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トルコ・クーデターの意味 [世界の動き]

トルコ・クーデターの意味

1)失敗に終わったクーデター 

 7月15日夜、トルコ軍将校の集団が軍事クーデターを行ったが、失敗に終わった。エルドアンはクーデターがギュレンとギュレン運動が引き起こしたと早々と決めつけ、ギュレン運動の軍人、司法関係者らを逮捕し粛清している。その規模はきわめて大きく、逮捕者数は8,000人を超えている。

 エルドアンは、クーデターを引き起こすのはギュレン以外にいないことを知っているし、ギュレンはCIAの工作員であり、背後にアメリカ政府がいることもよく知っている。なぜならば、2013年までギュレンもエルドアンもアメリカ政府の支持の下に一体で動いて来たからである。

 したがって、エルドアンによる粛清は、トルコ政府、軍内のギュレン運動関係者、すなわち米国の工作員がその対象である。クーデターを起こしたかどうか、参加したかどうかではなく、エルドアンは自身とは異なる米国の手先を粛清しているのであり、あらかじめそのリストを彼は持っている。

 トルコのCIA政治工作員フェトフッラー・ギュレンが、CIAの保護のもとペンシルバニア州セイラーズバーグに亡命して暮らしている。ギュレンのスポンサーにとって唯一の問題は、クーデターが成功しなかったことだ。クーデターは、エルドアンによる最近の劇的な「政治的態度の転換」に対する反応だった。これはCIAに忠実なトルコ国内ネットワークがひき起こしたものではあるが、明らかに準備不足だったように見える。

2)トルコに対するアメリカ支配の網

 ギュレンは、政治的イスラム教徒を、政権転覆の道具として利用するという、何十年もの歴史をもったCIA計画の一つの中心核だった、2013年に、イスタンブールや到るところで、反エルドアンの大規模抗議行動がおこなわれた。あの時、以前はエルドアンの公正発展党と結んでいたギュレンが袂を分かち、新聞ザマンなど、ギュレンが支配するマスコミで、エルドアンを暴君と批判した。それ以来、エルドアンは、ザマン紙や、ギュレンが支配する他のマスコミへの襲撃を含め、国内の最も危険な敵、ギュレンとその仲間連中の根絶に向けて動いてきた。これは、アメリカの中東戦略を誰が担うのかをめぐるトルコ政治における権力闘争にほかならない。

3)クーデター失敗のあと、どうなるか?

 一時的にはエルドアン支配が強化されるだろう。過去二年間、ギュレン運動は、エルドアンや、彼による諜報機関トップの粛清によって、影響力がすでに低下している。「国の守護者としてのアタチュルクの軍」などというものは、1980年代以来、とっくの昔に終わっている。

 今後、興味深いのはエルドアンの外交政策であろう。
 エルドアン政権は、アメリカに加担してIS を利用しシリア・アサド政権打倒を実行してきたが、2015年9月30日のロシアによるIS空爆開始により、その戦略の破綻が明白となり行き詰った、その結果外交政策の修正を余儀なくされている。

 ロシアとの和解、ギリシャ国境までの、ロシア・トルコ・ストリーム・ガス・パイプライン交渉再開。同時に、エルドアンは、ネタニヤフとも和解した。そして、最も重要なのは、エルドアンが、関係再開のためのプーチンの要求に応じて、トルコは、シリア国内での、ダーイシュや他のテロリストへの秘密支援や、トルコ国内での彼らの訓練、連中の石油の闇市場における販売などによる、アサド打倒の取り組みをやめることに同意したことだ。これはアメリカ政府にとって大きな地政学的敗北であるし、ギュレン運動にとってもトルコ国内の政治権力闘争での敗北を意味する。
 ギュレン運動によるクーデターは、権力闘争の敗北を前にして、暴発し、敗北を確定させた。
4)エルドアン、外交政策の転換を志向

 エルドアンがダウトール首相を首にして、忠実なビナリ・ユルドゥルムを首相に指名した2016年6月以来、エルドアンは政治的態度の転換を志向している。この転換に対しアメリカ政府は必ずしも承認を与えなかったのであろう、その表現として「クーデター」が起きたと考えるべきだろう。シリアに接するトルコ大統領エルドアンは、アメリカ政府のシリアでの反アサド戦略が現実的でないと判断し、修正を試みている。スホイ24撃墜に対しロシア政府へ謝罪し、さらには崩壊しないことが明かになったアサド政権を前提とした関係修復志向へと舵を切ろうとしているのである。

5)エルドアンは打倒されるか?

 今回のクーデターは、誰がアメリカの承認を得てトルコの政治的支配者になるのかという権力闘争である。現時点でみれば、エルドアンは打倒されないだろう。アメリカ政府はエルドアンを支持するしかない。エルドアンが、クーデターをギュレンによる企みだったと語った7月16日の早い段階で、ギュレンの敗北は決定した。このことは一時的には、ギュレンに対するエルドアンの勝利である。しかし、そのことはエルドアン政権が盤石になったことを意味しない。ISを利用しシリア・アサド政権を打倒するアメリカの戦略に応じ、中東の支配者になろうとしたトルコ・エルドアン政権の野望は破綻し、修正・転換を余儀なくされている。エルドアン政権にとっては、米国政府との調整もしなければならず、その前に自身しか政権を担う者はいないことをアメリカ政府に示さなくてはならない。

 CIAは面目丸潰れで、オバマとNATOは「民主的に選ばれたエルドアンを温かく抱擁して(原文通り!)」支持する以外になかった。エルドアン以外にいないし、エルドアンを排除すればトルコは混乱に陥る。したがって、誤魔化す以外になかったのである。

 民主的に選ばれたウクライナのヤヌーコヴィッチ大統領を、2014年2月に政権から追い払ったわけだから、「民主的に選ばれたエルドアン」という理屈は何の理由にもなっていない。CIAやネオコン連中が、キエフのマイダン広場でクーデターを実行した際、ヴィクトル・ヤヌーコヴィッチは「民主的に選ばれたウクライナ大統領」であることなど気にもかけなかった。

 エルドアンを支持せざるを得ないのは、トルコがNATO にどうしても必要だからだ。アメリカ政府は、その世界戦略上、特に中東での石油、そして今では天然ガスの流れを支配する上で、トルコを混乱に陥れるわけにはいかない。そのため、クーデターが失敗することが明白になった瞬間、オバマとネオコンの仲間が、“友人”エルドアンを「抱擁した」のである。(文責:林 信治)
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