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米大統領選、いつもと様相が違う! [世界の動き]

米大統領選、いつもと様相が違う!

1)一体、何が起きているのか?

 アメリカ大統領選挙が始まった。莫大な金を使い、人々を躍らせ騙し新しい支配者を選ぶ、壮大かつ愚かなショーが、いつものことだが一年近くも続くのか、うんざりだと、少しバカにして眺めていた。ただ、今回は様相が少しちがうのだ。

 共和党の「右派の良識ある三人の候補」、ジェブ・ブッシュ、マルコ・ルビオ、ジョン・ケーシックは、テッド・クルーズ候補の鋭い愚弄に突き刺され、ドナルド・トランプ候補の無秩序な罵倒に圧倒されている。その結果、ジェブ・ブッシュは、2月21日ネバダ州の代表戦のあと敗北を認め選挙戦を降りるところへ追い込まれた。この結果には驚いた。

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<民主党、バーニー・サンダース候補 >

 それ以上に驚いたのは、民主党代表選である。注目すべきは、民主社会主義者バーニー・サンダース上院議員が、予想以上の支持を集めていることだ。

 サンダース候補は、社会主義者と自称して大統領選を戦い、しかも支持を得ている。今までなら、集中的な「アカ」攻撃を受けつぶれていた。今回、本質的に「様相が違う」のはこのことだ。オバマさえ「社会主義者」、「アカ」と非難された。
 オバマは「チェンジ」といった。サンダースは「ポリティカル・レボリューション」と表現している。

 多数の小口の寄付者がサンダース候補を支持し、8年前のオバマ支持運動と似た様相を見せている。ただし、サンダース支持者らは「稀代の詐欺師」(ラルフ・ネーダー)であるオバマに裏切られた経験を持っている。

 「ヒラリー・クリントンはウォール街から大口の献金で操られたエスタブリッシュメント=支配階級だ」とサンダースは批判している。この批判は、正確であり見事に当たっている。クリントンは申し開きができない。
 クリントンは、イスラエル・ロビーと親しい。ネオコンとも親しく、彼らの危険な戦争を支持している。国務長官時代に何をしたか? ウクライナやシリアで代理戦争をしかけた。アメリカ政府内のネオコンと、クリントンは一体である。

 「全米エリートは、大統領選の今の展開にショック状態」なのだそうだ。本来ならば、ブッシュとクリントンの二者択一のはずだった。ところが、これまでのどの大統領選よりも予想もしない展開であり、劇的に「アウトサイダー」によってひっくり返された、という。

2)どうしてこんなことになったか?

2)-1、理由1:米国人が怒っているからだ!

 「米国人が怒っているからだ。最富裕層の所得が急激に増える一方で、賃金の中央帯は停滞したままだ。白人のキリスト教徒はマイノリティになった

 米国社会は、ウォール街とつながった少数のパワーエリートが支配しており、大多数の米国人が政治から排除されている現状に嫌気がさしており、エスタブリッシュメント(=支配階級)への怒りが溜まりに溜まっている。

 前回の大統領選でもその兆候は見えていた。アラスカのサラ・ペイリン知事が共和党の候補戦を混乱させ副大統領候補になった。地方に住む、白人層が支持した。この層はキリスト教右派支持層と重なり、堕胎反対、移民排斥を主張する共和党の支持者であった。地方に住む白人層は、ニューヨークなどの大都市の富裕層とは違って、貧困化し社会の発展から取り残されたと感じている。リーマンショックで破産し、家を失った人、没落した人も多数いる。

 共和党の支持層=地方の保守的な白人層、キリスト教右派の間に、米社会の富裕層、エリート層、ウォール街=支配階級に対する怒りが充満している。サラ・ペイリンはかつてその象徴だった。現在はトランプ候補やクルーズ候補が、この人々の怒りを背景に支持を集めている。
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<共和党、ドナルド・トランプ候補>

 トランプ候補は群衆を「魅了」し、2014年7月から世論調査で優位に立つ。トランプ候補もクルーズ候補も、一貫した経済学や経済政策を持ち合わせていない。論理の一貫しないけれども、目の前のエスタブリッシュメントたちを、罵倒、愚弄しまくったことで、疎外されたと感じている米国人の多くは「爽快感」を感じている。ただし、エリートに対する論理の一貫しない罵倒、愚弄は、いつどのように買収され収束するかわからない面をも併せ持つ。
 
2)-2、理由2:アメリカ民主主義制度の自己崩壊
 アメリカ大統領選は、莫大な金を使い、人々を躍らせ騙し新しい支配者を選ぶ、壮大かつ愚かなショーだ。金持ち、メディアを握る者、パワーエリートが操ってきた。この「やり方」をよく学び極端化させたのが、トランプやクルーズなのだ。マスメディアでの効果を狙い、大量の資金を投入し、これまでの大統領選挙でやってきたことの、そのまま発展、進化に他ならない。そのことを思い知らなければならない。

 目の前に展開している「罵倒」、「愚弄」にあふれた論戦、大統領選は、アメリカ民主主義のこれまでのやり方の帰結であり、発展である。米国の国民支配システムの「これまでの仕方、やり方」ににおいて、トランプとクルーズが「秀でている」からである。
 トランプ候補やクルーズ候補を批判して見せる保守本流は、自分たちがこれまでやってきたことの帰結であることを認識していない。
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<共和党、テッド・クルーズ候補>

 この展開にショックを受ける者は、アメリカ民主主義がすでに形骸化し、富裕層、ウォール街、エリート層の操る政治にしてきた現実を、ただ認識していないに過ぎない。目の前に起きているのは、形骸化の頂点に達したアメリカ民主主義制度の自己崩壊、自己変質である。

2)-3、理由3:貧困化した民衆が増大するアメリカ社会

 この理由が、最も重要だ。

 民主党のサンダース候補は、30歳以下の若い世代から圧倒的な支持を得ている。富裕層が所得を急増させ続けている一方で、富豪の家族でない若者は、大学に行けば巨額の学資ローンを抱えなければならないのであり、高卒で働けば低賃金の仕事しかない。現代アメリカ社会は、何か災難にあえば、すなわちリーマンショックに遭遇したり、事故・病気になったりすれば、その先には破産が待ち受けている。希望がない社会である。
 アメリカ社会のこの深刻な変化こそが、サンダースを押し出しているものである。「アカ」攻撃の宣伝をされても、支持者たちは「何が悪いのか!」という態度なのだ。

 サンダース候補はクリントン候補を、ウォール街の代表者、富裕層の代表者、金融資本から大口献金を受けた候補者と批判している。まったくその通りであり、クリントン候補はこれまでと同じエリートの代表である。サンダース候補は、正面から批判し、人々の支持を集めているのである。
  
 内容は違うけれども、民主党でも共和党でも、エリート層に対する批判と怒りが集中している点では同じであり、いずれも貧困化、格差社会化した米社会に対する怒りと批判が、今回の予備選を支配している。

2)揺らぐ二大政党制の大統領選

 アメリカの二大政党制は、どちらの政党が大統領を出してもパワーエリートやウォール街による支配システムに変更がないように設計されており、そのように機能してきた。支配層の息のかかっていない候補を大統領選の前にあらかじめ排除するシステムである。
 候補者になるためには莫大な資金がいる、マスメディアにたたかれて放逐されないようにふるまわなければならない、・・・・様々な関門があって、「アウトサイダー」が大統領候補になるのを排除するシステムであり、これまで確実に排除してきた。

 少数政党も排除される。これまで、二大政党以外から大統領選に立候補したこともあったが、ことごとく失敗し、葬られた。ロス・ペローは1992年、無所属で出馬したが敗北した。

 エスタブリッシュメントやウォール街にとって、大口献金やマスメディアによるコントロール、人材供給により民主党、共和党を支配しておれば、だれが大統領になっても支配は揺るぐことはないと想定され設計されているシステムなのである。

 興味深いのは、サンダース候補は2015年民主党に加わり、トランプ候補は2009年に共和党に再入党したことだ。二大政党制をとるアメリカでは、アウトサイダーの政治家であってもいずれかの党に属し、党の大統領候補にならなければならない。

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<民主党 ヒラリー・クリントン候補>

 二大政党制はエスタブリッシュの支配システムに過ぎないけれども、この制度のなかで闘ってはじめて闘いになるとサンダース候補は判断し、民主党の大統領候補になる道を選んだのだと推測される。現存の制度を「バカ」にして無行動に陥るのではなく、現存の制度のなかで可能性を探ったのではないか。

 オバマが大統領になっても、支配は何も変わらなかった。変わったのは皮膚の色だけだった。しかし8年前、オバマに小口献金し、支持し、オバマを大統領にしたのは大規模なアメリカ民衆の運動だった。オバマは民衆によって選出されたが、民衆の代表ではなかった。そのことは、大統領になった後に、判明し、だれもが認識した。選挙運動に参加した多くの人は、その裏切られた記憶、失望した経験を持つのである。

 今回の予備選では、エリート層に対する怒りが激しく、貧困化した民衆の反乱が米社会の広範に広がり、「アウトサイダー」が勝つ勢いなのだ。

3)時代が変わる?

 これまでもこのような候補はいた。ポピュリズムによるスリル満点の壮大な政治的なショーが繰り広げられながら、有権者がショーから覚め現実をしぶしぶ認識した時期にこういった候補者たちは姿を消していった。
 しかし、今年は現段階までは、そのショーから覚めないまま終盤まで続いている。共和党の主流派がオバマ大統領を批判した口実が広まったことによって、トランプ氏とクルーズ氏の大衆迎合的な考え方に力を貸してしまい、どう対処していいのか窮し、「自縄自縛」に陥っている。

 米国の支配層、富裕層、エリート層が、これまで民主主義をもてあそび巨額の金額を使った政治ショーに仕立て上げ、形骸化させ、自分の都合よいようにコントロールしてきたそのツケが、自身の支配システムをコントロールできなくしている。その光景を見るのは、少々痛快だ。笑ってしまう。
 
 そもそも虚偽であった「アメリカ民主主義」システムがとうとう死滅していく様、腐敗きわまる姿として、歴史にその姿を刻むということなのだろうか。これまでは騙されていたが、もはや「幻想」を抱く者はいなくなるのか。

 今回の大統領選には、エリート層、すなわち米国の支配階級に対する人々のかつてない怒りが満ちているように見える。
 オバマを選んだ民衆は騙されて、幻滅を経験させられた。サンダース候補の予備選がこの先、どのようになるか不明だ。また敗北するかもしれない。
 ただ言えることは、いくつもの敗北を重ね、裏切られ騙され、そのような政治的過程を繰り返して、時代が大きく変わる、変革が起きるということではないか。

 米大統領選に注目している。(2月22日記、文責:林 信治)


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