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8月の変調は何だったか? [世界の動き]

8月の変調は何だったか?

1) 国際経済の現局面、不安定な状態が続く

 米国の金融緩和の出口戦略=「利上げ」が近くなり、国際金融市場が動揺し、急拡大してきた新興国経済から資金引き揚げが続き、混乱が起きた。約10年ごとに恐慌を繰り返す資本主義経済の典型的なかつ一般的な「症状」であり、恐慌を避けることができない資本主義の根本的な欠陥を示して見せた。

 現局面は、中国を含む新興国経済が調整局面に入ったことで、世界経済全体で不安定な状態が続いている。新興国経済はこの先、破綻するのか、時間をかけてゆっくり回復するのか、不明ではある。おそらく、時間をかけた調整局面が続くのではないか。先進諸国経済の好況はまだ汲みつくされていない(=いまだバブルに至っていない)ので、世界経済全体が恐慌に陥る可能性は小さいと思われる。

 しかし、たとえ新興国経済がソフトランディングしたとしても、目の前の急激な恐慌を回避したに過ぎず、根本的な解決ではない。その分、回復まで長い時間を要するだけであるし、そのことは新たな好況=バブルを準備し、次の崩壊=恐慌を大きくするだけである。
  
2) 2008-09サブプライム恐慌の回復過程はどのように進んだか?

 米国、日本、EUの金融緩和=流動性の大量供給は、サブプライム恐慌時の流動性危機に対し大きな意味を持った。なりふり構わず国家が金融資本に公的資金を注入した。破産した国民一人一人は自己責任だから救わないが、金融資本は「大きくて潰せない」「潰れると影響が大きい」ので、救うのである。「百年に一度」の危機と称して、この無法を実施した。

 ただし、金融緩和の規模は途方もない。これを、米国、日本、EUが同期させて実施してきた。「百年に一度の危機」なら何でも許される!! FRBは崩壊したクレジット市場の補完を意図した信用緩和(credit easing)だけでなく、外需刺激のために大幅な長期金利引き下げ、それに伴うドル安を狙った大規模資産購入(large scale asset purchases)を実行した。

 米国、欧、日の金融緩和によって、資金が中国をはじめBRICS、東南アジア諸国などの新興国に流れ込み好況の膨張を助長した。新興国経済の急拡大、とりわけて中国経済の拡大がサブプライム恐慌からの回復を早め、その痛手を短期間で癒した。「百年に一度」の危機の落ち込みから急回復したのは、中国をはじめ新興国経済の急拡大のおかげである。

 もともとリーマンショック後、拡張的な財政・金融政策を採用する新興国が多かったが、その効果がFRBのアグレッシブな金融緩和の波及によって増幅された。その結果、新興国には大きなひずみを蓄積した。中東諸国をはじめ実質的なドルペッグ制をとる諸国も多く、減価するドルに対して自国通貨が大幅に上昇するのを避けるため、実体経済に比して極端に緩和的な金融環境を甘受した。これらの結果、2009年半ばから、ブームに沸く新興国を牽引役に、世界経済は回復を始めた。

 しかし、米国金融緩和の出口=利上げ時期が近づくと、先進国の金融緩和で大量に新興国に流れ込んだ資金の還流が始まり、新興国ブームの崩壊がもたらされる。現在は、この新興国バブルがゆっくりと崩壊しつつある調整局面である。その過程は「ゆっくりと」続いている。

 一言で言えば、米国はアグレッシブな金融緩和によって新興国バブルを作り出すことで外需を刺激し、住宅・クレジットバブル崩壊で低迷する内需を補い、立ち直っていったということである。こうしたバブル代替メカニズム(=より大きなバブルによって恐慌から回復する)によって世界経済に回復がもたらされた。

3) 世界経済の現局面

 膨張を続けた新興国バブルは2011年半ばにピークを打ち、崩壊過程に入るが、FRBが一連の量的緩和(QE)を続けていたため、急激な崩壊が避けられていた。他方、一連のQEは、シェールガス開発などの資源バブルを膨らませてきた。新興国バブルが崩壊過程に入った2011年に同時に、原油価格は急落しても不思議ではなかったが、一連のQEが生み出した過剰流動性が商品市場に流入し、2014年半ばまで高水準の原油価格が維持されたため、世界各地で資源開発に精を出し、開発バブルまで拡大したのである。現在の原油安・資源安は、中国をはじめとする新興国経済の悪化で需要が低迷しているだけではなく、資源バブルにつぎ込まれた過剰流動性によって過大な供給が生み出され、増幅されたバブルの一つがはじけたことを意味する。

 資源に投資した資本は、すでにいくつか損を確定している。シェールオイル開発に投資した日本の商社は、三菱商事、三井物産、住友商事など2015年期末期に大きな損を確定している。それは一例である。シェールオイル揮発や資源開発に投資した世界の資本のうちのいくつかは、投資を引き揚げ損を確定している。資本流出の大きな一つの流れである。

 米国はゼロ金利解除が可能な状況になり、FRBの利上げへの転換へと当面している。ところが、利上げが新興国からの資本流出圧力となり、急激な新興国バブルや資源バブルの崩壊に拍車をかけ、世界経済に影響を及ぼしかねない事態になっている。
 ただし、新興国バブルと資源バブルの残骸が世界中にあふれているが、現段階ではすべてが「露わ」になっているわけではない。

 「新興国のせい」という問題ではない。回復が急であった分だけ新興国に蓄積した「ひずみ」は大きく、2014年になって新興国経済を調整局面へと追い込み、2015年8月にその小さな嵐が来た。
これが、8月の世界経済後退の要因、背景を成すものである。

4)この先、どうなるか?

 世界経済は一体化がいっそう増しており、サブプライム恐慌からの脱出手段として米国、日本、EUの金融緩和=流動性の大量供給がいかに大きかったか、そのことを認めなければならない。すなわち、資本主義経済はこのような循環を避けられないのであり、したがって8月の世界経済後退をやり過ごすとしても、その過程自体がこれまでの大量の金融緩和、大量供給の上で、10月の中国の追加利下げ、12月の欧州金融緩和(予告)と続く際限ないマネー供給による回復であって、大量金融緩和の大きさに比例した、深い大きい次の恐慌を準備しているのであり、その爆発力を高めている。いずれ、2008のサブプラム恐慌の繰り返しは避けられない。8月の世界経済の変調は、そのことをあらためて証明してみせた。(文責:小林 治郎吉)

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