカは、世界の成長地域である東アジアを不安定な状態に陥れることで、この地域に対する影響力と支配権を確保しようとしている。日韓フィリピンとの軍事同盟を強化し、中国との対立構図を作り上げ、何らかの軍事行動、経済制裁実施が可能な状態を、計画的かつ戦略的につくりあげつつある。
 
 2013年まで中国とフィリピンは、島の紛争について外交的対話をしていた。2013年にアキノ政権が、対話をやめ一方的にハーグ仲裁裁判所に正式仲裁を請求し、以来、アメリカ軍による中国を意識した行動が行われるようになった。
 
 中国の重要だが脆弱な海上補給線、中国の経済的アキレス腱こそが、まさにアメリカ政府とNATOが、標的にしているものだ。それゆえ、アキノ政権に、ハーグ仲裁手順を一方的に開始するようにさせたのである。

 アメリカ政府は中国に対して「海洋法条約を守れ!裁定に従え!」と要求するが、アメリカ自身は海洋法条約に入っていない。批准どころか署名もしていない。その理由は、もしアメリカ政府が海洋法条約に入るなら、中国と同じような裁定をアメリカが食らい、従わねばならなくなるからだ。アメリカ空母の行動海域には、誰の許しも無用である、勝手にホルムズ海峡を通過し、世界のあらゆる海を自由に航行する。

 世界の覇権国であるアメリカは、アメリカ国益に反する裁定をつきつけられて権威を落とすぐらいなら、最初から加盟しない方が良いと考え、海洋法条約に署名していない。アメリカ政府は国際法を守るつもりなどない。イラク侵攻という重大な国際犯罪を犯したが、裁かれもせず、反省もしていない。

3)フィリピン政府には、アメリカの後ろ盾

 フィリピン政府の行為にはアメリカ政府の後ろ盾がある。
  
 1992年にフィリピン上院が撤退させたアメリカ軍を、アキノ政権は6年間の大統領在位中に、スービック海軍基地とクラーク空軍基地に再び招き入れた。2014年4月には、アメリカ政府との間に新たな防衛強化協力協定を調印した。

 アメリカ軍のフィリピン基地への帰還は、中国の世界的な影響力を封じ込めるためのオバマの“アジアへのリバランス戦略の一環であり、南沙諸島、スプラトリー諸島紛争に関するハーグ仲裁を開始するアキノ政権の決定は、オバマ政権により全面的に支援された。
 
 尖閣諸島に対する安倍政権の主張を支持し緊張を高めたのと同様に、アメリカ政府は、南シナ海の紛争中の領土問題を意図的に軍事問題化しようとしている。

 南シナ海での出来事は、アメリカ政府に安倍の日本も加わって、極めて入念に計画された事件であり、海洋法に関する国際連合条約の下で演じられているこの喜劇の当事者、主要関係者が一体誰なのかを知ることが重要だ。

4)日本政府の汚い役割

 今回の裁定では、仲裁委員会の5人の相互指名という、UNCLOS条約中の法的手順を遵守していない。フィリピンは、一人の裁判官を指名し、残りの4名を中国政府ではなく、当時の国際海洋法裁判所(ITLOS)所長だった柳井俊二氏が指名した。元駐アメリカ日本大使の柳井俊二氏は、安倍晋三首相の側近の一人であり、三菱グループの顧問でもある。
  
 アメリカと日本は、今回の裁定の不備、不法、強制執行の機能がないことなど意図的に隠しながら、裁定を無視する中国を「国際法違反の極悪な国」と非難して国際信用を失墜させるキャンペーンをおこなっている。裁定が出た後、アメリカ政府は「中国は裁定に従うべきだ」と表明した。日本外務省はマスコミに対し、中国が国際法違反の極悪な国であると宣伝するよう誘導している。日本のマスコミは、外務省の宣伝機関になっている。仲裁機関の機能を意図的に無視し、「裁判所」の「判決」が出たと書き、国内裁判所と同等の絶対的な決定であるかのような虚偽の報道を行っている。

 中国政府は、安倍政権が、ワシントンのために、汚らわしい傀儡役を演じていることをよく知っている。7月15日、モンゴルでの国際会議(ASEM)で会談した李克強首相に安倍首相が、海洋法裁定を受け入れるように求めた時、李克強は激怒し、「二国間問題である、日本は決して口を出すな!」と強い口調で応えた。
 
 米国が世界を引き連れて中国を批判しようとするが、喜んで乗っているのは日本だけで、欧州や東南アジアなどその他の国々は米国に同調してはいない。EUの首脳たちも英国でさえも、誰もこの件で中国を批判する発言をしていない。アメリカの同盟国オーストラリアは「そもそも本件は海洋法の仲裁になじまない」などと対立激化を押しとどめようとしている。
 このような事情を日本のマスメディアはまったく報道しない。

5)フィリピンでは?

 新たに選ばれたフィリピン大統領ロドリゴ・ドゥテルテが、中国との紛争をエスカレートさせようとするアメリカ政府からの圧力にどう対応するか、注目を集めている。
 なぜならば、ドゥテルテ新大統領は選挙前に、これまでの中国敵視・対米従属の国是を放棄し、中国と和解して米中双方と友好な関係を結ぶことをめざすと声明したからである。フィリピンが中国敵視・対米従属から対中協調・対米自立に転換していくのではないかという期待を抱かせた。
 ドゥテルテは、アキノ政権が拒否していた中国との直接交渉を再開すると語り、アキノとの「違い」を宣伝した。ドゥテルテ新政権は、裁定2日後の7月14日、フィデル・ラモス元大統領を特使に任命し、中国と交渉を始めた。

 海洋法機関は、当事者同士の和解を最優先し、和解結果の内容が海洋法にそぐわないものであってもそれを支持することになっている。中比が交渉で合意するならば、裁定は無効になり、「中国は裁定を受け入れ、埋め立てた環礁を元に戻し、南シナ海から撤退しろ」と求める日米などの主張も意味を失う。

 そもそもアキノが二国間交渉をやめ提訴したのに対し、再交渉に入っていることはすでに仲裁裁判所と裁定を無効にしていることを意味する。ただ、フィリピン政府は交渉で、裁定の実行を求めており、その点ではアメリカ政府の意向に従う立場を表明している。ドゥテルテ政権がこのままアメリカ政府の丸め込まれる可能性もある。ポピュリズムで当選したドゥテルテは、人気があるものの政治基盤はきわめて流動的なのだ。

 中国とフィリピンとの間での、中国と日本との間での、南シナ海や東シナ海の潮に濡れた不毛の島々を巡る意見の違いは、海洋埋蔵石油とガス獲得の問題でも、中国人漁師に、更に数百万匹の魚を獲らせようという問題ではない。

 これは、もっぱら南シナ海という東アジア諸国にとっての最も重要な経済地域・輸送路の平和と安定をいかに保つかという、安全保障にかかわる問題である。この地域で、いかに対立を拡大させず、軍事行動を起こさせないためにはどうすべきか? 対立をあおるアメリカ、便乗する日本の外交、軍事戦略をいかに止めるかという問題なのである。
 
 この点は日本国内でも同じ。東アジア地域の平和と安定こそ重要であるにもかかわらず、アメリカ政府の戦略にしたがって中国との対立は新たにつくられ煽られ、日米韓と中国の対立構図が徐々に確立整備されている。7月8日には在韓米軍への戦域高高度防衛ミサイルTHAAD配備が決定した。

 フィリピン国内では、フィリピン漁民が中国漁船に漁場から追い出された問題として、もっぱら宣伝されている。政府のみならず、野党も、左翼勢力も、フィリピン漁民支持から民族主義にあおられている面もあり、全体としてアメリカの対中国戦略に搦めとられつつあるのではないか。これら一連の動きは、極めて危険だ。ドゥテルテ政権の動向に注目が集まっている。(文責:林 信治)
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トルコ・クーデターの原因、失敗した理由 [世界の動き]

トルコクーデターの原因、失敗した理由

1)トルコ・クーデターの意味

 7月15日のクーデター失敗からの2週間を経て、この政治的事件の意味がより明らかになった。
 クーデター失敗を契機に、エルドアン政権は政権内からギュレン派を徹底して追い出し粛清している。ギュレン派は、クーデターがエルドアン政権の自作自演だと主張しているが、そうではあるまい。エルドアン本人がSNSを利用し国民にクーデター阻止を呼びかけた事実は、7月14日から15日にかけて、軍や政府機関、警察・諜報機関が支配下にあるかどうか把握できていなかったことを意味する。エルドアンはSNSで国民に支持を呼びかけざるを得ない事態に追い込まれたのであり、14日夜から15日未明にかけてクーデターによる政権打倒の危機が存在したのであった。
 
2)エルドアンによる権力掌握と粛清

 エルドアンは政権を掌握した後、7月20日、非常事態を宣言し、これまでにギュレン師支持派とされる軍人や裁判官ら1万8千人以上を拘束、中央省庁の官僚や教員ら6万6千人以上を解任や停職処分にした。軍の粛清が第一の目的であることがわかる。
 トルコ政府は、エルドアン大統領の政敵で米国に住むイスラム教指導者ギュレン師がクーデター未遂事件に関与したと断定し、トルコ政府は二国間の犯罪人引き渡し条約の規定に基づき、ギュレン師の送還をアメリカ政府に要求している。(日経:8月1日)
 
 注目すべきは、エルドアンが当初からクーデターは政権内のギュレン派であると特定しており、かつまたその背後にアメリカ政府内の好戦派、ネオコンがいると断定したことだ。ギュレン派は、これまでともにアメリカ政府の中東政策に沿って政権を担ってきたかつての盟友であるから、相手が何を考え実行したか、一瞬にしたわかったのであろうし、アメリカ政府の意図も読み取ったであろう。
 クーデターが起きた時、アメリカ軍は「静観」していた。トルコ基地内には、ロシアに向けた戦略核ミサイルが配備されている。にもかかわらずアメリカ軍は「静観」した。クーデターに対するアメリカ政府・軍の事前の承認があったことをうかがわせる。

 エルドアンが、軍人らを即座に逮捕・追放したのはそのリストを事前に持っていたからである。逮捕者や解任・停職処分の規模がきわめて大きいこと、それは軍内、政権内のギュレン派に対する粛清であり、徹底している。徹底しなければ、逆にエルドアンが倒される、そのように自覚しているからだ。徹底して軍内のギュレン派を粛清し一掃すれば、アメリカ政府はエルドアン政権を認めざるを得ないことを知っているからだ。

3)クーデターの原因と失敗した理由

 アメリカ政府内の好戦派・ネオコンにしたがって、トルコ政府が行ってきた中東政策が破綻したことがクーデターの原因である。エルドアン政権は、アメリカ政府、サウジ、湾岸諸国とともに、ISを利用してシリア・アサド政権を打倒に加担し、中東の支配者の地位を得ようとしてきた。
 しかし、この戦略は、2015年9月30日以降のロシア軍によるIS 空爆、シリアのトルコ国境地域のIS支配地域をアサド政府軍が奪還したことで、ISの兵站線は閉ざされた。ISは敗北し衰退しつつあり、ISを使ったアサド政権打倒は不可能になり、トルコの中東政策は破綻した。
 2015年11月のトルコ空軍によるロシアSu-24撃墜は、トルコーロシア間の政治・経済関係を破壊した。シリアを通じたアラブ世界との通商関係も途絶した。トルコへの外資投資は減少した。軍事費は増大しトルコ国債の信用は低下しつつあり、国際暴落の危険性が高まっている。アメリカの中東戦略に加担してきたことで、トルコ経済は停滞を余儀なくされた。
 アメリカ政府内の好戦派・ネオコンに唆されてロシアと戦争を始めたウクライナが、破綻国家になった姿を、エルドアンは間近に見ている。

 エルドアンは、アサド政権打倒が頓挫した新事態に対応せざるを得なくなり、悪化したロシアとの関係改善へと戦略の変更を決定したのである。
 この変更は、アメリカ政府内の好戦派・ネオコンの意に添わなかった。トルコ軍には歴史的に、アメリカ政府によるいくつもの密接な関係、支配の「手」が形成されてきた。「世俗主義」とは、トルコ政治にアメリカの支配力・影響力を発揮させる一つの政治的主張であった。
 今回のクーデターは、トルコ軍内の世俗主義を口実として、エルドアンの戦略変更を咎め、アメリカの中東戦略を貫き通させようとしたモメントとして、発現した。ただし、ISを利用してアサドを倒すアメリカの中東戦略は、すでに破綻が明らかであるので、トルコ軍内に「躊躇」が生まれ、クーデターに準備不足をもたらし、失敗におわった終わったのである。
 
4)エルドアン政権の戦略変更

 エルドアン政権にとって、シリアでの長期にわたる戦闘状態を継続できない。トルコが破綻してしまう。
 まずは、ロシアとの関係を改善するしか道はない。エルドアン政権は、すでにロシア機撃墜を謝罪した。8月9日、エルドアンはロシアを訪問する。ロシア産天然ガスをトルコ経由で欧州に輸出するパイプライン建設計画に対しても、エルドアンはこれまでの態度を一変させ、前向きな姿勢を示した。
 このパイプライン計画は、イラク・シリアを通ってパイプラインを敷設し欧州に天然ガスを輸出したい湾岸諸国・サウジの思惑と真っ向から対立する。アメリカ政府やサウジ・湾岸諸国によるイラク・シリア政権の打倒と破壊は、この計画とも関係している。

 トルコ政府は7月31日、軍参謀本部の傘下にあった陸海空軍を国防省へ移管、トルコ社会に影響力を持つ軍教育機関の廃止、大統領と首相が直接軍の司令官に命令を下す権限の付与などを発表し、トルコ軍の権限を縮小、大統領・首相への権限集中を決定した。

5)エルドアン政権は強固になったか?
 エルドアン政権の権力掌握、大統領への権力集中の過程が進行している。ギュレン派は権力から放逐されつつある。アメリカ政府が形成してきたトルコ軍内に張り巡らした「手」は、放逐されている。アメリカの中東政策の破綻が、このような形で従来の支配網を壊している。
 しかし、そのことはエルドアン政権の基盤が盤石になったことを意味しない。(8月1日記、文責:林信治)
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トルコ・クーデターの意味 [世界の動き]

トルコ・クーデターの意味

1)失敗に終わったクーデター 

 7月15日夜、トルコ軍将校の集団が軍事クーデターを行ったが、失敗に終わった。エルドアンはクーデターがギュレンとギュレン運動が引き起こしたと早々と決めつけ、ギュレン運動の軍人、司法関係者らを逮捕し粛清している。その規模はきわめて大きく、逮捕者数は8,000人を超えている。

 エルドアンは、クーデターを引き起こすのはギュレン以外にいないことを知っているし、ギュレンはCIAの工作員であり、背後にアメリカ政府がいることもよく知っている。なぜならば、2013年までギュレンもエルドアンもアメリカ政府の支持の下に一体で動いて来たからである。

 したがって、エルドアンによる粛清は、トルコ政府、軍内のギュレン運動関係者、すなわち米国の工作員がその対象である。クーデターを起こしたかどうか、参加したかどうかではなく、エルドアンは自身とは異なる米国の手先を粛清しているのであり、あらかじめそのリストを彼は持っている。

 トルコのCIA政治工作員フェトフッラー・ギュレンが、CIAの保護のもとペンシルバニア州セイラーズバーグに亡命して暮らしている。ギュレンのスポンサーにとって唯一の問題は、クーデターが成功しなかったことだ。クーデターは、エルドアンによる最近の劇的な「政治的態度の転換」に対する反応だった。これはCIAに忠実なトルコ国内ネットワークがひき起こしたものではあるが、明らかに準備不足だったように見える。

2)トルコに対するアメリカ支配の網

 ギュレンは、政治的イスラム教徒を、政権転覆の道具として利用するという、何十年もの歴史をもったCIA計画の一つの中心核だった、2013年に、イスタンブールや到るところで、反エルドアンの大規模抗議行動がおこなわれた。あの時、以前はエルドアンの公正発展党と結んでいたギュレンが袂を分かち、新聞ザマンなど、ギュレンが支配するマスコミで、エルドアンを暴君と批判した。それ以来、エルドアンは、ザマン紙や、ギュレンが支配する他のマスコミへの襲撃を含め、国内の最も危険な敵、ギュレンとその仲間連中の根絶に向けて動いてきた。これは、アメリカの中東戦略を誰が担うのかをめぐるトルコ政治における権力闘争にほかならない。

3)クーデター失敗のあと、どうなるか?

 一時的にはエルドアン支配が強化されるだろう。過去二年間、ギュレン運動は、エルドアンや、彼による諜報機関トップの粛清によって、影響力がすでに低下している。「国の守護者としてのアタチュルクの軍」などというものは、1980年代以来、とっくの昔に終わっている。

 今後、興味深いのはエルドアンの外交政策であろう。
 エルドアン政権は、アメリカに加担してIS を利用しシリア・アサド政権打倒を実行してきたが、2015年9月30日のロシアによるIS空爆開始により、その戦略の破綻が明白となり行き詰った、その結果外交政策の修正を余儀なくされている。

 ロシアとの和解、ギリシャ国境までの、ロシア・トルコ・ストリーム・ガス・パイプライン交渉再開。同時に、エルドアンは、ネタニヤフとも和解した。そして、最も重要なのは、エルドアンが、関係再開のためのプーチンの要求に応じて、トルコは、シリア国内での、ダーイシュや他のテロリストへの秘密支援や、トルコ国内での彼らの訓練、連中の石油の闇市場における販売などによる、アサド打倒の取り組みをやめることに同意したことだ。これはアメリカ政府にとって大きな地政学的敗北であるし、ギュレン運動にとってもトルコ国内の政治権力闘争での敗北を意味する。
 ギュレン運動によるクーデターは、権力闘争の敗北を前にして、暴発し、敗北を確定させた。
4)エルドアン、外交政策の転換を志向

 エルドアンがダウトール首相を首にして、忠実なビナリ・ユルドゥルムを首相に指名した2016年6月以来、エルドアンは政治的態度の転換を志向している。この転換に対しアメリカ政府は必ずしも承認を与えなかったのであろう、その表現として「クーデター」が起きたと考えるべきだろう。シリアに接するトルコ大統領エルドアンは、アメリカ政府のシリアでの反アサド戦略が現実的でないと判断し、修正を試みている。スホイ24撃墜に対しロシア政府へ謝罪し、さらには崩壊しないことが明かになったアサド政権を前提とした関係修復志向へと舵を切ろうとしているのである。

5)エルドアンは打倒されるか?

 今回のクーデターは、誰がアメリカの承認を得てトルコの政治的支配者になるのかという権力闘争である。現時点でみれば、エルドアンは打倒されないだろう。アメリカ政府はエルドアンを支持するしかない。エルドアンが、クーデターをギュレンによる企みだったと語った7月16日の早い段階で、ギュレンの敗北は決定した。このことは一時的には、ギュレンに対するエルドアンの勝利である。しかし、そのことはエルドアン政権が盤石になったことを意味しない。ISを利用しシリア・アサド政権を打倒するアメリカの戦略に応じ、中東の支配者になろうとしたトルコ・エルドアン政権の野望は破綻し、修正・転換を余儀なくされている。エルドアン政権にとっては、米国政府との調整もしなければならず、その前に自身しか政権を担う者はいないことをアメリカ政府に示さなくてはならない。

 CIAは面目丸潰れで、オバマとNATOは「民主的に選ばれたエルドアンを温かく抱擁して(原文通り!)」支持する以外になかった。エルドアン以外にいないし、エルドアンを排除すればトルコは混乱に陥る。したがって、誤魔化す以外になかったのである。

 民主的に選ばれたウクライナのヤヌーコヴィッチ大統領を、2014年2月に政権から追い払ったわけだから、「民主的に選ばれたエルドアン」という理屈は何の理由にもなっていない。CIAやネオコン連中が、キエフのマイダン広場でクーデターを実行した際、ヴィクトル・ヤヌーコヴィッチは「民主的に選ばれたウクライナ大統領」であることなど気にもかけなかった。

 エルドアンを支持せざるを得ないのは、トルコがNATO にどうしても必要だからだ。アメリカ政府は、その世界戦略上、特に中東での石油、そして今では天然ガスの流れを支配する上で、トルコを混乱に陥れるわけにはいかない。そのため、クーデターが失敗することが明白になった瞬間、オバマとネオコンの仲間が、“友人”エルドアンを「抱擁した」のである。(文責:林 信治)
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英、EU離脱! [世界の動き]

英、EU離脱!

1)6月24日、英のEU離脱を伝える

 6月24日午後、英国国民投票で、英国のEU 離脱が多数を占めたことを伝えている。離脱手続きに期間を要するので即日離脱ではないものの、英国民が離脱を選択したことに、世界の支配層、金融資本家は驚きを隠していない。
 金融資本や独占資本にとっては、市場が一部分断され投資効率が悪くなり、利益を得るには面倒になるので、離脱に反対していた。各国エリート層は皆反対していた。英国に進出した日立や、日産トヨタも労働者に対して残留を訴えていた。

2)英国民はなぜ、離脱を選択したのか?

 英国も日本と同じで、新自由主義、経済のグローバル化=EU加盟で、格差が拡大し、中間層が没落し、地方の衰退が顕著だ。新自由主義は多くの国民を貧困化させる、その「真実」を現実の進行でもってやっと身に染みて知ったということだ。「自由」という言葉で、人々を麻痺させた。
 英国ではシティ・金融資本の支配、EU巨大資本の支配に対する怒りが相当広がっていたのだ。英国政府はこの怒りを軽く見ていた。堀田善衛によればEUの官僚の多くはかつての貴族が多数を占めているという。欧州巨大資本の代理人であるEU官僚に、英国民は我慢ならないのであり、離脱は英国民の反乱なのだ。
 英国はEUに加盟し、シティを含む英国資本は莫大な利益を得た。しかし、そのことは英国民の生活向上には決してつながらなかった。新自由主義の下で経済が拡大しても、1%が利益を享受するだけで99%は蚊帳の外に置かれる。さらに経済成長が低ければ、容赦なく切り下げられる。多くの英国民は、EU加盟がその原因と判断した。
 もとろん、EUから離脱すれば、労働者階級、中間層の収入が増えるわけではない。EU離脱によって外国資本の投資が減り、逃避も生じ、ある分野では経済活動は収縮するだろう。そのような場合、資本家は労働者階級、中間層に犠牲を押し付け、事態を乗り切る。したがって、英国民は厳しい現実が待っている。

3)同じだ!

 このような「事情」は、米国も同じで、新自由主義は地方の中間層、白人層を没落させ、格差拡大させ、人々の怒りを買い、大統領選でトランプやサンダースへの支持が広がったのだ。クリントンやブッシュなどの既存政治家は徹底的に嫌われた。米国民も、金融資本の支配、ネオコンによる世界のあらゆる地域で続く米軍による戦争にうんざりしているのだ。クリントンはネオコンやユダヤ資本とつながっている。もちろんトランプを選んだところで何も変わりはしない。
 このような事情は日本も同じなのだが、格差拡大する日本人は実におとなしく、怒ることも忘れている。かつてマッカーサーが「日本人は12歳の少年だ」とその「政治的な幼さ」を揶揄し利用したことがあったが、2016年現在もこの点は少しも変わっていないように見える。 (6月24日記)
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ドゥテルテ新大統領に期待できるか? [フィリピンの政治経済状況]

ドゥテルテ新大統領に期待できるか?

1)選出された理由

 フィリピンはアキノ政権下で年率6%前後の経済成長を継続してきた。その成長ぶりは、世界の成長地域である東アジアの中でも群を抜いている。しかし、経済成長はそのままフィリピンの人々の生活改善を意味しない。新自由主義の下での成長は、必ず格差を拡大する。フィリピンには取り残された多くの人々がいる。格差拡大に不満を持つフィリピン人は、アキノ政権の後継者である政治エリートの「お仲間たち」ではなく、「新味」のあるドゥテルテを新大統領に選出した。悪名高かった犯罪都市ダバオを強引な手段で「平和」な都市にしたという「実績」。あるいは、オランダに亡命中のフィリピン共産党(CPP)議長、ホセ・マリア・シソンを労働雇用担当閣僚に登用したいと提案。このようなパフォーマンスは、貧しい民衆をしてドゥテルテに期待を寄せさせたのは間違いない。もっとも「新味」があるのか、民衆の真の代表者なのかは、別問題である。

2)ドゥテルテ新大統領の基盤

 ドゥテルテ新大統領の政治的基盤はきわめて脆弱だ。彼は力強い政治運動、政治グループの支持で当選したわけではない。どこの国でも似たような現象が生まれているが、巧みなパフォーマンスで人気投票に近い選挙の勝利者になったと言える。特に効果的だったのが、既存のエリート政治家とは違うというパフォーマンスだ。
 パフォーマンスで勝利したことは、選出後、権益を享受している既存のフィリピン支配層、政府官僚からの介入とどのように折り合いをつけるかが問題である。どこの国でも同じだがフィリピンでも、フィリピン支配層は自身の利益のために政府を動かすいくつもの「手」を張り巡らせている。
 この点でドゥテルテは、フィリピン支配層や米政府との間に、特に対立を引き起こしてはいない。その調整はすでに完了しているのであろう。

3)「法人税を下げる」と公言

 ドゥテルテ新大統領は法人税を下げると公言している。新自由主義的な経済発展を構想しているし、フィリピンの支配層、とくに資本家層の代理人にほかならない。フィリピン資本家のみならず米日政府も支持する。
 また、選挙期間中、ドゥテルテは「反米発言」し、中国との関係改善を示唆したが、他方で米軍を再駐留をさせる米比新軍事協定を高く評価した。当選後、米比の安全保障体制を是認する態度を明確に示した。米政府はドゥテルテを批判せず静かに見守っている。すでに何らかの折り合いをつけているのであろう。
 また、フィリピン支配層や米国資本に、自分こそはミンダナオを開発できるとアピールし期待を集めている。ミンダナオは石油、鉱物資源が豊富であるが、過去の強引な侵略、開発は、住民の批判を浴び、MILFやNPAの勢力も根強い。ドゥテルテは、自分こそがミンダナオに和平をもたらし開発を進めることができるとアピールしている。この点もフィリピン支配層や米国政府に支持されるだろう。

 このように見れば、ドゥテルテ新政権はアキノ政権の下で達成した経済成長の上に、その路線を引き継ぎ大胆に発展させることを狙っているように見える。
 ミンダナオに和平をもたらそうとしているのは事実であろう、経済活動には和平が必要だからだ。CPPやNPA、またMILFとの和解、あるいは体制内への取り込みは、フィリピン経済のさらなる発展にとって必要になっている。治安を改善し警察・公務員の汚職をなくすことは、海外からのさらなる投資を呼び込む上で必要だ。
 ドゥテルテのパフォーマンスには、フィリピン支配層の要望が表現されていると見なければならない。
(6月24日記)

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マイナス金利の意味は? [2008-9世界経済恐慌]

マイナス金利の意味は?

1)波乱のスタート

 2016年は年初より、株式市場は波乱のスタートである。2015年8月の急落に続く大きなショックだ。今年に入って世界の株式時価総額は8兆ドルくらい減った。リーマン・ショックが起こった08年9月でも5兆ドルくらいだった。当時以上の株価下落が発生している。
 2015年末には、「新年は株価が順調に上昇する」との見方が支配的だった。新聞各紙の掲げた経営者の年頭の見通しを見れば明らかだ。しかし、その予想はいきなり外れた。プロの経営者の見通しは外れた。株価はいきなりの下落で始まった。しかもその後、乱高下が止まらない。
 株価下落の原因は、世界経済が変曲点を迎えたからである。2008サブプライム恐慌以降、大量の金融緩和により新興国を中心に世界経済は緩やかに上昇してきたが、大量の緩和はバブルを形成し、その破綻の局面を迎えている。日本だけ見れば、ゼロ成長であった分だけ、すなわち国内投資がきわめて低調であっただけ、日本経済はバブルに至っておらず、相対的に見れば健全である。しかし、日本経済はあくまで世界経済の一部であり、その結びつきはこれまで以上に一体化している。世界経済の変曲点は、日本経済をも支配する。

2)現局面に、どのようにして到達したのか?

 2009年以降、サブプライム恐慌からの回復過程における量的緩和の規模は極めて大きかった。資本主義は恐慌とバブルを繰り返しているが、恐慌からの脱出は必ず恐慌の規模以上の金融緩和によってなされる、すなわちより大きな恐慌を準備することによって恐慌から脱出しようとする。
 現在の金融混乱は、中国経済の減速、原油安が引き金になっている。大規模な金融緩和によって大量に余った資金は、中国経済の成長をあてにして大規模に投資された。2011年ころにはすでに減速しつつあったにも関わらず、あふれる資金は原油や資源開発に投資された。シェールオイル開発を加速させ、さらに多くの資金がつぎ込まれた。その結果、資源バブルがはじけたのは、実需の後退し始めた2011年ではなく、2015年8月であった。
 原油価格が急降下した。実際の原油需要は低下していたにも関わらず、4年間にわたって資金は開発投資され続けた。これを「バブル」という。これが資本主義である。
 バブルははじけて初めてバブルとなる。はじけないうちは投資しない資本は利益を上げる機会を失う。だから、はじけるまで誰もが競って投資する。そうして、爆発力を大きくした後ではじける。資本主義はこの資本主義的過剰生産恐慌から逃れることができないし、解決する力を持たない。あとから、「あれはバブルだった」、「資産を持たない者にサブプライムローンを組むのはおかしい」と誰もが指摘し批判する。しかし、事前に指摘し、投資行動をやめる者は一人としていない。「サブプライムローン」はあれほど批判されたたが、現在は、住宅ではなく車向けにすでに復活している。
 
 その結果が、原油価格の30ドルへの低下である。「原油価格の下落」という道筋を通って、金融危機が生まれかねない情勢となった。
 原油価格の下落は、産油国の政府財政を一挙に悪化させた。そのため、サウジアラビア通貨庁、カタール、クウエートなどの湾岸諸国が蓄積したオイルマネーを、世界株式市場、債券市場に投資してきたが、これを大量に一挙に引き上げ、政府赤字を補填している。そのことで、株価は乱高下し、金融市場は動揺している。オイルマネーが金融市場から引き上げるという「流れ」は、原油価格が上昇しない限り、続きそうだ。
 オイルマネーの動きを見て、あらゆる投資家のあいだで、運用リスクを避けるため投資の引き揚げ、手控えが広がった。これが「世界経済の減速化」をもたらした。

 原油価格の低下は、米国シェールオイル資本を直撃している。全体で100兆円規模とされる開発資金の大半は高利で調達しており、ハイイールド債などとして世界中の投資信託に組み入れられすでに世界中で販売されている。「サブプライムローン」と同じ仕組みだ。原油価格の下落により、シェールオイル資本が破綻すれば、大量の不良債権が生まれる。

 大量の緩和マネーが世界市場にあふれかえっており、何かのきっかけで過剰生産恐慌を引き起こす。どのような道筋を通って起きるか特定できないが、いくつもの可能性が横たわっている。「中国経済の減速」や「原油安」は、世界経済減速(=資本主義的過剰生産恐慌)の「原因」ではなく、あくまで一つのきっかけ、道筋に過ぎない。一つのきっかけを取り除いたら、別のきっかけが現れるだろう。小さな破綻が引き金となり、一斉に資金を引き揚げる事態に陥りかねない。2016年初から、世界の金融市場は、破綻の切迫に怯えている。

3)日銀のマイナス金利

 日銀の取るべき手段が、その選択肢が、いよいよなくなってきたということだ。
 市場が不安定になっている。しかし、中央銀行によって、これを押しとどめることができない局面に入っている。

 「今回の危機を回避するには、中国の減速や新興国の債務問題、とりわけ民間企業の債務問題の解決に目途がつけば」と言われ、また、「低水準な原油価格が上昇すれば危機は回避できる」といわれる。
 表面上の経済指標を追っかけていれば、そのような「希望的観測」が生まれるのは、いつものことだ。
 確かに、原油価格が上昇すれば、原油価格下落で破産する企業がなくなり、貸し付けている資金は不良債権にならず、貸し付けている金融機関、投資信託などを購入している投資家など、破産の危機は回避できるはず、と関係者が考えるのは「手に取るようにわかる」。
 しかし、同じ理屈で別のシナリオもあるはずだ。原油価格下落でシェールオイル資本が破産し、投資している世界中の金融機関や投資家が損を確定し、一部が破産すれば、直ちに原油価格は上昇し始める、とも言えるのだ。

 どちらになるか、誰もあらかじめ決めることができない。関係者の希望によって、あるいは中央銀行の金融政策によって決まらないのが、肝心なのである。
 資本主義の無政府性であり、資本主義は過剰生産恐慌を避けることができないという「真実」を、またしても確認せざるを得ないのである。(2月22日)
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アンバ・バーラから、カサナグの会総会へのメッセージ [フィリピン労働運動]

 アンバ・バーラ(バタアン労働組合連合)のエミリーから、三多摩カサナグの会31回総会に向けて、メッセージが送られてきました。3月5日の総会に送られてきましたので、少し遅れてしまいましたが、ブログに転載します。

**********


三多摩カサナグの会 第31回総会への連帯メッセージ

 2000年にカサナグの総会へ初めて連帯メッセージを書いてから16年が経ちます。その時私はまだ22歳で若く、気分はティーンエイジャーでした。その年の9月18日私は逮捕され、キャンプ・アギナルドに入れられました。もう随分昔の話です。

 それからはあっと言う間でした。私たちは歳をとり、肉体的にも弱くなっています。ですから、今、私たちに出来ることは限られてきています。しかし、あなたがたは今年もこうして、総会を開いています。

 私たちは、中国の敵対的戦略や資本主義体制に抗しながら、組織し闘う英知を持ってなんとかやり抜いてきました。そして、正に今、私たちは世界の英雄として存在してきたアメリカが弱体化していると確信しています。アメリカは中国との競争に四苦八苦しています。現在、様々な戦略で対抗しようとしています。

 そうです、私たちは現在若者が置かれている状況を改革すべく、限られた時間を有効に使いながら活動を続けたいと思います。私たちは最新技術であるインターネットを最大限活用しながらその作業を進めています。

 私たちには、若者を組織する必要があります。でなければこの資本主義独占体制を永続させることになります。私たちが受け継いだ闘いの炎を、若者たちに伝えなければなりません。この責務をやり遂げることは、辛く大変なことです。しかし、私たちが正しい戦術を持って、諦めることなく若者たちに接していけば、それは克服できると思います。これは、あなたがただけの問題ではなく、労働運動全体の問題です。

 私が二十歳の時、あるアンババーラのスタッフが私の家に来たことを思い出します。彼女は、毎日、朝となく夜となく私を訪ねては、職場で私たちが置かれている問題について話しました。それは私がアンババーラの事務所でフォーラムを受けるまで続きました。

 その後、私は会社での労働運動の指導者となりました。会社が倒産した時、私たちは直ちにピケをはり、5ヶ月間闘いました。退職金を手にしたあと、私は実家に戻り、母に「マニラに行って仕事探す」と話しました。しかし本当はマニラには行かず、マリベレスに戻って専従になったのです。その時の私は若く、自信に満ちていました。

 それでも、現在アンババーラ傘下の指導者や組合員を指導するのは、私にとって大変な仕事です。今組織化しようとしているデスク・トップアソシエイションには有望な指導者たちがいます。私たちに大切なのは、彼らとの信頼関係をどうつくるかです、最善を尽くしたいと思います。

 私の話をしてしまってすみません。しかし、皆さんには若者たちを組織することの大切さを理解してもらえると思います。何故、総会に向けたメッセージで、若者たちの組織化についてこだわっているのでしょう? 何故なら、彼らこそが労働運動強化に不可欠だからです。彼らには、語学力があり、技術を最大限使え、知識も豊富です。まだ自覚はしていないところがありますが、若い感性は想像力そのものです。

 私は、日本やフィリピンだけでなく、世界の労働運動で、闘いを継続するために若者たちを組織する必要があると思っています。私たちの世代が、闘いの成果を勝ち取るのは難しいでしょう。しかし、私たちが今日蒔いた種は、次世代によって水と「天然肥料」を与えられ、そう遠くない将来収穫されることでしょう。これが私の描く理想の未来です。夢を持ってその実現のために活動を始めましょう。階級のない社会、社会全体が子供たちを育む社会、社会主義的世界です。

 私たちが夢見る世界の実現に向けて最善の努力をしてもらえることに感謝します。心に闘いの炎を共に灯し続けましょう。困難ですが、実現できることでしょう。

 31回目の総会、本当におめでとうございます!
 世界の人びとの闘い万歳!
 私たちへのご支援に感謝します、またお会いしましょう!
 連帯して! 
 アンババーラスタッフ:エミリー、アナベル、デレク、ノエル

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これからは、恐慌局面 [世界の動き]

これからは、恐慌局面

1) 波乱のスタート

 2016年は年初より、株式市場は波乱のスタートである。2015年8月の急落に続く大きなショックだ。今年に入って世界の株式時価総額は8兆ドルくらい減った。リーマン・ショックが起こった08年9月でも5兆ドルくらいだった。当時以上の株価下落が発生している。
 2015年末には、「新年は株価が順調に上昇する」との見方が支配的だった。新聞各紙の掲げた経営者の年頭の見通しを見れば明らかだ。しかし、その予想はいきなり外れた。プロの経営者の見通しは外れた。株価はいきなりの下落で始まった。しかもその後、乱高下が止まらない。
 株価下落の原因は、世界経済が変曲点を迎えたからである。2008サブプライム恐慌以降、大量の金融緩和により新興国を中心に世界経済は緩やかに上昇してきたが、大量の緩和はバブルを形成し、その破綻の局面を迎えている。日本だけ見れば、ゼロ成長であった分だけ、すなわち国内投資がきわめて低調であっただけ、日本経済はバブルに至っておらず、相対的に見れば健全である。しかし、日本経済はあくまで世界経済の一部であり、その結びつきはこれまで以上に一体化している。世界経済の変曲点は、日本経済をも支配する。

2)現局面に、どのようにして到達したのか?

 2009年以降、サブプライム恐慌からの回復過程における量的緩和の規模は極めて大きかった。資本主義は恐慌とバブルを繰り返しているが、恐慌からの脱出は必ず恐慌の規模以上の金融緩和によってなされる、すなわちより大きな恐慌を準備することによって恐慌から脱出しようとする。
 現在の金融混乱は、中国経済の減速、原油安が引き金になっている。大規模な金融緩和によって大量に余った資金は、中国経済の成長をあてにして大規模に投資された。2011年ころにはすでに減速しつつあったにも関わらず、あふれる資金は原油や資源開発に投資された。シェールオイル開発を加速させ、さらに多くの資金がつぎ込まれた。その結果、資源バブルがはじけたのは、実需の後退し始めた2011年ではなく、2015年8月であった。
 原油価格が急降下した。実際の原油需要は低下していたにも関わらず、4年間にわたって資金は開発投資され続けた。これを「バブル」という。これが資本主義である。
 バブルははじけて初めてバブルとなる。はじけないうちは投資しない資本は利益を上げる機会を失う。だから、はじけるまで誰もが競って投資する。そうして、爆発力を大きくした後ではじける。資本主義はこの資本主義的過剰生産恐慌から逃れることができないし、解決する力を持たない。あとから、「あれはバブルだった」、「資産を持たない者にサブプライムローンを組むのはおかしい」と誰もが指摘し批判する。しかし、事前に指摘し、投資行動をやめる者は一人としていない。「サブプライムローン」はあれほど批判されたたが、現在は、住宅ではなく車向けにすでに復活している。
 
 その結果が、原油価格の30ドルへの低下である。「原油価格の下落」という道筋を通って、金融危機が生まれかねない情勢となった。
 原油価格の下落は、産油国の政府財政を一挙に悪化させた。そのため、サウジアラビア通貨庁、カタール、クウエートなどの湾岸諸国が蓄積したオイルマネーを、世界株式市場、債券市場に投資してきたが、これを大量に一挙に引き上げ、政府赤字を補填している。そのことで、株価は乱高下し、金融市場は動揺している。オイルマネーが金融市場から引き上げるという「流れ」は、原油価格が上昇しない限り、続きそうだ。
 オイルマネーの動きを見て、あらゆる投資家のあいだで、運用リスクを避けるため投資の引き揚げ、手控えが広がった。これが「世界経済の減速化」をもたらした。

 原油価格の低下は、米国シェールオイル資本を直撃している。全体で100兆円規模とされる開発資金の大半は高利で調達しており、ハイイールド債などとして世界中の投資信託に組み入れられすでに世界中で販売されている。「サブプライムローン」と同じ仕組みだ。原油価格の下落により、シェールオイル資本が破綻すれば、大量の不良債権が生まれる。

 大量の緩和マネーが世界市場にあふれかえっており、何かのきっかけで過剰生産恐慌を引き起こす。どのような道筋を通って起きるか特定できないが、いくつもの可能性が横たわっている。「中国経済の減速」や「原油安」は、世界経済減速(=資本主義的過剰生産恐慌)の「原因」ではなく、あくまで一つのきっかけ、道筋に過ぎない。一つのきっかけを取り除いたら、別のきっかけが現れるだろう。小さな破綻が引き金となり、一斉に資金を引き揚げる事態に陥りかねない。2016年初から、世界の金融市場は、破綻の切迫に怯えている。

3)日銀のマイナス金利

 日銀の取るべき手段が、その選択肢が、いよいよなくなってきたということだ。
 市場が不安定になっている。しかし、中央銀行によって、これを押しとどめることができない局面に入っている。

 「今回の危機を回避するには、中国の減速や新興国の債務問題、とりわけ民間企業の債務問題の解決に目途がつけば」と言われ、また、「低水準な原油価格が上昇すれば危機は回避できる」といわれる。
 表面上の経済指標を追っかけていれば、そのような「希望的観測」が生まれるのは、いつものことだ。
 確かに、原油価格が上昇すれば、原油価格下落で破産する企業がなくなり、貸し付けている資金は不良債権にならず、貸し付けている金融機関、投資信託などを購入している投資家など、破産の危機は回避できるはず、と関係者が考えるのは「手に取るようにわかる」。
 しかし、同じ理屈で別のシナリオもあるはずだ。原油価格下落でシェールオイル資本が破産し、投資している世界中の金融機関や投資家が損を確定し、一部が破産すれば、直ちに原油価格は上昇し始める、とも言えるのだ。

 どちらになるか、誰もあらかじめ決めることができない。関係者の希望によって、あるいは中央銀行の金融政策によって決まらないのが、肝心なのである。
 資本主義の無政府性であり、資本主義は過剰生産恐慌を避けることができないという「真実」を、またしても確認せざるを得ないのである。
 (2016年3月7日記、文責:小林治郎吉)

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辺野古報告 2月25日 [沖縄、基地反対]

辺野古報告 

 辺野古に基地をつくらせない実行委員会として辺野古に行きました。
 平田一郎によるその報告です。

2月25日、木曜 二日目
 ゲート前6時半到着 新しいジュゴンバルーンを膨らませてメーンゲートでまず、写真をパチリ。
 すぐ講じようゲートへ。

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<ゲート前のジュゴン・バルーン>

 まもなく、機動隊が列をなして面前に行列。こちらは150人強。
 150人の機動隊に強制排除され、犬猫のように策の中へ。ダンプ3台?などが進入。

 その後、懸命に柵を抜け出し、いったん同行者3人で、辺野古浜へ。今日で4,330日目。座り込み日数の看板が新しくきれいになっていた。

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<辺野古浜テント 4,330日目>

 2人は船で海上抗議に。平田はカヌー行動へ。
 海上は風があったが、辺野古崎まで漕ぐ。だいぶ慣れてきた感じ。そこがあぶない。
 波が高かったが、長島の大浦側へ。昨日は強風で海上は中止 だったら しい。このところ雨と風に妨害されている。

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辺野古報告 2月27日 [沖縄、基地反対]

辺野古報告
第4日目 平田

 2月27日土曜 座り込み601日目。座り込み50人に機動隊150人が来ました。

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<瀬長さん司会>

160227_0703-01 撤去されたジュゴンバルーン.jpg
<撤去されたジュゴンバルーン

 ゲート前にいる警察車に抗議しみんなで取り囲む。

 一週間、ブロックを積んで閉鎖を繰り返した場所に、警察の黒いワゴン車が駐車し続けている。この車が、一晩中エンジンをかけっぱなし。
 民間警備会社アルソックの警備員にも、座り込みをするわれわれにも、たっぷりと排気ガスを吸わせている。エンジンを止めろと強力に抗議。
 ワゴン車がゆれ始まった。エンジンが切れるまでゆれていた・・・
 そして機動隊150人が出動、強制排除、柵の中へ。土曜日にも進入してくるのか。防衛局は一貫性を失っている。昨日金曜は進入なしだった。

 9時過ぎ、機動隊200が出動。2回目の排除。バルーンまで排除された。7時す ぎに工事車両10数台が進入。瀬長さんの司会で集会再開。大城名護市議の挨拶、うるま市の島ぐるみ会議の宮城さんが歌を披露。京都の反ヘイト運動の若い女性が報告。全労協の仲間が挨拶。安さんの歌で立ち上がれ!で 休憩。

 安次富さん報告。観光バスか新基地工事の案内観光をしているので、辺野古漁港の一つのゲートを施錠を漁協がした。しん駐車場を考えている。。名護市議大城さんが辺野古には25000人が伊江島、本部、今帰仁の3村から強制収容所にいてはっきりとどこに墓を作ったか場所をおぼえている人もいる。遺骨収集法ができて名護市、県を通して追求してい。 すぐ後、機動隊150人か囲い込みダンプカー6台進入。


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 帰路の普天間、佐喜真美術館に向け辺野古出発。

 ゲート前にいる警察車に抗議しみんなで取り囲む。機動隊200が出動。バルーンまで排除された。7時すぎに工事車両10数台が進入。瀬長さんの司会で集会再開。大城名護市議の挨拶、うるま市の島ぐるみ会議の宮城さんが歌を披 露。京都の反ヘイト運動の若い女性が報告。全労協の仲間が挨拶。安さんの歌で立ち上がれ!で 休憩。帰路の普天間、佐喜真美術館に向け辺野古出発。

 普天間を見渡す嘉数高地でオスプレイ飛行を確認。那覇に向かい不屈館、瀬長亀次郎記念館へ。

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<土曜日の機動隊>

 翁長知事がたえず繰り返す、「銃剣とブルドーザーで奪われた土地」のBS NHKのVTRを見た。帰り間際に手に取った「民族の悲劇」、この本に、真和志村(現那覇市の一部)銘刈、伊佐浜、伊江島の土地強奪の詳細が書いてあった。まんがよりおもしろい本だ。強圧は闘いを生み出すという瀬長亀次郎の真骨頂のとても丁寧に書かれた本だった。

 翁長知事の父、真和志村長で歌人だった翁長助静、瀬長亀次郎、ともに1907年生まれ。
 助静氏を検索したら、タイムスの特集に「敗残兵が住民を避難壕から追い出し、食料を奪うのを何度も見た」と書い ていた。

 先に読んだ翁長知事著「闘う民意」1,500円 角川 2015年12月刊、第4章に助静氏の歌と体験の一部が書いてあった。
 95年小学生暴行事件の県民集会のときより多い人々が、教科書集団自決削除の抗議県民集会に結集した(と記憶している)。

 沖縄地上戦の体験は、僕が想像もできないほど深い悲しみ苦しみに満ちていると思った。
160301_0050-01 闘う民意 翁長雄市著 角川1502刊16022版.jpg
<闘う民意 翁長雄志著 角川>
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辺野古報告 2月26日 [沖縄、基地反対]

 平田さんから辺野古報告が送られてきた。

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辺野古報告

 第3日目 平田一郎

  2月26日金曜 歌で座り込み集会 開始。いま150人。今日で600日目の座り込みだ。
 今日は風も弱く、薄曇りです。辺野古崎まで漕いで到着。監視行動。
 太平洋軍司令官ハリスが「工事は遅れて、2025年完成、抗議運動は拡大している」と議会に報告。後日、菅官房長官が否定に躍起になった。

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<辺野古ゲート前 座り込み 600日>

 まだ暗いうちにコンビニで会った糸数慶子さんが一番で挨拶、ジュネーブ女性差別撤廃委員会報告、遺骨収集法制定。ガマフヤーの具志堅さん辺野古収容所あとの集骨を訴えていると紹介。

 どういう風の吹き回しか、機動隊も工事車両も来なかった。
 防衛局は工事をさぼっている?

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 10時半にテント2へ。カヌーは今日は7艇で出航。辺野古崎まで漕いで40分、工事監視と抗議行動。
 作業船もなく、沿岸の 工事の動きもなく、ただ、ボーリングの作業が見られた。

 風も出てきて、長島の浜に上陸、サンゴのかけらが敷き詰められた浜は美しい。全部サンゴ。

 長島の浜で昼食後、灯台まで登って周囲を見渡すと工事区域がすべて見渡せる。
 海域をぐるっと囲むオレンジフロートとオイルフェンスが許せない。日本政府が米軍に差し出した海と陸が腹立たしい。

 所々、オイルフェンス(黄色の横長の列)がビニールカバーが破れ、発泡スチロールが列をなしてむき出しになっている。
 前回着たときには、列をくるんだ結びの帯が10m以上はがれて海底に沈んでいるのを回収した。


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 辺野古崎には、2万5千人が45年6月以降、強制収用され、マラリアと飢えに苦しみ、数千人の墓地があり、い まだに遺骨が眠っていると
 地元の大城市議がゲート前でいつも繰り返し説明している。

 少し陽が差してきれいなサンゴ礁を2時半ごろ後にした。
 ゲート前に急ぐと、機動隊の動きがまったくなかったので3時に座り込み集会を終了したとのこと。
 明るいうちに、宿に帰った。

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<ゲート前であいさつする糸数慶子参議院議員>



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米大統領選、いつもと様相が違う! [世界の動き]

米大統領選、いつもと様相が違う!

1)一体、何が起きているのか?

 アメリカ大統領選挙が始まった。莫大な金を使い、人々を躍らせ騙し新しい支配者を選ぶ、壮大かつ愚かなショーが、いつものことだが一年近くも続くのか、うんざりだと、少しバカにして眺めていた。ただ、今回は様相が少しちがうのだ。

 共和党の「右派の良識ある三人の候補」、ジェブ・ブッシュ、マルコ・ルビオ、ジョン・ケーシックは、テッド・クルーズ候補の鋭い愚弄に突き刺され、ドナルド・トランプ候補の無秩序な罵倒に圧倒されている。その結果、ジェブ・ブッシュは、2月21日ネバダ州の代表戦のあと敗北を認め選挙戦を降りるところへ追い込まれた。この結果には驚いた。

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<民主党、バーニー・サンダース候補 >

 それ以上に驚いたのは、民主党代表選である。注目すべきは、民主社会主義者バーニー・サンダース上院議員が、予想以上の支持を集めていることだ。

 サンダース候補は、社会主義者と自称して大統領選を戦い、しかも支持を得ている。今までなら、集中的な「アカ」攻撃を受けつぶれていた。今回、本質的に「様相が違う」のはこのことだ。オバマさえ「社会主義者」、「アカ」と非難された。
 オバマは「チェンジ」といった。サンダースは「ポリティカル・レボリューション」と表現している。

 多数の小口の寄付者がサンダース候補を支持し、8年前のオバマ支持運動と似た様相を見せている。ただし、サンダース支持者らは「稀代の詐欺師」(ラルフ・ネーダー)であるオバマに裏切られた経験を持っている。

 「ヒラリー・クリントンはウォール街から大口の献金で操られたエスタブリッシュメント=支配階級だ」とサンダースは批判している。この批判は、正確であり見事に当たっている。クリントンは申し開きができない。
 クリントンは、イスラエル・ロビーと親しい。ネオコンとも親しく、彼らの危険な戦争を支持している。国務長官時代に何をしたか? ウクライナやシリアで代理戦争をしかけた。アメリカ政府内のネオコンと、クリントンは一体である。

 「全米エリートは、大統領選の今の展開にショック状態」なのだそうだ。本来ならば、ブッシュとクリントンの二者択一のはずだった。ところが、これまでのどの大統領選よりも予想もしない展開であり、劇的に「アウトサイダー」によってひっくり返された、という。

2)どうしてこんなことになったか?

2)-1、理由1:米国人が怒っているからだ!

 「米国人が怒っているからだ。最富裕層の所得が急激に増える一方で、賃金の中央帯は停滞したままだ。白人のキリスト教徒はマイノリティになった

 米国社会は、ウォール街とつながった少数のパワーエリートが支配しており、大多数の米国人が政治から排除されている現状に嫌気がさしており、エスタブリッシュメント(=支配階級)への怒りが溜まりに溜まっている。

 前回の大統領選でもその兆候は見えていた。アラスカのサラ・ペイリン知事が共和党の候補戦を混乱させ副大統領候補になった。地方に住む、白人層が支持した。この層はキリスト教右派支持層と重なり、堕胎反対、移民排斥を主張する共和党の支持者であった。地方に住む白人層は、ニューヨークなどの大都市の富裕層とは違って、貧困化し社会の発展から取り残されたと感じている。リーマンショックで破産し、家を失った人、没落した人も多数いる。

 共和党の支持層=地方の保守的な白人層、キリスト教右派の間に、米社会の富裕層、エリート層、ウォール街=支配階級に対する怒りが充満している。サラ・ペイリンはかつてその象徴だった。現在はトランプ候補やクルーズ候補が、この人々の怒りを背景に支持を集めている。
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<共和党、ドナルド・トランプ候補>

 トランプ候補は群衆を「魅了」し、2014年7月から世論調査で優位に立つ。トランプ候補もクルーズ候補も、一貫した経済学や経済政策を持ち合わせていない。論理の一貫しないけれども、目の前のエスタブリッシュメントたちを、罵倒、愚弄しまくったことで、疎外されたと感じている米国人の多くは「爽快感」を感じている。ただし、エリートに対する論理の一貫しない罵倒、愚弄は、いつどのように買収され収束するかわからない面をも併せ持つ。
 
2)-2、理由2:アメリカ民主主義制度の自己崩壊
 アメリカ大統領選は、莫大な金を使い、人々を躍らせ騙し新しい支配者を選ぶ、壮大かつ愚かなショーだ。金持ち、メディアを握る者、パワーエリートが操ってきた。この「やり方」をよく学び極端化させたのが、トランプやクルーズなのだ。マスメディアでの効果を狙い、大量の資金を投入し、これまでの大統領選挙でやってきたことの、そのまま発展、進化に他ならない。そのことを思い知らなければならない。

 目の前に展開している「罵倒」、「愚弄」にあふれた論戦、大統領選は、アメリカ民主主義のこれまでのやり方の帰結であり、発展である。米国の国民支配システムの「これまでの仕方、やり方」ににおいて、トランプとクルーズが「秀でている」からである。
 トランプ候補やクルーズ候補を批判して見せる保守本流は、自分たちがこれまでやってきたことの帰結であることを認識していない。
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<共和党、テッド・クルーズ候補>

 この展開にショックを受ける者は、アメリカ民主主義がすでに形骸化し、富裕層、ウォール街、エリート層の操る政治にしてきた現実を、ただ認識していないに過ぎない。目の前に起きているのは、形骸化の頂点に達したアメリカ民主主義制度の自己崩壊、自己変質である。

2)-3、理由3:貧困化した民衆が増大するアメリカ社会

 この理由が、最も重要だ。

 民主党のサンダース候補は、30歳以下の若い世代から圧倒的な支持を得ている。富裕層が所得を急増させ続けている一方で、富豪の家族でない若者は、大学に行けば巨額の学資ローンを抱えなければならないのであり、高卒で働けば低賃金の仕事しかない。現代アメリカ社会は、何か災難にあえば、すなわちリーマンショックに遭遇したり、事故・病気になったりすれば、その先には破産が待ち受けている。希望がない社会である。
 アメリカ社会のこの深刻な変化こそが、サンダースを押し出しているものである。「アカ」攻撃の宣伝をされても、支持者たちは「何が悪いのか!」という態度なのだ。

 サンダース候補はクリントン候補を、ウォール街の代表者、富裕層の代表者、金融資本から大口献金を受けた候補者と批判している。まったくその通りであり、クリントン候補はこれまでと同じエリートの代表である。サンダース候補は、正面から批判し、人々の支持を集めているのである。
  
 内容は違うけれども、民主党でも共和党でも、エリート層に対する批判と怒りが集中している点では同じであり、いずれも貧困化、格差社会化した米社会に対する怒りと批判が、今回の予備選を支配している。

2)揺らぐ二大政党制の大統領選

 アメリカの二大政党制は、どちらの政党が大統領を出してもパワーエリートやウォール街による支配システムに変更がないように設計されており、そのように機能してきた。支配層の息のかかっていない候補を大統領選の前にあらかじめ排除するシステムである。
 候補者になるためには莫大な資金がいる、マスメディアにたたかれて放逐されないようにふるまわなければならない、・・・・様々な関門があって、「アウトサイダー」が大統領候補になるのを排除するシステムであり、これまで確実に排除してきた。

 少数政党も排除される。これまで、二大政党以外から大統領選に立候補したこともあったが、ことごとく失敗し、葬られた。ロス・ペローは1992年、無所属で出馬したが敗北した。

 エスタブリッシュメントやウォール街にとって、大口献金やマスメディアによるコントロール人材供給により民主党、共和党を支配しておれば、だれが大統領になっても支配は揺るぐことはないと想定され設計されているシステムなのである。

 興味深いのは、サンダース候補は2015年民主党に加わり、トランプ候補は2009年に共和党に再入党したことだ。二大政党制をとるアメリカでは、アウトサイダーの政治家であってもいずれかの党に属し、党の大統領候補にならなければならない。

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<民主党 ヒラリー・クリントン候補>

 二大政党制はエスタブリッシュの支配システムに過ぎないけれども、この制度のなかで闘ってはじめて闘いになるとサンダース候補は判断し、民主党の大統領候補になる道を選んだのだと推測される。現存の制度を「バカ」にして無行動に陥るのではなく、現存の制度のなかで可能性を探ったのではないか。

 オバマが大統領になっても、支配は何も変わらなかった。変わったのは皮膚の色だけだった。しかし8年前、オバマに小口献金し、支持し、オバマを大統領にしたのは大規模なアメリカ民衆の運動だった。オバマは民衆によって選出されたが、民衆の代表ではなかった。そのことは、大統領になった後に、判明し、だれもが認識した。選挙運動に参加した多くの人は、その裏切られた記憶、失望した経験を持つのである。

 今回の予備選では、エリート層に対する怒りが激しく、貧困化した民衆の反乱が米社会の広範に広がり、「アウトサイダー」が勝つ勢いなのだ。

3)時代が変わる?

 これまでもこのような候補はいた。ポピュリズムによるスリル満点の壮大な政治的なショーが繰り広げられながら、有権者がショーから覚め現実をしぶしぶ認識した時期にこういった候補者たちは姿を消していった。
 しかし、今年は現段階までは、そのショーから覚めないまま終盤まで続いている。共和党の主流派がオバマ大統領を批判した口実が広まったことによって、トランプ氏とクルーズ氏の大衆迎合的な考え方に力を貸してしまい、どう対処していいのか窮し、「自縄自縛」に陥っている。

 米国の支配層、富裕層、エリート層が、これまで民主主義をもてあそび巨額の金額を使った政治ショーに仕立て上げ、形骸化させ、自分の都合よいようにコントロールしてきたそのツケが、自身の支配システムをコントロールできなくしている。その光景を見るのは、少々痛快だ。笑ってしまう。
 
 そもそも虚偽であった「アメリカ民主主義」システムがとうとう死滅していく様、腐敗きわまる姿として、歴史にその姿を刻むということなのだろうか。これまでは騙されていたが、もはや「幻想」を抱く者はいなくなるのか。

 今回の大統領選には、エリート層、すなわち米国の支配階級に対する人々のかつてない怒りが満ちているように見える。
 オバマを選んだ民衆は騙されて、幻滅を経験させられた。サンダース候補の予備選がこの先、どのようになるか不明だ。また敗北するかもしれない。
 ただ言えることは、いくつもの敗北を重ね、裏切られ騙され、そのような政治的過程を繰り返して、時代が大きく変わる、変革が起きるということではないか。

 米大統領選に注目している。(2月22日記、文責:林 信治)


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映画『太陽がほしい』を観る [元「慰安婦」問題]

映画『太陽がほしい』を観る
  
 11月2日、明治学院大学で班忠義監督映画『太陽がほしい』の上映会があり、観た。一部、二部 2時間44分。班忠義監督は20年間、中国の「慰安婦」被害者、戦時性暴力被害者を追い、撮りためた映像をまとめて作品にした。中国の山西省を中心とする被害者たちが名乗り出てから亡くなるまでの、日々の暮らし、生きた姿を描き出している。

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<高銀娥さん>

1)被害者は、安倍首相の嘘を暴く

 映画に登場する山西省の被害者たち、万愛花さん、尹林香さん、劉面換さん、尹玉林さん、高銀娥さん、郭喜翠さんらは、みな日本軍に捕まり、駐屯地やヤオトン、トーチカに監禁され、レイプされた。慰安所に入れられたわけではない、戦時性暴力被害者だ。被害が起きた村は、山西省の前線であり、慰安所もなかった。

 安倍首相は「慰安婦女性を強制連行した証拠はない」と発言し、2007年安倍内閣では閣議決定までした。日本の新聞、TV、週刊誌は、そのまま口移しに「強制連行の証拠はない」と報道している。しかし、山西省の被害者たちの被ってきた被害は、安倍首相の発言がまったくの嘘だと暴く。

 被害者は皆、日本兵の銃剣で脅され、駐屯地に連れていかれた。「強制連行」である。「強制連行」の証拠ばかりが目の前に映し出される。監督は映画で、安倍首相の言葉が嘘であることを暴いて見せた。もちろん、被害は「強制連行」だけが問題なのではない。

2)山西省の張双兵さん
 被害者が名乗り出るには、相当な苦労があったことを映画は感じさせる。20数年前に班忠義監督が現地を訪ね、証言を映像に記録したいと申し出たとき、被害者らは顔色を変え即座に家に逃げ帰り、戸を閉め切ったという。それは被害者たちが被害のあとどのように扱われてきたかを物語っている。
 監督は、現地で被害者を支援する山西省の小学校教師、張双兵さんと出会い、何度も通ううちに被害者と会うことができるまでになったという。
 名乗り出た被害者も立派だけれど、張双兵さんのような人こそまた立派ではないか。張双兵さんも、被害者を訪ねても、すぐには信頼してもらえなかったと語る。病気になった被害者を病院に運び、身の回りの世話もし、信頼される関係を築いてきた。
 映画は被害者と張双兵さんの関係を映し出す。張さんは田舎の教師で裕福にも見えない、権力にも縁のなさそうだ。「被害者の身の上に同情して被害を記録する活動を始めた」と語ってはいたが、そのような行動はなかなかできるものではない。
 証言をまとめ、戦時性暴力被害への謝罪と賠償を日本政府に求めるように地方政府に要請したが、日中友好、経済協力をすすめた当時の中国政府の政策に反するとされ、上司である教育長から咎められ圧力を加えられた。そのことが原因で奥さんはうつ病になった。張さんのきわめて人間的な行動は、家庭を破壊することになった。それでも張さんは、被害者の証言を聞き取る活動を続けてきた。映画は奥さんの姿もとらえる。
 こういう人が中国にいること、しかも地方にその事実に感動する。ある意味で勇気づけられる。さらには、自分にひきつけて考えなければならないと思う。
 監督が、張双兵さん、さらには奥さんの姿までとらえ映し出したところに感心した。この映画の良さの一つだ。予期しなかったろうが、こういう場面を逃さない監督のセンス、あるいは人間性を感じる。

3)万愛花を見舞う日本人グループ

 万愛花さんは、早くから名乗り出て証言をしてきた。山西省の被害者を支援する日本人のグループもいくつかあって、何度か現地を訪れているらしい。
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<万愛花さん>

 ある4,5人のグループが、病床にいる万愛花さんを訪ね、通訳らしい女性が「日本人としてすみませんでした」と謝る、一緒に来た男性は日本の男性を代表して謝るという。そして、病床の万愛花さんに向かい、参加した若い男性、別の女性も一斉に頭を下げる。
 善良な人たちなのだけれど、ちょっとした勘違いがある。万愛花さんは語る。「日本人個人に謝罪を求めているわけではない。大砲も、鉄砲も、弾薬も日本政府が準備し、戦争を起こしたのでしょう、だから日本政府に謝罪を求める」と。でもその言葉が聞こえないかのように、日本人個人の謝罪を求めていると初めから勘違いしていて、しきりに謝罪する。
 少し滑稽にも見えるその姿を、映画はそのまま映し出す。日本人グループにもいろんな人がいる。これもまた現代日本の実情の一つに違いない。そんな場面も逃さずとらえる監督の眼に感心する。決して非難のために描いてはいないこともわかる。
 映画は理念的に造るものではない。誰もがいろんな問題点や欠点を抱え生きている、その上で多くの人が世の中を、人々の関係をよくしたいと奮闘している。その姿、その現実を班監督は認めている、普通に生きている人々に対する監督の信頼を感じさせる。それはいいことだし、この映画の良さでもある。

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<袁竹林さん>

4)映画の発するメッセージ

 このように書いていくと、きりがない。映画全体を紹介しきれない。あくまで一面の一面だ。何しろ20年間撮りためた映像であり、いろんな場面がある。映し出された映像そのものにまず引き付けられるのだけれど、同時にその場面を取り上げた監督の視点の確かさにも気づかされる。この映画の特徴の一つなのだろう。監督の気持ちがよくわかる、手作り感を感じさせる映画なのだ。

 映画に登場した被害者たち、万愛花さん、尹林香さん、劉面換さん、尹玉林さん、高銀娥さん、郭喜翠さんらは、すでにみな亡くなった。その人たちがどのような被害を受け、被害に対する無理解のなかで生きて、そうして証言を残してきたその姿を、あるいは遺志を、私たちは映画を何度も見直して受け取らなくてはならないのだと思う。
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