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トルコによるロシア機撃墜の意味 [世界の動き]

トルコによるロシア機撃墜の意味

 エジプト・シュクリ外相は、11月25日、都内で日経新聞のインタビューに応じた。
 「イスラム過激派との戦いにおいて、資源を有するあらゆる国が努力しなければ相手を打ち負かせない」と述べ、「シリアへ軍事介入するロシアの役割は重要である」と、トルコなどを念頭に、テロ対策に協力的でない国に不満を表明するとともに、ロシアのIS空爆を明確に支持した。

 また、「ロシアの介入でシリア情勢がより複雑になる」との見解を退けた

 「イスラム国支配地域で産出する石油の違法取引がテロの資金源になっている」、  「誰が石油を購入しているのか、誰がテロリストの国境越えを許しているのかを考えなければならない」と、ISの資金源を支えている盗掘原油取引の問題を指摘した。「直接言及を避けながらも、トルコなどがテロ対策に十分協力していないことへの不満をにじませた。

 エジプト政府は、現実的にISの脅威を感じており、IS撃退への各国の包括的アプローチの重要性を述べ、「複雑に見える事態」に対する極めて冷静な判断を述べている。

 また、日経(11月26日)は、「トルコはISをシリアのアサド政権をたたくことに利用する思惑もあったとみられる」と述べ、トルコ政府が実質的にISを支援している事実を認めている。

 11月25日、ロシア外交筋は、トルコによるロシア機の撃墜は、偶発的事故ではなく「意図的な行為だった」と述べた。確かに偶発的事故ではない。

 そもそもロシア機Su-24撃墜に対するトルコ側の主張は最初から破綻している。ロシア側はSu-24がトルコ領空へ入ったことを否定しているが、仮にトルコ側が主張するコースをロシア軍機が飛行していたとしても、領空を侵犯したのは4~17秒秒程度。10回も警告する暇はないし、撃墜に正当性はない。
 ロシアの外相は計画的な撃墜だとしているが、その推測はおそらく正しいだろう。

1)トルコの主張
 
 トルコ政府は自軍のF-16戦闘機が撃墜したロシア軍のSu-24について、「トルコの領空へ向かっているので5分の間に南へ進路を変更するように緊急チャンネルで10回にわたって警告したが、ロシア軍機は1.36マイル(2.19キロメートル)の地点まで侵入、1.17マイル(1.88キロメートル)の距離を17秒にわたって飛行したので撃墜した」としている。

カタールの国策メディア、アル・ジャジーラが明らかにした撃墜時の飛行状況.jpeg (320x249).jpg
<カタールの国策メディア、アル・ジャジーラが明らかにした撃墜時の飛行状況>

 WikiLeaksなども指摘しているが、この数字が正しいならSu-24は時速398キロメートルで飛行していたことになる。この爆撃機の高空における最高速度は時速1,654キロメートル。飛行速度はあまりにも遅く、非現実的だが、もし最高速度に近いスピードで飛んでいたなら、4秒ほどで通り過ぎてしまう。4秒間に10回も警告はできない。いずれにしろ、トルコ政府の主張は最初から破綻している。まるまるトルコの主張を受け入れても、シリア領内で撃墜されたとしか考えられない。(この項、「櫻井ジャーナル」2015年11月25日より引用)

2)ロシアの主張

 ロシア政府はSu-24がトルコ領空を侵犯したとするトルコ側の主張を否定している。「ロシア軍機はISを攻撃してから帰還する途中で、トルコとの国境から1キロメートルの地点を高度6,000メートルで飛行し、国境侵犯はしていない。 ロシア軍機はトルコにとって何ら脅威を与える状況ではなく、逆に撃墜時にトルコのF-16はシリア領空を侵犯した」とも説明した。
 実際に、ロシア機にトルコを攻撃する意図がないのは明白である。トルコに対してなんら軍事的脅威になっていないのも、また明白である。

3)ロシア機撃墜は、偶発的事故ではない

 トルコはロシア機撃墜をいまだ謝罪していない。偶発的事故ならば、「謝罪」し事態の収拾をはかるはずだ。謝罪さえしない態度は、偶発的事故でないことを証明している。
 トルコ・エルドアン大統領の強硬な姿勢の背後には、アメリカ好戦派、ネオコンの支持があると推測される。トルコ一国でこのような強硬な態度をとれるものではない。トルコ政府が独自の判断でロシア軍のSu-24爆撃機を撃墜できるとは考え難く、少なくともアメリカ支配層の一部が承認、あるいは命令して実行された可能性が高い。

 航空機の領空侵犯はどの程度の問題か?  実際のところ、領空侵犯はむしろ頻発している。
 イスラエルは何度もシリア領空を侵犯している。トルコ機はここ数年頻繁にギリシャの領空を侵犯している。アメリカ軍機は、世界中の国々の領空を頻繁に侵犯している。今回の領空侵犯に対し、「即座に撃墜されても文句は言えない」とアメリカ・オバマは言明したが、その言葉は、アメリカ、イスラエル、およびトルコの行為にそのまま跳ね返ってくる。そのことに頬かむりした上で、トルコを支持し、事態を誤魔化すために、そのように言った。

4)トルコはISを利用しアサド政権打倒を画策してきた

 トルコが、ISなどの武装勢力を利用しアサド政権を倒そうとしていたことは明白だ。トルコはロシア空爆によって、トルコ政府が武器支援してきたシリアの反政府勢力、ISもふくめた武装反政府勢力が撃退されるのを、目のあたりにして焦っていた。
 この点からしても、トルコによるロシア機撃墜は偶発的事故ではなく、計画・準備されたものと言える。

 トルコはISを利用しアサド政権打倒を画策してきたが、それはアメリカ支配層の戦略と同調していた。

 撃墜されたSu-24パイロットを救いに来たロシア軍ヘリを、トルクメン人武装組織が対ヘリ戦車ミサイルで撃墜したその映像が何度も流れている。またパラシュートで脱出するパイロットを狙撃している。これらは明らかな国際法違反である。
 トルクメン人武装組織は、アルカイダ系ヌスラ戦線と共同してアサド政権に対する武装攻撃を続けてきた。トルコ政府の支持しているこの組織が、テロ組織であることを証明している。
 
 武器、対ヘリ戦車ミサイルはアメリカ製であって、アメリカ政府、トルコ政府が、この反政府武装組織に武器を支給していることも明白だ。このような行為は侵略である。

 アサド政権が、独裁政権であり気に入らないからと言って、他の政府が武装勢力に武器を供給するのは、明白な侵略行為であり、国際法違反だ。そのことは常識である。日米欧のマスメディアはそのことをまず批判しなければならない。

 例えば、サウジやカタール、クウエート、湾岸諸国は、シリア以上に人権が保障されない独裁国家である。あるいはイスラエルは反動国家、侵略国家である。だからといって、ある外国政府が、反政府勢力を支援し武器を供給し、それら政府の打倒を画策することなど、してはならない。

5)「フランスとロシアの協力を破壊する!」

 フランス・テロ事件により、オランド政権は地中海へ空母シャルル・ドゴールを派遣し、仏爆撃機がISへの空爆を開始した。ロシアとの協力がはじまった。フランスのIS 空爆への参加、ロシアとの協力は、アメリカにとって都合が悪い。アメリカが支援し利用してきたISが壊滅してしまう。

 トルコはNATO加盟国であり、仮に、ロシアとトルコが戦争になれば、NATO加盟国はトルコを支援し、ロシアに参戦しなければならない。フランスもNATO加盟国である。トルコによるロシア機撃墜は、情勢を混乱させ、フランス・ロシアの協力を破壊する意味がある。

 アメリカ支配層の戦略は、EUとロシアを対立させ双方の疲弊をはかることにある。

 現時点ですでに、EUにとってロシアとの関係悪化はメリットがない。天然ガスの大半はウクライナを通じてEUに送られている。安価で安定した供給体制ができている。またロシアはEUにとって重要な市場でもある。

 アメリカ支配層好戦派、ネオコンは、ウクライナの反ユダヤ主義者、ネオ・ナチなど反政府勢力に武器を供給し、ヤヌコビッチ政権を打倒した。ネオ・ナチが政権をとったウクライナは、ロシアに戦争を仕掛け、そのおかげでウクライナは、アメリカの言う事を聞くしかない財政の破綻した崩壊国家になってしまった。
 アメリカ支配層はウクライナ危機をつくりだし、ロシアとEUの関係を破壊しようとし、なかば成功した。

 ウクライナ危機の深化、ロシアとの更なる関係悪化は、EUにとってメリットはない。
 シリアが崩壊国家になることは大量の難民が押し寄せるのであり、EUにとって、メリットはない。
 
6)ISを利用したアサド打倒計画は破綻しつつある

 ISがこれまでの組織と違うもっとも大きな特徴は、豊富な資金源を持っている点にある。したがって、高価、高性能な武器を購入し、戦闘員に給料を払うことができるし、これまでの武装勢力とは比べものにならないくらい大規模な戦闘を仕掛けることができる。

 シリアの戦乱は外部勢力が、アサド大統領を排除し、自分たちに都合の良い傀儡政権を樹立しようとしたことが原因である。問題を解決する最善の方法はそうした勢力が内政干渉をやめることだ。そうすれば「空爆」などは必要ないのだが、外部から戦闘集団が送り込まれている状態で、もはや話し合い解決などは不可能な情況になっている。資金源の盗掘石油の販売を止め、兵站ラインを断つことこそ有効だが、アメリカ、トルコ、イスラエル側は、こっそりと石油の販売ルートをつくり、ISの兵站ラインを守ってきた。

 しかし、ロシアのIS空爆により、アメリカ、トルコ、サウジなどの「有志連合」によるISを利用したアサド打倒計画は、破綻しつつある。 アメリカ支配層が、手先として使ってきたアル・カイダ系のアル・ヌスラ/AQIやそこから派生したISを、ロシアが9月末から空爆で叩きはじめて計画が破綻しかけているのだ。

 ISは、力を大きく失いつつある。パリやチュニジアなどでテロが起きているのは、それがISのなしうる唯一の対応だからである。

 ロシアは、IS 司令部や武器庫への空爆から、盗掘している原油採掘所、製油所、輸送トラックへ爆撃し始めた。ISの資金源は盗掘原油であり、月約48億円にも上る。資金源を絶つことは当たり前のことだ。これまでアメリカが決してしようとしてこなかったことだ。

 ロシアの効果的な空爆に対し、アメリカのとりうる対応は何か?  「事態を混乱させる!」ことであろうか。
 その意味でも、トルコによるロシア機の撃墜は、アメリカの利益にかなっている。

7)ISが力を失っていくことによって、中東におけるアメリカの影響力は後退しつつある
 
 これまでのアメリカのIS空爆は何の効果もなかったことが暴露された。それどころか、ISを裏で支援してきたと疑われている。実際のところ、アメリカは武装勢力を利用し、代理戦争を仕かけ、崩壊国家をつくり出してきた。イラク、アフガン、リビア、ウクライナなどで実行してきた。崩壊国家をつくりだせば、圧倒的な軍事力を持つアメリカはその地域における支配力が強まる。アメリカ支配層のなかの好戦派、ネオコンの戦略である。
 したがって、ISが力を失っていくことによって、中東におけるアメリカの影響力は後退しつつある。

 この点からしても、アメリカの好戦派、ネオコンは、シリアでの失敗を誤魔化すため、事態を混乱させる必要があった。トルコ・エルドアンをそそのかし、ロシア機を撃墜させたと推測される。

8)ロシアの空爆、パリのテロ、トルコのロシア機撃墜、

 情勢は決して複雑化してはいない
 
 エジプト・シュクリ外相の言う通りである。
 
 これらによって、情勢は複雑化してはいない。日本のメディアや報道はすべてがすべて、アメリカ情報をそのまま流す。「多くのことが起きて、事態が複雑化し、わけが分からない、テロが恐い、米・ロシアどっちもどっち」という論調である。何も考える力がない、ジャーナリズムとしてまったく失格、役立たずであることを証明している。高橋和夫・放送大学教授はこう言っていた。「アメリカのいうことは9割信用できる。ロシアのいうことは1割」。
  
 アメリカ、サウジ、トルコらの「有志連合」は、国連を無視して、勝手にISやヌスラなどの反政府武装勢力、テロ組織に武器を供給し、代理戦争を仕かけ、自分が意のままに操れる崩壊国家をつくり出そうとしている。やっていることが国際法無視のあまりにも卑劣なことなので、国連ではなく「有志連合」を組織し、代理戦争を仕かけている。
 以前は、国連はアメリカの支配を貫く「道具」の役割を果たしてきたこともあるが、現在、アメリカをはじめ「有志連合」がシリアでやっていることは、これまでの国連の理念、国際法をさえも無視した無法行為であり、それを知っているから、国連さえ無視して、「有志連合」で単独行動をしているのである。 

 ロシアは、9月末に国連総会でプーチンが演説したように、国連の理念に基づいて、国際法を遵守し、テロ組織ISやヌスラ戦線の排除を提案し、シリア政府、イラン、イラク政府の了解を得たうえで、空爆している。さらに、そのうえでテロ組織を排除した後のシリア連合政府構想を提示している。
 
 「アメリカもロシアもどっちもどっち」などと言っている者は、事態をまったく理解していない者か、あるいは意図的にアメリカの無法をごまかそうとしている人だけである。

 日米同盟を重視する日本の支配層は、アメリカ支配層とその無法な世界支配に従っている。日本の支配層にきわめて近い、日本のジャーナリズム、学者は、アメリカと日本の支配層の言い分をそのまま繰り返している。

 さて、シリア・中東の事態は、決して複雑化していない。
 ロシアの軍事的介入、ISの兵站と資金源を断つ、トルコ国境の兵站線の封鎖、これらによるIS撃退、その後のシリア連合政府の樹立、この道筋以外に解決がないことが、この間の推移で、よりはっきりした。

 ISへの兵站線として、トルコ国境がほとんど開放されている状況に終止符を打たなければならない。シリアのトルコ国境近くの拠点を撃退すれば、IS の力は、確実に急速に、衰える。トルコに邪魔させてはならない。盗掘した原油の販売・購入をさせないこと、武器の搬入を止めるなら、ISの撃退は容易である。そのことに国際社会が合意し、協力することが、何よりも重要だ。

 アメリカ、サウジ、トルコらの「有志連合」は、ISを支持し、シリアを崩壊国家にすることをたくらんでいる。すなわち、各国の包括的アプローチの破壊を狙っている。それを許さないこと、が重要だ。
 今回のトルコによるロシア機撃墜もそのような意味を持っている。
 
 以上が、「トルコによるロシア機撃墜の意味」である。(文責:林 信治)



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