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中東からの難民がEUに殺到、シリアへの軍事介入をやめよ! [世界の動き]

シリアへの軍事介入をやめよ!
中東からの難民がEUに殺到

1)トルコ海岸に横たわる3歳児の遺体写真

 多くのフィリピンの友人がfacebookでトルコ海岸に横たわる3歳児の遺体の写真を載せていた。友人たちは「敏感」に反応していた。確かに注目すべき写真である。この写真が中東や北アフリカからEUへ向かう難民の「悲劇」の象徴として世界に配信され、難民問題が一挙にEUの社会問題になった。

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<トルコ海岸に打ち寄せられたシリア難民 3歳児の遺体>

 「銃弾や砲撃が飛び交う状態、戦火が何年も続くところにはもはや住めない」とインタビューで答えた難民の言葉は印象に残る。その通りなのだろう。シリア難民は今年だけで44万人、2011年以降だと408万人という。シリア難民を含む多くはトルコを通り、EU、特にドイツを目指している。殺到する難民があまりにも多いので、ギリシャやハンガリー、クロアチアなどの国境で混乱が続いている。

 1972年ベトナム戦争で、戦火の中を逃げ惑う裸の少女の写真が世界中に配信され、ベトナム戦争の意味を世界に伝えた。今回の3歳児の遺体写真は衝撃的ではあるが、その背景、意味は必ずしも理解されているわけではない。

トルコからギリシャに上陸したシリア難民父子 (320x320).jpg
<トルコからギリシャに上陸したシリア難民父子>

2)どうして難民がEUに殺到するのか?

 難民が生まれる原因は明白。戦闘が続くシリアからの難民だ。さらには米国のイラク、アフガニスタン侵攻や「アラブの春」に乗じた武装勢力によって、リビアやイエメン、シリア、アフガニスタンなどはすでに崩壊国家と化している。中東への米国・EUの軍事介入、ISなどの武装勢力の破壊と殺戮が、難民殺到の原因である。
 難民の数が多いのは、これまでの「政治的難民」と異なり、「崩壊国家」からの逃亡難民だからである。したがって、流入する難民数が各国の難民対策の枠を大きく超えているのである。

 「違法」難民の問題に関しては今年4月にECIPS(情報政策安全保障欧州センター)がは、「アメリカ、イギリス、フランス、トルコ、イスラエル、サウジアラビア、カタールといった国々がアル・カイダ系武装集団やISを使い、リビアに続いてシリアを攻撃し、破壊と殺戮が続いているから」と主張した。

 ところが欧米政府やメディアはそうした警鐘を無視してきた。米国、イスラエルの中東政策、軍事介入に追随してきたEUは、難民殺到という形で、ある「しっぺ返し」を受けた。もちろん最大の被害者は国を逃げ出さなければならなくなった人たちである。

ギリシャに上陸したシリア難民、ギリシャ警察に押しとどめられる (320x222).jpg
<ギリシャに上陸したシリア難民、ギリシャ警察に押しとどめられる>

3)シリアのIS

 現在、イラクからシリアにかけての地域ではIS(イラクとレバントのイスラム首長国)が破壊と殺戮を続け、支配を広げている。ISはそもそも外部から来た「戦闘員」からなる組織であり、ほとんどの住民がISを支持していないし、ISはそもそもイスラム的でさえない。

 ISはシリア北部ラッカを首都とし、支配地域では一定の社会的機能が成立しており、事実上の政府、司法制度、消費者保護の仕組みまで備わっている。ただ「いつ、どういう理由で殺されるかわからない社会」であって、地域の住民たちは、不満をいう事を許されず、恐る恐る生きている。

 イスラムイデオロギー的見地から、きわめて不可解・奇異なのは、ISが聖地エルサレム奪還という目的には一切関知せず、イスラエルへの直接攻撃を避けていることである。(この項、重信メイ「ISIS支配の恐怖」文芸春秋4月号から引用)

 現在、イラクからシリアにかけての地域ではISが破壊と殺戮を続けている。彼等の目的のひとつがシリア・アサド政権を倒すことで、これは米のネオコン戦略、サウジの中東支配の目的に合致している。

4)ISはどこから生まれたか?

 ISはアル・カイダから派生している。そもそもアル・カイダは戦闘員の登録リストであり、戦闘集団を意味しない。ロビン・クック元英外相によると、「アル・カイダ」とは、CIAに雇われて訓練を受けた数千人におよぶ「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイルで、アラビア語で「データベース」の意味である
 オサマ・ビン・ラディンはサウジアラビアの富豪一族に属し、ソ連軍と戦う戦闘員を集める仕事をしていたとされ、また実際の戦闘や戦闘指導の経験はないと言われる。サウジ政府や富豪が武器や資金を提供して来たのは疑いのないことだ。
 サウジにはこれまでアメリカから購入した武器が大量に蓄積している。その一部が横流しされている。

 リビアへの軍事侵攻ではアル・カイダ系の戦闘集団LIFGとNATOとの同盟関係が明白になった。リビアでカダフィ体制を破壊した後、アル・カイダ系の戦闘員はシリアなどへ移動、武器も運ばれた。DIA(アメリカ軍の情報機関、2012年8月に作成した文書)によると、シリアにおける反乱の主力はサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIで、欧米、ペルシャ湾岸諸国、トルコの支援を受けているとしている。
 シリアではヌスラ戦線というアル・カイダ系の武装集団が活動しているが、この名称はAQIがシリアで活動するときに使っていた(DIA)。そのAQIは2004年に組織され、06年にAQIが中心になって編成されたのがISである。

 ISについてジョー・バイデン米副大統領は2014年10月2日にハーバード大学で次のように語った。
 ISの「問題を作り出したのは中東におけるアメリカの同盟国、すなわちトルコ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦」であり、その「同盟国」はシリアのアサド政権を倒すために多額の資金を供給、トルコのエルドアン大統領は多くの戦闘員がシリアへ越境攻撃することを許してISを強大化させた」。(この項、櫻井ジャーナルより引用)

5)ISはなぜかの地に誕生したのか?

 欧米社会から歓迎された「アラブの春」を機に、イスラム武装組織が介入し、既存の政府、支配者を倒し、武装勢力による破壊、殺戮、支配をつくりだしている。
 チュニジア、エジプト、リビア、シリア、イエメンといった国々は、権力の腐敗や汚職、強権的な統制といった問題はあったにせよ、医療、教育などの制度を持ち、地域内の秩序は保たれていた。女性の社会進出が比較的進んでいた。

 「アラブの春」の当初の立役者となったのは「より自由な社会を求めるリベラルな若者たち」だった。2008-9年サブプライム恐慌が、欧州の外注下請けとして前循環局面で成長発展したチュニジア経済を揺るがした。自由な社会を求めるリベラルな若者たちは、新興の市民、支配階級の一部でもあった。したがって、「アラブの春」は、サブプライム恐慌によって新たに生まれた社会経済関係の破壊、新興市民への打撃が引き起こしたともいえるのである。

 しかし、いざ革命が成就した後、あるいは途中から台頭してきたのは、イスラム国家樹立をめざすムスリム同胞団、IS、地方ごとの武装勢力などの組織であった。武装勢力を送り込んだ国々がある。直接手を下すのではなく、「代理戦争」による「崩壊国家」をつくることこそ、現代の新自由主義を拡大する手段の一つである。

 リビア、シリア、イエメンは「アラブの春」で外部から武装勢力が侵入しカオスとなり、現在は崩壊国家となっている。

 米国、イスラエルとサウジが、シリアのアサド政権を倒すと決め、反政府勢力に支援を始めた。ISがイラクとシリアで勢力を得ることができたのは、「アラブの春」の混乱に付け込み優勢な武力で侵攻したと同時に、米国の中東政策に乗じたからでもある。

 アサド政権が腐敗や汚職、強権的な政府だからといって、欧米諸国が反政府勢力に軍事援助し政権を倒す権利はない。内政干渉であり、侵略である。汚職や強権、独裁ならサウジや湾岸諸国の方が何倍もひどい。欧米諸国の言い分はダブルスタンダードである。

 シリアのアサド政権はイスラエルと対峙し、パレスチナ解放を掲げ続けていることが、米国に特別に「選ばれて」狙われている理由の一つである。

 シリアにはもともと反政府勢力が存在していたし、外国からの支援を拒否するグループもあった。しかし、反政府団体の寄り集まり組織「自由シリア軍」(FSA)は米国の軍事支援を受け入れたことで理念と正当性を失った。「自由シリア軍」はISと敵対関係にあるとされているが、地域ごとにリーダーが異なり、部隊ごとISに衣替えしたケースも少なくなく、その力は後退している。
 「自由シリア軍」はすでに、中東におけるアメリカの利用する政治的「駒」の一つに転化してしまった。
 ISも利用してきた駒の一つには違いないが、ISが勢力を増すにつれ、米国に利用されるだけにとどまらない面も出てきた。

 アサド政権を倒すために投入した資金や武器、車両などもISにわたっている。アメリカがイラク軍に供与した最新鋭の装備は、ISのモスル占拠で彼らの手に渡った。現在では、トルコからの物資搬入がISの兵站線になっている。

6)米国の軍事介入、サウジの覇権

 中東における宗派対立が本格的に泥沼化したのはアメリカが軍事介入した後であって、つい最近のことだ。イラクやアフガニスタンにおけるアメリカの占領統治は、「自由」を掲げながら、拷問やアグレイブ刑務所における捕虜虐待、あるいは占領地域の資源強奪を伴う。
 アメリカの軍事介入と占領統治では何も解決しないし、未来を約束しないことをアラブの人々に示して見せた。

 アメリカの軍事介入前は、アラブにスンニ派とシーア派には大きな隔たりはなかった。
 宗派対立を煽るのは、武力介入の口実として利用できるからだ。サウジや湾岸諸国も宗派対立を利用し軍事介入を狙っている。現在、宗派対立の尖兵になっているのがISである。彼らは異教徒のみならず、イスラム教の他宗派さえ認めず、排撃する。極めて排他的かつ攻撃的なテロ組織である。サウジと密接な関係にあり、サウジの尖兵でもある。

 誰が中東の新支配者になろうとしているか?
 カタールに本拠を置くアル・ジャジーラは、「アラブの春」の当初、カダフィ独裁反対、ムスリム同胞団や反政府過激組織を支持の報道をした。しかしそれは天然ガス産出国としてライバル関係にあったリビア・カダフィ政権を批判し打倒するためでもあった。メディアの責任は大きい。

 しかし、メディアの動向は、サウジやカタール、湾岸諸国がたまりにたまったオイルマネーを基に、現存の政権を打倒しアラブの支配者として登場しつつある政治的動きの反映であることを、見抜かなくてはならない。巨大なオイルマネーの蓄積は、その保有者にアラブ再編の意図を育ませた。封建的で独裁的な政治システムをもつサウジ、クウエート、湾岸諸国は、自分たちの姿に似せて、新たにアラブ世界をつくりかえようとしているのである。

 米国は財政危機もあり軍事侵攻の拡大には容易に動けない。サウジやクウエート、湾岸諸国は、現実的な力関係からすれば、「エルサレムの解放」を唱えなければ、すなわち米国やイスラエルの中東政策と直接対立しなければ、アラブで自由に振る舞えることを経験的に知った。今やアラブでは、「イスラエル対パレスチナ、アラブ」の対立は、後景に押しやられようとしている。

 ISと共闘していたシリアの反政府組織・スヌラ戦線の負傷した戦闘員がイスラエルで治療を受けている映像・写真が流れた。そのことで、この武装組織がイスラエルと緊密な関係にあることが暴露された。

 サウジやクウエート、湾岸諸国は、カダフィ政権を倒した現在、次はアラブ世界で対立するイラン・シリア・ヒズボラを倒し、支配権を握ろうとしている。イスラム原理主義、イスラム内のスンニ派・シーア派間の宗派対立を煽るのは武力侵攻の名目になる。武力でアラブ各地の政権を倒そうとするISは、サウジなどにとっては利用できる一つの手段、別働隊なのである。

 それはサウジ、湾岸諸国の描くアラブの新秩序プラン実現の為に働いている。欧米やイスラエルは、この新しい流れを自身の戦略に重ね、容認している。

7)ISを退治するにはどうしたらいいか!

 ISへの軍事的、経済的、人的支援を断ち切ること。
 これまで欧米社会は、「アサド政権を倒し、シリア内戦を解決する」ために反政府勢力に武器を提供してきた。これがまず大間違いだ。紛争の規模を拡大させ、難民を増やした。逆効果でしかない。

 ISが戦争を続けるためには武器や弾薬ばかりでなく食糧などあらゆる物資が絶対に必要となる。その兵站をシリアの前線へ運び込むルートをISはいくつか持っているが、中でも重要な兵站ラインがトルコからである。ISにとってトルコ・シリア国境は開放されている。
 ISは、支配地域の油田から採掘した原油をトルコを通じて売り、武器・食料調達などにあてている。

 最優先すべきなのは、ISへのカネ、武器、人的資源の供給を止めること、そのための政策手段を打ち出すことであるのは誰に目にも明らかだ。ISの力を削ぐには、兵站を止めればいい。
 しかし、米国、EU、サウジ、トルコはこれを放置している。ここでも責任は、米国、EU、トルコ、サウジにある。

 さらにそれ以上の問題が根底にある。
 中東はこれまで、アメリカとイスラエルによる軍事介入によって破壊され続けてきた。人々の希望は破壊され続けてきた。
 IS戦士になれば給与が支払われるとはいえ、 近隣のイスラム諸国からISへの志願兵が後を絶たないのはなぜか?
 豊かで平和なはずの欧米諸国からも若者がIS入りしようとするのはなぜか?
 社会を変革しようと志しているシリアやイラクの若者に、IS以外にアラブ社会の諸問題を解決する選択肢があることを示す人々の自発的自主的な政治運動が必要だ。

8)難民を生み出す、シリア、中東への軍事介入をやめよ!

 難民を生み出す最大の要因は戦争にある。現在、EUへ殺到している人びとも例外ではなく、直接的には2011年に始まったアメリカ/NATO、イスラエル、ペルシャ湾岸産油国によるリビア、シリア、イランに対する攻撃が原因である。
 シリアへの欧米の軍事介入を中止させること、ISの兵站戦を断ち切ること、これが何よりも重要だ。難民問題の解決でもある。           (文責:林信治)
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