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日韓外貨スワップ協定 延長拒否 の意味 [世界の動き]

日韓外貨スワップ協定 延長なし の意味

 
 日韓外貨スワップ制度は、昨年10月700億ドルまで拡大したが、韓国政府は一年毎に見直す拡大措置の延長を申し入れなかった。希望すれば自動的に延長された協定である。韓国政府が延長を申し入れなかったため、10月9日自動的に、協定は拡大する前の130億ドルまで縮小することが、決定した。
 
 1)韓国政府はどのように判断したか?
 
 87年の金融危機を経験した韓国、日本よりは経済規模のより小さな韓国である。日韓外貨スワップ協定は、韓国側に一方的に有利な協定である。今回、韓国政府が拡大措置の延長を申し入れなかったことは、大方の「予想外」であった。
 しかし、そこに「韓国政府の明確な意思」があり、それを見てとらなくてはならない。

 李明博大統領は学生との対話のなかで、韓国経済にとって日本経済の影響力は以前に比べ小さくなったと発言している。確かにその言葉に相応する変化、事情は存在するし、現在は韓国の外貨準備高も多く積み上っている(8月末の韓国外貨準備高は、3168億8000万ドル(約25兆円))。
 しかし、スワップ協定延長拒否は、それだけでは決して説明できない。

121018 韓国外貨準備高 (500x281).jpg
<韓国ウォンと韓国外貨準備の推移―――
 韓国は、恒常的に経常赤字に苦しんできた国です。資本蓄積も遅々として進まず、97年のアジア通貨危機や2008年のリーマン・ショックの際には、国を挙げての大混乱となったことは記憶に新しい。  外貨準備のデータはOECDからとり、1SDR=1.54ドルとしてドル表示しています。リーマン・ショックの時は外貨準備が553億ドルも減少しました。とすれば今回の700億ドルは大きな存在です。(フィスコ 岡崎良介 今秋のマーケットニュースから、上記グラフと文章の一部を、引用)>

 韓国外交の転換
 今や韓国政府は全方位善隣外交へと転換し、中国・東アジアとのより密接な経済関係構築へと、大きく踏み出している。これまでの米日に極端に偏重した経済関係から、すでに脱しつつある。今回の措置は、近い将来、日本だけではなく他の諸国と経済関係をより密接にし拡大する、韓国政府・韓国経済にとって、日本政府・日本経済は「主に依拠する市場、相手」ではなく、「多くの市場・相手の一つ」へと転換する、そのようなプランの追求に沿った、意思表示とみてとってよい。そのプランは、すでに韓国社会共通のものとなっている。

 もちろん、韓国にとって、日本政府の700億ドルにも及ぶ外貨スワップ制度は「ありがたい」には違いない。IMFのように「厳しい」条件があるわけではない。1987年経済危機に陥った経験を持つ韓国である、外貨調達を引き受けてくれる政府は、どこにでもあるわけではない。しかも現在、世界経済は「欧州危機」のさなかにあり、再び金融危機の嵐が、幾度となく吹きかねないなかにある。信用不安はいつ起こるかわからない。韓国経済は輸出主導であり、グローバル経済の影響や信用不安の嵐を、もろに受けやすい体質でもある。
 しかし、韓国政府は今回、これを断った。

 これまで韓国は、米日韓と密接な関係、同盟を取り結んできた、そして対社会主義、対中国、対北朝鮮と対峙してきた。東西対立下で、日本などより格段に厳しい政治的軍事的社会的条件下にあったし、現在でもそれほど容易な国際関係のなかにいるわけではない。

 韓国資本は、日本資本と同じく、中国、東アジアに進出し、1990年代の社会主義崩壊以降のドラスチックに変化する国際関係のなかでその位置、生き残るための国際関係を模索し、あらたな関係を築いてきた。

 かつてベトナム戦争に参戦した韓国軍がベトナム人虐殺事件を引き起こした。その過去を、韓国政府はベトナム政府とベトナム国民にすでに謝罪している。従来の外交政策、軍事政策の誤りを反省し、謝罪した。そのうえで友好的な韓国とベトナムの関係構築を誓っている。韓国資本がベトナムに進出するうえで、そのような対応、外交政策の変更は、必要不可欠であった。でなければ韓国は東アジアと世界で生きていけないのであり、そのことをよく知っているのである。現代を生き抜く韓国民と韓国政府の国際感覚である。

 もちろんこのような韓国政府の変化、外交政策の変更は、対ベトナムだけではない。対中国、対アジアでも同じである。21世紀の韓国は、東アジアのなかで、その一員として生きていくこと以外にない、そのために全方位善隣友好関係を築き上げなければならないと、決意している。
 韓国の外交政策変更の背後にあるものを、きちんと読み取らなければならなない。

 2)日本政府・外務省の外交方針とは何か?

 さて、そこでわが日本政府の外交政策である。
 日本の置かれている国際環境は、韓国が置かれているそれと、よく似ている。日本の外交政策はどのように対処してるか? 外務官僚は、どれほどの外交感覚をもっているか?

 1965年日韓条約を締結した。韓国側は、日韓条約で戦時賠償を放棄した、日本側は5億ドル援助を約束した。
 当時の韓国は、朝鮮戦争の災禍から完全には立ち直っておらず、北と対峙するため莫大な軍事費を準備しなくてはならなかった、復興と資本主義的発展は遅れていた。朴政権は独裁体制を採り、国民の不満を押さえつけ、他方、韓国支配層を成長させようとしていた。先に戦後復興し、資本主義的発展を経た日本政府から、戦時賠償を放棄してでも、日韓協定による5億ドルを得ることが何よりも必要だったのである。

 日本政府・外務省側は、ここで「ひとつの教訓」、「成功体験」、外交のやり方を「身につけた」。「札束をちらつかせれば、戦時賠償を放棄させることができる」。
 「札束をちらつかせれば、相手は妥協する、少なくともそのような関係をつくりあげる」くらいを教訓としたのである。日本政府とアジア諸国との戦後の付き合い方は、この線で進められた。

 1972年、日中友好協定において、中華人民共和国政府は戦時賠償を放棄した。敗戦直後、中華民国・蒋介石政府は、日本軍国主義に侵略され、多大な被害を受けたにもかかわらず、「暴に報いるに、暴をもってせず」と高らかに宣言し、戦時賠償を放棄した。受けた被害の大きさから、「二度と世界戦争を起こしてはならない、戦時賠償が次の世界大戦の原因となってはならない」と考えたのであろう。反ファシズム戦争へ勝利した中国の立場が反映していよう。そこには戦後、対社会主義戦略と世界支配を構想する米国の意志も幾分か入っていたろう。
 中華民国にとってかわった中華人民共和国政府も、1972年その精神を受け継ぎ、戦時賠償を放棄した。当時の中国は大躍進政策の失敗、文化大革命のさなかにあり、たいへん貧しかった。戦時賠償放棄は重大な決心を伴ったであろう。
 しかし、日本政府・外務省はここでも学ばなかった。

 韓国政府・外交通商省は、日本政府の「態度」を長い期間にわたって感じながら相手をしてきた。それは「屈辱」として残っている。札束で面を張った側は忘れても、張られた側はいつまでも忘れない。日本外交はそんなことさえ、おもんばかることができなかったし、今に至るまでできていない。外務官僚は、自身の保身のため、過去の先輩官僚の実績、方針を変更できない。

 そして、相も変わらず親米外交一本槍である。
 中国と東アジアが、この先世界経済の成長の中心であることは、誰の目にも明らかである。中国と東アジアとより密接な関係を築かなければ、日本経済に未来はない、経済ばかりか日本に未来はない。
 その新たな情況に相応するだけの、国際関係を築いているか? 日本の外交政策は?

3)人権国家になることができるか!「慰安婦」問題の解決

 1965年日韓条約で確かに国家間の戦時賠償は放棄された。しかし個人賠償まで放棄はされていない。そのことは条約においても明白である。したがって、韓国政府は、元「慰安婦」とされ戦時性暴力被害を受けた被害者たちの人権回復、公式謝罪と賠償まで、「慰安婦」問題は解決してはないと主張してきた。さらに2011年8月、韓国憲法裁判所は、韓国政府が被害者たちの人権回復のための交渉を行ってきていないのは、違憲だとする判決をだした。韓国政府、裁判所だけでなく、韓国社会全体が、人権侵害である「慰安婦」問題の解決、すなわち日本政府による公式謝罪を要求するに至っている。「人権擁護」という世界的な潮流でもある。日本大使館前で行われている韓国水曜デモには、韓流スターまで参加し、全国民的運動になっている。それを受けて、韓国政府、李明博大統領は日本政府に対して、「慰安婦」問題の解決を何度も何度も申し入れてきたのである。

 しかし、日本政府は、日韓条約で「解決済」とし、協議には一切応じなかったし、その態度は誠意のないものだった。
 韓国政府は、「日韓条約では個人の賠償請求権まで放棄していない」と主張し続け、そのことを示すために当時の日韓交渉記録をすべて開示し、日本政府へ協議を申し入れている。
 他方、日本政府・外務省はどうか。当時の日韓条約交渉記録を一切開示していない。日本国民から開示要求があるのにもかかわらず、拒否し続けている。開示せずに、「解決済み」を繰り返すだけである。

 ここに両国政府間の明確な見解の違い、際立った態度の違いが存在する。

 どちらの態度が立派か!
 どちらが人権国家か?

 日韓条約第3条には、条約の解釈の違いが生じた場合には、速やかに協議するとある。上記の通り、明確な「解釈の違い」が生じている。しかし、この協議に日本政府は一切、応じていない。日韓条約は国際条約である。実に不誠実な態度をとり続けてきた。「不誠実な態度」をすでに超えている、協議に応じないことは、国際条約違反である。

 韓国政府・李明博大統領の日本政府に対する強硬な態度は、ここから生まれているのである。
 日本政府も、外務省も、外務省から情報リークされて報じるマスメディアも、このような経過を報じない。李明博の竹島(独島)上陸から話を始める。

 今回の外貨スワップ協定更新(10月)も、当初、日本政府・外務省は、「外貨スワップ協定は韓国にとって必要だから、いずれ申し入れてくる」と高をくくっていた。「札束をちらつかせれば折れてくる」、そう思っていた。日本外務省の得た教訓、高級官僚の「高等な知恵」である。
 しかし、予想がはずれた。外務省には、韓国政府の対応を「読む」だけの、知識も、外交ルートもなく、情報収集さえやっていないことが、明らかになった。内向きの外務省である。

 4)日本外交の得意技

 2011年12月、日韓首脳会談で李明博大統領が「慰安婦」問題の解決を強く求めた後、日本外務省は、NPOをつかって個別に韓国・元「慰安婦」被害者に接触し、「もし日本側が新たに金を出せば、受け取りますか?」と聞いて回った。

 2012年4月、米パリセイパーク市で韓国系米国人が「慰安婦」碑を建てた時、日本の駐米公使が急遽、パリセイパーク市長を訪問し、「図書館に寄付したい、桜の並木を寄付したい、青年事業に寄付したい、ついては「慰安婦」碑を撤去してもらえませんか?」と言って回った。
 これが高度に経済発展した先進国日本・外務省の、高等な外交戦術なのである。日本外務省の得意技である。ただ、この「得意技」は、各国から「バカにされている!」。

 今回はともに、「バカにするな!」と言われ、追い返された。日本外交のレベルの低さ、人権意識の無さがあらためて、具体的に示された。

 5)国際感覚の欠如した外務官僚

 今回のスワップ協定も、外務省高級官僚は高をくくっていた。
 しかし、結果は予想外だった。韓国側が延長を希望しないと通知してきた。外務官僚はあわてた姿をさらした。
 韓国政府は、日本政府との関係を見直す!とはっきり通知してきたのである。その意味くらいは、きちんと受け取らなくてはならないだろう。

 スワップ協定を結べば、その分だけ、日本政府の言い分の一部でも受け入れなければならない、結局は高くつく、と判断したのである。 ここに大きな転換がある。日韓関係の転換点と、未来の歴史家は評価するだろう。

 中国・アジアさらには世界との全方位善隣友好関係の構築のなかに韓国の未来があると構想しているならば、賢明な、ありうべき判断というべきであろう。

 しかし、日本の外務官僚は、こんなことさえ予想できなかった。 なんと国際情勢に疎い外務省であるか! 国際情勢=「アメリカの顔色」と思い込んでいる。

 外務官僚がしたことと言えば、「スワップ協定の延長中止は、決して領土問題に関係はない、政治的なものではない」という言い訳を、新任の城島財務相に喋らせて、平然とした様子をことさら装った。さっそく政治家を立てて、自身の責任を小さくしておくことだけは忘れずに実行した。

 問題は日韓関係だけではない。あらゆる国際関係につながっている。日本政府と日本国民は、中国、韓国、東アジア諸国の関係から、国際社会から、取り残されるのではないかという不安に襲われている。事態はまだ進行中である。  (文責:林 信治) 
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