So-net無料ブログ作成
検索選択

ロシア経済危機とルーブル通貨危機の意味 [世界の動き]

1)プーチンのロシア


ダウンロード.jpg


 1)「プーチンのロシア」とは何か?

 石油や天然ガスの生産・輸出を、国家資本主義的に組織された自国資本が経営し、その収入で国家財政を確保し、国際金融資本の支配、新自由主義に対抗する現在のロシアのことである。

 西側の金融資本からすれば、「プーチンのロシア」では、自由にロシアの石油や天然ガスを支配し利益をあげることができず、はがゆいことこの上ない。

 プーチンの推し進める国家資本主義を解体し、新自由主義体制に転換し、石油や天然ガス、その他の資源を国際金融資本の手に入れたい。しかし、それがかなわない。したがって、たとえば、戦闘を状態をつくりだし、カダフィを殺害放逐しリビアの油田をリビア国民から奪い、西側金融資本の手に入れたように、「プーチンのロシア」を破壊したい。そのため、「プーチンの独裁」、「プーチンの帝国」と呼び非難し、最終的には「リビア化」する機会をねらっているのである。

 「ロシアを民主化する」というスローガンは、国際金融資本がロシアの石油や、天然ガス、その他の資源を自由に手に入れ支配する秩序をつくりだすことに他ならない。

 ゴルバチョフ、エリチン時代のロシアは、社会主義が解体され、自国の主権を奪われた時期であった。西側に騙され、従わざるを得なくなり、支配されてきた屈辱の時代であった。「プーチンのロシア」は、その時代に対する「批判と反省」から生まれたレジーム、システムであり、西側の金融資本の支配に対抗し今日の条件下で可能な自国の主権と利益を守るシステムである。

 実際のところ、プーチンのロシアは、グローバリゼイションと新自由主義、金融資本主義の支配に対抗し、存在し続けることを可能にしている。

 ほかの東ヨーロッパ諸国のいくつかの政府は、社会主義を解体した後、新自由主義の支配を受け、欧米の言いなりになっている。政府首脳は西側に買収されており、自国の資源や労働力を西側の金融資本に売り払うことで、自分たち支配層、富裕層の利益を得ているし、国家主権や国民の利益ではなく、自分たちの利益ばかりを考えている。

 グローバリゼイション、新自由主義の時代には国家主権は、強制によるのではなく、エスニックな民族主義に彩られたそれぞれの政府首脳によって「自発的」に欧米に売り渡されているのである。

 例えばポーランド、バルト三国、最近のウクライナ政府などは、政府首脳が自発的に、国家主権を売り渡す態度を取るにいたっている。2014年ウクライナ新政府が国内で戦闘を起こしたとき、ポーランド、バルト三国政府は、「自発的」に自国領内へのNATO軍の配備を要請した。そのことが欧米政府の要求であることを理解してるからであり、「金になる」からである。

 ロシアもいったんはこのような状態に陥ったものの、そこから抜け出した。それは資源輸出による収入を国家に集め再分配し、国家主権を取り戻したのである。プーチンのシステム、レジームによって可能になった。プーチンの功績である。

2)ロシアはなぜ米国支配を批判できるのか?

 化学兵器使用を理由にした米国によるシリアへの軍事介入に対し、国連の安保理事会で公然と反対したのはロシアと中国であった。ロシアはシリアに化学兵器破棄を約束させ、介入の理由を消し、米国による軍事介入をやめさせた。冷静で理性的な対応であった。

 ロシアはイスラエルによるガザ攻撃への批判も公然と表明した。ロシアはウクライナへの米国による軍事介入に対しても、断固たる態度を取り、米国の傀儡であるウクライナ政府に対し、停戦を一貫して主張し、冷静に対応した。

 EUや日本は、ウクライナでナチや右派勢力を中心に米国が支援したクーデターが行われたこと、新たに成立したウクライナ政府が自国のロシア系住民に対する一方的な軍事攻撃を行い、住民を殺害し、社会的混乱が広がっている事実を、米国の意向を考慮し、あえて無視する態度をとり、そうしておいて、米国に呼応してロシア経済制裁に参加した。

 EU、フランスドイツ、日本は、米国の世界支配に従っていると言える。
 フランス最大の銀行、PNPパリバは、米国が勝手に始めたイラン制裁に反して交易したことを理由に、米国政府から90億ドル(約1兆円)もの制裁金を課せられたが、2014年6月30日、何の文句も言わずに支払った。米国政府が勝手に決めたイラン制裁であって、フランスは何も関与していない。しかし、米国に反論もできずに従ったのである。

 ロシアは米国支配を堂々と批判する数少ない政府である。現代世界において、そのことが可能な、国家主権を主張しうる基盤を確立し、現在の国際的地位を築いている。
 国家主権を持っていながら、主張さえせず、すすんで米国に従っている日本政府とよく比べてみたらいい。

3)ロシアの弱点

 現代世界において、プーチンのロシア国家資本主義が、グローバリゼイションと新自由主義、金融資本主義の支配に対抗しうる一つのプランとして眼の前にある、このことは確かである。

 ほかに似た例を挙げてみよう。
 ベネズエラのチャベスとその後継のマドゥロ政権は、米国の国際政策、外交政策を公然と批判し続けている。それが可能なのは、人々の支持を基盤とし国家権力を掌握したうえで、ロシアと同じく豊富な石油収入を国家に集め人々に分配する国家資本主義システムを確立し、なおかつ石油輸出することで中南米諸国との経済関係、協業・分業関係を取り結び、その関係の上で機能しているからである。

 事情はロシアとよく似ている。
 ロシア経済は、資源を輸出することで成り立っている。しかし、資源輸出を永久に継続することは難しい。資源を輸出し外貨を稼いでいる間に、自国産業を確立し資本を蓄積し、欧米先進国の産業に対抗しうる存在となり、国際金融資本の支配をはねつけるより確実な力を身に着けなければならない。そのような過渡期にある。

 この点はロシアの弱点である。石油や天然ガスだけでなく、産業を起こし国際的競争力を獲得し、輸出を多角化しなければ、この弱点は最終的に解消しない。世界経済循環の恐慌局面が訪れるたびに、先進資本主義諸国の金融資本が、ロシアを含む新興国の資源開発投資から自己の資本を引き上げるので、もっぱら「外的要因」によって重大な景気後退、経済危機に瀕することになる。

 今回の石油価格の下落は、このロシアの弱点を狙い撃ちした格好になった。

4)今回のロシアの危機

 今回の石油価格の暴落はロシアとベネズエラに大きな打撃を与えている。

 2014年6月以来、国際石油価格が大幅下落したのを目の当たりにしながら、サウジは減産を拒んだ。相場を反転させようとはしなかった。その背景には世界的な需要減退による石油価格の低迷があり、必ずしもサウジの謀略だけで事態が動いているわけではない。

 11月27日のOPEC総会でサウジは、減産見送りの音頭を取った。その結果、過去2年間、1バレル=105─110ドル前後で安定していた北海ブレント油は、6月の112ドルから60ドル以下にまで下がった。ベネズエラのマドゥロ大統領は10月、「米国とその同盟諸国が石油価格の下落を望むのはなぜだろう、ロシアを痛めつけるためだ」と発言した。マドゥロ大統領は、ロシアだけではなく、ベネズエラもと言いたかったのだろう。

 サウジの狙いは、ロシアだけではなく、シリアの内戦においてロシアとともにアサド政権を支えるイランを罰することにもあるだろう。イランも石油収入があるから、米国支配に唯々諾々と従わない。
 さらには、米国のシェールガス・オイル開発に打撃を与える狙いもあるだろう。米シェールガス・オイル開発事業には、「低格付け債」など高利の借入をしている企業も多く、これに打撃を与え、低下しているサウジ、OPECのシェアを回復する狙いもあるだろう。サウジの生産コストは1バレル=10ドル程度であるから、耐えることはできる。

 もっとも、今回の石油価格の下落、経済危機はサウジの「狙い」だけで生まれたものではない。むしろ、1)シェールオイル・ガスの増産、2)金融緩和によって原油先物価格の上昇が先導したてきたが、米国緩和終了により、先物価格が下落したこと、3)世界景気の停滞、とくに中国経済の低成長へのシフトにより世界需要が減った、などによるものである。

 ロシア・ルーブルは下落し続けている。ロシア中銀は12月15日、政策金利を17%に引き上げた。政策金利17%とは、通常の企業活動はできず、ほとんど経済危機に等しい。どうなるのか。ロシア企業にとっては、先行きの不透明感が強まり、資金調達が難しくなる。
 ルーブルの下落は、通貨危機をも引き起こしている。
 他方、ウクライナ危機を口実としたロシア経済制裁を、欧米はそう簡単には解除しないだろう。

 2014年と15年のロシアからの資本流出は1,000億ドルを大幅に上回ると指摘されている。ロシア政府は、資本規制は導入しないと繰り返し宣言しているが、流出を防ぐために資本規制が不可避となる可能性がある。ロシア中銀は金・外貨準備を引き出してルーブルを買い支えてきたが、効果はなかった。それもどれくらい続けられるかわからない。ロシアの外貨準備高は、2014年初頭には5,090億ドルを超えていたが、今では4,160億ドルに減っているものの、その額だけみればまだ相当な額であり、余裕はあるように見える。これを大きく減らす前に、石油価格の下落が止まり、ルーブルの下落が止まることを祈るばかりだ。

 金利の上昇で成長がさらに鈍化し、来年は、マイナス成長を避けられない。来年だけではなく、2,3年は経済危機の影響は残り、経済低迷の時期は続くだろう。石油価格が上昇に転じなければこの状態は最終的には解決しない。したがって、ロシアの危機的状態は、石油価格が上昇に転じるまで当分続くということだ。

 石油価格の下落を通じて、ロシア、ベネズエラ、イランが債務危機を引き起こし、破綻に至るならば、そのあとで惨事便乗型資本主義、すなわち新自由主義が支配していく機会をつくり出すことになる。今回は、そこまでは進まないと思われる。
 ただ、このような機会を通じて世界の金融資本は、金融資本主義、新自由主義の世界秩序に従わないロシアやベネズエラ、イランなどの国家主権の基盤の破壊を狙っているのは確かであろう。
 
 これらの事態は、ロシア等が中長期的には中国やBRICS諸国とより結びつくことを志向させるだろうし、すでにその方向に踏み出している。

12月18日追記
5)ウオール・ストリート・ジャーナルの見当違い

5)-1: ロシアが軍事的対立を激化させることはない

 12月17日ウオール・ストリート・ジャーナルは、「今回のロシア経済危機、ルーブル通貨危機によって、ウクライナに対するロシアの軍事的攻勢が強まり軍事的対立が激化する」とし、「プーチンがウクライナに対して好戦的態度をとり、EUに圧力をかけ、西側諸国から譲歩を引き出す」とも書いている。
 
 しかし、そのようなことはありえない。ロシアから軍事的対立を激化させることはない。なぜなら、軍事対立の激化はロシアにとって極めて危険な危機を到来させるからである。同じ意味からして西側への圧力にもなるはずがない。
 
 そもそも、ウクライナ問題は、ウクライナの右派勢力、ナチ勢力がネオコン、米国政府の後押しを受けてクーデターを起こし、ウクライナ新政府が東部ロシア地域に、一方的に軍事攻撃を開始したことから始まっている。ウクライナが半戦争状態になれば、惨事に便乗してNATO軍のウクライナ配備が可能となり、新自由主義が支配するウクライナに変えることができる。ウクライナ新政府は、EU、NATO加盟を望んでいる。NATOがミサイル群をウクライナのロシア国境に配備すれば、モスクワは無防備状態になるのであり、ロシアの軍事力、ミサイル網の大部分を無化にできる。

 したがって、ロシアにとってはそのような事態への進展をゆるさないためには、戦闘状態の終結が何よりも重要なのである。戦闘を仕かけてきたウクライナであっても、経済関係を強化し、相互互恵的関係をつくり上げることは、現時点においてもロシアの安全保障にとって必要なのである。

 実際のところ、プーチンは停戦を一貫して主張し、呼びかけ、実現してきた。また、ウクライナとの経済協力関係の拡大を提案してきた。

 戦争を煽ってきたのは、ロシアではなくウクライナ新政府であり、NATOであり、欧米政府である。
 したがって、ロシアから戦闘状態をつくり出すことはありえないが、仮にロシアが戦闘状態をつくったとしても、EUや米に対し、譲歩をひき出すことにはならない。NATOの軍事的介入の口実を与えるだけである。

 ウクライナ政府が停戦を受け入れたのは、直接的には、ウクライナ軍の装備が極めて古く、兵士の士気も低く、ウクライナ軍がロシア系住民の義勇兵に簡単に敗北したからであり、軍事的にも財政的にも戦闘を続ける力がなかったからである。戦闘継続は、国家破綻を意味した。12月19日ウクライナは、米格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)によって「CCCマイナス」に格下げされている。

 現時点においては、停戦がほぼ成立しつつあるが、決して安定的な関係ができているわけではない。ウクライナはすでに国家財政は破綻しており、軍事費を準備する余裕はない。にもかかわらず、ポロシェンコ大統領は、米国にそそのかされ対東部地域、対ロシアに対する戦争準備のための軍事力強化方針をいまだおろしていない。
 
 停戦であろうが、戦闘が再び始まろうが、米政府とEUは、ロシアへの経済制裁は、制裁の期限である一年は間は、解除しないだろう。一年後どうするかは、いまだ決定しておらず、その時の情況によって決まるだろう。

5)-2: ガス供給は相互互恵関係の基礎

 「ロシアが欧州に対し、供給している天然ガスを止めると脅す」可能性をウオール・ストリート・ジャーナル(12月17日)が指摘しているが、これもひどい見当違いである。

 ソ連時代に欧州へ天然ガスを供給しはじめたことによって、欧州―ロシア間には密接な相互依存関係がつくりだされた。天然ガス供給は単にエネルギー供給にとどまらず、永続的な友好関係、相互互恵関係をすでに形成している。パイプラインが破壊されるような戦争、戦闘行為は、EUもロシアも反対するであろうし、そのような事態が起こさない「合意」がすでに成立している。ロシアへの経済制裁は、ドイツとEUにとっても経済の停滞という影響をもたらしたのである。 

 ロシアが天然ガスを止めるならば、「EUに対する脅し」となる以上に、ロシアにとって大きな損失となる。天然ガスは現在のロシアにとって貴重な外貨収入源であるし、ガス供給のためにすでに莫大な資本を投じてパイプラインを敷設してもいる。ロシアは、欧州景気減速による天然ガス輸出確保のために、販路拡大を求めて中国、日本と既に交渉をはじめていたばかりである。

 欧州への天然ガス供給をいったん供給を止めたなら、例えば米国のシェールガスに一部に取って替えられ、ロシアの天然ガスはその販売先とシェアを失い、ロシアは莫大な損失を負うことになる。

 しかも現在のロシアは、石油価格の下落によって外貨収入を失っており、天然ガスを止めるなら、さらに貴重な外貨収入を失うことになるのであり、そのような選択肢は到底、ありえないからである。

 EUとロシアのガス供給関係、相互互恵関係を破壊することに利益を持つ存在は、近い将来シェールガス、オイルの輸出先を求めることになる米国政府と米国資本であろう。EU側としては、価格交渉のため、エネルギー供給多様化の一つとしてシェールガスを一部採用することはあるだろうが、しかし現時点ではいまだ米国のシェールガス・オイルを輸出し安定供給する態勢はできていない。少なくとも、まだ数年以上かかる。仮に数年後になっても、ロシアの天然ガスはパイプラインで送られており、船で運ぶLNGと比べ輸送コストは優位にあり、シェールガスに全面的に切り替わることは、まずありえない。
 したがって、EUにとってもロシアとロシアの天然ガスは尊重しなければならないのである。

 EUへの天然ガスの供給が止まる唯一の可能性は、ウクライナが欧州向けに送る天然ガスを途中で抜き取る事態である。かつてそのようなことはあった。米国の威を借りて、いい気になっているウクライナ新政府ならやりかねない。独・メルケル首相が、ウクライナ新政府を厳しく叱責し、ウクライナはシュンとなった。ロシアへ天然ガスの代金を支払わないで抜き取ることは、EUにとっては許されないことであり、もしそのようなことが起きれば、ドイツをはじめEUはウクライナを許さないだろう。

 「ロシアによるEUへの天然ガス供給」は、ウオール・ストリート・ジャーナルが指摘するEUに対するロシアの脅しの種になるのではなく、逆に対立を防ぐ要因として機能する。 
 ウオール・ストリート・ジャーナルは、よく知ったうえで、デタラメの報道をしている。ロシア情報、ウクライナ情報は、管理された嘘しか流さない態勢が機能している。 (文責:林信治)
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この記事のトラックバックURL:
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。