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迷走するサウジアラビアとトルコ [世界の動き]

中東の危機とは何か?
迷走するサウジアラビアとトルコ

1)危機をしかけるサウジ
コピー ~ ニムル師の処刑は中東を揺るがす.jpg
<ニムル師>

 年明け早々、中東で緊張が高まった。
 サウジ政府は、シーア派の有力指導者ニムル師を処刑した。ニムル師は自由選挙実施とシーア派住民の多い東部地域の分離を主張していた。東部地域はサウジの油田が集中する。ニムル師処刑に抗議したイラン民衆の行動は、サウジ大使館への放火となった。サウジ政府は放火を口実に、イランと国交を断交した。サウジに同調しバーレーン、スーダン、アラブ首長国連邦というアラブ同盟諸国は、テヘランとの外交チャンネルを断ち切った。

 サウジ政府は、シリア、イエメン両国における対立を中東全体の対立に転化させるところへ踏み出したことになる。処刑と同じ日、サウジ政府はイエメンとの停戦合意を一方的に破棄した(ロイター1月4日)。

 サウジの狙いは、中東地域の「緊張」を「危機」にまでエスカレートさせることであるのは間違いない。対立は、決してスンニ派シーア派の宗派対立ではない。逆である。宗派対立を利用し、政治的対立をつくり出している。

 この30数年、サウジに蓄積した莫大なオイルマネーは、サウジが中東の覇者となることを夢想させた。シリアやイラク、リビアにおけるISによる代理戦争は、サウジによる中東新秩序の確立過程でもあり、その構想は米国の中東支配戦略に沿っており、イスラエル、トルコとの利害も一致している。

 サウジが、同じくワッハーブ派原理主義イデオロギーを共有するISに資金を提供し、武器を与えてきたのは公然の秘密である。ISの武力による恐怖政治は、サウジ社会が目指すモデルでもある。自身の姿に似せて世界を作り替えようとしている。

 サウジアラビア支配層は、どうして中東を戦争の危機に陥れるところに迷い込んだのか?

 それは、ロシアによるシリアへの軍事介入がISを撃退しつつあり、ISを使ったシリア政権転覆が失敗しつつあるからだ。ロシアが、IS やダーイシュやヌスラ戦線などの武装集団を打ち負かして、これらテロ集団と外国政府、特にアンカラとリヤドの、スポンサーのつながりを暴露したためだ。サウジがこれまで資金を投じISを支援し実行してきたシリア解体策が破綻しつつあるので、意図的に「混乱」をつくりだすことで、シリア戦略の敗北を食い止めようとしている。しかしそれは危険な行為であり、重大な対立と戦争を呼び起こす。

コピー ~ 2015年9月4日、サウジのサルマン新国王とオバマ大統領.jpg
<2015年9月4日、サウジのサルマン新国王とオバマ大統領>
 
 現況は、サウジにとっても極めて危険である。
 石油価格の低下によって、歳入の90%を原油に依存する政府収入は激減した。2014年、1バレル110ドルだった原油価格は30ドルまで低下(1月15日)。財政赤字は2015年GDPの15%にまで膨れ上がった。サウジの軍事費は政府支出の25%にまで達している。イエメンにも軍事介入しており、軍事費は膨らむ一方である。IMF試算によると、原油価格と軍事費がこのままの水準で推移すれば、5年でサウジ政府資産は枯渇する。
 財政赤字に苦しむサウジは、水道、電気、ガソリン両機の大幅値上げ、さらには5%の付加価値税、たばこ・糖分飲料に対する悪行税など新税も導入する。独裁体制に対する国民の不満を財政的に優遇することで抑え込んできたが、そのような政治は困難になりつつある(日経1月12日)。資金調達のためか、サウジアラムコを上場する。

 アメリカのシェールオイル資本をつぶすためサウジは減産を拒否してきたが、2016年春からはイラン原油が市場に出回ってくる。原油安は当分続きそうであり、サウジにとっては時限爆弾を抱えたようなものだ。サウジアラビアは迷走しているというべきだろう。

2)血迷ったかエルドアン

 迷走しているのはトルコも同じだ
 トルコ・エルドアン大統領は、アメリカ支配層の好戦派、ネオコンにそそのかされ、ロシア機を撃墜してしまった。そのことで、トルコがISのスポンサーの一人であると告白してしまった。エルドアン政権は、なりふり構わずアメリカの中東戦略に加担することで中東における新たな地位を得ようとしている。

 トルコは空爆にさらされているシリアのIS がイラクに退避できるように、イラク政府の反対にも関わらずトルコ軍をイラクに進駐させた。そして、イラク―トルコ国境を通じてISの兵站戦を確保し、ISの資金源である盗掘石油を輸出できるようにした。イラクに拡大することで戦線を立て直そうとしているのだ。

 同時に、エルドアン政権はイラクと国境を接するトルコ東南部地域のクルド人に対する軍事作戦を実行し大量殺戮を行った。

 トルコ国内外から、トルコ政府に対し、トルコ南東部での“虐殺と大量殺戮”を止め、クルドの町や都市への包囲を解くこと、同時に、自国民に対し戦争をしかけているとする非難の声が上がっている。
 “We will not be a party to this crime(我々は断じてこの犯罪に加担しない)”というタイトルの声明をトルコの大学教官たちが発表し、89の大学から1,128名、海外から、ノーム・チョムスキーを含む355名が賛同している。
コピー ~ エルドアン大統領(左)、ノーム・チョムスキー(右)ロイター.jpg
< エルドアン大統領(左)、ノーム・チョムスキー(右)>

3)敗走するIS 、転換したシリア情勢

 シリアへのロシアの軍事介入の成功は、シリアを一時安定させ、テロリストによる乗っ取りから救った。ロシアの軍事介入は、二つのことをなし遂げた。第一は、武装勢力による代理戦争で政権転覆させ崩壊国家にする米国の世界戦略を頓挫させた。米戦略に加担している英、サウジ、トルコ、イスラエルらの目論見も頓挫したことになる。第二は、米、サウジアラビア、トルコとテロ集団ISとの関係が誰の目にも明らかにしたこと。

 シリアで戦闘しているのは外国から来た雇兵、兵器は外国製で、狙いも外国のためだ。「反政府勢力」ではないし、したがって「内戦」でもない。シリアの代理戦争は外部勢力による侵略である。少し前のデータだが、シリアで戦っている傭兵の41%はサウジアラビア人、19%がリビア人、シリア人は8%にすぎない。したがって、これらの勢力は、反政府勢力として内戦終結後の「シリア連合政府」のメンバーに入ることはない。

 米、英、サウジ、トルコ、イスラエルは、ロシアが主導し国連で提起したIS 爆撃と、「シリア連合政府」に反対している。連合政府に、自分たちが指示し利用してきたスラム武装勢力を入れるよう要求している。

4)なぜロシアは、シリア政府を支援しISを空爆しているのか? 

 「アラビアのロレンス」は、オスマン帝国崩壊を早め、の地を植民地にするために、英国がアラブの独立運動を支援を装ったその卑劣で詐欺的な戦略を体現した人物である。オスマン帝国がアラブを手放した後、英仏は約束を破り植民地として分割し支配した。ロレンスは英国の植民地支配を実行した一人物であり、詐欺的な手口で成功裏に植民地化を成し遂げた。「詐欺的行為」は英米では「英雄」として扱われ、現代でも「英雄」として描かれる。

 欧米の支配層は歴史的に何十年も、シリアを含む中東諸国が自主独立する軌道から引き剥がそうとしてきた。オスマン帝国の崩壊とともに分裂した中東は、当初、英仏などの植民地主義者連中に支配されていた。宗主国とのつながりを断ち切り独立を求める民族主義者たちは蜂起し同時にソ連の支援を求めた。しかし、どんなことをしても権力の座につこうとした連中は、概して米英仏の支援を求めた。このような歴史的経過と枠組は、形を変えて現在も残ってきた。

 現代ではロシアは、シリアと同じように、オセチアやウクライナで、米国好戦派、ネオコンがしかけた代理戦争に苦しみ、これを打開しなければならない立場に追い込まれている。オセチアやウクライナにおける代理戦争を止めるロシアの正当性は、国連の場で、国際法で擁護される。その立場は、ロシアに、シリアの政権転覆を狙った米、英、サウジ、トルコ、イスラエルなどによる武装勢力を使った不法な代理戦争を止めさせ、国連で、「シリア連合政府」構想を提起させている。

5)アメリカが率いる有志連合、無法ゆえ「有志」

 シリアにおけるアメリカが率いる対IS有志連合の行動は、基本的に違法だ。国連安全保障理事会も、シリア政府も、「有志連合」多国籍軍にシリア爆撃の許可を与えていない。したがって、シリアの主権はあけすけに侵害されている。

 国連安全保障理事会も経ずに、アメリカが主導して無法に武力を行使するために結成しているから「有志連合」なのである。現代アメリカによる代理戦争を利用した世界軍事戦略は、国連さえ無視した単独行動主義、「無法」な行動となっている。

6)代理戦争をリビアに拡大
 石油とIS、 アメリカ-NATOによる、リビア戦争が差し迫っている

 ロシアの空爆でIS がシリアから敗退しつつあるため、ISはリビアに第2の拠点をつくろうとしている。アメリカはこれを許容している。

 2011年、アメリカ率いるNATOとイスラム武装勢力LIFGの共同作戦より、カダフィを殺しリビアを荒廃させた。リビアは、紛争と混乱状態のままISによって脅かされ、リビアの石油は外国資本の略奪の対象になった。

 ISが、いくつかの主要油田や精油所への入り口であるリビアのスルトに足場を築き、リビア石油を狙って他の地域へと拡張している。ISとアメリカ政府、NATOとの共同した作戦である。狙いは、北アフリカ最大で、スルトとベンガジの中間にある“リビアの宝、マルサ・エル・ブレガの石油精油所”攻略であろう。ISのやり方は、油田を支配し盗掘し資金を得て武器を買い戦闘をしかけることだ。ISは、スルトを第2のラッカ(シリアのIS首都)にしようとしている。

 リビア当局が、アメリカが率いる爆撃作戦、あるいは地上作戦を拒否しているにもかかわらず、ISと戦うという口実で、約1,000人のイギリス特殊部隊を派兵する計画で、更に数千人のアメリカ、フランスとイタリアの戦闘部隊が加わる。アメリカが率いるNATO軍は、政府や安全保障理事会による承認なしに、リビアで違法に活動する。

 米英はISと戦うのではなく、ISを支援して、シリアとイラクで継続している活動を複製し、リビアにISの根拠地を作らせ、インフラや政府の標的を攻撃し崩壊国家にする作戦が開始されるはずだ。
 シリアでの代理戦争の敗北を、北アフリカ、リビアに拡大し挽回することを狙っている。

 アメリカの戦略は、「偽旗作戦」であり、サウジ、トルコ、イスラエルが荷担しているのだから、私たちは実態を正しく見破らなければならない。
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