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指導者だけ変わってもだめだ! [世界の動き]

指導者だけ変わってもだめだ!

スー・チー氏に期待するだけの民主化運動では
この先何も解決しない


1)ミャンマーのロヒンギャ問題

 着の身着のままでミャンマーからバングラディッシュに避難するロヒンギャ難民の姿が、連日報道された。
 発端は、2016年10月、ロヒンギャのイスラム過激派がミャンマーのラカイン州警察署を襲撃したとされる事件だという。2017年8月末にも同様の事件が発生したと伝えられた。真偽のほどは定かではない。
 これに対してミャンマー軍と治安機関が一斉に「反撃」し、ロヒンギャの集落を焼き払う焦土作戦を展開した結果、昨年から今年にかけて40万人を超えるロヒンギャ難民がバングラディッシュに避難するという大規模な人道危機を引き起こした。40万人とはとてつもない人数だ。

 ミャンマー連邦共和国は諸民族の連合体であるが、ロヒンギャは含まれていないとされる。ミャンマー政府はロヒンギャを国民と認めておらず、法的には不法滞在者として扱われ、無国籍者の状態に置かれてきた。
 仮にバングラディッシュから帰還を希望する難民がいても、国籍がないことを理由にミャンマー政府は帰国を認めない方針だ。これは歴代政府の立場であり、アウン・サン・スーチー国家顧問が率いる現政府でも同じだ。

2) スー・チー氏が率いるミャンマー政府に期待できるのか?

 人権、民主化を掲げて政権に就いたスー・チー政権(スー・チー氏は大統領ではなく国家顧問であるが、実質的には政権の権限を持つのでスー・チー政権とした)であるが、この人権問題に対してどう対処するのか、その方針が一向に明らかになっていない。沈黙を続け、態度を明確にしていないのだ。

 避難する大量のロヒンギャ難民の姿は、世界中に報道され、国連もその解決をミャンマー政府に要請した。
 ところがスー・チー氏は、2017年8月のASEAN創設50周年のマニラ会議を欠席し、9月の国連総会にも姿を見せなかった。おそらく海外からの批判・非難を避けるためであろう。

 ロヒンギャの集落を大規模に焼き払いミャンマーに帰還できないように焦土作戦を展開した軍の責任は極めて重い、厳しく糾弾されなければならないし、その対応は即刻改められなければならない。
 スー・チー氏、そしてミャンマー政府は、この先どのようなロヒンギャ問題にどのように対処していくべきなのか? どのように解決していくべきなのか? きちんと指し示さなければならない立場だ。

 はたして、スー・チー氏が率いるミャンマー政府に期待できるのか?

3)「今はとにかくスー・チー氏を支持すべき」なのか?

 今はとにかく、スー・チー氏とスー・チー政権を支持すべきだ、という以下のような考えをよく聞く。

 国防、治安、国境管理は憲法の規定で軍の専権事項とされており、大統領やスー・チー国家顧問には指揮権はない、のだそうだ。(『世界』11月号 竹田いさみ「ロヒンギャ難民を政治的に利用するプレイヤーたち」)
 スー・チー氏には軍の移動、撤退を命じる権限はないのだから、したがって、ロヒンギャ難民問題の責任はないと論評する人もいる。

 逆に言うと、ロヒンギャ問題を解決するためには、軍や治安機関の支配権もスー・チー氏が握るべきで、そのようにしてやっとロヒンギャ問題解決へ踏み出すことができる。あくまで諸悪の根源は軍であるという論評だ。 

 あるいは、仮にスー・チー氏に責任があるとしても、彼女に代わる指導者はおらず、退陣すればまた軍事政権となる。ロヒンギャ問題を早急に解決してほしいが、よりましな人物がいないので、いまは彼女に期待する以外にないと評する人もいる。(根本敬上智大学教授、「NHKクローズアップ現代」)
 
 さらには、スー・チー氏はロヒンギャ問題に対する国際社会の批判をよく理解しているので、国際社会がスー・チー氏は支持しながら、彼女がロヒンギャ問題を解決できるように圧力をかけ、解決していける国際環境をつくっていくことが重要だ、という主張も見受けられる。

 とにかく今はスー・チー氏を支持して見守るべきだというのだ。
 
 ミャンマーの現状と歴史をよく知らないので、判断がつかないのだが、果たして本当なのだろうか? それしかないのか? 

4)ミャンマーの民主化の実態が明らかになった!!

 ロヒンギャ問題を通じて、「ミャンマー民主化」の実態・実力、あるいはその欠点が暴露されたのは確かだろうと思う。

 民主化は軍事政権への批判として実現したが、ミャンマー民衆は軍ではなくスー・チー氏を新たに指導者に迎えるという選択をした。そこには、これまで禁止・弾圧されてきたこともあって民主化運動の実態が十分に伴っていないことが明らかになった。民衆は選挙に際し新しい指導者を選択する役割を果たしただけだった。下からの広範な人々の民主化運動とそのエネルギーが欠けていることが、今の局面を迎え問題となっている。

 したがって、指導者だけ代えてもだめだ、そんなんでは決して民主化は実現しない、ということではないか。スー・チー氏が自分たちの政治運動を、少数の上意下達の組織から、広範な下からの民衆が自主的で自発的に参加し闘っていく組織に早急に切り替えていかない限り、民主化を、民社的なミャンマー社会を、この先決して建設していくことができないということではないか。スー・チー氏に期待するだけの民主化運動ではこの先何も解決しないということだ。その点は、われわれも同じだ。

 どの程度なのかよくわからないのだけれど、今年になってスー・チー氏への失望感が広がり、ともに民主化を闘ってきた人々の一部がスー・チー支持から離れつつあるという。

 いずれにせよ、ロヒンギャ問題への対処においてスー・チー政権の真価が問われる。(文責:林 信治)




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危機を煽るな!無条件で交渉に入れ! [世界の動き]


 かつて中央線に乗ると、チマチョゴリの女学生をよく見かけた。しかし、今どこに行っても、あの美しいチマチョゴリを見かけることはなくなった。日本会議など右翼団体のヘイトスピーチや暴力によって、在日の韓国朝鮮籍の人たちがおびえて暮らさなければならなくなっていることはまことに痛ましい。安倍政権が意図的に「拉致問題」を利用し、反北朝鮮の世論を煽り、反北朝鮮の気分が日本社会でかつてないほどに醸成されている。

 これまでの自民党政権、安倍政権は拉致問題の解決を叫びながら、この十数年、実際のところ何もして来なかった。北朝鮮に対する敵対的宣伝、排外主義をまき散らし、支持率を上げる道具として使ってきた。安倍晋三にとって拉致問題は政治的錬金術のようなもの。

 そればかりか、北朝鮮のミサイル開発、核実験に際して、トランプ米大統領とともに、北朝鮮を敵と見なし、ただ圧力をかけることを、主張し続けている。戦争の危険を煽るきわめてて危険な行為だ。

 確かに北朝鮮による相次ぐミサイル発射や核実験を私たちは支持できない、反対だ。しかし、日本政府やマスコミ各社のように、北朝鮮が一方的に武力の威嚇と緊張、戦争の危険をあおっているかのような決めつけや非難の繰り返しの宣伝、まるで戦争前夜であるかのような振る舞いは、尋常ではない。トランプ大統領や安倍首相は北朝鮮が「ならず者国家」であり、場合によっては戦争をふっかけて滅ぼしても仕方がないような宣伝をしているが、そんなことは国際法違反であるし、一国の大統領や首相が決して発言してはならないことだ。

 個人的には、ハリネズミのように武装を推し進める北朝鮮の金正恩体制の元で暮らしたいとは思わないし、その政治体制を肯定できない。しかし、だからと言って日本政府やアメリカ政府に北朝鮮政権を打倒する権利があるわけではない。

 今は圧力ではなく、無条件に交渉に入ることが何よりも必要だ。北朝鮮を一方的に悪者扱いにし、輸出入に重大な制約を課し追い詰める安保理決議は、実際には押しつけであり、交渉を遠ざける。双方の同意なしには交渉は不可能であり、力や圧力によって相手を屈服させ、交渉を押しつけることはできない。

 安倍首相が北朝鮮の脅威、「国難」などと称して、危機感をあおっているのは、これまでそうやって支持を拡大してきた国内政治での成功体験があるからだ。口先で煽るだけだから、何かするわけではない。まさに政治的な錬金術なのだ。そこには安倍晋三独自の現実の世界政治に役立たない「狭い政治」しかない。安倍政権にとって外交とは、米国にひたすら恭順の姿勢を示すこと、要するに米国丸投げだから、何にも考えることはない。安倍政権の狭い世界観は、米政府関係者も認識しており、したがって日本は重要視されていない。

 安倍政権は危機を煽る一方なのだが、本音では戦争が起きるとは少しも思っていないし、戦争の危険を除くが自身の仕事だとも思っていない。それが証拠に、北朝鮮と最も近い敦賀湾など、日本海側に23基もの原発を並べておきながら、停止させていないし防衛体制すらとっていない。仮に、ミサイルがこれらの原発に命中したら、ひとたまりもなく日本は滅びるのは確実であるにもかかわらず。
 やっていること言えば、Jアラートを鳴らし、ビルの陰に隠れるよう地方自治体職員や小中学生に避難訓練させている。まったく滑稽な光景。仮に核ミサイルだとして、ビルの陰に隠れれば被害がなくなるわけではない! 私たちは広島・長崎の悲惨な光景を知っている。あまりにも国民を馬鹿にした行為だ! そのうち、防空壕を掘れ!と言い出しかねない。
 日本の総理が今やるべきことは、戦争が起きることを回避だし、危険の除去だ。北朝鮮への圧力をトランプ以上に声高に主張することではない。やるべきは北朝鮮と無条件で交渉に入ることであって、PAC3追加配備やTHAAD配備ではない。

 まさしくロシアのプーチン大統領が、国連でのトランプと北朝鮮代表とのやりとりを「まるで幼稚園児のけんかだ」と言ったのはそのとおりだ。危ないのはトランプばかりじゃあない。安倍はトランプの尻馬に乗って、逆に戦争を煽るような言動に終始している。戦争となれば、真っ先に攻撃対象となるのは、米軍の兵站基地である沖縄であり、54基の原発であり、横田や厚木基地、米海軍の横須賀基地である。

 翻って、北朝鮮の側から見れば、毎年2回ずつの北朝鮮の目と鼻の先で行われる米韓合同演習は、極めて恐ろしい脅威なのである。これまで米軍の軍事演習に合わせて国内の軍を動員し配置してきた。費用も人員もかかる。最近では米軍は、最高指導者・金正恩軍事委員長の暗殺作戦が、軍事演習の一部として公然と行われている(北朝鮮国家を滅ぼすことを目的とする米韓共同作戦計画OPLAN5015)。
 軍事力を比較すれば、北朝鮮軍は米韓日に比べ、二世代も三世代も遅れた装備しかない。開戦と同時に、北朝鮮は制空権、制海権を失う。それに対抗できるのは、核ミサイルだけ。かつて米英軍はイラク・フセイン政権が大量破壊兵器を保持しているとの理由で戦争をしかけ、フセイン政権を打倒してしまった。その後に大量破壊兵器はなかったことが明らかになったが、フセイン政権は倒され、イラクは破壊されたままだ。リビアも米軍とNATO軍に破壊された。なのに米政府も国連も、誰も何の責任を取っていない。

 金正恩政権がハリネズミのように核武装に走るのも、米英政府、NATO軍のかつての侵略行為がその一因でもある。貧者の兵器が核ミサイルなのだ。金正恩は、ミサイルを撃つ時が自身が滅びる時であり、国そのものが消滅することは、十分に承知している。一発撃ったらお終いなのだが、ただでは死なない、少なくとも韓国や日本を破壊する、あるいはICBMで米国も道連れにすると叫んでいる。
 金正恩がひたすらに対米交渉を望んでいるのは、北朝鮮・金正恩政権の存続を保障させたいからだし、その約束ができるのは米政府しかいないと判断しているからだ。金正恩にとってそれがリアリズムであり、世界政治への現実的な対処の仕方なのである。

 したがって、米政府や国際社会は、北朝鮮に対して軍事的なオプションをとる(=軍事作戦で金正恩政権を打倒する)ことをまず放棄しなければならない。当たり前だが国際法違反である。米国と国際社会は、北朝鮮・金正恩政権の存続を保障することを前提に、核兵器、ミサイル廃棄の交渉に入る以外にない。そして、北朝鮮の現政権を認める米朝平和条約締結と朝鮮半島からの米軍の撤退を含む軍事的安定化と非核化に向けた取り組みが不可欠だろう。
 その方向に日本政府も立ち、協力することを国連や国際社会ではっきりと表明しなくてはならない。圧力を強化すべきだと言っている場合ではない。メルケル独首相でさえ、「制裁ではなく交渉を!」と言っているのに、戦争となるや真っ先に被害を被る日本の安倍首相が「圧力、制裁」と叫んでいるのは、きわめて奇異なことだし、危険だ。

 朝鮮半島に現実にある脅威は米による先制攻撃の可能性であり、それに加担して緊張をあおり、戦争に進んで参加する安倍政権の危険性である。
 たとえ、トランプが戦争を仕掛けようとしても、日本の首相であれば、憲法を盾に断固拒否すべきなのだが、安倍晋三という男は危機だけを煽る。もたらす結果については何一つ語ろうとしない、責任を取ろうとしない。これがこの国の現状である。安倍首相は日本の国難であると言ってはばからないが、安倍が首相である現状こそ我々にとって大いなる国難なのだ。(文責:林 信治)



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いまだ混乱が続くトランプ政権 [世界の動き]

いまだ混乱が続くトランプ政権


1)「フリンを辞任に追い込み、対ロ政策を変えさせない!」

 ドナルド・トランプはロシアとの関係修復を訴え、大統領に当選した。その政策の象徴と言えるのが国務長官に就任したレックス・ティラーソンと国家安全保障担当補佐官になったマイケル・フリンだ。

 バラク・オバマは大統領を退任する直前、ロシアとの関係をできるだけ悪化させようとロシアを挑発した。昨年12月にロシアの外交官35名を含む96名のロシア人を国外へ追放したのはその一例。2017年1月6日にはアブラムズM1A1戦車87輌を含む戦闘車両をドイツへ陸揚げ、戦闘ヘリのブラック・ホーク50機、10機のCH-47、アパッチ24機なども送り込んだ。派兵されたアメリカ兵の人数は2200名。ただ、こうした挑発にロシア政府が乗らなかった。

 アメリカ欧州陸軍のベン・ホッジス司令官はポーランドに送り込まれたアメリカ軍の戦車に一斉射撃させた。ホッジス司令官によると、これはロシアに対する戦略的なメッセージなのだという。

 ウクライナではキエフ政権が1月下旬からウクライナ東部のドンバス(ドネツク、ルガンスク、ドネプロペトロフスク)に対する攻撃を激化させているが、その1カ月前にはクリントンを支持していたジョン・マケインとリンゼイ・グラハム、ふたりのネオコン上院議員がジョージア、バルト諸国、そしてウクライナを歴訪している。偶然ではない。

 フリンの辞任劇は、当然のこと、この流れの中で考えるべきだろう。ネオコン、CIA、NATO、軍産複合体、そしてアメリカの有力メディアがそのプレイヤーだ。

2) 対ロ政策の変更は何がまずいか?

 フリンはロシアと話し合って、ISを打ち滅ぼし、シリアへの戦争介入をやめようとしていた。フリンを追い落とした者たちとは、シリア戦争が終わってはまずい連中、ISを背後で操っていた連中、これまでロシアに戦争挑発を仕かけてきており、トランプ政権によるロシアとの和平協議の動きを破壊しなければならない連中ということになる。
 ネオコンであり、軍産複合体であり、ユダヤ資本こそ、シリアでの戦争介入、ロシアへの戦争挑発を進めてきたし、そこで莫大な利益も得てきた。ロシアとの和平は、その巨大プロジェクトを中止しかねない。

3) 盗聴とリークを誰が行ったか?

 辞任劇はワシントン・ポスト紙の記事で幕を開けた。トランプが大統領に就任する1カ月ほど前、フリンがセルゲイ・キスリャクと話をし、その中でアメリカがロシアに対して行っている「制裁」を話題にしたこと、これを副大統領に報告しなかったことが問題だと報じた。

 スノーデンの指摘する通り、CIA、NSA、FBIはあらゆる世界の政治家、資本家そのほかすべてを大規模に盗聴している。ワシントン・ポスト紙の記事通りなら、フリンとセルゲイ・キスリャクの会話を盗聴した人物がいることになる。盗聴したのはCIA、NSA、FBIといったところだが、盗聴内容を切り取って、メディアに漏らして報道させ、盗聴行為に対する責任を負わないように対応した。

 こんなことが可能ならば、自分に都合に悪い情報は無視しておいて、誰かしら政治的な敵を貶める情報だけを選んで暴露し、追い落とすことが可能になる。自分に都合のいい情報だけリークし、ライバルを追い落とせばいいのだから、政治権力を握るのも可能である。

 実際に、ネオコンはこれまでそのようにしてきた。ユーゴスラビアで深刻な人権侵害があると偽情報を流して、戦争介入しユーゴを破壊してしまった。大量破壊兵器があるという偽情報でイラク戦争を実行しイラクを破壊しつくした。結局、破綻国家をつくって、アメリカ軍とその傀儡、傭兵が支配する国や地域に変わった。いまだに修復し得ないところまで破壊しつくした。

 このようにすれば、あらゆる政治を操ることができる。情報機関はまさに政治的に自分たちの利益を守ろうとして対応している。情報機関だけでなくその背後に巨大な利益集団の存在がある。

 有り体に言えば、アメリカを牛耳る現支配層による何らかの情報操作、リークは許されるが、それに従わない政治家は許さないし、支配層にとって都合の悪い情報の公開は許さない、従わない者は情報操作によって政治的に屈服させる、ということだ。

4) 機能不全のトランプ政権

 はっきりしているのは、盗聴したCIA、FBI、NSAなどの情報機関、および有力メディアが、トランプ政権に従っておらず、それどころか政権外部のネオコン、軍産複合体の支配下にあり、トランプ政権を屈服させようと闘っている最中だということだ。

 トランプはフリンを慰留しなかった。トランプ屈服の第一歩だろう。
 その後、トランプは6兆円もの軍事費増大を表明した。明らかにネオコンや軍産複合体などのこれまで戦争を進めてきた勢力に対する「妥協」を意味している。

 しかし、ネオコンや軍産複合体はいまだ満足しておらず、トランプへの攻撃を止めていない。トランプがネオコンや軍産複合体に完全に屈服するまで続けるつもりだ。

 トランプは選挙中、オバマ陣営がトランプを盗聴したと非難している。これに対し、有力マスメディアは「証拠がない」と反論?[?]のキャンペーンを行っている。滑稽なのは、これを「トランプの横暴vsジャーナリズム」の対立として描き出していることだ。ワシントン・ポストをはじめとする有力メディアが、CIAとその背後にいるネオコン、軍産複合体に操られていることこそが何よりも問題だ。ジャーナリズムはその「汚れた関係」をまず告発しなければならない。

 ネオコン、戦争ビジネス、巨大金融資本を含む好戦派、反トランプ陣営に加わっている有力メディアと、民主党「リベラル派」は関係が深く、少なくともヒラリーやオバマなど一部は資金などの支援を受けている。トランプを批判するネオコンなどに「リベラル派」が従っている。だから、決して「トランプ対リベラル」の対立というわけでもない。

 こんなことで、トランプ政権の混乱は続き、いまだ機能していない。CIA、FBI、NSAなどの情報機関が、トランプのいうことを聞かないのだから、機能しない。政策を担ってきた国防省、国務省も様子眺めだろう。(3月22日記)
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トランプ政権が誕生した意味 [世界の動き]

トランプ政権が誕生した意味、新政権の動静

1)米国トランプ政権の動静、国内問題

1)-A、トランプが勝利した背景

 新自由主義が、アメリカを荒廃させた。この荒廃がトランプを登場させた。ただアメリカ社会は一様に荒廃しているのではない、深刻な分断がそこにある。富裕層と貧困層、権力エリートと大衆の分断、グローバル化で潤う東西両海岸と中西部、ラストベルト地域の分断である。

 1980年代以降アメリカを含む世界中で、レーガノミックスに代表されるような市場原理主義への回帰が起きた。社会主義を解体したため、社会主義制度に対抗する労働者の権利拡充や福祉政策を実行する必要がなくなった。1970年代、法人税は各国とも50%程度がほとんどだったが、今や引き下げ競争が止まらず、トランプは15%にすると公言している。人々に対しては自己責任を押し付け、緊縮財政、福祉・公共サービスなどの縮小、公営事業の民営化の「小さな政府」がいいと宣伝し、他方、大資本のためにグローバル化を前提とした経済政策、規制撤廃による競争促進、労働者保護廃止などの経済政策、法人税の低減、富裕層のために所得税の減免を推し進めてきた。経済恐慌に際しては「大きすぎて潰せない」として、政府が金融資本を救済した。「小さな政府」「自己責任」の原則は、大資本には適用しなかった。

 金融資本、巨大企業、軍産複合体はそれ以前にくらべても巨大な富を獲得し、失業などの敗者を生み出した。厚い層をなしていた中間層は徐々に解体・没落した。これを「経済効率を求める新システム」と呼んだ。現実には勝者が敗者を補う機能はまったく果たされず、敗者の貧困化の過程を促進した。「トリクル・ダウン効果」(trickle-down effect:「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富がトリクルダウン(滴り落ちる)」とする経済効果)という「偽りの甘い言葉」を政府や経済学者が語り、貧困化、格差拡大に何も対策せず放置した。

 これに対してアメリカの一般国民の不満が蓄積し、即物的な形をとって爆発し始めた。この不満はいまだ「無自覚」であり、政治勢力として結集してはいない。トランプ誕生、英国のEU離脱、欧州での右翼政党台頭、韓国大統領弾劾などの一連の現象は、新自由主義がもたらした荒廃、分断、不満が根底にある。

1)-B、トランプは果たして期待に応えることができるか?

 新自由主義のもたらしたアメリカ社会の荒廃は、トランプによって米国内の白人労働者層の貧困問題に還元された上に、原因あるいは「敵」はもっぱら「不法移民」、「イスラム」、「中国」などの外部の他者とこれまでの政治家、「パワー・エリート」であるとし、有権者ではない国民国家にとっての他者になすりつけ、他方、白人労働者階級の一部が抱く人種的優越主義を刺戟しながら「偉大なアメリカを復活する」という愛国心を鼓舞する選挙キャンペーンを行った。これが功を奏して得られた支持である。新自由主義により貧困化したのは、アメリカの白人労働者ばかりではない。アメリカの非白人労働者、さらには新興国、発展途上国の労働者を、より大量かつ深刻に貧困化させたきた。人種的優越主義をもち「偉大なアメリカ」を叫ぶアメリカの白人労働者層は、ナショナリズムや排外主義にとらわれてるのであり、非白人労働者者や新興国や途上国の労働者のことは考慮の外にあり、連帯感などは欠如している。不満はすでに操られている。

 多くのアメリカ国民は、ウオール街、金融界、軍産複合体、マスメディアを中心としたアメリカのパワーエリート勢力に対する反発や批判を蓄積したが、トランプはこれを、「不法移民」、「中国」、「イスラム」など外部の敵への攻撃に取り込んで、うまく利用した。矛先は、ウオール街、金融界、軍産複合体、ユダヤ資本などに向かないように巧妙に工夫されている。

 トランプ自身は不動産業を営む有数の富豪であり、貧困層の利益を体現しているわけではない。次々に政権の閣僚を任命しているが、その顔ぶれは、富豪、金融資本の代表や高級軍人。彼らの考えは、決して貧困・中間層の価値観と一致していない。

 トランプが、中国やイスラムや不法移民を非難するのは、何ら根本的な解決ではなく、一種の「気晴らし」である。外部の他者に責任をなすりつけて、貧困化する白人労働者層の不満を一時的にそらせる以上の意味を持たない。効果がある限り、繰り返し続けるだろうが、「気晴らし」がいつまでも有効であるはずはない。

1)-C、トランプの経済政策

 トランプは掲げる経済政策、すなわち、大幅減税、大型インフラ投資、そのための財政出動、シェールオイル開発などのための環境規制撤廃、保護主義、金融緩和・ドル安を、大げさに表明してきた。これらは金融資本やビジネスに有利ととらえられ投資家は期待を抱き、11月以降株価はいったん上昇した。

 しかし、実際にこれらの経済政策を実施するとなると難しい。

 大幅減税、財政出動し大規模にインフラを整備するとすでに表明し期待も膨らんでいるが、現在
でも財政赤字であるのに、さらなる赤字の拡大、金融緩和は信用不安、恐慌をもたらすから、おのずと限界がある。

 トランプがツィッターで自動車会社にアメリカ国内生産を促し、自動車会社の経営者は戦々恐々としているが、市場に近いところで安く生産することを追求しできあがったのが現生産体制であって、白人労働者のためだからといってミシガンやイリノイに工場を戻すことは、やらないしできない。またメキシコから様々な部品・製品を輸入しており、メキシコからの輸入車だけ狙い撃ちにして高い関税をかけることも不可能だ。

 当面、実行できそうなのは、金融緩和・ドル安とし、アメリカ製造業の輸出拡大くらいである。
 これらの経済政策は、「親富裕層」、「親ビジネス」、「親金融資本」的であり、たとえ実行されたとしても貧困層の状態が改善しはしないし、ラストベルト地域の抱える問題も解決しはしない。TPP離脱を表明したことは歓迎するが、そのことで貧困層の抱える問題が解決するわけではない。

 トランプの主張が何の解決ももたらさないと、どの時点で、貧困・中間層が強い反発を示すかが、アメリカ国内政治の次の焦点となる。

2)アメリカの外交、国際問題はどうなる?

 対外関係では、対ロシア、中東、中国が特に注目される。

2)-A、最大の争点、対ロ政策

 対ロ政策では、トランプ路線と既存の対ロシア政策は、明確に対立している。オバマ政権では、ネオコン勢力が対ロシア政策、対中東政策を牛耳ってきた。国務省を牛耳っていたネオコン・グループはウクライナで危機を創造し、ロシアとの対決に持ち込んだ。ネオコンが支配するNATOは、関東軍化(第二次世界大戦前の日本の関東軍)しており、ウソの情報を流し宣伝し、しきりにロシアや中東で戦争挑発を仕かけてきた。

 その結果が、ウクライナの破綻国家化であり、シリア戦略の失敗・シリア反政府軍の敗退、トルコの離反、欧州への中東移民の大量流入である。バルト三国、ポーランドはウクライナとともに、ネオコンのロシア挑発政策にそのまま従い、NATO軍配備を歓迎すると各政権とも「自発的に」表明してきた。今やロシア政策は手詰まりになり、アメリカのロシア政策の転換が検討されている。

 オバマは政権を去る直前の1月13日に、ポーランドに3,500名のアメリカ軍配備を決め、次期政権の手を縛った。ネオコンに従ってきたこれら諸国政府は不安にかられているだろう。ロシア政策の転換は、その利用が終わるからだ。

 一方、トランプはロシア内のホテル建設、高級マンション建設等の関係で有力ロシア経済人との交流を持つ。国務長官として、米石油大手エクソンモービル会長兼最高経営責任者(CEO)のティラーソンを起用。ティラーソンは北海石油開発、サハリン石油開発等を通じロシアと協同してきたし、ロシアに対する融和政策を主張している。

 ロシアと協調し資源開発をすすめ利益を上げようとするグループが、アメリカ支配層内に存在しており、ネオコン、イスラエルロビーが推し進めてきたロシアへの戦争介入、敵視政策の失敗を前にして、ロシアとの「協調」への転換が模索されている。

 ただ、ネオコンは国防省国務省から放逐されたわけではない。オバマは、何の証拠も示すことなくロシアがサイバー攻撃でアメリカ大統領戦に介入したと断定し、またロシア外交官35名はスパイだと決めつけ帰国させた。これは、オバマ政権と国務省が今なおネオコンに支配されており、トランプ次期政権に難題を押しつけたことを意味する。ロシア外交官追放に対し、プーチンは対抗措置をとらなかった。そのことにトランプはツィッターで「すばらしい対応」とし、対ロ政策での違いを表明した。

 トランプ政権で最初の政権内路線争いは、対ロ政策になろう。

2)-B、 中東政策の転換

 シリア反政府軍が敗退し、ダーイッシュ(あるいはISと表記)は弱体化、トルコもアメリカから離反した。アメリカの手先が弱体化・離反したことで、中東での影響力が大きく後退した。中東戦略は、敗退したところから出発することになる。

 シリアにおいては、米国抜き、ロシア、トルコ、イラン主導で、アサド政権存続を前提とした停戦合意がすでに成立した。これに新政権はどう対応するか。停戦合意した7反政府勢力のうち、5グループはアメリカの支援を得ていた。中東はすでに、ロシア、トルコ、イラン、シリア対アメリカ、サウジ、イスラエルの対立構造に変わっている。

 シリア反政府軍、ダーイッシュを使って、戦争介入するオバマ政権のやり方が失敗した後、どのように立て直すのか注目される。「世界の警察官であり続けることはない」とするトランプ政権だが、政権入りしたマティス国防長官等多くの軍関係者は、中東への軍事介入支持者であり、統一性はとれていない。ここでも路線争いがあるだろう。

2)-C、中国は最も複雑な構図

 トランプにとって中国非難は、対中国の貿易赤字が大きいので口先介入しているのだが、実際に関税をかけることは難しく、有利な取引条件を引き出そうとしているくらいだろう。ただ中国非難は、トランプ支持者であるアメリカ大衆のプライドをくすぐるための材料でもある。アメリカ国民に対して発せられており、言葉通りに受け取れない場合もある。

 オバマ政権は「アジアへのリバランス戦略」を掲げ、中東からアジアへ軍事力をシフトしてきた。南シナ海でのフィリピンやベトナムと中国との領土領海問題に介入してきたが、フィリピン・ドゥテルテ政権が親中政策へ転換し、アメリカの戦略はここでも思い通りいっておらず、立て直しが迫られている。

 アメリカ支配層にはアメリカ軍、軍産複合体、ネオコンを中心とする対中強硬派と、中国市場に参入している産業界、金融界の融和派が存在する。トランプは米国国内の産業の育成を主張しており、米国産業の擁護の観点から、貿易戦争の再来もありうる。

 アメリカ軍は、軍産複合体の都合もあり、対中国強硬路線を継続しているが、実際に強硬路線をとることができるかどうかは、中東での軍事介入がどうなるかとも関連している。二正面作戦をとることは難しく、中東への軍事介入継続であれば、中国への策は薄れる。

2)-D、欧州への関与

 英国のEU離脱の基本合意はいまだできていない。欧州もアメリカ社会と同じく新自由主義により社会が荒廃、分断しており、他方、中東からの移民の増大を契機に、ナショナリズムが欧州全域に広がりつつあり、ナショナリズムや排外主義を掲げた右翼政党が台頭している。仏の大統領選挙、ドイツの首相の動向などにすでに影響を与えている。

 トランプ政権の欧州への関心は前政権に比べ小さく、口先介入はあるにしても全体として後退するだろう。NATOの動きが変わるか注目される。

2)-E、日本への影響

 アメリカの中東への軍事介入が強まれば、自衛隊派遣への圧力が強まる。中東への軍事介入がトーンダウンすれば、対中対決に本腰になり、当然日本の参加を強化することが求められる。ただ、いまだ方向は定まっていない。

 対中国、対アジア政策が定まらなければ、今までアメリカに従って懸命に努めてきた安倍政権の立場は宙に浮く。それゆえ安倍政権は、これまでアメリカ政府の「番頭」のような役割を進んで果たしてきたのに、トランプ政権はその「忠義」を理解してくれていないと嘆き、理解を求めアピールが重要だとしきりに愚痴をこぼしている。

 トランプは、日本をそれほど重視していない。「どのようにも扱うことができる政府であり国である」ととらえており、優先順位は低い。しかし、アメリカの世界政策の変更・転換は、安倍政権にとって大きな影響を及ぼす。   (文責:林 信治、1月20日記)




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日本社会の中国観、韓国観 [世界の動き]

現代日本社会の中国観、韓国観

 
 現代日本の常識は、世界の非常識である。最も代表的なものが「中国観・韓国観」だ。

 日本社会では、日本では70~80%の人が中国の浮上を日本の潜在的脅威として把握し、これに備えるために日米同盟を強化して、中国と東南アジア諸国に対処するのが当然だととらえている。可能ならば韓国、東南アジア諸国連合、オーストラリア、インドなどの周辺国を日米同盟の側に引き込み、中国と対峙し、東南アジアを影響下に治め、戦後の長い時期そうであったように、アメリカと一緒になって日本が特別な地位を占めるのが当然だと考えている。さらに安倍政権は、対米協調の枠内で海外での軍事的貢献も積極的に引き受けるところに踏み出すべきだと主張するに至っている。日本は西欧の一員で、中国、韓国、東南アジアは未熟な国々という認識だ。

 しかし、そのように考えているのは日本政府と日本社会だけだ。ASEAN諸国は、米中関係が改善し、東南アジアの安全保障がゆるがないことを願い、勃興する中国を認めたうえで平和的互恵的な国際関係を望んでいる。アメリカ政府の傀儡だったフィリピン政府は、中国との友好関係へと転換した。中国と領土問題を抱えているベトナムにしても、平和的互恵的な関係を主張する立場である。

 日本政府と日本社会だけが違う。
 安倍政権や外務省の振りまくの偏った誤った中国観を、日本の知識人やメディアが宣伝し、情報操作した結果、国民の間で何となく「嫌中論」がひろがり、政権に都合のいい薄っぺらな「中国観」を持つに至っている。
 そして日本政府は、アメリカの「アジアへのリバランス戦略」に忠実に従い、アメリカともに中国を敵視し対峙する政策をとっているのである。

 「韓国観」も「中国観」と同様で、韓国の台頭は日本にとって「生意気」であるし、日本とは違って未熟な国という認識だ。
 この中国観、韓国観を持った安倍政権は、中国に近づいた韓国を日米韓同盟にしっかりとつなぎとめようと腐心してきた。安倍晋三首相が2015年11月、朴槿恵大統領との首脳会談で「慰安婦問題が両国関係発展の障害物」になっていると言明したのは、アメリカ政府のリバランス戦略、対中国政策を、安倍政権なりに実行しようとしたからだ。

 朴槿恵政権はアメリカ政府、日本政府の圧力に負け、2015年12月28日には、日本軍「慰安婦」問題に対する日韓政府間合意を強引に締結した。2016年7月には中国政府の強い反対にもかかわらず韓国へのTHHAD(高高度防衛ミサイル)配備を決定し、2016年11月には日韓軍事情報保護協定(GSOMIA)を締結した。中国に対抗し、日米韓軍事協力を強化する方向に、朴槿恵政権は舵を切ったのだ。

 韓国社会の立場は、朴槿恵政権のこの転換と微妙に食い違っている。韓国社会も中国の急速な浮上に「不安」を感じつつも、中国を「戦略的互恵関係」としてとらえている人々が多数を占める。実際に中国との経済貿易関係は韓国経済の大半を占めており、中国との友好関係なしに先行きはないことは、日本以上により確かなのだ。
 
 朴槿恵政権が、国民の大多数から支持を失い機能停止に陥っている要因の一つは、中国との「戦略的互恵関係」を揺るがし、日米の側にあまりに傾いたことによる。

 北朝鮮核問題の解決のために何が必要か、対話と協力を通じて南北関係を安定的に維持することが賢明だ。それ以外にはない。北朝鮮核問題に、「THAAD」配備しても何も解決しないし、より危険になる。誰でも冷静に考えればわかる。韓国社会でも多数の人々はそのように考えている。
 しかし「THAAD」配備は、アメリカ政府の強い意向であった。配備は、北朝鮮ばかりでなく中国も含めた東アジアの安全保障に重大な危険をもたらす。そんなことは明白なのに、朴政権は受け入れてしまった。

 日本の大多数の知識人は、アメリカに従って中国や東南アジアに対処する次元で、韓国や東南アジア諸国の政策を評価し、自分たちのフレームに合わない姿を「未熟な中国、韓国、東南アジア諸国」として描き出す。日本政府の政策に進んで「理解」を示し、日本はアメリカの背後にくっついてその脅威を使って、中国や韓国、アジア諸国に対処するのが当然ととらえている。

 その点では「アメリカには敗けたが、中国や朝鮮に敗けたわけではない」とする歴史観(元関東軍参謀・服部卓四郎が書いた『大東亜戦争戦史』)が、自民党政治家を通じて日本社会のなかに、現在に至ってもなお生き延び続けているとさえ言えるのである。

 このようにして日本政府と日本社会はアジアから孤立する道を歩んでいる。日本社会は孤立する道を選んでいることに無自覚なままだ。   (1月9日、記)
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オバマ政権のシリア戦略の破綻 [世界の動き]

アレッポの敗北、
オバマ政権のシリア戦略の失敗

1)アレッポでの敗北は、何を意味するか? 
オバマ政権のシリア戦略の破綻である161212 シリア勢力地図 アレッポ奪還.jpg
<シリア勢力地図 アレッポ奪還>
 
 シリア政府軍がアレッポを制圧した。アレッポはシリア最大の都市で人口200万。反政府軍の支配下にあった。
 シリア政府とロシアは、シリア反政府軍の兵士とその家族が武器を捨てて撤退することを認めた。12月16日、アレッポからシリア政反府軍の兵士とその家族がバスや救急車で撤退を始めたと伝えられている。

 シリア反政府軍のアレッポでの敗北は、何を意味するか?
 オバマ政権のシリア戦略の破綻である。
 シリア反政府軍のアレッポの敗退によって、戦局は大きく変化した。

 アレッポはシリア反政府軍の最大重要な拠点であったが、シリア反政府軍はこれを失った。シリア反政府軍は、アメリカやイギリスの手駒であり、アメリカやイギリスは戦闘員を訓練し、武器を供給し、侵略を仕かけてきた。アレッポにはアメリカやイギリス、イスラエルなどの特殊部隊、将校もいて、多数捕虜になった模様だ。シリア反政府軍の指揮系統、アメリカ、イギリス、イスラエル、サウジやカタールの特殊部隊の指揮系統でもあるが、これがいったん破壊されたことになる。もはやこれまでのような戦争介入は困難になった。

2)アメリカ抜き、ロシア、トルコ、イラン、シリアで停戦合意
   オバマ政権のシリア戦略破綻をさらに確定した
  
 さらに重要なことは、ロシアとトルコが12月29日にシリアにおける停戦で合意したことだ。アメリカ抜きの合意だ。イランも停戦合意文書の作成に参加、シリア政府や反シリア政府の7組織(戦闘員総数約6万人)も署名、国連もこの合意を認めたようだ。12月に入り、カタールはシリアへの侵略戦争から離脱、平和交渉にはエジプトも加わると見られている。

 アメリカやサウジとともに、戦争介入してきたトルコ・エルドアン政権は、クーデター騒ぎでアメリカへの不信を極大化させたこともあって、アメリカとともにシリアに戦争介入しても、この先見込みがないと判断した。そしてこれまでの態度を転換し、ロシアやイランと協議を開始し、アサド政権を認めたうえでのシリア和平協議に加わった。

 オバマ政権は、エルドアンの態度変更を止めることができなかった。12月19日、トルコ駐在のロシア大使、アンドレイ・カルロフが12月19日にアンカラで射殺された事件が起きたにもかかわらず、ロシアとトルコの新しい関係は壊れなかった。ロシアとトルコの接近は、アメリカやサウジ、イスラエルにとってはぜひとも阻止しなければならなかった。しかし、阻止できなかった。ロシアとトルコの新しい関係を破壊する目的で大使暗殺は仕かけられたことを、プーチンもエルドアンも理解したのである。

 アメリカやサウジ、イスラエルにとって、トルコを巻き込んだ停戦が成立するのは困る。だから、テロリストを使って暗殺事件を起こしたのだ。ついでにいえば、テロリストはアメリカやイギリス、サウジ、イスラエルの手駒であることをも証明した。

 停戦の妨害は、12月19日のアンドレイ・カルロフ露大使射殺だけではない。12月28日と29日にはダマスカスのロシア大使館が攻撃された。トルコとロシアの停戦合意を破壊する目的だったろうが、成功しなかった。また、12月23日にオバマ大統領はシリアの「反対者」への武器供給を認める法律に署名した。アル・カイダ系武装集団やダーイシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)に対する支援を、トランプ次期政権に押しつけたということだろう。
 オバマ政権がネオコンに支配されていることの証明でもある。

 トルコが停戦合意したことは、戦術的に重大な意味を持つ。
 アメリカやサウジはシリア反政府軍やダーイシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)へ資金を援助したが、武器や食料、特殊部隊はすべてトルコ国境を通じて供給された。シリア反政府軍、ダーイシュの兵站が絶たれるのだ。トルコ国境は、シリア反政府軍やダーイッシュやアル・カイダ系武装集団(AQI、アル・ヌスラ、ファテー・アル・シャム/レバント征服戦線と名称を変更したが、その実態は同じ)の兵站線であり、ここから武器が供給され、武装集団の財源となった盗掘原油が運び出された。

 ダーイッシュが強大になったのは、支配地域で石油を盗掘し、その資金で武器を買い、戦闘員を雇ったからだ。盗掘原油の販売も武器購入もトルコ国境を通じて行われた。ダーイッシュを倒す方法は明白で、盗掘原油を買わせないこと、武器の供給を止めることである。2015年9月30日からのロシアによる空爆は、これを行った。油田地域から追い払われ、アメリカやサウジから武器支給がされなくなったダーイッシュは、この先必ず弱体化する。

 シリア反政府軍はアレッポから西のイドリブへ撤退しているが、もはや戦闘継続も難しいだろう。いずれシリア反政府軍は壊滅し、シリア政府軍の支配下にはいるだろう。 

 この停戦合意には、アル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュは参加していない。アメリカ、フランス、イギリス、サウジアラビアも停戦には参加していない。シリア介入の手駒を失ったアメリカは、影響力をもはや行使できないということなのだ。オバマ政権は政権移行期にあり、茫然自失状態に陥っている。

3)シリア反政府軍とは何か?戦闘員は誰か?

 シリア反政府軍の戦闘員とは、アメリカ、イギリス、フランス、トルコのNATO加盟国、サウジアラビアやカタールのようなペルシャ湾岸産油国、そしてイスラエルが使ってきた傭兵である。シリア国民はほとんどいない。したがって、この戦闘は内戦ではない。外部からの戦争介入であり、国際法違反の不当な介入である。

 テロ集団を雇い戦争をしかけ、「反テロ戦争」を理由に戦争介入し、崩壊国家にし支配するというのが、オバマ政権が推し進めてきた中東支配である。リビアではカダフィを倒したが、シリアでは失敗に終わったということだ。
 
 アメリカ政府はシリア反政府軍を、ダーイッシュとは違う「穏健派勢力」と区別しようとしているが、「穏健派」とはネオコンとその支配下にあるマスメディアがつけた名札にすぎない。また戦闘員は、敗退するシリア反政府軍から逃れ、ダーイッシュやヌスラ戦線に雇い主を変えるものも多く出ている。

 ダーイッシュが傭兵集団であり、雇い主がアメリカ政府と同盟国(サウジ、カタール、イスラエル、英その他)であるという証拠の一つは、2012年8月にアメリカ軍の国防情報局(以下:DIA、当時の局長はマイケル・フリン中将)が作成した報告書である。報告書は、「シリア反政府軍はサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてAQI(イラクのアル・カイダ)が主力だとし、AQIはアル・ヌスラ(今はファテー・アル・シャム)と同じだ」と説明している。

4) この先どうなるか? 
  トランプ新政権はネオコンと手を切れるか?

 テロ傭兵集団を育成し、戦争介入し、崩壊国家にし、アメリカが支配する戦略を推し進めてきたのはネオコンである。バラク・オバマやヒラリー・クリントンはネオコンの影響下、支配を受けている。

 オバマ政権で、マイケル・フリン中将(2012年~2014年国防情報局局長、以下:DIA局長)は、武装集団の利用の危険性を訴えたが、オバマ大統領から解任された。このマイケル・フリン元中将は、トランプ新政権の安全保障担当補佐官であり、11月に安倍晋三がトランプタワーで面会した際、同席した人物である。

 ダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL)が傭兵集団であり、雇い主がアメリカ政府と同盟国であるとする指摘は、DIA報告書以外にいくつもある。アメリカ空軍のトーマス・マッキナニー中将は2014年9月にアメリカがダーイッシュを組織する手助けをしたと発言した。マーティン・デンプシー統合参謀本部議長(当時)はアラブの主要同盟国がダーイッシュに資金を提供していると議会で語り、2014年10月にはジョー・バイデン米副大統領がハーバード大学で中東におけるアメリカの主要な同盟国がダーイッシュの背後にいると述べている。2015年にはクラーク元欧州連合軍最高司令官もアメリカの友好国と同盟国がダーイッシュを作り上げたと語った。

 テロリストを雇い、戦争をしかけ、反テロ戦争として介入する、カダフィ政権やアサド政権を倒し、崩壊国家と混乱状態をつくりだし支配する、これがオバマ政権の推進してきた中東戦略であり、実際に主導権をとり推し進めたのはネオコン、イスラエルロビーだ。オバマやヒラリーはこれを制止するどころか、政権の主要な戦略とし、中東ばかりではなくウクライナ、オセチアでも同じことを行ってきた。オバマは、口先だけの凡庸な人物であり、安々とネオコンの支配を受け入れた。シリアではアメリカの支持したシリア反政府軍は敗退し、トルコは離反し、ウクライナは崩壊国家になり、修復しようのない事態に陥った。オバマの中東戦略は、失敗し破綻に終わろうとしている。
 
 トランプ新政権が、マイケル・フリン元中将を安全保障担当補佐官に迎え、ロシアと関係を改善し、中東戦略を改めようとしているのは、これまでのネオコンの戦略が、すでに失敗に終わっており、現実性がないこと、その継続は極めて危険であることが明らかだからだ。アメリカ社会はこれ以上の戦争政策、戦争介入に耐えられないという事情もある。ロシアを追い詰めるのではなくビジネスを拡大すべきだ判断するアメリカ支配層に、トランプ新政権は依拠している。

 アメリカ次期政権の安全保障担当補佐官マイケル‣フリン元DIA局長は、アル‣カイダ系武装集団やダーイッシュが一時期勢力を拡大させたのはオバマ政権の政策によると認識している。退役後にアル‣ジャジーラの番組へ出演した際、フリン元中将はオバマ政権がDIAの警告を無視して反シリア政府軍を支援、その決定がダーイッシュの支配地域を拡大させたと語っている。

 トランプ新政権はダーイッシュやサラフ主義者/ワッハーブ派やムスリム同胞団を中心とする武装集団を危険視しており、ロシアと手を組んで戦うべきだという考えを表明している。そのことはアサド政権存続を前提にした政策への転換であり、これまでの戦争介入政策の撤回である。

 ただ、トランプ新政権がネオコン影響を排除し、中東戦略を全面的に改めることができるかどうかはまだ定まっていない。
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トランプ勝利の意味、今後の行方 [世界の動き]

トランプ勝利の意味、今後の行方

 アメリカ大統領選挙結果は、驚くべきものだった。ドナルド・トランプに対する悪質なマスコミ・キャンペーンにもかかわらず、オリガーキー(1%の支配者)の代理人、ヒラリー・クリントンは敗北した。マスコミと、既存政党支配体制は、もはやアメリカ国民の信頼を得ていないことを示した。

1)反テロ戦争継続と軍産複合体・ネオコン支配にうんざり!

 トランプは戦争をやめることができるか!

 米国民は、2003年のイラク戦争以来延々と続く「反テロ戦争」にうんざりしているのだ。イラク戦争以降約7,000名の米兵士が戦死し、負傷者はその数倍以上にのぼる。負傷した退役軍人の生活は保障されておらず、みじめなものだ。そのことを、地方に住む多くの米国民は見てきた。戦争を煽るネオコンや軍産複合体に、嫌気がさしている。そんなことより、アメリカ国民の生活をよくしろ! 中東やウクライナにかかわるな! これが多数のアメリカ国民の声だった。

 ネオコンがオバマ政権を主導し、ISなどの傭兵集団を利用し一方でテロをしかけ、他方で「反テロ戦争」を続け、軍産複合体に毎年1兆ドル(約100兆円)もの収入を保障してきた。トランプを選んだ米国民はこの戦争政策継続を拒否したのだ。

 もし2003年に、イギリスとアメリカ合州国がイラクを侵略していなければ、イラクやシリアがISに占領され、戦争で荒廃してはいなかった。大規模な難民が発生し、欧州に押し寄せることはなかった。

 米政府を牛耳るネオコンと軍産複合体は、ISなどの傭兵を利用し、リビア・カダフィ政権を転覆した。同じやり方で、シリア・アサド政権を交替させようと戦争を継続してきた。ロシアを追い詰めるため、ウクライナのネオナチに政権をとらせ、ロシアとの戦争をけしかけてきた。オバマは、ネオコンや軍産複合体に妥協するばかりだった。国防長官やNATO司令官をネオコンに替えた。中東やウクライナへの戦争介入で、ロシアとの核戦争の危機さえもたらした。アメリカ社会はこのような戦争政策を続けることができなくなっているのだ。
 
 ヒラリーは、上院議員として、イラクでの大虐殺に賛成した。2008年に、オバマに対抗して立候補した際には、イランを“完全に消し去る”と脅した。オバマ政権の国務長官として、彼女は、リビアとホンジュラス政府破壊に共謀し、中国攻撃の手筈を整えた。ヒラリーは、ロシアとの戦争挑発である、シリアでの飛行禁止空域を支持すると誓ってきた。彼女はネオコンときわめて親和的だ。ヒラリーの実績はすでに証明済みなのだ。

 他方、トランプは、「世界の警察官であり続けることはできない」と表明した。ネオコンや軍産複合体による戦争政策継続の拒否である。日本の軍事費負担を増やせと言ってきたのも、米政府の軍事費負担を減らすことに目的がある。戦争継続が、米国社会を荒廃させたこと、中流層を崩壊させ、特に地方の白人層の生活を破壊してきたと認識しており、この転換を企てている。

 トランプが、ワシントンの権力者に嫌われているのは、彼の反抗的な振る舞いや発言ではない。ネオコンや軍産複合体が実行してきた戦争戦略の変更を、平気で唱えているからだ。トランプはアメリカの21世紀計画(=戦争をしかけ、不安定にし、支配する)に対する障害なのだ。
 ワシントンの軍国主義者連中にとって、トランプの問題は、ロシアや中国との戦争を望んでいないように見えることだ。彼はプーチン・ロシア大統領と戦うのではなく、交渉をしたがっているし、中国の習近平と話し合いたいと言っている。

 トランプは、選挙資金は自前でまかなった。ヒラリー・クリントンと違ってユダヤ資本、ウォール街の金融資本や軍産複合体から資金を得ていない。コントロールできていないのである。

 トランプ新政権が、ネオコンを政権から放逐できるか、ユダヤ資本やウォール街と手を切れるか、軍産複合体を押さえつけることができるかが、今後の焦点だ。妥協してしまえば、戦争政策をやめることはできない。
 
2)日米同盟、アジアへの「リバランス戦略」の変更は、歓迎すべき!

 オバマ政権はアジアへの「リバランス戦略」を掲げ、中国との対立を煽り、東アジアを不安定状態にし、介入しようとしてきた。ASEAN諸国はすべて、中国との対立を煽る米政府の戦略に反対している。米政府の言うなりに動いたフィリピン・アキノ前政権は、ハーグ仲裁裁判所に調停を申し立てた。仲裁裁判所の裁定は、どの環礁も「岩」であるとし、中比双方の領有を認めなかった。勝利者は、結局のところ、米政府だった。米国の都合=「リバランス戦略」に沿った裁定だったのである。米国は、裁定により、計画通り南シナ海での「自由航行作戦」を実行し、介入してきたのである。

 このような対立を煽る政策は、ネオコンや軍産複合体の戦略に従ったものだとトランプは判断している。トランプが中国やロシアとの協調を呼びかけているのは、リバランス戦略の拒否である。

 リチャード・アーミテージ元国務次官補、ジョセフ・ナイ元ハーバード大学長、マイケル・グリーンら共和党系のロビイスト・政策集団は、長らく日本を操ってきた「ジャパン・ハンドラー」と呼ばれており、米政府の東アジア政策を主導してきた。彼らは共和党系ながら、ヒラリー支持を表明した。そのため、トランプの勝利は、新政権で対日政策を実行する「顔ぶれ」ががらりと変わることを意味する。

 日本政府、安倍政権は、アメリカのお先棒を担いで中国との対立を煽る役割を果たしてきた。9月のG20での対応をみれば明らかだが、すでに中国政府は安倍政権をまともに相手にしていない。トランプ新政権が戦略を変更すれば、安倍政権ははしごを外された形となり、東アジアで孤立することになる。

 トランプ新政権による、日米同盟、アジアへの「リバランス戦略」見直し、変更は、きわめて歓迎すべきことだ。そもそも米戦略にとってさえ、辺野古に米海兵隊基地は不要である。沖縄・辺野古新基地建設を阻止する上で、良い条件が生まれるかもしれない。

3)信頼を失ったマスメディア、世論操作したマスメディア

 ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストなど大手新聞、NBC、CBS、CNNなどの主要放送局はすべて、ヒラリー支持だった。各マスメディアが実施した世論調査はすべてヒラリー優勢だった。しかしそれは嘘だった。世論調査と称して世論捜査を行ったことが明らかになった。

 選挙結果はトランプの勝利であり、米支配層の思惑がまったく外れたのである。マスメディアは、詐欺集団であることが証明された。ジャーナリズムが米支配層に大がかりに買収されている実態を暴露してしまったのである。

 今回の選挙で、米国民の多くが、1%の支配層による米国支配を心底から嫌った。そしてマスメディアの報道をまったく信用しなかった。マスメディアが、米支配層の道具に転化していること米国民はすでに知っていたし、マスメディアは信頼できない存在だと宣告されたのである。マスコミと既存政党支配体制は、もはやアメリカ国民の信頼を得ていない。

 アメリカ・マスコミが完全に信用を失った姿、影響力と信憑性の消滅した姿を確認するのは、実に痛快だ。

 ちなみに、日本のメディア報道は、米大手マスメディアのそのままの繰り返した。米大手マスメディアを信用したのは、日本の大手マスメディアだけだということ。そのことは、日本のメディアも支配層の道具であるとあらためて証明したことになる。現在は騙せおおせていても、いずれ日本のメディアも信頼を失うだろう。朝日、読売、毎日の大手新聞は、すでに部数を大幅に減らしている。

4)ヒラリーは、1%の代表

 トランプは、選挙資金を自分で準備した。1%の支配を受け入れていない。ヒラリーは、オリガーキー(1%の支配層)の手先である。オリガーキーは、トランプを支配できる自信がなかったので、トランプをホワイトハウスの主にしたくなかった。マスメディアを使って、ヒラリーを大統領にしようとしたが、米国民は拒否するという予想外の結果になった。これから先、オリガーキーはトランプへ「支配の手」を伸ばしてくるだろう。

 政権準備委員会ではすでに、ネオコン、軍産複合体、ユダヤ資本の代表者を、押し込むか排除するか、の争いが始まっている。

5)TPPは、完全になくなった

 ヒラリーもTPP反対を公言していたが、彼女はユダヤ資本、ウォール街、軍産複合体の支配下にあるから、大統領になれば撤回する可能性が高かった。トランプになって、その可能性はきわめて小さくなった。これは歓迎すべきことだ。日本国民にとって、あるいはTPP参加国の人々にとっては、きわめて喜ばしいことだ。

 TPPは、金融資本、ユダヤ資本、軍産複合体に、あるいは日本の独占企業、金融資本に新たな支配と利益をもたらすが、そのことは他方で、米国民の多数をのみならず、加盟国の人々を貧困化させる。国家主権をも侵して、世界的独占企業の利益を優先させる「自由化」なのだ。トランプは、TPPは米国民の多数の貧困化させる、と正しくも認識した。そして、地方の中間層、白人層を貧困化から救うために、TPPを阻止すると主張し、支持を得た。ヒラリーでは、貧困化は止まらないと米国民の多数は判断した。

 トランプ政権は、TPPから離脱するだろう。しかし、TPPを離脱しても貧困化を解決するわけではない。他方で、新政権はユダヤ資本、ウォール街、軍産複合体、世界的大企業の利害と対峙することになる。政権内でこれら支配層であるオリガーキーの影響力を排除するのは容易ではない。政権発足までの準備がまず重要となる。

6) トランプの移民排斥発言、反イスラム発言 
ヒラリーの「人種差別反対、フェミニズム支持」の意味 

 ヒラリーは、人種差別反対で、フェミニズムを支持し、性的少数者支持を表明している。しかし、フェミニズムを語りながら、生存権を含め、無数の女性たちの権利を無視する飽くことを知らない戦争を支持している。イラクやシリア、アフガンの女性の権利などまったく考慮していない。
 オバマ政権で国務長官を務めたヒラリーは、何十億ドルもの兵器を売ってきた。欧米にとっての上客であるサウジアラビアは、余りに貧しく、最良の時期ですら子どもの半数が栄養不足だったイエメンを、現在破壊している。ヒラリーにとって、人種差別反対、フェミニズムはまさに言葉だけの表明にすぎない。
  
 問題は、トランプ政権になってどうなるか、である。米国民の多くは、トランプの乱暴な移民排斥、反イスラム発言もあるがこれに目をつむり、彼が荒廃した米社会と生活を改善することに期待した。米国内の人種間の対立、移民排斥は、激しくなるかもしれない。移民問題、人種対立に対し、トランプは「調子のいい発言」だけで、解決策を示していない。

 トランプ政権は、国内問題への対処をどのようにするか、まず問われる。ここで成果を上げなければトランプ政権の安定はない。ただ、トランプ政権が内向きになることは、迷惑を振りまかれてきたアメリカ以外の人々にとって、米国の影響力が低下するのであるから、いいことではある。

7)トランプ新政権、第一幕

 投票日前日に掲載されたトランプ政治広告の一つは、ジョージ・ソロス、連邦準備金制度理事会議長、ジャネット・イエレンや、ゴールドマン・サックスのCEOロイド・ブランクファインは、全員“労働者階級や国民の富をはぎ取り、その金を、ごく少数の大企業や、政治組織の懐に流した経済判断の責任を負うグローバル権力構造”だと述べていた。ソロスと彼の手先は、すぐさま、とんでもないことに、広告を“反ユダヤ主義”だとして攻撃した。(Wayne MADSEN  2016年11月11日)

 トランプが、アメリカの雇用を回復し、ロシア、中国、シリアやイランと、友好的で礼儀をわきまえた関係を確立するという目標に仕える閣僚を選び、任命できるかどうかはまだわからない。

 トランプの勝利に対し、オリガーキー(ネオコン、軍産複合体、金融資本、イスラエルロビー)が一体どう対応するのか、判明していないし、トランプがどう対処するのかも明確になっていない。

 ヒラリーは敗れたが、オリガーキーが敗れたわけではない。もしトランプが、融和的になり、手を貸して、ネオコンや軍産複合体、金融資本など既成支配層を政権に採用するようになれば、米国民はまたもや失望することになろう。

 政権準備委員会においてすでに戦いは始まっている。閣僚の顔ぶれで戦いの第一幕の行方はほぼ判断されるだろう。(11月15日記)
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さまよう民意 [世界の動き]

さまよう民意

 米大統領選は、不動産王トランプネオコン・イスラエルと親しいクリントンの一騎打ちとなり、大金を懸けた醜い中傷合戦の終盤戦に突入している。
 これまでの候補者選びで浮き彫りになったのは、アメリカの中低所得者層のため込んだ怒りの大きさだった。新自由主義のもと、超大国アメリカの内部で経済格差が拡大し、さらにこれを是正しない政治への憤りが広がっている。この「憤り」は、解決の処方箋を見いだせていない。
 
 2014年のアメリカ連邦議会選では、人口の0.01%、32,000人の献金額が12億ドルに達し、献金全体の3割を占めた。「金持ちが政治を支配する」構図ができあがった。これが資本主義における代議制民主主義の一つの帰結なのだろうか。

 あまり笑ってもいられない。
 日本でも同じ問題を抱える。低中所得者層は経済的な不満を内にためながら、社会的にはより孤立し、内向きな志向を強めつつある。その裏面として、マスメディアを使った舛添都知事の「せこさ」を笑うつくられた「劇場型政治」のようなものが、題材を変えては何度も繰り返される。一時的に鬱憤をはらして終わる。格差は拡大するばかりで何も解決しない。(9月2日記)
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トルコ・クーデターの原因、失敗した理由 [世界の動き]

トルコ・クーデターの原因、失敗した理由

1)トルコ・クーデターの意味

 7月15日のクーデター失敗からの2週間を経て、この政治的事件の意味がより明らかになった。
 クーデター失敗を契機に、エルドアン政権は政権内からギュレン派を徹底して追い出し粛清している。ギュレン派は、クーデターがエルドアン政権の自作自演だと主張しているが、そうではあるまい。エルドアン本人がSNSを利用し国民にクーデター阻止を呼びかけた事実は、7月14日から15日にかけて、軍や政府機関、警察・諜報機関が支配下にあるかどうか把握できていなかったことを意味する。エルドアンはSNSで国民に支持を呼びかけざるを得ない事態に追い込まれたのであり、14日夜から15日未明にかけてクーデターによる政権打倒の危機が存在したのであった。
 
2)エルドアンによる権力掌握と粛清

 エルドアンは政権を掌握した後、7月20日、非常事態を宣言し、これまでにギュレン師支持派とされる軍人や裁判官ら1万8千人以上を拘束、中央省庁の官僚や教員ら6万6千人以上を解任や停職処分にした。軍の粛清が第一の目的であることがわかる。
 トルコ政府は、エルドアン大統領の政敵で米国に住むイスラム教指導者ギュレン師がクーデター未遂事件に関与したと断定し、トルコ政府は二国間の犯罪人引き渡し条約の規定に基づき、ギュレン師の送還をアメリカ政府に要求している。(日経:8月1日)
 
 注目すべきは、エルドアンが当初からクーデターは政権内のギュレン派であると特定しており、かつまたその背後にアメリカ政府内の好戦派、ネオコンがいると断定したことだ。ギュレン派は、これまでともにアメリカ政府の中東政策に沿って政権を担ってきたかつての盟友であるから、相手が何を考え実行したか、一瞬にしたわかったのであろうし、アメリカ政府の意図も読み取ったであろう。
 クーデターが起きた時、アメリカ軍は「静観」していた。トルコ基地内には、ロシアに向けた戦略核ミサイルが配備されている。にもかかわらずアメリカ軍は「静観」した。クーデターに対するアメリカ政府・軍の事前の承認があったことをうかがわせる。

 エルドアンが、軍人らを即座に逮捕・追放したのはそのリストを事前に持っていたからである。逮捕者や解任・停職処分の規模がきわめて大きいこと、それは軍内、政権内のギュレン派に対する粛清であり、徹底している。徹底しなければ、逆にエルドアンが倒される、そのように自覚しているからだ。徹底して軍内のギュレン派を粛清し一掃すれば、アメリカ政府はエルドアン政権を認めざるを得ないことを知っているからだ。

3)クーデターの原因と失敗した理由

 アメリカ政府内の好戦派・ネオコンにしたがって、トルコ政府が行ってきた中東政策が破綻したことがクーデターの原因である。エルドアン政権は、アメリカ政府、サウジ、湾岸諸国とともに、ISを利用してシリア・アサド政権を打倒に加担し、中東の支配者の地位を得ようとしてきた。
 しかし、この戦略は、2015年9月30日以降のロシア軍によるIS 空爆、シリアのトルコ国境地域のIS支配地域をアサド政府軍が奪還したことで、ISの兵站線は閉ざされた。ISは敗北し衰退しつつあり、ISを使ったアサド政権打倒は不可能になり、トルコの中東政策は破綻した。
 2015年11月のトルコ空軍によるロシアSu-24撃墜は、トルコーロシア間の政治・経済関係を破壊した。シリアを通じたアラブ世界との通商関係も途絶した。トルコへの外資投資は減少した。軍事費は増大しトルコ国債の信用は低下しつつあり、国際暴落の危険性が高まっている。アメリカの中東戦略に加担してきたことで、トルコ経済は停滞を余儀なくされた。
 アメリカ政府内の好戦派・ネオコンに唆されてロシアと戦争を始めたウクライナが、破綻国家になった姿を、エルドアンは間近に見ている。

 エルドアンは、アサド政権打倒が頓挫した新事態に対応せざるを得なくなり、悪化したロシアとの関係改善へと戦略の変更を決定したのである。
 この変更は、アメリカ政府内の好戦派・ネオコンの意に添わなかった。トルコ軍には歴史的に、アメリカ政府によるいくつもの密接な関係、支配の「手」が形成されてきた。「世俗主義」とは、トルコ政治にアメリカの支配力・影響力を発揮させる一つの政治的主張であった。
 今回のクーデターは、トルコ軍内の世俗主義を口実として、エルドアンの戦略変更を咎め、アメリカの中東戦略を貫き通させようとしたモメントとして、発現した。ただし、ISを利用してアサドを倒すアメリカの中東戦略は、すでに破綻が明らかであるので、トルコ軍内に「躊躇」が生まれ、クーデターに準備不足をもたらし、失敗におわった終わったのである。
 
4)エルドアン政権の戦略変更

 エルドアン政権にとって、シリアでの長期にわたる戦闘状態を継続できない。トルコが破綻してしまう。
 まずは、ロシアとの関係を改善するしか道はない。エルドアン政権は、すでにロシア機撃墜を謝罪した。8月9日、エルドアンはロシアを訪問する。ロシア産天然ガスをトルコ経由で欧州に輸出するパイプライン建設計画に対しても、エルドアンはこれまでの態度を一変させ、前向きな姿勢を示した。
 このパイプライン計画は、イラク・シリアを通ってパイプラインを敷設し欧州に天然ガスを輸出したい湾岸諸国・サウジの思惑と真っ向から対立する。アメリカ政府やサウジ・湾岸諸国によるイラク・シリア政権の打倒と破壊は、この計画とも関係している。

 トルコ政府は7月31日、軍参謀本部の傘下にあった陸海空軍を国防省へ移管、トルコ社会に影響力を持つ軍教育機関の廃止、大統領と首相が直接軍の司令官に命令を下す権限の付与などを発表し、トルコ軍の権限を縮小、大統領・首相への権限集中を決定した。

5)エルドアン政権は強固になったか?
 エルドアン政権の権力掌握、大統領への権力集中の過程が進行している。ギュレン派は権力から放逐されつつある。アメリカ政府が形成してきたトルコ軍内に張り巡らした「手」は、放逐されている。アメリカの中東政策の破綻が、このような形で従来の支配網を壊している。
 しかし、そのことはエルドアン政権の基盤が盤石になったことを意味しない。(8月1日記、文責:林信治)
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トルコ・クーデターの意味 [世界の動き]

トルコ・クーデターの意味

1)失敗に終わったクーデター 

 7月15日夜、トルコ軍将校の集団が軍事クーデターを行ったが、失敗に終わった。エルドアンはクーデターがギュレンとギュレン運動が引き起こしたと早々と決めつけ、ギュレン運動の軍人、司法関係者らを逮捕し粛清している。その規模はきわめて大きく、逮捕者数は8,000人を超えている。

 エルドアンは、クーデターを引き起こすのはギュレン以外にいないことを知っているし、ギュレンはCIAの工作員であり、背後にアメリカ政府がいることもよく知っている。なぜならば、2013年までギュレンもエルドアンもアメリカ政府の支持の下に一体で動いて来たからである。

 したがって、エルドアンによる粛清は、トルコ政府、軍内のギュレン運動関係者、すなわち米国の工作員がその対象である。クーデターを起こしたかどうか、参加したかどうかではなく、エルドアンは自身とは異なる米国の手先を粛清しているのであり、あらかじめそのリストを彼は持っている。

 トルコのCIA政治工作員フェトフッラー・ギュレンが、CIAの保護のもとペンシルバニア州セイラーズバーグに亡命して暮らしている。ギュレンのスポンサーにとって唯一の問題は、クーデターが成功しなかったことだ。クーデターは、エルドアンによる最近の劇的な「政治的態度の転換」に対する反応だった。これはCIAに忠実なトルコ国内ネットワークがひき起こしたものではあるが、明らかに準備不足だったように見える。

2)トルコに対するアメリカ支配の網

 ギュレンは、政治的イスラム教徒を、政権転覆の道具として利用するという、何十年もの歴史をもったCIA計画の一つの中心核だった、2013年に、イスタンブールや到るところで、反エルドアンの大規模抗議行動がおこなわれた。あの時、以前はエルドアンの公正発展党と結んでいたギュレンが袂を分かち、新聞ザマンなど、ギュレンが支配するマスコミで、エルドアンを暴君と批判した。それ以来、エルドアンは、ザマン紙や、ギュレンが支配する他のマスコミへの襲撃を含め、国内の最も危険な敵、ギュレンとその仲間連中の根絶に向けて動いてきた。これは、アメリカの中東戦略を誰が担うのかをめぐるトルコ政治における権力闘争にほかならない。

3)クーデター失敗のあと、どうなるか?

 一時的にはエルドアン支配が強化されるだろう。過去二年間、ギュレン運動は、エルドアンや、彼による諜報機関トップの粛清によって、影響力がすでに低下している。「国の守護者としてのアタチュルクの軍」などというものは、1980年代以来、とっくの昔に終わっている。

 今後、興味深いのはエルドアンの外交政策であろう。
 エルドアン政権は、アメリカに加担してIS を利用しシリア・アサド政権打倒を実行してきたが、2015年9月30日のロシアによるIS空爆開始により、その戦略の破綻が明白となり行き詰った、その結果外交政策の修正を余儀なくされている。

 ロシアとの和解、ギリシャ国境までの、ロシア・トルコ・ストリーム・ガス・パイプライン交渉再開。同時に、エルドアンは、ネタニヤフとも和解した。そして、最も重要なのは、エルドアンが、関係再開のためのプーチンの要求に応じて、トルコは、シリア国内での、ダーイシュや他のテロリストへの秘密支援や、トルコ国内での彼らの訓練、連中の石油の闇市場における販売などによる、アサド打倒の取り組みをやめることに同意したことだ。これはアメリカ政府にとって大きな地政学的敗北であるし、ギュレン運動にとってもトルコ国内の政治権力闘争での敗北を意味する。
 ギュレン運動によるクーデターは、権力闘争の敗北を前にして、暴発し、敗北を確定させた。
4)エルドアン、外交政策の転換を志向

 エルドアンがダウトール首相を首にして、忠実なビナリ・ユルドゥルムを首相に指名した2016年6月以来、エルドアンは政治的態度の転換を志向している。この転換に対しアメリカ政府は必ずしも承認を与えなかったのであろう、その表現として「クーデター」が起きたと考えるべきだろう。シリアに接するトルコ大統領エルドアンは、アメリカ政府のシリアでの反アサド戦略が現実的でないと判断し、修正を試みている。スホイ24撃墜に対しロシア政府へ謝罪し、さらには崩壊しないことが明かになったアサド政権を前提とした関係修復志向へと舵を切ろうとしているのである。

5)エルドアンは打倒されるか?

 今回のクーデターは、誰がアメリカの承認を得てトルコの政治的支配者になるのかという権力闘争である。現時点でみれば、エルドアンは打倒されないだろう。アメリカ政府はエルドアンを支持するしかない。エルドアンが、クーデターをギュレンによる企みだったと語った7月16日の早い段階で、ギュレンの敗北は決定した。このことは一時的には、ギュレンに対するエルドアンの勝利である。しかし、そのことはエルドアン政権が盤石になったことを意味しない。ISを利用しシリア・アサド政権を打倒するアメリカの戦略に応じ、中東の支配者になろうとしたトルコ・エルドアン政権の野望は破綻し、修正・転換を余儀なくされている。エルドアン政権にとっては、米国政府との調整もしなければならず、その前に自身しか政権を担う者はいないことをアメリカ政府に示さなくてはならない。

 CIAは面目丸潰れで、オバマとNATOは「民主的に選ばれたエルドアンを温かく抱擁して(原文通り!)」支持する以外になかった。エルドアン以外にいないし、エルドアンを排除すればトルコは混乱に陥る。したがって、誤魔化す以外になかったのである。

 民主的に選ばれたウクライナのヤヌーコヴィッチ大統領を、2014年2月に政権から追い払ったわけだから、「民主的に選ばれたエルドアン」という理屈は何の理由にもなっていない。CIAやネオコン連中が、キエフのマイダン広場でクーデターを実行した際、ヴィクトル・ヤヌーコヴィッチは「民主的に選ばれたウクライナ大統領」であることなど気にもかけなかった。

 エルドアンを支持せざるを得ないのは、トルコがNATO にどうしても必要だからだ。アメリカ政府は、その世界戦略上、特に中東での石油、そして今では天然ガスの流れを支配する上で、トルコを混乱に陥れるわけにはいかない。そのため、クーデターが失敗することが明白になった瞬間、オバマとネオコンの仲間が、“友人”エルドアンを「抱擁した」のである。(文責:林 信治)
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英、EU離脱! [世界の動き]

英、EU離脱!

1)6月24日、英のEU離脱を伝える

 6月24日午後、英国国民投票で、英国のEU 離脱が多数を占めたことを伝えている。離脱手続きに期間を要するので即日離脱ではないものの、英国民が離脱を選択したことに、世界の支配層、金融資本家は驚きを隠していない。
 金融資本や独占資本にとっては、市場が一部分断され投資効率が悪くなり、利益を得るには面倒になるので、離脱に反対していた。各国エリート層は皆反対していた。英国に進出した日立や、日産、トヨタも労働者に対して残留を訴えていた。

2)英国民はなぜ、離脱を選択したのか?

 英国も日本と同じで、新自由主義、経済のグローバル化=EU加盟で、格差が拡大し、中間層が没落し、地方の衰退が顕著だ。新自由主義は多くの国民を貧困化させる、その「真実」を現実の進行でもってやっと身に染みて知ったということだ。「自由」という言葉で、人々を麻痺させた。
 英国ではシティ・金融資本の支配、EU巨大資本の支配に対する怒りが相当広がっていたのだ。英国政府はこの怒りを軽く見ていた。堀田善衛によればEUの官僚の多くはかつての貴族が多数を占めているという。欧州巨大資本の代理人であるEU官僚に、英国民は我慢ならないのであり、離脱は英国民の反乱なのだ。
 英国はEUに加盟し、シティを含む英国資本は莫大な利益を得た。しかし、そのことは英国民の生活向上には決してつながらなかった。新自由主義の下で経済が拡大しても、1%が利益を享受するだけで99%は蚊帳の外に置かれる。さらに経済成長が低ければ、容赦なく切り下げられる。多くの英国民は、EU加盟がその原因と判断した。
 もとろん、EUから離脱すれば、労働者階級、中間層の収入が増えるわけではない。EU離脱によって外国資本の投資が減り、逃避も生じ、ある分野では経済活動は収縮するだろう。そのような場合、資本家は労働者階級、中間層に犠牲を押し付け、事態を乗り切る。したがって、英国民は厳しい現実が待っている。

3)同じだ!

 このような「事情」は、米国も同じで、新自由主義は地方の中間層、白人層を没落させ、格差拡大させ、人々の怒りを買い、大統領選でトランプやサンダースへの支持が広がったのだ。クリントンやブッシュなどの既存政治家は徹底的に嫌われた。米国民も、金融資本の支配、ネオコンによる世界のあらゆる地域で続く米軍による戦争にうんざりしているのだ。クリントンはネオコンやユダヤ資本とつながっている。もちろんトランプを選んだところで何も変わりはしない。
 このような事情は日本も同じなのだが、格差拡大する日本人は実におとなしく、怒ることも忘れている。かつてマッカーサーが「日本人は12歳の少年だ」とその「政治的な幼さ」を揶揄し利用したことがあったが、2016年現在もこの点は少しも変わっていないように見える。 (6月24日記)
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これからは、恐慌局面 [世界の動き]

これからは、恐慌局面

1) 波乱のスタート

 2016年は年初より、株式市場は波乱のスタートである。2015年8月の急落に続く大きなショックだ。今年に入って世界の株式時価総額は8兆ドルくらい減った。リーマン・ショックが起こった08年9月でも5兆ドルくらいだった。当時以上の株価下落が発生している。
 2015年末には、「新年は株価が順調に上昇する」との見方が支配的だった。新聞各紙の掲げた経営者の年頭の見通しを見れば明らかだ。しかし、その予想はいきなり外れた。プロの経営者の見通しは外れた。株価はいきなりの下落で始まった。しかもその後、乱高下が止まらない。
 株価下落の原因は、世界経済が変曲点を迎えたからである。2008サブプライム恐慌以降、大量の金融緩和により新興国を中心に世界経済は緩やかに上昇してきたが、大量の緩和はバブルを形成し、その破綻の局面を迎えている。日本だけ見れば、ゼロ成長であった分だけ、すなわち国内投資がきわめて低調であっただけ、日本経済はバブルに至っておらず、相対的に見れば健全である。しかし、日本経済はあくまで世界経済の一部であり、その結びつきはこれまで以上に一体化している。世界経済の変曲点は、日本経済をも支配する。

2)現局面に、どのようにして到達したのか?

 2009年以降、サブプライム恐慌からの回復過程における量的緩和の規模は極めて大きかった。資本主義は恐慌とバブルを繰り返しているが、恐慌からの脱出は必ず恐慌の規模以上の金融緩和によってなされる、すなわちより大きな恐慌を準備することによって恐慌から脱出しようとする。
 現在の金融混乱は、中国経済の減速、原油安が引き金になっている。大規模な金融緩和によって大量に余った資金は、中国経済の成長をあてにして大規模に投資された。2011年ころにはすでに減速しつつあったにも関わらず、あふれる資金は原油や資源開発に投資された。シェールオイル開発を加速させ、さらに多くの資金がつぎ込まれた。その結果、資源バブルがはじけたのは、実需の後退し始めた2011年ではなく、2015年8月であった。
 原油価格が急降下した。実際の原油需要は低下していたにも関わらず、4年間にわたって資金は開発投資され続けた。これを「バブル」という。これが資本主義である。
 バブルははじけて初めてバブルとなる。はじけないうちは投資しない資本は利益を上げる機会を失う。だから、はじけるまで誰もが競って投資する。そうして、爆発力を大きくした後ではじける。資本主義はこの資本主義的過剰生産恐慌から逃れることができないし、解決する力を持たない。あとから、「あれはバブルだった」、「資産を持たない者にサブプライムローンを組むのはおかしい」と誰もが指摘し批判する。しかし、事前に指摘し、投資行動をやめる者は一人としていない。「サブプライムローン」はあれほど批判されたたが、現在は、住宅ではなく車向けにすでに復活している。
 
 その結果が、原油価格の30ドルへの低下である。「原油価格の下落」という道筋を通って、金融危機が生まれかねない情勢となった。
 原油価格の下落は、産油国の政府財政を一挙に悪化させた。そのため、サウジアラビア通貨庁、カタール、クウエートなどの湾岸諸国が蓄積したオイルマネーを、世界株式市場、債券市場に投資してきたが、これを大量に一挙に引き上げ、政府赤字を補填している。そのことで、株価は乱高下し、金融市場は動揺している。オイルマネーが金融市場から引き上げるという「流れ」は、原油価格が上昇しない限り、続きそうだ。
 オイルマネーの動きを見て、あらゆる投資家のあいだで、運用リスクを避けるため投資の引き揚げ、手控えが広がった。これが「世界経済の減速化」をもたらした。

 原油価格の低下は、米国シェールオイル資本を直撃している。全体で100兆円規模とされる開発資金の大半は高利で調達しており、ハイイールド債などとして世界中の投資信託に組み入れられすでに世界中で販売されている。「サブプライムローン」と同じ仕組みだ。原油価格の下落により、シェールオイル資本が破綻すれば、大量の不良債権が生まれる。

 大量の緩和マネーが世界市場にあふれかえっており、何かのきっかけで過剰生産恐慌を引き起こす。どのような道筋を通って起きるか特定できないが、いくつもの可能性が横たわっている。「中国経済の減速」や「原油安」は、世界経済減速(=資本主義的過剰生産恐慌)の「原因」ではなく、あくまで一つのきっかけ、道筋に過ぎない。一つのきっかけを取り除いたら、別のきっかけが現れるだろう。小さな破綻が引き金となり、一斉に資金を引き揚げる事態に陥りかねない。2016年初から、世界の金融市場は、破綻の切迫に怯えている。

3)日銀のマイナス金利

 日銀の取るべき手段が、その選択肢が、いよいよなくなってきたということだ。
 市場が不安定になっている。しかし、中央銀行によって、これを押しとどめることができない局面に入っている。

 「今回の危機を回避するには、中国の減速や新興国の債務問題、とりわけ民間企業の債務問題の解決に目途がつけば」と言われ、また、「低水準な原油価格が上昇すれば危機は回避できる」といわれる。
 表面上の経済指標を追っかけていれば、そのような「希望的観測」が生まれるのは、いつものことだ。
 確かに、原油価格が上昇すれば、原油価格下落で破産する企業がなくなり、貸し付けている資金は不良債権にならず、貸し付けている金融機関、投資信託などを購入している投資家など、破産の危機は回避できるはず、と関係者が考えるのは「手に取るようにわかる」。
 しかし、同じ理屈で別のシナリオもあるはずだ。原油価格下落でシェールオイル資本が破産し、投資している世界中の金融機関や投資家が損を確定し、一部が破産すれば、直ちに原油価格は上昇し始める、とも言えるのだ。

 どちらになるか、誰もあらかじめ決めることができない。関係者の希望によって、あるいは中央銀行の金融政策によって決まらないのが、肝心なのである。
 資本主義の無政府性であり、資本主義は過剰生産恐慌を避けることができないという「真実」を、またしても確認せざるを得ないのである。
 (2016年3月7日記、文責:小林治郎吉)

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米大統領選、いつもと様相が違う! [世界の動き]

米大統領選、いつもと様相が違う!

1)一体、何が起きているのか?

 アメリカ大統領選挙が始まった。莫大な金を使い、人々を躍らせ騙し新しい支配者を選ぶ、壮大かつ愚かなショーが、いつものことだが一年近くも続くのか、うんざりだと、少しバカにして眺めていた。ただ、今回は様相が少しちがうのだ。

 共和党の「右派の良識ある三人の候補」、ジェブ・ブッシュ、マルコ・ルビオ、ジョン・ケーシックは、テッド・クルーズ候補の鋭い愚弄に突き刺され、ドナルド・トランプ候補の無秩序な罵倒に圧倒されている。その結果、ジェブ・ブッシュは、2月21日ネバダ州の代表戦のあと敗北を認め選挙戦を降りるところへ追い込まれた。この結果には驚いた。

Bernie Sanders.jpg
<民主党、バーニー・サンダース候補 >

 それ以上に驚いたのは、民主党代表選である。注目すべきは、民主社会主義者バーニー・サンダース上院議員が、予想以上の支持を集めていることだ。

 サンダース候補は、社会主義者と自称して大統領選を戦い、しかも支持を得ている。今までなら、集中的な「アカ」攻撃を受けつぶれていた。今回、本質的に「様相が違う」のはこのことだ。オバマさえ「社会主義者」、「アカ」と非難された。
 オバマは「チェンジ」といった。サンダースは「ポリティカル・レボリューション」と表現している。

 多数の小口の寄付者がサンダース候補を支持し、8年前のオバマ支持運動と似た様相を見せている。ただし、サンダース支持者らは「稀代の詐欺師」(ラルフ・ネーダー)であるオバマに裏切られた経験を持っている。

 「ヒラリー・クリントンはウォール街から大口の献金で操られたエスタブリッシュメント=支配階級だ」とサンダースは批判している。この批判は、正確であり見事に当たっている。クリントンは申し開きができない。
 クリントンは、イスラエル・ロビーと親しい。ネオコンとも親しく、彼らの危険な戦争を支持している。国務長官時代に何をしたか? ウクライナやシリアで代理戦争をしかけた。アメリカ政府内のネオコンと、クリントンは一体である。

 「全米エリートは、大統領選の今の展開にショック状態」なのだそうだ。本来ならば、ブッシュとクリントンの二者択一のはずだった。ところが、これまでのどの大統領選よりも予想もしない展開であり、劇的に「アウトサイダー」によってひっくり返された、という。

2)どうしてこんなことになったか?

2)-1、理由1:米国人が怒っているからだ!

 「米国人が怒っているからだ。最富裕層の所得が急激に増える一方で、賃金の中央帯は停滞したままだ。白人のキリスト教徒はマイノリティになった

 米国社会は、ウォール街とつながった少数のパワーエリートが支配しており、大多数の米国人が政治から排除されている現状に嫌気がさしており、エスタブリッシュメント(=支配階級)への怒りが溜まりに溜まっている。

 前回の大統領選でもその兆候は見えていた。アラスカのサラ・ペイリン知事が共和党の候補戦を混乱させ副大統領候補になった。地方に住む、白人層が支持した。この層はキリスト教右派支持層と重なり、堕胎反対、移民排斥を主張する共和党の支持者であった。地方に住む白人層は、ニューヨークなどの大都市の富裕層とは違って、貧困化し社会の発展から取り残されたと感じている。リーマンショックで破産し、家を失った人、没落した人も多数いる。

 共和党の支持層=地方の保守的な白人層、キリスト教右派の間に、米社会の富裕層、エリート層、ウォール街=支配階級に対する怒りが充満している。サラ・ペイリンはかつてその象徴だった。現在はトランプ候補やクルーズ候補が、この人々の怒りを背景に支持を集めている。
トランプ.jpg
<共和党、ドナルド・トランプ候補>

 トランプ候補は群衆を「魅了」し、2014年7月から世論調査で優位に立つ。トランプ候補もクルーズ候補も、一貫した経済学や経済政策を持ち合わせていない。論理の一貫しないけれども、目の前のエスタブリッシュメントたちを、罵倒、愚弄しまくったことで、疎外されたと感じている米国人の多くは「爽快感」を感じている。ただし、エリートに対する論理の一貫しない罵倒、愚弄は、いつどのように買収され収束するかわからない面をも併せ持つ。
 
2)-2、理由2:アメリカ民主主義制度の自己崩壊
 アメリカ大統領選は、莫大な金を使い、人々を躍らせ騙し新しい支配者を選ぶ、壮大かつ愚かなショーだ。金持ち、メディアを握る者、パワーエリートが操ってきた。この「やり方」をよく学び極端化させたのが、トランプやクルーズなのだ。マスメディアでの効果を狙い、大量の資金を投入し、これまでの大統領選挙でやってきたことの、そのまま発展、進化に他ならない。そのことを思い知らなければならない。

 目の前に展開している「罵倒」、「愚弄」にあふれた論戦、大統領選は、アメリカ民主主義のこれまでのやり方の帰結であり、発展である。米国の国民支配システムの「これまでの仕方、やり方」ににおいて、トランプとクルーズが「秀でている」からである。
 トランプ候補やクルーズ候補を批判して見せる保守本流は、自分たちがこれまでやってきたことの帰結であることを認識していない。
テッド・クルーズ.jpg
<共和党、テッド・クルーズ候補>

 この展開にショックを受ける者は、アメリカ民主主義がすでに形骸化し、富裕層、ウォール街、エリート層の操る政治にしてきた現実を、ただ認識していないに過ぎない。目の前に起きているのは、形骸化の頂点に達したアメリカ民主主義制度の自己崩壊、自己変質である。

2)-3、理由3:貧困化した民衆が増大するアメリカ社会

 この理由が、最も重要だ。

 民主党のサンダース候補は、30歳以下の若い世代から圧倒的な支持を得ている。富裕層が所得を急増させ続けている一方で、富豪の家族でない若者は、大学に行けば巨額の学資ローンを抱えなければならないのであり、高卒で働けば低賃金の仕事しかない。現代アメリカ社会は、何か災難にあえば、すなわちリーマンショックに遭遇したり、事故・病気になったりすれば、その先には破産が待ち受けている。希望がない社会である。
 アメリカ社会のこの深刻な変化こそが、サンダースを押し出しているものである。「アカ」攻撃の宣伝をされても、支持者たちは「何が悪いのか!」という態度なのだ。

 サンダース候補はクリントン候補を、ウォール街の代表者、富裕層の代表者、金融資本から大口献金を受けた候補者と批判している。まったくその通りであり、クリントン候補はこれまでと同じエリートの代表である。サンダース候補は、正面から批判し、人々の支持を集めているのである。
  
 内容は違うけれども、民主党でも共和党でも、エリート層に対する批判と怒りが集中している点では同じであり、いずれも貧困化、格差社会化した米社会に対する怒りと批判が、今回の予備選を支配している。

2)揺らぐ二大政党制の大統領選

 アメリカの二大政党制は、どちらの政党が大統領を出してもパワーエリートやウォール街による支配システムに変更がないように設計されており、そのように機能してきた。支配層の息のかかっていない候補を大統領選の前にあらかじめ排除するシステムである。
 候補者になるためには莫大な資金がいる、マスメディアにたたかれて放逐されないようにふるまわなければならない、・・・・様々な関門があって、「アウトサイダー」が大統領候補になるのを排除するシステムであり、これまで確実に排除してきた。

 少数政党も排除される。これまで、二大政党以外から大統領選に立候補したこともあったが、ことごとく失敗し、葬られた。ロス・ペローは1992年、無所属で出馬したが敗北した。

 エスタブリッシュメントやウォール街にとって、大口献金やマスメディアによるコントロール、人材供給により民主党、共和党を支配しておれば、だれが大統領になっても支配は揺るぐことはないと想定され設計されているシステムなのである。

 興味深いのは、サンダース候補は2015年民主党に加わり、トランプ候補は2009年に共和党に再入党したことだ。二大政党制をとるアメリカでは、アウトサイダーの政治家であってもいずれかの党に属し、党の大統領候補にならなければならない。

ヒラリー・クリントン.jpg
<民主党 ヒラリー・クリントン候補>

 二大政党制はエスタブリッシュの支配システムに過ぎないけれども、この制度のなかで闘ってはじめて闘いになるとサンダース候補は判断し、民主党の大統領候補になる道を選んだのだと推測される。現存の制度を「バカ」にして無行動に陥るのではなく、現存の制度のなかで可能性を探ったのではないか。

 オバマが大統領になっても、支配は何も変わらなかった。変わったのは皮膚の色だけだった。しかし8年前、オバマに小口献金し、支持し、オバマを大統領にしたのは大規模なアメリカ民衆の運動だった。オバマは民衆によって選出されたが、民衆の代表ではなかった。そのことは、大統領になった後に、判明し、だれもが認識した。選挙運動に参加した多くの人は、その裏切られた記憶、失望した経験を持つのである。

 今回の予備選では、エリート層に対する怒りが激しく、貧困化した民衆の反乱が米社会の広範に広がり、「アウトサイダー」が勝つ勢いなのだ。

3)時代が変わる?

 これまでもこのような候補はいた。ポピュリズムによるスリル満点の壮大な政治的なショーが繰り広げられながら、有権者がショーから覚め現実をしぶしぶ認識した時期にこういった候補者たちは姿を消していった。
 しかし、今年は現段階までは、そのショーから覚めないまま終盤まで続いている。共和党の主流派がオバマ大統領を批判した口実が広まったことによって、トランプ氏とクルーズ氏の大衆迎合的な考え方に力を貸してしまい、どう対処していいのか窮し、「自縄自縛」に陥っている。

 米国の支配層、富裕層、エリート層が、これまで民主主義をもてあそび巨額の金額を使った政治ショーに仕立て上げ、形骸化させ、自分の都合よいようにコントロールしてきたそのツケが、自身の支配システムをコントロールできなくしている。その光景を見るのは、少々痛快だ。笑ってしまう。
 
 そもそも虚偽であった「アメリカ民主主義」システムがとうとう死滅していく様、腐敗きわまる姿として、歴史にその姿を刻むということなのだろうか。これまでは騙されていたが、もはや「幻想」を抱く者はいなくなるのか。

 今回の大統領選には、エリート層、すなわち米国の支配階級に対する人々のかつてない怒りが満ちているように見える。
 オバマを選んだ民衆は騙されて、幻滅を経験させられた。サンダース候補の予備選がこの先、どのようになるか不明だ。また敗北するかもしれない。
 ただ言えることは、いくつもの敗北を重ね、裏切られ騙され、そのような政治的過程を繰り返して、時代が大きく変わる、変革が起きるということではないか。

 米大統領選に注目している。(2月22日記、文責:林 信治)


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迷走するサウジアラビアとトルコ [世界の動き]

中東の危機とは何か?
迷走するサウジアラビアとトルコ

1)危機をしかけるサウジ
コピー ~ ニムル師の処刑は中東を揺るがす.jpg
<ニムル師>

 年明け早々、中東で緊張が高まった。
 サウジ政府は、シーア派の有力指導者ニムル師を処刑した。ニムル師は自由選挙実施とシーア派住民の多い東部地域の分離を主張していた。東部地域はサウジの油田が集中する。ニムル師処刑に抗議したイラン民衆の行動は、サウジ大使館への放火となった。サウジ政府は放火を口実に、イランと国交を断交した。サウジに同調しバーレーン、スーダン、アラブ首長国連邦というアラブ同盟諸国は、テヘランとの外交チャンネルを断ち切った。

 サウジ政府は、シリア、イエメン両国における対立を中東全体の対立に転化させるところへ踏み出したことになる。処刑と同じ日、サウジ政府はイエメンとの停戦合意を一方的に破棄した(ロイター1月4日)。

 サウジの狙いは、中東地域の「緊張」を「危機」にまでエスカレートさせることであるのは間違いない。対立は、決してスンニ派シーア派の宗派対立ではない。逆である。宗派対立を利用し、政治的対立をつくり出している。

 この30数年、サウジに蓄積した莫大なオイルマネーは、サウジが中東の覇者となることを夢想させた。シリアやイラク、リビアにおけるISによる代理戦争は、サウジによる中東新秩序の確立過程でもあり、その構想は米国の中東支配戦略に沿っており、イスラエル、トルコとの利害も一致している。

 サウジが、同じくワッハーブ派原理主義イデオロギーを共有するISに資金を提供し、武器を与えてきたのは公然の秘密である。ISの武力による恐怖政治は、サウジ社会が目指すモデルでもある。自身の姿に似せて世界を作り替えようとしている。

 サウジアラビア支配層は、どうして中東を戦争の危機に陥れるところに迷い込んだのか?

 それは、ロシアによるシリアへの軍事介入がISを撃退しつつあり、ISを使ったシリア政権転覆が失敗しつつあるからだ。ロシアが、IS やダーイシュやヌスラ戦線などの武装集団を打ち負かして、これらテロ集団と外国政府、特にアンカラとリヤドの、スポンサーのつながりを暴露したためだ。サウジがこれまで資金を投じISを支援し実行してきたシリア解体策が破綻しつつあるので、意図的に「混乱」をつくりだすことで、シリア戦略の敗北を食い止めようとしている。しかしそれは危険な行為であり、重大な対立と戦争を呼び起こす。

コピー ~ 2015年9月4日、サウジのサルマン新国王とオバマ大統領.jpg
<2015年9月4日、サウジのサルマン新国王とオバマ大統領>
 
 現況は、サウジにとっても極めて危険である。
 石油価格の低下によって、歳入の90%を原油に依存する政府収入は激減した。2014年、1バレル110ドルだった原油価格は30ドルまで低下(1月15日)。財政赤字は2015年GDPの15%にまで膨れ上がった。サウジの軍事費は政府支出の25%にまで達している。イエメンにも軍事介入しており、軍事費は膨らむ一方である。IMF試算によると、原油価格と軍事費がこのままの水準で推移すれば、5年でサウジ政府資産は枯渇する。
 財政赤字に苦しむサウジは、水道、電気、ガソリン両機の大幅値上げ、さらには5%の付加価値税、たばこ・糖分飲料に対する悪行税など新税も導入する。独裁体制に対する国民の不満を財政的に優遇することで抑え込んできたが、そのような政治は困難になりつつある(日経1月12日)。資金調達のためか、サウジアラムコを上場する。

 アメリカのシェールオイル資本をつぶすためサウジは減産を拒否してきたが、2016年春からはイラン原油が市場に出回ってくる。原油安は当分続きそうであり、サウジにとっては時限爆弾を抱えたようなものだ。サウジアラビアは迷走しているというべきだろう。

2)血迷ったかエルドアン

 迷走しているのはトルコも同じだ
 トルコ・エルドアン大統領は、アメリカ支配層の好戦派、ネオコンにそそのかされ、ロシア機を撃墜してしまった。そのことで、トルコがISのスポンサーの一人であると告白してしまった。エルドアン政権は、なりふり構わずアメリカの中東戦略に加担することで中東における新たな地位を得ようとしている。

 トルコは空爆にさらされているシリアのIS がイラクに退避できるように、イラク政府の反対にも関わらずトルコ軍をイラクに進駐させた。そして、イラク―トルコ国境を通じてISの兵站戦を確保し、ISの資金源である盗掘石油を輸出できるようにした。イラクに拡大することで戦線を立て直そうとしているのだ。

 同時に、エルドアン政権はイラクと国境を接するトルコ東南部地域のクルド人に対する軍事作戦を実行し大量殺戮を行った。

 トルコ国内外から、トルコ政府に対し、トルコ南東部での“虐殺と大量殺戮”を止め、クルドの町や都市への包囲を解くこと、同時に、自国民に対し戦争をしかけているとする非難の声が上がっている。
 “We will not be a party to this crime(我々は断じてこの犯罪に加担しない)”というタイトルの声明をトルコの大学教官たちが発表し、89の大学から1,128名、海外から、ノーム・チョムスキーを含む355名が賛同している。
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< エルドアン大統領(左)、ノーム・チョムスキー(右)>

3)敗走するIS 、転換したシリア情勢

 シリアへのロシアの軍事介入の成功は、シリアを一時安定させ、テロリストによる乗っ取りから救った。ロシアの軍事介入は、二つのことをなし遂げた。第一は、武装勢力による代理戦争で政権転覆させ崩壊国家にする米国の世界戦略を頓挫させた。米戦略に加担している英、サウジ、トルコ、イスラエルらの目論見も頓挫したことになる。第二は、米、サウジアラビア、トルコとテロ集団ISとの関係が誰の目にも明らかにしたこと。

 シリアで戦闘しているのは外国から来た雇兵、兵器は外国製で、狙いも外国のためだ。「反政府勢力」ではないし、したがって「内戦」でもない。シリアの代理戦争は外部勢力による侵略である。少し前のデータだが、シリアで戦っている傭兵の41%はサウジアラビア人、19%がリビア人、シリア人は8%にすぎない。したがって、これらの勢力は、反政府勢力として内戦終結後の「シリア連合政府」のメンバーに入ることはない。

 米、英、サウジ、トルコ、イスラエルは、ロシアが主導し国連で提起したIS 爆撃と、「シリア連合政府」に反対している。連合政府に、自分たちが指示し利用してきたスラム武装勢力を入れるよう要求している。

4)なぜロシアは、シリア政府を支援しISを空爆しているのか? 

 「アラビアのロレンス」は、オスマン帝国崩壊を早め、の地を植民地にするために、英国がアラブの独立運動を支援を装ったその卑劣で詐欺的な戦略を体現した人物である。オスマン帝国がアラブを手放した後、英仏は約束を破り植民地として分割し支配した。ロレンスは英国の植民地支配を実行した一人物であり、詐欺的な手口で成功裏に植民地化を成し遂げた。「詐欺的行為」は英米では「英雄」として扱われ、現代でも「英雄」として描かれる。

 欧米の支配層は歴史的に何十年も、シリアを含む中東諸国が自主独立する軌道から引き剥がそうとしてきた。オスマン帝国の崩壊とともに分裂した中東は、当初、英仏などの植民地主義者連中に支配されていた。宗主国とのつながりを断ち切り独立を求める民族主義者たちは蜂起し同時にソ連の支援を求めた。しかし、どんなことをしても権力の座につこうとした連中は、概して米英仏の支援を求めた。このような歴史的経過と枠組は、形を変えて現在も残ってきた。

 現代ではロシアは、シリアと同じように、オセチアやウクライナで、米国好戦派、ネオコンがしかけた代理戦争に苦しみ、これを打開しなければならない立場に追い込まれている。オセチアやウクライナにおける代理戦争を止めるロシアの正当性は、国連の場で、国際法で擁護される。その立場は、ロシアに、シリアの政権転覆を狙った米、英、サウジ、トルコ、イスラエルなどによる武装勢力を使った不法な代理戦争を止めさせ、国連で、「シリア連合政府」構想を提起させている。

5)アメリカが率いる有志連合、無法ゆえ「有志」

 シリアにおけるアメリカが率いる対IS有志連合の行動は、基本的に違法だ。国連安全保障理事会も、シリア政府も、「有志連合」多国籍軍にシリア爆撃の許可を与えていない。したがって、シリアの主権はあけすけに侵害されている。

 国連安全保障理事会も経ずに、アメリカが主導して無法に武力を行使するために結成しているから「有志連合」なのである。現代アメリカによる代理戦争を利用した世界軍事戦略は、国連さえ無視した単独行動主義、「無法」な行動となっている。

6)代理戦争をリビアに拡大
 石油とIS、 アメリカ-NATOによる、リビア戦争が差し迫っている

 ロシアの空爆でIS がシリアから敗退しつつあるため、ISはリビアに第2の拠点をつくろうとしている。アメリカはこれを許容している。

 2011年、アメリカ率いるNATOとイスラム武装勢力LIFGの共同作戦より、カダフィを殺しリビアを荒廃させた。リビアは、紛争と混乱状態のままISによって脅かされ、リビアの石油は外国資本の略奪の対象になった。

 ISが、いくつかの主要油田や精油所への入り口であるリビアのスルトに足場を築き、リビア石油を狙って他の地域へと拡張している。ISとアメリカ政府、NATOとの共同した作戦である。狙いは、北アフリカ最大で、スルトとベンガジの中間にある“リビアの宝、マルサ・エル・ブレガの石油精油所”攻略であろう。ISのやり方は、油田を支配し盗掘し資金を得て武器を買い戦闘をしかけることだ。ISは、スルトを第2のラッカ(シリアのIS首都)にしようとしている。

 リビア当局が、アメリカが率いる爆撃作戦、あるいは地上作戦を拒否しているにもかかわらず、ISと戦うという口実で、約1,000人のイギリス特殊部隊を派兵する計画で、更に数千人のアメリカ、フランスとイタリアの戦闘部隊が加わる。アメリカが率いるNATO軍は、政府や安全保障理事会による承認なしに、リビアで違法に活動する。

 米英はISと戦うのではなく、ISを支援して、シリアとイラクで継続している活動を複製し、リビアにISの根拠地を作らせ、インフラや政府の標的を攻撃し崩壊国家にする作戦が開始されるはずだ。
 シリアでの代理戦争の敗北を、北アフリカ、リビアに拡大し挽回することを狙っている。

 アメリカの戦略は、「偽旗作戦」であり、サウジ、トルコ、イスラエルが荷担しているのだから、私たちは実態を正しく見破らなければならない。
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トルコによるロシア機撃墜の意味 [世界の動き]

トルコによるロシア機撃墜の意味

 エジプト・シュクリ外相は、11月25日、都内で日経新聞のインタビューに応じた。
 「イスラム過激派との戦いにおいて、資源を有するあらゆる国が努力しなければ相手を打ち負かせない」と述べ、「シリアへ軍事介入するロシアの役割は重要である」と、トルコなどを念頭に、テロ対策に協力的でない国に不満を表明するとともに、ロシアのIS空爆を明確に支持した。

 また、「ロシアの介入でシリア情勢がより複雑になる」との見解を退けた

 「イスラム国支配地域で産出する石油の違法取引がテロの資金源になっている」、  「誰が石油を購入しているのか、誰がテロリストの国境越えを許しているのかを考えなければならない」と、ISの資金源を支えている盗掘原油取引の問題を指摘した。「直接言及を避けながらも、トルコなどがテロ対策に十分協力していないことへの不満をにじませた。

 エジプト政府は、現実的にISの脅威を感じており、IS撃退への各国の包括的アプローチの重要性を述べ、「複雑に見える事態」に対する極めて冷静な判断を述べている。

 また、日経(11月26日)は、「トルコはISをシリアのアサド政権をたたくことに利用する思惑もあったとみられる」と述べ、トルコ政府が実質的にISを支援している事実を認めている。

 11月25日、ロシア外交筋は、トルコによるロシア機の撃墜は、偶発的事故ではなく「意図的な行為だった」と述べた。確かに偶発的事故ではない。

 そもそもロシア機Su-24撃墜に対するトルコ側の主張は最初から破綻している。ロシア側はSu-24がトルコ領空へ入ったことを否定しているが、仮にトルコ側が主張するコースをロシア軍機が飛行していたとしても、領空を侵犯したのは4~17秒秒程度。10回も警告する暇はないし、撃墜に正当性はない。
 ロシアの外相は計画的な撃墜だとしているが、その推測はおそらく正しいだろう。

1)トルコの主張
 
 トルコ政府は自軍のF-16戦闘機が撃墜したロシア軍のSu-24について、「トルコの領空へ向かっているので5分の間に南へ進路を変更するように緊急チャンネルで10回にわたって警告したが、ロシア軍機は1.36マイル(2.19キロメートル)の地点まで侵入、1.17マイル(1.88キロメートル)の距離を17秒にわたって飛行したので撃墜した」としている。

カタールの国策メディア、アル・ジャジーラが明らかにした撃墜時の飛行状況.jpeg (320x249).jpg
<カタールの国策メディア、アル・ジャジーラが明らかにした撃墜時の飛行状況>

 WikiLeaksなども指摘しているが、この数字が正しいならSu-24は時速398キロメートルで飛行していたことになる。この爆撃機の高空における最高速度は時速1,654キロメートル。飛行速度はあまりにも遅く、非現実的だが、もし最高速度に近いスピードで飛んでいたなら、4秒ほどで通り過ぎてしまう。4秒間に10回も警告はできない。いずれにしろ、トルコ政府の主張は最初から破綻している。まるまるトルコの主張を受け入れても、シリア領内で撃墜されたとしか考えられない。(この項、「櫻井ジャーナル」2015年11月25日より引用)

2)ロシアの主張

 ロシア政府はSu-24がトルコ領空を侵犯したとするトルコ側の主張を否定している。「ロシア軍機はISを攻撃してから帰還する途中で、トルコとの国境から1キロメートルの地点を高度6,000メートルで飛行し、国境侵犯はしていない。 ロシア軍機はトルコにとって何ら脅威を与える状況ではなく、逆に撃墜時にトルコのF-16はシリア領空を侵犯した」とも説明した。
 実際に、ロシア機にトルコを攻撃する意図がないのは明白である。トルコに対してなんら軍事的脅威になっていないのも、また明白である。

3)ロシア機撃墜は、偶発的事故ではない

 トルコはロシア機撃墜をいまだ謝罪していない。偶発的事故ならば、「謝罪」し事態の収拾をはかるはずだ。謝罪さえしない態度は、偶発的事故でないことを証明している。
 トルコ・エルドアン大統領の強硬な姿勢の背後には、アメリカ好戦派、ネオコンの支持があると推測される。トルコ一国でこのような強硬な態度をとれるものではない。トルコ政府が独自の判断でロシア軍のSu-24爆撃機を撃墜できるとは考え難く、少なくともアメリカ支配層の一部が承認、あるいは命令して実行された可能性が高い。

 航空機の領空侵犯はどの程度の問題か?  実際のところ、領空侵犯はむしろ頻発している。
 イスラエルは何度もシリア領空を侵犯している。トルコ機はここ数年頻繁にギリシャの領空を侵犯している。アメリカ軍機は、世界中の国々の領空を頻繁に侵犯している。今回の領空侵犯に対し、「即座に撃墜されても文句は言えない」とアメリカ・オバマは言明したが、その言葉は、アメリカ、イスラエル、およびトルコの行為にそのまま跳ね返ってくる。そのことに頬かむりした上で、トルコを支持し、事態を誤魔化すために、そのように言った。

4)トルコはISを利用しアサド政権打倒を画策してきた

 トルコが、ISなどの武装勢力を利用しアサド政権を倒そうとしていたことは明白だ。トルコはロシア空爆によって、トルコ政府が武器支援してきたシリアの反政府勢力、ISもふくめた武装反政府勢力が撃退されるのを、目のあたりにして焦っていた。
 この点からしても、トルコによるロシア機撃墜は偶発的事故ではなく、計画・準備されたものと言える。

 トルコはISを利用しアサド政権打倒を画策してきたが、それはアメリカ支配層の戦略と同調していた。

 撃墜されたSu-24パイロットを救いに来たロシア軍ヘリを、トルクメン人武装組織が対ヘリ戦車ミサイルで撃墜したその映像が何度も流れている。またパラシュートで脱出するパイロットを狙撃している。これらは明らかな国際法違反である。
 トルクメン人武装組織は、アルカイダ系ヌスラ戦線と共同してアサド政権に対する武装攻撃を続けてきた。トルコ政府の支持しているこの組織が、テロ組織であることを証明している。
 
 武器、対ヘリ戦車ミサイルはアメリカ製であって、アメリカ政府、トルコ政府が、この反政府武装組織に武器を支給していることも明白だ。このような行為は侵略である。

 アサド政権が、独裁政権であり気に入らないからと言って、他の政府が武装勢力に武器を供給するのは、明白な侵略行為であり、国際法違反だ。そのことは常識である。日米欧のマスメディアはそのことをまず批判しなければならない。

 例えば、サウジやカタール、クウエート、湾岸諸国は、シリア以上に人権が保障されない独裁国家である。あるいはイスラエルは反動国家、侵略国家である。だからといって、ある外国政府が、反政府勢力を支援し武器を供給し、それら政府の打倒を画策することなど、してはならない。

5)「フランスとロシアの協力を破壊する!」

 フランス・テロ事件により、オランド政権は地中海へ空母シャルル・ドゴールを派遣し、仏爆撃機がISへの空爆を開始した。ロシアとの協力がはじまった。フランスのIS 空爆への参加、ロシアとの協力は、アメリカにとって都合が悪い。アメリカが支援し利用してきたISが壊滅してしまう。

 トルコはNATO加盟国であり、仮に、ロシアとトルコが戦争になれば、NATO加盟国はトルコを支援し、ロシアに参戦しなければならない。フランスもNATO加盟国である。トルコによるロシア機撃墜は、情勢を混乱させ、フランス・ロシアの協力を破壊する意味がある。

 アメリカ支配層の戦略は、EUとロシアを対立させ双方の疲弊をはかることにある。

 現時点ですでに、EUにとってロシアとの関係悪化はメリットがない。天然ガスの大半はウクライナを通じてEUに送られている。安価で安定した供給体制ができている。またロシアはEUにとって重要な市場でもある。

 アメリカ支配層好戦派、ネオコンは、ウクライナの反ユダヤ主義者、ネオ・ナチなど反政府勢力に武器を供給し、ヤヌコビッチ政権を打倒した。ネオ・ナチが政権をとったウクライナは、ロシアに戦争を仕掛け、そのおかげでウクライナは、アメリカの言う事を聞くしかない財政の破綻した崩壊国家になってしまった。
 アメリカ支配層はウクライナ危機をつくりだし、ロシアとEUの関係を破壊しようとし、なかば成功した。

 ウクライナ危機の深化、ロシアとの更なる関係悪化は、EUにとってメリットはない。
 シリアが崩壊国家になることは大量の難民が押し寄せるのであり、EUにとって、メリットはない。
 
6)ISを利用したアサド打倒計画は破綻しつつある

 ISがこれまでの組織と違うもっとも大きな特徴は、豊富な資金源を持っている点にある。したがって、高価、高性能な武器を購入し、戦闘員に給料を払うことができるし、これまでの武装勢力とは比べものにならないくらい大規模な戦闘を仕掛けることができる。

 シリアの戦乱は外部勢力が、アサド大統領を排除し、自分たちに都合の良い傀儡政権を樹立しようとしたことが原因である。問題を解決する最善の方法はそうした勢力が内政干渉をやめることだ。そうすれば「空爆」などは必要ないのだが、外部から戦闘集団が送り込まれている状態で、もはや話し合い解決などは不可能な情況になっている。資金源の盗掘石油の販売を止め、兵站ラインを断つことこそ有効だが、アメリカ、トルコ、イスラエル側は、こっそりと石油の販売ルートをつくり、ISの兵站ラインを守ってきた。

 しかし、ロシアのIS空爆により、アメリカ、トルコ、サウジなどの「有志連合」によるISを利用したアサド打倒計画は、破綻しつつある。 アメリカ支配層が、手先として使ってきたアル・カイダ系のアル・ヌスラ/AQIやそこから派生したISを、ロシアが9月末から空爆で叩きはじめて計画が破綻しかけているのだ。

 ISは、力を大きく失いつつある。パリやチュニジアなどでテロが起きているのは、それがISのなしうる唯一の対応だからである。

 ロシアは、IS 司令部や武器庫への空爆から、盗掘している原油採掘所、製油所、輸送トラックへ爆撃し始めた。ISの資金源は盗掘原油であり、月約48億円にも上る。資金源を絶つことは当たり前のことだ。これまでアメリカが決してしようとしてこなかったことだ。

 ロシアの効果的な空爆に対し、アメリカのとりうる対応は何か?  「事態を混乱させる!」ことであろうか。
 その意味でも、トルコによるロシア機の撃墜は、アメリカの利益にかなっている。

7)ISが力を失っていくことによって、中東におけるアメリカの影響力は後退しつつある
 
 これまでのアメリカのIS空爆は何の効果もなかったことが暴露された。それどころか、ISを裏で支援してきたと疑われている。実際のところ、アメリカは武装勢力を利用し、代理戦争を仕かけ、崩壊国家をつくり出してきた。イラク、アフガン、リビア、ウクライナなどで実行してきた。崩壊国家をつくりだせば、圧倒的な軍事力を持つアメリカはその地域における支配力が強まる。アメリカ支配層のなかの好戦派、ネオコンの戦略である。
 したがって、ISが力を失っていくことによって、中東におけるアメリカの影響力は後退しつつある。

 この点からしても、アメリカの好戦派、ネオコンは、シリアでの失敗を誤魔化すため、事態を混乱させる必要があった。トルコ・エルドアンをそそのかし、ロシア機を撃墜させたと推測される。

8)ロシアの空爆、パリのテロ、トルコのロシア機撃墜、

 情勢は決して複雑化してはいない
 
 エジプト・シュクリ外相の言う通りである。
 
 これらによって、情勢は複雑化してはいない。日本のメディアや報道はすべてがすべて、アメリカ情報をそのまま流す。「多くのことが起きて、事態が複雑化し、わけが分からない、テロが恐い、米・ロシアどっちもどっち」という論調である。何も考える力がない、ジャーナリズムとしてまったく失格、役立たずであることを証明している。高橋和夫・放送大学教授はこう言っていた。「アメリカのいうことは9割信用できる。ロシアのいうことは1割」。
  
 アメリカ、サウジ、トルコらの「有志連合」は、国連を無視して、勝手にISやヌスラなどの反政府武装勢力、テロ組織に武器を供給し、代理戦争を仕かけ、自分が意のままに操れる崩壊国家をつくり出そうとしている。やっていることが国際法無視のあまりにも卑劣なことなので、国連ではなく「有志連合」を組織し、代理戦争を仕かけている。
 以前は、国連はアメリカの支配を貫く「道具」の役割を果たしてきたこともあるが、現在、アメリカをはじめ「有志連合」がシリアでやっていることは、これまでの国連の理念、国際法をさえも無視した無法行為であり、それを知っているから、国連さえ無視して、「有志連合」で単独行動をしているのである。 

 ロシアは、9月末に国連総会でプーチンが演説したように、国連の理念に基づいて、国際法を遵守し、テロ組織ISやヌスラ戦線の排除を提案し、シリア政府、イラン、イラク政府の了解を得たうえで、空爆している。さらに、そのうえでテロ組織を排除した後のシリア連合政府構想を提示している。
 
 「アメリカもロシアもどっちもどっち」などと言っている者は、事態をまったく理解していない者か、あるいは意図的にアメリカの無法をごまかそうとしている人だけである。

 日米同盟を重視する日本の支配層は、アメリカ支配層とその無法な世界支配に従っている。日本の支配層にきわめて近い、日本のジャーナリズム、学者は、アメリカと日本の支配層の言い分をそのまま繰り返している。

 さて、シリア・中東の事態は、決して複雑化していない。
 ロシアの軍事的介入、ISの兵站と資金源を断つ、トルコ国境の兵站線の封鎖、これらによるIS撃退、その後のシリア連合政府の樹立、この道筋以外に解決がないことが、この間の推移で、よりはっきりした。

 ISへの兵站線として、トルコ国境がほとんど開放されている状況に終止符を打たなければならない。シリアのトルコ国境近くの拠点を撃退すれば、IS の力は、確実に急速に、衰える。トルコに邪魔させてはならない。盗掘した原油の販売・購入をさせないこと、武器の搬入を止めるなら、ISの撃退は容易である。そのことに国際社会が合意し、協力することが、何よりも重要だ。

 アメリカ、サウジ、トルコらの「有志連合」は、ISを支持し、シリアを崩壊国家にすることをたくらんでいる。すなわち、各国の包括的アプローチの破壊を狙っている。それを許さないこと、が重要だ。
 今回のトルコによるロシア機撃墜もそのような意味を持っている。
 
 以上が、「トルコによるロシア機撃墜の意味」である。(文責:林 信治)



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8月の変調は何だったか? [世界の動き]

8月の変調は何だったか?

1) 国際経済の現局面、不安定な状態が続く

 米国の金融緩和の出口戦略=「利上げ」が近くなり、国際金融市場が動揺し、急拡大してきた新興国経済から資金引き揚げが続き、混乱が起きた。約10年ごとに恐慌を繰り返す資本主義経済の典型的なかつ一般的な「症状」であり、恐慌を避けることができない資本主義の根本的な欠陥を示して見せた。

 現局面は、中国を含む新興国経済が調整局面に入ったことで、世界経済全体で不安定な状態が続いている。新興国経済はこの先、破綻するのか、時間をかけてゆっくり回復するのか、不明ではある。おそらく、時間をかけた調整局面が続くのではないか。先進諸国経済の好況はまだ汲みつくされていない(=いまだバブルに至っていない)ので、世界経済全体が恐慌に陥る可能性は小さいと思われる。

 しかし、たとえ新興国経済がソフトランディングしたとしても、目の前の急激な恐慌を回避したに過ぎず、根本的な解決ではない。その分、回復まで長い時間を要するだけであるし、そのことは新たな好況=バブルを準備し、次の崩壊=恐慌を大きくするだけである。
  
2) 2008-09サブプライム恐慌の回復過程はどのように進んだか?

 米国、日本、EUの金融緩和=流動性の大量供給は、サブプライム恐慌時の流動性危機に対し大きな意味を持った。なりふり構わず国家が金融資本に公的資金を注入した。破産した国民一人一人は自己責任だから救わないが、金融資本は「大きくて潰せない」「潰れると影響が大きい」ので、救うのである。「百年に一度」の危機と称して、この無法を実施した。

 ただし、金融緩和の規模は途方もない。これを、米国、日本、EUが同期させて実施してきた。「百年に一度の危機」なら何でも許される!! FRBは崩壊したクレジット市場の補完を意図した信用緩和(credit easing)だけでなく、外需刺激のために大幅な長期金利引き下げ、それに伴うドル安を狙った大規模資産購入(large scale asset purchases)を実行した。

 米国、欧、日の金融緩和によって、資金が中国をはじめBRICS、東南アジア諸国などの新興国に流れ込み好況の膨張を助長した。新興国経済の急拡大、とりわけて中国経済の拡大がサブプライム恐慌からの回復を早め、その痛手を短期間で癒した。「百年に一度」の危機の落ち込みから急回復したのは、中国をはじめ新興国経済の急拡大のおかげである。

 もともとリーマンショック後、拡張的な財政・金融政策を採用する新興国が多かったが、その効果がFRBのアグレッシブな金融緩和の波及によって増幅された。その結果、新興国には大きなひずみを蓄積した。中東諸国をはじめ実質的なドルペッグ制をとる諸国も多く、減価するドルに対して自国通貨が大幅に上昇するのを避けるため、実体経済に比して極端に緩和的な金融環境を甘受した。これらの結果、2009年半ばから、ブームに沸く新興国を牽引役に、世界経済は回復を始めた。

 しかし、米国金融緩和の出口=利上げ時期が近づくと、先進国の金融緩和で大量に新興国に流れ込んだ資金の還流が始まり、新興国ブームの崩壊がもたらされる。現在は、この新興国バブルがゆっくりと崩壊しつつある調整局面である。その過程は「ゆっくりと」続いている。

 一言で言えば、米国はアグレッシブな金融緩和によって新興国バブルを作り出すことで外需を刺激し、住宅・クレジットバブル崩壊で低迷する内需を補い、立ち直っていったということである。こうしたバブル代替メカニズム(=より大きなバブルによって恐慌から回復する)によって世界経済に回復がもたらされた。

3) 世界経済の現局面

 膨張を続けた新興国バブルは2011年半ばにピークを打ち、崩壊過程に入るが、FRBが一連の量的緩和(QE)を続けていたため、急激な崩壊が避けられていた。他方、一連のQEは、シェールガス開発などの資源バブルを膨らませてきた。新興国バブルが崩壊過程に入った2011年に同時に、原油価格は急落しても不思議ではなかったが、一連のQEが生み出した過剰流動性が商品市場に流入し、2014年半ばまで高水準の原油価格が維持されたため、世界各地で資源開発に精を出し、開発バブルまで拡大したのである。現在の原油安・資源安は、中国をはじめとする新興国経済の悪化で需要が低迷しているだけではなく、資源バブルにつぎ込まれた過剰流動性によって過大な供給が生み出され、増幅されたバブルの一つがはじけたことを意味する。

 資源に投資した資本は、すでにいくつか損を確定している。シェールオイル開発に投資した日本の商社は、三菱商事、三井物産、住友商事など2015年期末期に大きな損を確定している。それは一例である。シェールオイル揮発や資源開発に投資した世界の資本のうちのいくつかは、投資を引き揚げ損を確定している。資本流出の大きな一つの流れである。

 米国はゼロ金利解除が可能な状況になり、FRBの利上げへの転換へと当面している。ところが、利上げが新興国からの資本流出圧力となり、急激な新興国バブルや資源バブルの崩壊に拍車をかけ、世界経済に影響を及ぼしかねない事態になっている。
 ただし、新興国バブルと資源バブルの残骸が世界中にあふれているが、現段階ではすべてが「露わ」になっているわけではない。

 「新興国のせい」という問題ではない。回復が急であった分だけ新興国に蓄積した「ひずみ」は大きく、2014年になって新興国経済を調整局面へと追い込み、2015年8月にその小さな嵐が来た。
これが、8月の世界経済後退の要因、背景を成すものである。

4)この先、どうなるか?

 世界経済は一体化がいっそう増しており、サブプライム恐慌からの脱出手段として米国、日本、EUの金融緩和=流動性の大量供給がいかに大きかったか、そのことを認めなければならない。すなわち、資本主義経済はこのような循環を避けられないのであり、したがって8月の世界経済後退をやり過ごすとしても、その過程自体がこれまでの大量の金融緩和、大量供給の上で、10月の中国の追加利下げ、12月の欧州金融緩和(予告)と続く際限ないマネー供給による回復であって、大量金融緩和の大きさに比例した、深い大きい次の恐慌を準備しているのであり、その爆発力を高めている。いずれ、2008のサブプラム恐慌の繰り返しは避けられない。8月の世界経済の変調は、そのことをあらためて証明してみせた。(文責:小林 治郎吉)

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ロシアによるIS空爆で、シリア情勢は大きく変わった [世界の動き]

 9月末から始まった、ロシアのIS攻撃は、シリアと中東の情勢を大きく変えてしまった。
 どのように変えたか、整理してみた。

1)成果を上げたロシアのシリアIS 攻撃

巡航ミサイル.jpg
 < ロシア国防省が公式サイトで公表した巡航ミサイル発射の映像(10月7日)=AP>

 9月末からロシアによるIS空爆は多大な成果を上げた。 
 シリア国内の選定した目標に対する最初の四日間の精密照準爆撃で、ロシアの戦闘機が発射したKh-29L空対地レーザー誘導ミサイルは、標的に、2メートルの精度で命中し、主要なIS司令センターや弾薬庫や、重要インフラを破壊することに成功した。ロシア国防省の写真入り公式報告によれば、Su-34爆撃機が重要なIS前哨基地である、アル-ラッカ州アル-タブカ近くのIS特別訓練キャンプと弾薬庫を攻撃した。“弾薬庫が爆発した結果、テロリスト訓練キャンプは完全に破壊された”とロシア国防省広報担当官は述べた。ロシアSu-25戦闘機は、シリア、イドリブの「イスラム国」訓練キャンプを攻撃し、爆発物ベルト製造作業所を破壊した。
 アルカイダ系列のアル・ヌスラ戦線等、他のテロ集団の主要前哨基地も攻撃したと発表した。

 空爆だけでなく、ロシアが巡航ミサイルを実戦で使用した。ロシア国防省によるとミサイルは約1,500キロメートル離れたカスピ海に展開している4隻の巡洋艦から計26発発射。11カ所の標的をすべて破壊した。
 ロシア軍は10月7日以降もシリア北部や中部での空爆を継続。9月30日の空爆開始からの8日間で112カ所の軍事関連施設を破壊したと発表した。
 ロシアの「イスラム国」空爆は相当な成果をもたらしている。

 「イスラム国」のほか、「アル・ヌスラ戦線」「ジェイシュ・アル・ヤルムーク」のなどのテロ組織の戦闘員3,000人以上が、シリア政府軍の攻撃とロシア空軍の空爆を恐れて、シリアからヨルダンへ逃げたと伝えられている。

 ロシアによるIS空爆は、アサド政権の要請によるものであり、国連事務総長と相談の上で実施した。巡航ミサイルによる攻撃を前に、ミサイルが通過するイラン、イラク政府に事前に了解を取り付けている。したがって、ロシアの行動は国際法を遵守する姿勢を見せている。

 イラク当局者らは、米軍による対イスラム国作戦に不満を募らせており、今後はロシアとの協力を強める考えを示している。ロシア、イラン、イラク、シリア4か国はIS 掃討のための情報を共有することでも合意した。今回の組織の立ち上げは、イラクで米国の影響力が低下しつつあることを示している。イランは地上戦部隊、精鋭部隊である革命防衛隊の派遣も決めた。ロシアに呼応し、イランは地上部隊を送ったと伝えられた。シリア政府軍は、反政府勢力が支配する第2の都市アレッポ攻略を開始した。アレッポはトルコ国境に近く、ISの兵站はトルコ国境に開かれている。アレッポを攻撃すればISの兵站を絶つことができる。
 トルコ国境近くの北西部シリアでのIS掃討が、今後の情勢を決めるだろう。

 「シリアで我々は国際法を尊重した戦いを展開しており、国連憲章に厳格に遵守して行動している。我々はシリアの合法的な政権から、テロとの闘いに対する公式的な支援要請を受け、これを受理した。」(キンシャク・ロシア駐シリア大使)

 昨年9月以来、アメリカはISを攻撃するとしてシリアを空爆したが、事前にシリア政府の要請があったわけでも国連の承認を得てのことでもなかった。独断で他国の領土を空爆した。これは国際法上、侵略である。
 その責任を回避するため、混乱の現実がアサド政権の責任であるとして、アサドの退陣を要求するとともに、反政府勢力に武器援助を行っている。そればかりか、米国特殊部隊の派遣も公言している。
 これは内政干渉であり、侵略であり、明確な国際法違反である。

2)ロシアの空爆の成果は、米国の空爆がアリバイであることを暴露した

 一方、ロシアの空爆によって、アメリカが過去1年半ほど「イスラム国」を空爆してきたとする行為は、真剣に行なわれていなかった事実が明白になった。「1年半で16,000回も空爆し、そのために5億ドル使った」(ファイナンシャル・タイムズ)とされる。わざと外して空爆してきたのではないか? というシリアやイラクの人たちの「疑念」は、疑念ではなく事実であることが、暴露されたのだ。

 また、米国がISの兵站を封鎖しないことにも疑いが深まっていた。ISの資金源の大半は、盗掘した原油の販売収入による(月約48億円)。この収入がなければISは戦闘を継続できない。盗掘原油は、エルドアン・トルコ大統領の息子が経営する会社に買い取られ、イスルラエル経由、またはARAMCO経由で販売されている。

 米国が、油田や輸送トラックを空爆すれば資金源を絶つことは容易にできた、あるいは販売を止めれば容易に資金源を絶つことができた。空爆よりももっと簡単である。しかし、米国は1年半以上も放置してきた。そもそもISを根絶する意思がないことが暴露された。(かつて米国は、イラン・モサディク政権が石油会社国有化したとき、販売を止めモサディク政権を苦境に陥れた。)
 
 ロシアの空爆は、このようなアメリカの空爆がアリバイづくりであったことをも暴露したし、同時にそもそもアメリカ政府はISを支援しており、ISはアメリカ政府の「駒」ではないかと疑う中東の人々の疑念が、ほぼ確信にかわったのである。
 
3)あわてた米国、影響力を失った

 「アサド政権」の打倒を最大の目的としているアメリカとイギリスは、「激しい怒り」をあらわにして、ロシアを非難している。しかし、その論拠が怪しいし、慌てぶりだけが目立つ。

 ロシアからのIS空爆協力呼びかけに対し、カーター米国防長官は10月7日、「ロシアが何を言おうと、我々はロシアと協力することには合意していない」と強調。かろうじて非難の根拠として「IS掃討をうたいながら、穏健派反政府勢力を空爆した」と述べた。
 カーター国防長官は、「穏健派勢力とはどの団体だ」と聞かれて、答えることができなかった。

 シリアやイラクでは、ISを操っているのはアメリカだと皆知っている。知らないのは欧米日の国民だけである。欧米日のマスメディアは米政府の宣伝をそのまま垂れ流し、嘘をついてきた。欧日政府も追従した。ロシアの空爆は、米日欧マスメディアの嘘、腐敗ぶりも暴露した。

 本当のことを暴露されて慌てている米国の姿が映し出された。カーター米国防長官の怒りは、真実を暴露されたことに発している。

 今問題となっているのは、穏健派反政府勢力? そんなものが存在するのか、という疑念である。

 シリアの「穏健派反政府勢力」=自由シリア軍は米国の軍事援助を受け入れており、アメリカ政府の「駒」になっている。しかも「自由シリア軍」の多くはISに合流しており、ISと自由シリア軍の区別さえつかなくなっている。米国の軍事支援は、ISに流れている。米政府機関DIAもその事実を認めている。

 ガーディアンは記事でこう報じている。「自由シリア軍の反政府派連中は、イスラム原理主義集団アル・ヌスラ戦線に寝返った
 
 実際ロシアは、ISを爆撃したが、アメリカ政府が怒っているのは自分たちが支援してきたISを爆撃したからである。ただ、その事実を、公に口に出して言えないのでカーター米国防長官はただ怒ってみせたのである。

 要するに、米国が慌てたのは、密かに支援してきた自分のテロリスト連中を、ロシアが空爆し、その効果を台無しにしたからだ。

4)ロシアの空爆とシリア連合政府の提案

 プーチン大統領は、9月29日国連演説で、「シリアの合法政府への支援、リビアにおける国家構造の再建、イラク新政府への支持、そして幅広い国際な反テロ連合の結成を呼びかけ、そこで国連の果たすべき役割」を述べた。プーチンは国連の理念にしたがってシリア問題に対処すべきだと提案した。

 ISは住民ではなく「外国から来た武装組織」であり、テロを繰り返している。ISによるシリア侵略であって、「内戦」ではない。ロシアはシリア合法政府アサド政権の依頼により、侵略者ISを掃討することを、国連の果たすべき役割、理念として主張している。この主張を、陰でこっそりISを支援してきたアメリカ、イギリス、イスラエル、サウジアラビア、トルコは、公に反論することはできない。

 プーチン大統領は、IS掃討だけでなく、「その後のシリア連合政府構想」を提示し、米国やサウジアラビア、トルコなど関係国と協力を呼びかけている。表向きこれらの諸国は断る口実はない。実際に、ISを利用している米国、トルコ、サウジであり、これらの後ろ盾、黒幕と交渉しなければ事態は解決しないことを、ロシアは知ったうえで提起している。
 ロシアの権威は高まった。

5)欧州は態度変更を迫られる

 これまでEUは、アメリカ政府のシリア・アサド政権退陣要求を支持し、反政府勢力を支援してきた。その結果、シリアからの大量の難民に苦しんでいる。EUに難民の洪水を解き放ったオバマ政権の狙いは、実に極悪非道である。EUは米国に追随したから、「しっぺ返し」を受けた。難民問題を通じてEUを衰退させようとするオバマの恐ろしい狙いを、遅ればせながら認識したのである。

 IS掃討と次のシリア政府構想だけが、難民問題を解決する唯一の方法であることを、EUは理解した。 したがって、EUはアメリカ政府に追随してきたその態度の変更を迫られており、ISを撃退した後のシリア政府構想についてのプーチンの現実的な提案に興味を示している。

6)シリアやイラクでロシア支持が広がる

 ロシア軍が攻撃しているISにしろ、アル・ヌスラにしろ、シリアの体制転覆を目的に雇われた戦闘員である。米国が武器支援し、サウジ、トルコ、湾岸諸国が資金を出している。

 シリアやイラクは、ISなどの武装勢力によるテロ、代理戦争に苦しんできた。ISは雇われた戦闘員が外国から来て攻撃しているのであり、住民は支持していない。「内戦」でさえない、内戦とは、国内の反政府勢力と政府間での戦争だが、ISは住民ではなく外部から来た武装勢力である。

 この「代理戦争」はアメリカ政府好戦派(=ネオコン)が、アフガン戦争以降、採用してきたやり方、やり口である。リビアでは成功した。NATOとIS・アルカイダ系武装組織が実際に協力し、カダフィ政権を倒した。リビアを崩壊国家にした後、資源を略奪し、人々を無権利状態に陥らせ、新自由主義が支配するのである。
 
  ***********
 
 ロシアの空爆を、シリア政府だけでなく、イラクやイランの政府、さらにクルド勢力も歓迎しているが、シリアの体制転覆を目指している国々=アメリカ、サウジ、トルコ、湾岸諸国は不快感を隠していない。

 ロシアのIS空爆は、不当な外部からの武力介入、武装攻撃の撃退であり、シリア政府、イラク政府だけでなく、シリアやイラク国内、さらには中東で広く支持を集めている。
 それと裏腹に、シリア国民、イラク国民は、アメリカを主とする連合軍のIS 空爆は「役に立たない」、ISの後ろ盾はアメリカだ、と明確に認識されつつある。

 アメリカ政府はこれまで「ISを空爆する」と表明してきたが、表向きの発言であり、実際のところ裏でISを支援し、シリアを内戦状態して崩壊国家にすることを目的にしてきた。

7)思いのほかシリア国民の支持が高い「アサド政権」

 ところでロシアは、「アサド政権」を支援し、政権の崩壊を防ぐ意志をはっきりさせている。「アサド政権」の打倒を目標にしているアメリカには絶対に許すことのできない暴挙として映る。このため欧米のメディアでは、国民を残虐に抑圧する独裁政権の「アサド政権」こそ、「イスラム国」のようなイスラム原理主義勢力が拡大した原因であり、国民の支持を完全に失った「アサド政権」の打倒こそ急務であるとのキャンペーンを展開している。

 ところが、「アサド政権」の国民の支持率が思っても見ないほど高い事実が次第に明らかになった。2012年、カタール政府は世論調査機関と契約し、「アサド政権」の支持率を調査した。その時の支持率は55%であった。

 2015年9月に英大手の世論調査機関『ギャロップ』が調査したところ、圧倒的に多数のシリア国民がアメリカこそ「イスラム国」を支援する敵であると認識している事実が明らかになった。調査したのは西側の商業機関であり、調査結果にアサド政権の「圧力」は及ばない。

 シリアから大量の難民が出国しているが、彼らはアサド政権を支持していない、あるいは拒否して出国しているのではない。 外国からの武装勢力が戦闘状態を作り出し生活できないから、止むを得ず逃れ出国しているのである。

 アサドが退陣するかどうかは、シリア国民が決めるべきである。アメリカやイギリスに、サウジや湾岸諸国に、決める権利はない。

8)イスラエルは?

 アラブ世界で、現在のところ、エルサレム解放を掲げているのは、イラン、シリアだけになっている。サウジや湾岸諸国はもはやそのつもりはない。イスラエルにとって、シリア・アサド政権を退陣させ、混乱した崩壊国家にするは、イスラエルによるアラブ侵略を推し進めることであり、脅威を取り除くことである。そのために、イスラエルはシリアの反政府武装勢力を支援している。

 イスラエル政府はアサド体制打倒を要求し、そればかりか倒すためならアル・カイダ系武装集団と手を組むと公言している。実際に負傷したアル・ヌスラ戦士がイスラエルの病院で治療されている写真が暴露された。

 イスラエルが、アサド政権打倒のため、米国、サウジやトルコ、湾岸諸国と協力している事実も明らかになった。「アラブ対イスラエル」の対立構造がすでに変化してしまったこともはっきりしたのである。(イスラエルは、2014年ウクライナ・ヤヌコビッチ政権を武力で打倒したネオナチ、反ユダヤ勢力を支持した。現代では、シオニズムも変質している。)

 ただイスラエルは、今回のロシアのIS空爆、特にカスピ海のロシア軍から発射された巡航ミサイルが、正確にISの司令部や武器庫を破壊したのを見た。もちろんこの巡航ミサイルはイスラエルにも届く(航続距離2,500km)。ロシア軍の武器の威力に恐怖したことだろう。

 10月18日、シリアの領空を侵犯しようとしたイスラエルの戦闘機をロシアの戦闘機が要撃、追い返したとイスラエルやレバノンで報道されている。国境を越えて侵入した場合は攻撃すると警告した。イスラエル軍はこれまでISなどシリアの体制転覆を目指す戦闘集団を助けるため、国境を越えシリア政府軍側に対する空爆を繰り返してきた。侵略を繰り返してきた。ロシア戦闘機は、そのような攻撃・侵略は許さないと警告したことになる。

 ロシアはこのような対応を、国連の理念に基づいて実行したと主張している。

9)今後?

 焦点は、トルコ国境地域の戦闘の推移にある。ロシアが空爆し、シリア政府軍がアレッポやラッカに向けて支配を拡大している。ISの本拠地ラッカ、ISの支配地域は、いずれもトルコ国境近くにある。
 ISや反政府武装勢力は、トルコ国境に拠点を置いている。なぜならば、トルコ国境は武装勢力にとって兵站線が開かれているからである。
 アレッポやラッカなどの地域の戦闘の推移、反政府勢力をトルコ国境からどれだけ切り離すかどうかが、今後の焦点になる。ISの力を削ぐには、兵站を閉じることである。

 ラッカを中心とするシリア東部のISは弱くなり、イラクに越境逃避するだろう。イラク政府はロシアと協力しイラクのIS 掃討をはかるだろう。イラク政府はすでにロシア軍の空爆支援を受けたいと公式に表明している。この時点で、シリアは内戦後の再建と政治協議の時期に入り、戦闘の中心はシリアからイラクに移るかもしれない。

 イラクでは議会が、ロシアにISISの拠点を空爆してもらうことを依頼する決議を10月中に可決することをめざしている。米軍司令官はイラクのアバディ首相に会い「ロシア露軍に支援を頼むなら、米軍はもうイラクを支援しない」と通告した。イラク軍の司令官は「役に立たない米軍の支援を受ける必要はもはやない」と断言している。

 いずれにせよ、シリア問題での中東におけるロシアの権威は高まっており、シリア問題解決に向けてロシアはアメリカ、サウジ、トルコ、イランを含めた会議を呼びかけている。それは国連の理念に従った線上での提案であり、各国とも拒否することはできないであろう。また、シリアは合法政府であるから、ISの力が破壊されれば、アメリカもイギリスもアサド退陣を要求できなくなるだろう。IS掃討後に、アサド政権も含め、シリア国民連合政府形成に参加する団体、組織が集まり、次のシリア政府を形成するプロセスが始まるだろう。
 そしてこの地におけるアメリカの権威は、大きく後退するだろう。 (文責:林信治)


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「南京大虐殺」資料が世界記憶遺産に [世界の動き]

「南京大虐殺」資料が世界記憶遺産に
登録されたことを真摯に受け止めるべきです

 
 10月9日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)は重要な歴史文書などを認定する世界記憶遺産に、中国が申請した旧日本軍による「南京大虐殺」に関する資料を登録したと発表しました。
 選考基準は真正性と世界的重要性の有無で、今まで「アンネの日記」やフランスの「人権宣言」など348件になるといいます。今回の登録では「シベリア抑留」(引き揚げ記録「無鶴への生還」)、等も採択されました。これで日本では「山本作兵衛炭鉱記録画」など、計5件となるようです。これらの決定に対し「シベリア抑留」などは歓迎するが、「南京大虐殺」については日中間で見解の相違、完全性や真正性で問題ありとして中国政府に抗議し、ユネスコに対しても政治利用されることがないようにと外務省の河村泰久外務報道官は改善を求めたと、報道されています。(10月10日 毎日新聞)
 「シベリア抑留」の被害体験は歓迎するが、「南京大虐殺」の加害事実については争うという態度です。

 これに先立ち、10月2日、菅官房長官は、「日中間の過去の一時期における負の遺産をいたずらに強調しようとする」と不満を述べていましたが、ついに10月13日には記者会見で、ユネスコに拠出金停止・削減などの対抗措置を検討し、事前に協議できない現状の登録制度の見直しを働きかける方針を固めたといいます。(10月14日 朝日新聞)

 これに対し、中国の華春莹副報道局長は、「公然の威嚇」であり、「国際社会は南京大虐殺が日本の軍国主義によって引き起こされた歴史的事実だと認識」「拠出金を停止しても、歴史の汚点を消し去ることはできない」と述べています。安倍政権の歴史認識に疑いを持っているからこその強調であることを理解すべきです。

 原爆ドームやアウシュビッツの世界遺産登録に反発し、アメリカやドイツが同様に「金は出さない」と表明したら、世界はどう思うでしょうか。今回の件は安倍政権が世界的に見ても歴史的に見ても、世界の歴史認識から大きくはずれた典型的な右翼政権になったことを国際社会に宣言したに等しい行為です。日本政府は公開していない大量の「南京大虐殺」の資料を一貫してかくして来ました。今こそ、それを公開し、事実に向き合うことを求めます。


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習主席の英国訪問、その意味 [世界の動き]

 習主席の英国訪問、何を意味するか?

 10月23日、習主席の英国訪問が終わった。

 今回の訪問で驚いたのは、英国の大歓迎ぶりだ。英国政府、キャメロン首相が、気を使っているのがよくわかった。習近平主席の宿泊場所はなんとバッキンガム宮殿であったのには、本当に驚いた。女王一家まで動員したのである。

 習主席、総額400億ポンド(7兆4000億円)の経済協力

 原子力や高速鉄道、エネルギー分野での経済協力案件をまとめた。航空機エンジン、クルーズ船でも大型契約をまとめた。
 このような規模の経済協力案件を取り結ぶことのできる国や経済は、中国以外どこにもない。

 経済が停滞する英国は、中国との関係拡大に活路を見出そうとしている。EUの他の金融市場に先駆けてロンドン市場で中国国債を扱う。
 英国は中国の経済拡大に参入しその恩恵を得ようとしている。それは、2015年3月に英国が、EUの中で真っ先にアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を表明したことにも表れているとおり、既定の路線であり、その方向はより確固たる方針、関係になりつつある。

 英国の対応は、ある意味では米国の意向を無視しているし、米国はこれを押しとどめることができなかった。米国の地位の低下も表している。
 日本の影は、それ以上に薄くなっている。(文責:林信治)

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中東からの難民がEUに殺到、シリアへの軍事介入をやめよ! [世界の動き]

シリアへの軍事介入をやめよ!
中東からの難民がEUに殺到

1)トルコ海岸に横たわる3歳児の遺体写真

 多くのフィリピンの友人がfacebookでトルコ海岸に横たわる3歳児の遺体の写真を載せていた。友人たちは「敏感」に反応していた。確かに注目すべき写真である。この写真が中東や北アフリカからEUへ向かう難民の「悲劇」の象徴として世界に配信され、難民問題が一挙にEUの社会問題になった。

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<トルコ海岸に打ち寄せられたシリア難民 3歳児の遺体>

 「銃弾や砲撃が飛び交う状態、戦火が何年も続くところにはもはや住めない」とインタビューで答えた難民の言葉は印象に残る。その通りなのだろう。シリア難民は今年だけで44万人、2011年以降だと408万人という。シリア難民を含む多くはトルコを通り、EU、特にドイツを目指している。殺到する難民があまりにも多いので、ギリシャやハンガリー、クロアチアなどの国境で混乱が続いている。

 1972年ベトナム戦争で、戦火の中を逃げ惑う裸の少女の写真が世界中に配信され、ベトナム戦争の意味を世界に伝えた。今回の3歳児の遺体写真は衝撃的ではあるが、その背景、意味は必ずしも理解されているわけではない。

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<トルコからギリシャに上陸したシリア難民父子>

2)どうして難民がEUに殺到するのか?

 難民が生まれる原因は明白。戦闘が続くシリアからの難民だ。さらには米国のイラク、アフガニスタン侵攻や「アラブの春」に乗じた武装勢力によって、リビアやイエメン、シリア、アフガニスタンなどはすでに崩壊国家と化している。中東への米国・EUの軍事介入、ISなどの武装勢力の破壊と殺戮が、難民殺到の原因である。
 難民の数が多いのは、これまでの「政治的難民」と異なり、「崩壊国家」からの逃亡難民だからである。したがって、流入する難民数が各国の難民対策の枠を大きく超えているのである。

 「違法」難民の問題に関しては今年4月にECIPS(情報政策安全保障欧州センター)がは、「アメリカ、イギリス、フランス、トルコ、イスラエル、サウジアラビア、カタールといった国々がアル・カイダ系武装集団やISを使い、リビアに続いてシリアを攻撃し、破壊と殺戮が続いているから」と主張した。

 ところが欧米政府やメディアはそうした警鐘を無視してきた。米国、イスラエルの中東政策、軍事介入に追随してきたEUは、難民殺到という形で、ある「しっぺ返し」を受けた。もちろん最大の被害者は国を逃げ出さなければならなくなった人たちである。

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<ギリシャに上陸したシリア難民、ギリシャ警察に押しとどめられる>

3)シリアのIS

 現在、イラクからシリアにかけての地域ではIS(イラクとレバントのイスラム首長国)が破壊と殺戮を続け、支配を広げている。ISはそもそも外部から来た「戦闘員」からなる組織であり、ほとんどの住民がISを支持していないし、ISはそもそもイスラム的でさえない。

 ISはシリア北部ラッカを首都とし、支配地域では一定の社会的機能が成立しており、事実上の政府、司法制度、消費者保護の仕組みまで備わっている。ただ「いつ、どういう理由で殺されるかわからない社会」であって、地域の住民たちは、不満をいう事を許されず、恐る恐る生きている。

 イスラムイデオロギー的見地から、きわめて不可解・奇異なのは、ISが聖地エルサレム奪還という目的には一切関知せず、イスラエルへの直接攻撃を避けていることである。(この項、重信メイ「ISIS支配の恐怖」文芸春秋4月号から引用)

 現在、イラクからシリアにかけての地域ではISが破壊と殺戮を続けている。彼等の目的のひとつがシリア・アサド政権を倒すことで、これは米のネオコン戦略、サウジの中東支配の目的に合致している。

4)ISはどこから生まれたか?

 ISはアル・カイダから派生している。そもそもアル・カイダは戦闘員の登録リストであり、戦闘集団を意味しない。ロビン・クック元英外相によると、「アル・カイダ」とは、CIAに雇われて訓練を受けた数千人におよぶ「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイルで、アラビア語で「データベース」の意味である
 オサマ・ビン・ラディンはサウジアラビアの富豪一族に属し、ソ連軍と戦う戦闘員を集める仕事をしていたとされ、また実際の戦闘や戦闘指導の経験はないと言われる。サウジ政府や富豪が武器や資金を提供して来たのは疑いのないことだ。
 サウジにはこれまでアメリカから購入した武器が大量に蓄積している。その一部が横流しされている。

 リビアへの軍事侵攻ではアル・カイダ系の戦闘集団LIFGとNATOとの同盟関係が明白になった。リビアでカダフィ体制を破壊した後、アル・カイダ系の戦闘員はシリアなどへ移動、武器も運ばれた。DIA(アメリカ軍の情報機関、2012年8月に作成した文書)によると、シリアにおける反乱の主力はサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIで、欧米、ペルシャ湾岸諸国、トルコの支援を受けているとしている。
 シリアではヌスラ戦線というアル・カイダ系の武装集団が活動しているが、この名称はAQIがシリアで活動するときに使っていた(DIA)。そのAQIは2004年に組織され、06年にAQIが中心になって編成されたのがISである。

 ISについてジョー・バイデン米副大統領は2014年10月2日にハーバード大学で次のように語った。
 ISの「問題を作り出したのは中東におけるアメリカの同盟国、すなわちトルコ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦」であり、その「同盟国」はシリアのアサド政権を倒すために多額の資金を供給、トルコのエルドアン大統領は多くの戦闘員がシリアへ越境攻撃することを許してISを強大化させた」。(この項、櫻井ジャーナルより引用)

5)ISはなぜかの地に誕生したのか?

 欧米社会から歓迎された「アラブの春」を機に、イスラム武装組織が介入し、既存の政府、支配者を倒し、武装勢力による破壊、殺戮、支配をつくりだしている。
 チュニジア、エジプト、リビア、シリア、イエメンといった国々は、権力の腐敗や汚職、強権的な統制といった問題はあったにせよ、医療、教育などの制度を持ち、地域内の秩序は保たれていた。女性の社会進出が比較的進んでいた。

 「アラブの春」の当初の立役者となったのは「より自由な社会を求めるリベラルな若者たち」だった。2008-9年サブプライム恐慌が、欧州の外注下請けとして前循環局面で成長発展したチュニジア経済を揺るがした。自由な社会を求めるリベラルな若者たちは、新興の市民、支配階級の一部でもあった。したがって、「アラブの春」は、サブプライム恐慌によって新たに生まれた社会経済関係の破壊、新興市民への打撃が引き起こしたともいえるのである。

 しかし、いざ革命が成就した後、あるいは途中から台頭してきたのは、イスラム国家樹立をめざすムスリム同胞団、IS、地方ごとの武装勢力などの組織であった。武装勢力を送り込んだ国々がある。直接手を下すのではなく、「代理戦争」による「崩壊国家」をつくることこそ、現代の新自由主義を拡大する手段の一つである。

 リビア、シリア、イエメンは「アラブの春」で外部から武装勢力が侵入しカオスとなり、現在は崩壊国家となっている。

 米国、イスラエルとサウジが、シリアのアサド政権を倒すと決め、反政府勢力に支援を始めた。ISがイラクとシリアで勢力を得ることができたのは、「アラブの春」の混乱に付け込み優勢な武力で侵攻したと同時に、米国の中東政策に乗じたからでもある。

 アサド政権が腐敗や汚職、強権的な政府だからといって、欧米諸国が反政府勢力に軍事援助し政権を倒す権利はない。内政干渉であり、侵略である。汚職や強権、独裁ならサウジや湾岸諸国の方が何倍もひどい。欧米諸国の言い分はダブルスタンダードである。

 シリアのアサド政権はイスラエルと対峙し、パレスチナ解放を掲げ続けていることが、米国に特別に「選ばれて」狙われている理由の一つである。

 シリアにはもともと反政府勢力が存在していたし、外国からの支援を拒否するグループもあった。しかし、反政府団体の寄り集まり組織「自由シリア軍」(FSA)は米国の軍事支援を受け入れたことで理念と正当性を失った。「自由シリア軍」はISと敵対関係にあるとされているが、地域ごとにリーダーが異なり、部隊ごとISに衣替えしたケースも少なくなく、その力は後退している。
 「自由シリア軍」はすでに、中東におけるアメリカの利用する政治的「駒」の一つに転化してしまった。
 ISも利用してきた駒の一つには違いないが、ISが勢力を増すにつれ、米国に利用されるだけにとどまらない面も出てきた。

 アサド政権を倒すために投入した資金や武器、車両などもISにわたっている。アメリカがイラク軍に供与した最新鋭の装備は、ISのモスル占拠で彼らの手に渡った。現在では、トルコからの物資搬入がISの兵站線になっている。

6)米国の軍事介入、サウジの覇権

 中東における宗派対立が本格的に泥沼化したのはアメリカが軍事介入した後であって、つい最近のことだ。イラクやアフガニスタンにおけるアメリカの占領統治は、「自由」を掲げながら、拷問やアグレイブ刑務所における捕虜虐待、あるいは占領地域の資源強奪を伴う。
 アメリカの軍事介入と占領統治では何も解決しないし、未来を約束しないことをアラブの人々に示して見せた。

 アメリカの軍事介入前は、アラブにスンニ派とシーア派には大きな隔たりはなかった。
 宗派対立を煽るのは、武力介入の口実として利用できるからだ。サウジや湾岸諸国も宗派対立を利用し軍事介入を狙っている。現在、宗派対立の尖兵になっているのがISである。彼らは異教徒のみならず、イスラム教の他宗派さえ認めず、排撃する。極めて排他的かつ攻撃的なテロ組織である。サウジと密接な関係にあり、サウジの尖兵でもある。

 誰が中東の新支配者になろうとしているか?
 カタールに本拠を置くアル・ジャジーラは、「アラブの春」の当初、カダフィ独裁反対、ムスリム同胞団や反政府過激組織を支持の報道をした。しかしそれは天然ガス産出国としてライバル関係にあったリビア・カダフィ政権を批判し打倒するためでもあった。メディアの責任は大きい。

 しかし、メディアの動向は、サウジやカタール、湾岸諸国がたまりにたまったオイルマネーを基に、現存の政権を打倒しアラブの支配者として登場しつつある政治的動きの反映であることを、見抜かなくてはならない。巨大なオイルマネーの蓄積は、その保有者にアラブ再編の意図を育ませた。封建的で独裁的な政治システムをもつサウジ、クウエート、湾岸諸国は、自分たちの姿に似せて、新たにアラブ世界をつくりかえようとしているのである。

 米国は財政危機もあり軍事侵攻の拡大には容易に動けない。サウジやクウエート、湾岸諸国は、現実的な力関係からすれば、「エルサレムの解放」を唱えなければ、すなわち米国やイスラエルの中東政策と直接対立しなければ、アラブで自由に振る舞えることを経験的に知った。今やアラブでは、「イスラエル対パレスチナ、アラブ」の対立は、後景に押しやられようとしている。

 ISと共闘していたシリアの反政府組織・スヌラ戦線の負傷した戦闘員がイスラエルで治療を受けている映像・写真が流れた。そのことで、この武装組織がイスラエルと緊密な関係にあることが暴露された。

 サウジやクウエート、湾岸諸国は、カダフィ政権を倒した現在、次はアラブ世界で対立するイラン・シリア・ヒズボラを倒し、支配権を握ろうとしている。イスラム原理主義、イスラム内のスンニ派・シーア派間の宗派対立を煽るのは武力侵攻の名目になる。武力でアラブ各地の政権を倒そうとするISは、サウジなどにとっては利用できる一つの手段、別働隊なのである。

 それはサウジ、湾岸諸国の描くアラブの新秩序プラン実現の為に働いている。欧米やイスラエルは、この新しい流れを自身の戦略に重ね、容認している。

7)ISを退治するにはどうしたらいいか!

 ISへの軍事的、経済的、人的支援を断ち切ること。
 これまで欧米社会は、「アサド政権を倒し、シリア内戦を解決する」ために反政府勢力に武器を提供してきた。これがまず大間違いだ。紛争の規模を拡大させ、難民を増やした。逆効果でしかない。

 ISが戦争を続けるためには武器や弾薬ばかりでなく食糧などあらゆる物資が絶対に必要となる。その兵站をシリアの前線へ運び込むルートをISはいくつか持っているが、中でも重要な兵站ラインがトルコからである。ISにとってトルコ・シリア国境は開放されている。
 ISは、支配地域の油田から採掘した原油をトルコを通じて売り、武器・食料調達などにあてている。

 最優先すべきなのは、ISへのカネ、武器、人的資源の供給を止めること、そのための政策手段を打ち出すことであるのは誰に目にも明らかだ。ISの力を削ぐには、兵站を止めればいい。
 しかし、米国、EU、サウジ、トルコはこれを放置している。ここでも責任は、米国、EU、トルコ、サウジにある。

 さらにそれ以上の問題が根底にある。
 中東はこれまで、アメリカとイスラエルによる軍事介入によって破壊され続けてきた。人々の希望は破壊され続けてきた。
 IS戦士になれば給与が支払われるとはいえ、 近隣のイスラム諸国からISへの志願兵が後を絶たないのはなぜか?
 豊かで平和なはずの欧米諸国からも若者がIS入りしようとするのはなぜか?
 社会を変革しようと志しているシリアやイラクの若者に、IS以外にアラブ社会の諸問題を解決する選択肢があることを示す人々の自発的自主的な政治運動が必要だ。

8)難民を生み出す、シリア、中東への軍事介入をやめよ!

 難民を生み出す最大の要因は戦争にある。現在、EUへ殺到している人びとも例外ではなく、直接的には2011年に始まったアメリカ/NATO、イスラエル、ペルシャ湾岸産油国によるリビア、シリア、イランに対する攻撃が原因である。
 シリアへの欧米の軍事介入を中止させること、ISの兵站戦を断ち切ること、これが何よりも重要だ。難民問題の解決でもある。           (文責:林信治)
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東アジアの安定と発展のためには、中国との経済関係を深める以外にない [世界の動き]

フィリピンはTPP不参加! 
 東アジアの安定と発展のためには、
中国との経済関係を深める以外にない

 
 1)フィリピンはTPP不参加を決定!

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<ドミンゴ貿易相、フィリピン TPP不参加 を表明>

 3月30日フィリピン・ドミンゴ貿易相が、これまでのTPP参加を転換し、TPP交渉には加わらない方針を表明した。2016年6月の大統領選挙までには、法整備が整わないことを理由にしている。
 その一方で、中国が提起する「東アジア地域包括的経済連携(以下:RCEP)」の交渉に参加する。ドミンゴ貿易相は、「RCEPはTPPより合意が容易だ」とし、2015年内妥結をめざし、RCEP優先の構えも見せた。さらに、中国への接近は、インフラ投資でも目立つ。アジアインフラ投資銀行(以下:AIIB)へも参加する。

 フィリピン・シンソン公共事業道路相は、「インフラ整備の需要は強く、世界銀行やアジア開発銀行(以下:ADB)や国際協力機構(JICA)ではすべてを満たせない」と発言し、AIIBを歓迎する意向を示し、交渉参加を決めた。
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<フィリピン・シンソン公共事業道路相>

 TPPはフィリピンの主権を侵害する。またIMF、世界銀行、アジア開発銀行の融資条件も厳しい。フィリピンがTPPから距離を置き中国との関係を模索する姿勢には、東アジアにおいて、現在も将来も中国の存在は無視できないという現実的に判断がある。中国との領有権問題を抱える半面、経済的結びつきを深めることで地域の安定と共存をはかる方向に踏み出した。現実的な判断であろう。

2)米国は地位を失いつつある

 米国政府はAIIBに参加しないよう各国に呼びかけたが、失敗した。
 世界銀行、IMF、ADBであれば相手国に融資するかわりに、欧米諸国が、政治的、経済的条件を課してきた。IMFが融資したギリシャには、年金減額、福祉・教育予算削減の厳しい条件をつけた。IMFのウクライナ支援は、公共料金値上げと緊縮財政が条件だった。
 AIIBが登場すれば、それらに替わる資金源となり、欧米の影響力は無視される。それゆえオバマ政権は、同盟国が参加を控えるのを熱望していた。

 AIIBの設立メンバーは、2015年2月までは、新興国中心だった。3月中旬、英国がアメリカの要望を無視して参加表明し、続いてドイツ、フランス、イタリア、オーストラリア、韓国が続いて参加を表明した。欧州各国がAIIBに加入したのは、中国と協力し利益を上げる機会を放棄したくないと判断したからである。その際に欧州各国は、米国の意向を無視した。日米とカナダだけが取り残された。米国は英国をはじめとする同盟国のAIIB参加を食い止めることが出来なかった。

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<3月20日、朴クネ大統領、習近平主席と会談し、AIIBに参加を表明>

 すでに誰もAIIBの構想を止めることはできない。このことは、米国の経済外交力の低下であり、国際金融システムは大きな転換点を迎えたと言っていい。米国の影響力の低下であり、ブレトンウッズ体制の崩壊の始まりである。

 元米財務長官ローレンス・サマーズ(ハーバード大学教授)は「AIIBは世界のリーダーとしての米国の地位に打撃を与える存在」と指摘し、AIIBが中国から誕生したことは「米国が世界経済の舵を取るリーダーとしての地位を失いつつあることを示す」とも論じた。
 サマーズは「中国のAIIB設立努力と、米国による同盟国説得失敗が重なった。ブレトンウッズ体制(第2次大戦後、国際通貨基金=IMFを設立するなど米国主導の金融秩序)確立以降、これほどの出来事はなかった」と断じている。

3)日本は、米国に気兼ねしAIIBに参加しなかった

 安倍首相は、第二次安倍内閣発足時に、アジア各国を歴訪し、現実を無視した中国包囲網を説いて回った。政治的アナクロニズムであり、どこもまともに取り合わなかった。しかし安倍政権はいまだその方針を取り続けている。その結果、韓国、中国との関係を改善することができないまま、いっそう米国への従属を深めつつある。中国が主導するAIIBに、欧州諸国が参加したにもかかわらず、日本は米国の意向に従い参加しなかった。このような安倍政権の国際関係、外交方針からすれば、米国の主導するTPPに参加し、戦時法制を準備し米国の主導する戦争に参戦する=「積極的平和主義」という名の、従属を深める道しか残らない。

 AIIBへの欧州各国の参加を事前に察知できなかった日本政府は、AIIBの統治や透明性を非難し、情勢見極めを誤った官僚の言い訳を繰り返している。しかしガバナンスや透明性についての非難は自身に帰ってくる。

 IMFや世界銀行などの既存の国際金融機関では、議決権配分や首脳人事で欧米が有利になっている。IMFへの新興国の出資比率増大はIMFCで決定したにもかかわらず、米議会の反対決議により頓挫している。この点では米国に非があり、言い訳ができない。アジア開発銀行総裁は、日本人が7代にわたって総裁を務めている。AIIBの統治や透明性を批判する日本政府の主張に根拠はなく、アジア諸国を含め各国は支持しない。

4)経済関係を深めることが地域の安定につながる

 中国の側からみると、中国経済の今後の発展にとって、海外への進出、次段階への中華経済圏の拡大が必要となっている。中国国内は「資金あまり」状態にあり、他方、東アジアはインフラ需要があるものの資金が不足している。アジアへのインフラ投資と中国経済の結びつきは、次段階の中国経済発展にとって必要不可欠なのである。

 そのことは、決して敵対することではない。ともにその発展に協力し合う関係、Win-Winの関係をつくりあげることが重要だ。

 5月13日、マレーシアのマハティール元首相は、「AIIBに日本も参加すべきだ」と強調した。マハティールは「米国の存在感が低下し、中国がアジアで主導的な役割を果たすようになった。アジア域内各国は様々な紛争を抱えるが、対立を乗り越えて協調すれば米欧を上回る存在になる。米国もこの現実を受け入れる時期が来ている」と冷静に述べた。
 ASEAN加盟国は、中国と南シナ海の領有権をめぐって紛争を抱えるが、AIIBの創設メンバーとして参加する。武力ではなく、中国との経済的な共存を探る中に解決があると、ASEAN首脳は判断したのである。

 中国がAIIB設立を提唱した背景には、アジアのインフラ資金需要が年間100兆円を超えており、世界銀行やアジア開発銀行が、アジアの資金需要にこたえきれていない現実がある。中国もASEAN諸国も、豊富な資金力と技術力を持つ日本がAIIBに参加すれば、アジア諸国の成長を後押しすると判断している。

5)安倍政権はアジアと友好を! 戦時法制の撤廃を!

 5月21日安倍首相は、アジア開発銀行(ADB)を中心に、13兆円の資金を投じると表明した。あくまで、米国と共同しAIIBに対抗する路線を表明した。
 実際には、韓国、中国を含むアジア諸国との関係を改善することができないまま、いっそう米国への従属を深めつつある。米国の主導するTPPに参加しさらに従属を深める道しか残らない。5月14日、安倍政権は戦後日本の安全保障政策の大転換となる安全保障法案の閣議決定を行なった。新防衛ガイドライン、「集団的自衛権の行使」など、実質的には米国とともに武力で支配権を拡大する路線=「積極的平和主義」ことにより傾斜することになる。安倍政権の米国依存への一層の傾斜、AIIB不参加と戦時法制整備は一体である。

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<4月6日、福田元首相は習近平主席と会談し、日本がAIIBに参加賛成を表明>

 このような安倍政権の路線は、アジアでも孤立と対立をさらに深め、日本を衰退に導く。
 フィリピンと日本の関係にも重大な影響を及ぼす。フィリピンの人たちは、戦時法制準備、歴史問題、慰安婦問題での中韓との対立、AIIBへの対抗などの安倍政権の路線を不安げに見つめている。
(文責:林 信治)
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安倍首相、4月29日米議会で演説の意味 [世界の動き]

安倍首相、4月29日米議会で演説の意味

1)安倍首相の米議会演説、記者会見

 安倍首相は米議会での演説で、「先の大戦に対する痛切な反省」、「アジア諸国民に苦しみを与えた」と表現したが、村山談話の表現である「侵略」、「過去の植民地支配」、「お詫び」の言葉を使わなかった。
 また、オバマ大統領との会談後の28日記者会見で、慰安婦問題について、安倍首相は「人身売買の犠牲になった筆舌しがたい思いをされた方々に非常に心が痛む」と言及し、「河野談話を継承し見直す考えはない」と発言した。

2)安倍首相の二枚舌
 
 安倍首相は、「侵略であったかどうかについては、いろんな学説がある」とこれまで何度も述べ、「侵略」という歴史評価を否定しようとしてきた。また河野談話を否認するために、慰安婦問題は強制連行だけの問題と決めつけたうえで、「慰安婦の強制連行はなかった」(2007安倍第一次内閣閣議決定)と公言してきた。
 国際的批判が浴びせられれば「村山談話」「河野談話」を継承すると言ってかわし、実際には両談話を否認する政治的実績を作り上げていくのが、政権成立以来一貫した安倍政治である。
 安倍首相の本心は、「村山談話」「河野談話」の否認にあり、歴史修正主義にある。そのためには平気で二枚舌を使うことは、誰もがよく知っている。だから韓国、中国政府のみならず米政府もそれぞれに、安倍政権に対し「不信」を抱いている。

3)安倍 「慰安婦の方々は人身売買の犠牲になり心が痛む」

 この「表現」こそ、訪米に際し慰安婦問題に言及する際に安倍政権が準備してきたものだ。4月中旬にもワシントンポスト紙のインタビューで安倍は同じ発言をした。「人身売買は業者が行ったのであり、当時の日本軍、日本政府に責任はない」とする主張が背後にある。安倍首相の考えとしては一貫しているわけだ。
 もちろん、慰安婦被害は決して連行時に限られはしない。慰安婦制度自体が犯罪であって、慰安婦制度を創設し利用した日本軍に責任があることは、被害者も、国連人権委員会でも、何度も指摘している。
 訪米前に、ジャパン・ハンドラーであるアーミテージ元国務副長官が、「(安倍首相の)発言(人身売買発言)は、慰安婦問題に対する強い声明であり、何よりも誠意がある」と論評した(4月中旬、日経)。安倍首相の訪米は、より踏み込んだ日米防衛協力の強化を第一の目的としており、慰安婦問題に対してはこの「表現」で様子を見るという合意が、あらかじめ米政府内の一部とあったのだろう。もちろん、ジャパン・ハンドラーだけがアメリカではない。

4)米議会前の抗議集会と日本TVの報道

 安倍首相が演説する米連邦議会議事堂前で、慰安婦被害・李容洙さん、マイク・ホンダ下院議員たちが、抗議集会を開き、「今日は安倍首相が謝罪すべき機会だ」と慰安婦問題の解決を訴えた。米国内の慰安婦問題の解決を訴える人たちの活動をあらためて知った。

 それ以上にあきれてしまったことがある。日本のTV各局は、李容洙さんを名前ではなく、「いわゆる従軍慰安婦被害を名乗る人」と報道した。各局とも「被害を認めているわけではない」立場に立っていると言いたいのだろう。またどの局も「抗議集会には韓国系米国人が集まった」と報道した。「慰安婦問題の解決を求めるのは韓国系米国人だけ」という勝手な判断を流している。しかしマイク・ホンダ議員は日系米人である。
 こういうところは、日本のマスメディアの本当にダメなところだ、安倍政権の意向を慮っての報道に成り下がっている。

5)戦後70年談話

 安倍首相の米議会演説について、中国・韓国政府は、さっそく批判する声明を出した。韓国外務省は植民地支配や慰安婦への謝罪に言及しなかったことを「極めて遺憾に思う」と批判し、中国外務省は村山談話にある「植民地支配と侵略」への「お詫び」に触れなかったと指摘し「談話」の継承を求めた。両国とも「戦後70年談話」まで様子をみるという態度を示している。
 おそらく8月に予定されている未来志向の「戦後70年談話」は、今回の演説と同様の表現になるのだろう。であれば、中国、韓国、アジア諸国との関係改善は一向に進展しない。

6)アジアで孤立する安倍政権

 安倍政権は、韓国、中国との関係を改善することができないまま、いっそう米国への従属を深めつつある。中国が主導するアジアインフラ投資銀行に、英国など欧州諸国が参加したにもかかわらず、日本は米国の意向に従い参加しなかった。このような安倍政権の国際関係、外交方針からすれば、米国の主導するTPPに参加しさらに従属を深める道しか残らない。
 他方、フィリピン政府は、3月30日TPP参加を見送り、中国が提起する「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」とアジアインフラ投資銀行(AIIB)への交渉参加を表明した。中国との領有権問題を抱える半面、経済の結びつきを強めつつある。
 慰安婦問題は人権の問題であるけれども、すでに外交、国際関係の問題になっている。安倍政権のかたくなな政治方針によって、日本がアジアでより一層孤立する方向へと歩んでいる。
 私たちは、慰安婦問題の解決を求める。米議会演説で安倍首相はその機会を逃した。70年談話で解決の決意、方向を示さなければ、日本は国際社会のなかで信頼を失うばかりか、孤立を深めることになる。それは日本国民にとっては大きな不幸でもある。

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トマ・ピケティ『21世紀の資本』の本物の毒は何か? [世界の動き]

 トマ・ピケティ『21世紀の資本』の毒

 
  
 トマ・ピケティの『21世紀の資本』が、世界中でよく売れている。ピケティ本人も来日し、NHKや新聞のインタビューに応じている。

 現代資本主義が不平等を拡大し、先進国などは格差社会に変容しており、社会の様相が大きく変化しつつある。税や相続の膨大な実証データを基に、「資本収益率(r)は経済成長率(g)を上回る」という結論を導き出したピケティの『21世紀の資本』は、多くの人々が格差に苦しんでいる事情から、格差社会の由来を説明していると受け入れられているようだ。『21世紀の資本』は、その問題意識の確かさ、膨大な統計データベースをもとに歴史的視野に立って資本主義の将来を見通そうと試みている面があり、極めて刺戟的だ。

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 1)トマ・ピケティ『21世紀の資本』の中心テーマ

 資本主義体制によって所得や富の不平等化が進めば、経済成長は今後どうなるか? 資本主義に未来はあるのか? と問うている。

 ピケティの目論見は、経済成長と所得分配の理論を統合しながら、分配の不平等の進行が経済成長にいかなる影響を及ぼすか、その論理を摘出することにある。そのために日本を含む主要国の資本ストック、産出量、所得分配、資本収益率、物価、相続遺産額などの200あまりの長期の年次データベースを作成した。

 2)資本・所得比率

 資本ストックと所得の比率を長期にわたって観測すると、例えばフランスや英国では18世紀から20世紀初頭までは、資本は所得の約7倍という安定して高い数値(=高搾取状態)が読み取れる。ところがこの資本・所得比率は、第一次世界大戦から第二次世界大戦後の「黄金時代」と呼ばれる1950年代までの約50年間に2か3倍程度に下落する。

 そしてその後、再び上昇しはじめ、21世紀の最初の10年で5倍近くに戻る。19世紀の「野蛮な資本主義」の時代とほぼ同じ水準に先祖返りしたことになる。

 1980年代に入ると、高額所得者の限界税率の引き下げ相続税の廃止や減税などによって金融資産を含む資本は再び増大過程に入る。資本・所得比率が高まれば、資本の収益率は低下するというのが経済の法則と言われてきた(クズネツォフの説)が、むしろ資本収益率は上昇し、労働所得のシェアは低下した。

 先進資本主義国の経済成長は総じて減速する中で、トップ高所得者層の所得シェア上昇が目立ち始める。膨大なデータから国ごとに高所得者のトップ1%。あるいは0.1%が全国民所得に占めるシェアを計算し、米国、英国、オーストラリア、ニュージーランドなどの英語圏では、80年代から所得と富の不平等化が進行していることを明らかにした。21世紀の経済は19世紀の「野蛮な資本主義」の時代に回帰したと、ピケティは論ずる。

 3)ピケティの政治的立場

 資本・所得比率が、第一次世界大戦から第二次世界大戦後の「黄金時代」と呼ばれる1950年代までの約50年間に2か3倍程度に低水準を示した理由を、ピケティは、戦争による物的資本の破壊、インフレによる金融資産の減価、国有化の進行による民間資本の減少、あるいは高額所得者の限界税率(最高税率)や相続税が高まったことが影響したと、説明している。

 明らかに、社会主義の存在が影響しているが、ピケティの政治的立場は、そのような説明を意識的に避けさせる。西ドイツの週35時間労働の実現は、隣に東ドイツがあったからであるのは明白だし、新自由主義が広がったのは、ソ連社会主義を解体させたのちであることも周知の事実である。ピケティは、触れない。
 こういうところはきわめて、政治的であり、非科学的である。
 あまりケチをつけないで先に進もう。

 4)資本主義に未来はない!

 資本主義は1%の富裕層以外の多くの人々に幸福な未来を約束しない。そして、資本主義には所得平等化をもたらすメカニズムは内包されていないと、刺戟的な結論を導き出すのである。これは決定的に重要な批判、結論だと思う。

 5)ピケティの処方箋、それは実現可能か?

 ピケティは、高すぎる金融業の資本収益率を低下させるためには、「グローバルな資本課税を強化すべきだ」という政策を提言する。しかし、「資本への課税は一国だけでは効果がない、国際的な政策協調がないと、課税逃避のため必ず資本流出が起こる」とし、その困難さにも触れている。

 彼の処方箋に現実性はないが、重要な点は、資本に対抗しうる存在は国家、または国家権力以外にないと、述べているところにある。
 資本には自身で解決する機能は内在していないので、国家が外から権力を持って取り締まるしか他に方法がないという結論の上で、処方箋を論じている。このこともまた極めて重要であろう。
 国家が資本主義を檻に入れて飼うことを提言しているに他ならない。民主主義という名の「檻」であり、「資本への累進課税」という「鞭」である。

 問題は、「グローバルな資本課税を強化すべき」国家が、金融資本の支配下にあるという現代の事態にある。それゆえ彼の処方箋は現実性を持たないのである。

 したがって、処方箋を現実的なものにするには、各国において同時に、1%の富裕層を排除した者たちが国家権力を握らなければならないということになる。もちろん彼は、そんな政治的変革の具体的な道筋までは検討していないし、言及していない。あるいは、意識的に触れていない。
 
 NHKや新聞のインタビュー、講演会での会場とのやり取りのなかでは、ピケティの本質的な提起には一切触れていなかった。しかし、ピケティの結論を突き詰めていけばこのような議論となるだろう。それが本質的な議論というものだ。
 マスメディアや学者が論じたがるそれ以外の細かい言及や指摘は、無駄話であり、おしゃべりだ。無視すればいい。  (文責:小林 治郎吉)



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ロシア経済危機とルーブル通貨危機の意味 [世界の動き]

1)プーチンのロシア


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 1)「プーチンのロシア」とは何か?

 石油や天然ガスの生産・輸出を、国家資本主義的に組織された自国資本が経営し、その収入で国家財政を確保し、国際金融資本の支配、新自由主義に対抗する現在のロシアのことである。

 西側の金融資本からすれば、「プーチンのロシア」では、自由にロシアの石油や天然ガスを支配し利益をあげることができず、はがゆいことこの上ない。

 プーチンの推し進める国家資本主義を解体し、新自由主義体制に転換し、石油や天然ガス、その他の資源を国際金融資本の手に入れたい。しかし、それがかなわない。したがって、たとえば、戦闘を状態をつくりだし、カダフィを殺害放逐しリビアの油田をリビア国民から奪い、西側金融資本の手に入れたように、「プーチンのロシア」を破壊したい。そのため、「プーチンの独裁」、「プーチンの帝国」と呼び非難し、最終的には「リビア化」する機会をねらっているのである。

 「ロシアを民主化する」というスローガンは、国際金融資本がロシアの石油や、天然ガス、その他の資源を自由に手に入れ支配する秩序をつくりだすことに他ならない。

 ゴルバチョフ、エリチン時代のロシアは、社会主義が解体され、自国の主権を奪われた時期であった。西側に騙され、従わざるを得なくなり、支配されてきた屈辱の時代であった。「プーチンのロシア」は、その時代に対する「批判と反省」から生まれたレジーム、システムであり、西側の金融資本の支配に対抗し今日の条件下で可能な自国の主権と利益を守るシステムである。

 実際のところ、プーチンのロシアは、グローバリゼイションと新自由主義、金融資本主義の支配に対抗し、存在し続けることを可能にしている。

 ほかの東ヨーロッパ諸国のいくつかの政府は、社会主義を解体した後、新自由主義の支配を受け、欧米の言いなりになっている。政府首脳は西側に買収されており、自国の資源や労働力を西側の金融資本に売り払うことで、自分たち支配層、富裕層の利益を得ているし、国家主権や国民の利益ではなく、自分たちの利益ばかりを考えている。

 グローバリゼイション、新自由主義の時代には国家主権は、強制によるのではなく、エスニックな民族主義に彩られたそれぞれの政府首脳によって「自発的」に欧米に売り渡されているのである。

 例えばポーランド、バルト三国、最近のウクライナ政府などは、政府首脳が自発的に、国家主権を売り渡す態度を取るにいたっている。2014年ウクライナ新政府が国内で戦闘を起こしたとき、ポーランド、バルト三国政府は、「自発的」に自国領内へのNATO軍の配備を要請した。そのことが欧米政府の要求であることを理解してるからであり、「金になる」からである。

 ロシアもいったんはこのような状態に陥ったものの、そこから抜け出した。それは資源輸出による収入を国家に集め再分配し、国家主権を取り戻したのである。プーチンのシステム、レジームによって可能になった。プーチンの功績である。

2)ロシアはなぜ米国支配を批判できるのか?

 化学兵器使用を理由にした米国によるシリアへの軍事介入に対し、国連の安保理事会で公然と反対したのはロシアと中国であった。ロシアはシリアに化学兵器破棄を約束させ、介入の理由を消し、米国による軍事介入をやめさせた。冷静で理性的な対応であった。

 ロシアはイスラエルによるガザ攻撃への批判も公然と表明した。ロシアはウクライナへの米国による軍事介入に対しても、断固たる態度を取り、米国の傀儡であるウクライナ政府に対し、停戦を一貫して主張し、冷静に対応した。

 EUや日本は、ウクライナでナチや右派勢力を中心に米国が支援したクーデターが行われたこと、新たに成立したウクライナ政府が自国のロシア系住民に対する一方的な軍事攻撃を行い、住民を殺害し、社会的混乱が広がっている事実を、米国の意向を考慮し、あえて無視する態度をとり、そうしておいて、米国に呼応してロシア経済制裁に参加した。

 EU、フランスやドイツ、日本は、米国の世界支配に従っていると言える。
 フランス最大の銀行、PNPパリバは、米国が勝手に始めたイラン制裁に反して交易したことを理由に、米国政府から90億ドル(約1兆円)もの制裁金を課せられたが、2014年6月30日、何の文句も言わずに支払った。米国政府が勝手に決めたイラン制裁であって、フランスは何も関与していない。しかし、米国に反論もできずに従ったのである。

 ロシアは米国支配を堂々と批判する数少ない政府である。現代世界において、そのことが可能な、国家主権を主張しうる基盤を確立し、現在の国際的地位を築いている。
 国家主権を持っていながら、主張さえせず、すすんで米国に従っている日本政府とよく比べてみたらいい。

3)ロシアの弱点

 現代世界において、プーチンのロシア国家資本主義が、グローバリゼイションと新自由主義、金融資本主義の支配に対抗しうる一つのプランとして眼の前にある、このことは確かである。

 ほかに似た例を挙げてみよう。
 ベネズエラのチャベスとその後継のマドゥロ政権は、米国の国際政策、外交政策を公然と批判し続けている。それが可能なのは、人々の支持を基盤とし国家権力を掌握したうえで、ロシアと同じく豊富な石油収入を国家に集め人々に分配する国家資本主義システムを確立し、なおかつ石油輸出することで中南米諸国との経済関係、協業・分業関係を取り結び、その関係の上で機能しているからである。

 事情はロシアとよく似ている。
 ロシア経済は、資源を輸出することで成り立っている。しかし、資源輸出を永久に継続することは難しい。資源を輸出し外貨を稼いでいる間に、自国産業を確立し資本を蓄積し、欧米先進国の産業に対抗しうる存在となり、国際金融資本の支配をはねつけるより確実な力を身に着けなければならない。そのような過渡期にある。

 この点はロシアの弱点である。石油や天然ガスだけでなく、産業を起こし国際的競争力を獲得し、輸出を多角化しなければ、この弱点は最終的に解消しない。世界経済循環の恐慌局面が訪れるたびに、先進資本主義諸国の金融資本が、ロシアを含む新興国の資源開発投資から自己の資本を引き上げるので、もっぱら「外的要因」によって重大な景気後退、経済危機に瀕することになる。

 今回の石油価格の下落は、このロシアの弱点を狙い撃ちした格好になった。

4)今回のロシアの危機

 今回の石油価格の暴落はロシアとベネズエラに大きな打撃を与えている。

 2014年6月以来、国際石油価格が大幅下落したのを目の当たりにしながら、サウジは減産を拒んだ。相場を反転させようとはしなかった。その背景には世界的な需要減退による石油価格の低迷があり、必ずしもサウジの謀略だけで事態が動いているわけではない。

 11月27日のOPEC総会でサウジは、減産見送りの音頭を取った。その結果、過去2年間、1バレル=105─110ドル前後で安定していた北海ブレント油は、6月の112ドルから60ドル以下にまで下がった。ベネズエラのマドゥロ大統領は10月、「米国とその同盟諸国が石油価格の下落を望むのはなぜだろう、ロシアを痛めつけるためだ」と発言した。マドゥロ大統領は、ロシアだけではなく、ベネズエラもと言いたかったのだろう。

 サウジの狙いは、ロシアだけではなく、シリアの内戦においてロシアとともにアサド政権を支えるイランを罰することにもあるだろう。イランも石油収入があるから、米国支配に唯々諾々と従わない。
 さらには、米国のシェールガス・オイル開発に打撃を与える狙いもあるだろう。米シェールガス・オイル開発事業には、「低格付け債」など高利の借入をしている企業も多く、これに打撃を与え、低下しているサウジ、OPECのシェアを回復する狙いもあるだろう。サウジの生産コストは1バレル=10ドル程度であるから、耐えることはできる。

 もっとも、今回の石油価格の下落、経済危機はサウジの「狙い」だけで生まれたものではない。むしろ、1)シェールオイル・ガスの増産、2)金融緩和によって原油先物価格の上昇が先導したてきたが、米国緩和終了により、先物価格が下落したこと、3)世界景気の停滞、とくに中国経済の低成長へのシフトにより世界需要が減った、などによるものである。

 ロシア・ルーブルは下落し続けている。ロシア中銀は12月15日、政策金利を17%に引き上げた。政策金利17%とは、通常の企業活動はできず、ほとんど経済危機に等しい。どうなるのか。ロシア企業にとっては、先行きの不透明感が強まり、資金調達が難しくなる。
 ルーブルの下落は、通貨危機をも引き起こしている。
 他方、ウクライナ危機を口実としたロシア経済制裁を、欧米はそう簡単には解除しないだろう。

 2014年と15年のロシアからの資本流出は1,000億ドルを大幅に上回ると指摘されている。ロシア政府は、資本規制は導入しないと繰り返し宣言しているが、流出を防ぐために資本規制が不可避となる可能性がある。ロシア中銀は金・外貨準備を引き出してルーブルを買い支えてきたが、効果はなかった。それもどれくらい続けられるかわからない。ロシアの外貨準備高は、2014年初頭には5,090億ドルを超えていたが、今では4,160億ドルに減っているものの、その額だけみればまだ相当な額であり、余裕はあるように見える。これを大きく減らす前に、石油価格の下落が止まり、ルーブルの下落が止まることを祈るばかりだ。

 金利の上昇で成長がさらに鈍化し、来年は、マイナス成長を避けられない。来年だけではなく、2,3年は経済危機の影響は残り、経済低迷の時期は続くだろう。石油価格が上昇に転じなければこの状態は最終的には解決しない。したがって、ロシアの危機的状態は、石油価格が上昇に転じるまで当分続くということだ。

 石油価格の下落を通じて、ロシア、ベネズエラ、イランが債務危機を引き起こし、破綻に至るならば、そのあとで惨事便乗型資本主義、すなわち新自由主義が支配していく機会をつくり出すことになる。今回は、そこまでは進まないと思われる。
 ただ、このような機会を通じて世界の金融資本は、金融資本主義、新自由主義の世界秩序に従わないロシアやベネズエラ、イランなどの国家主権の基盤の破壊を狙っているのは確かであろう。
 
 これらの事態は、ロシア等が中長期的には中国やBRICS諸国とより結びつくことを志向させるだろうし、すでにその方向に踏み出している。

12月18日追記
5)ウオール・ストリート・ジャーナルの見当違い

5)-1: ロシアが軍事的対立を激化させることはない

 12月17日ウオール・ストリート・ジャーナルは、「今回のロシア経済危機、ルーブル通貨危機によって、ウクライナに対するロシアの軍事的攻勢が強まり軍事的対立が激化する」とし、「プーチンがウクライナに対して好戦的態度をとり、EUに圧力をかけ、西側諸国から譲歩を引き出す」とも書いている。
 
 しかし、そのようなことはありえない。ロシアから軍事的対立を激化させることはない。なぜなら、軍事対立の激化はロシアにとって極めて危険な危機を到来させるからである。同じ意味からして西側への圧力にもなるはずがない。
 
 そもそも、ウクライナ問題は、ウクライナの右派勢力、ナチ勢力がネオコン、米国政府の後押しを受けてクーデターを起こし、ウクライナ新政府が東部ロシア地域に、一方的に軍事攻撃を開始したことから始まっている。ウクライナが半戦争状態になれば、惨事に便乗してNATO軍のウクライナ配備が可能となり、新自由主義が支配するウクライナに変えることができる。ウクライナ新政府は、EU、NATO加盟を望んでいる。NATOがミサイル群をウクライナのロシア国境に配備すれば、モスクワは無防備状態になるのであり、ロシアの軍事力、ミサイル網の大部分を無化にできる。

 したがって、ロシアにとってはそのような事態への進展をゆるさないためには、戦闘状態の終結が何よりも重要なのである。戦闘を仕かけてきたウクライナであっても、経済関係を強化し、相互互恵的関係をつくり上げることは、現時点においてもロシアの安全保障にとって必要なのである。

 実際のところ、プーチンは停戦を一貫して主張し、呼びかけ、実現してきた。また、ウクライナとの経済協力関係の拡大を提案してきた。

 戦争を煽ってきたのは、ロシアではなくウクライナ新政府であり、NATOであり、欧米政府である。
 したがって、ロシアから戦闘状態をつくり出すことはありえないが、仮にロシアが戦闘状態をつくったとしても、EUや米に対し、譲歩をひき出すことにはならない。NATOの軍事的介入の口実を与えるだけである。

 ウクライナ政府が停戦を受け入れたのは、直接的には、ウクライナ軍の装備が極めて古く、兵士の士気も低く、ウクライナ軍がロシア系住民の義勇兵に簡単に敗北したからであり、軍事的にも財政的にも戦闘を続ける力がなかったからである。戦闘継続は、国家破綻を意味した。12月19日ウクライナは、米格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)によって「CCCマイナス」に格下げされている。

 現時点においては、停戦がほぼ成立しつつあるが、決して安定的な関係ができているわけではない。ウクライナはすでに国家財政は破綻しており、軍事費を準備する余裕はない。にもかかわらず、ポロシェンコ大統領は、米国にそそのかされ対東部地域、対ロシアに対する戦争準備のための軍事力強化方針をいまだおろしていない。
 
 停戦であろうが、戦闘が再び始まろうが、米政府とEUは、ロシアへの経済制裁は、制裁の期限である一年は間は、解除しないだろう。一年後どうするかは、いまだ決定しておらず、その時の情況によって決まるだろう。

5)-2: ガス供給は相互互恵関係の基礎

 「ロシアが欧州に対し、供給している天然ガスを止めると脅す」可能性をウオール・ストリート・ジャーナル(12月17日)が指摘しているが、これもひどい見当違いである。

 ソ連時代に欧州へ天然ガスを供給しはじめたことによって、欧州―ロシア間には密接な相互依存関係がつくりだされた。天然ガス供給は単にエネルギー供給にとどまらず、永続的な友好関係、相互互恵関係をすでに形成している。パイプラインが破壊されるような戦争、戦闘行為は、EUもロシアも反対するであろうし、そのような事態が起こさない「合意」がすでに成立している。ロシアへの経済制裁は、ドイツとEUにとっても経済の停滞という影響をもたらしたのである。 

 ロシアが天然ガスを止めるならば、「EUに対する脅し」となる以上に、ロシアにとって大きな損失となる。天然ガスは現在のロシアにとって貴重な外貨収入源であるし、ガス供給のためにすでに莫大な資本を投じてパイプラインを敷設してもいる。ロシアは、欧州景気減速による天然ガス輸出確保のために、販路拡大を求めて中国、日本と既に交渉をはじめていたばかりである。

 欧州への天然ガス供給をいったん供給を止めたなら、例えば米国のシェールガスに一部に取って替えられ、ロシアの天然ガスはその販売先とシェアを失い、ロシアは莫大な損失を負うことになる。

 しかも現在のロシアは、石油価格の下落によって外貨収入を失っており、天然ガスを止めるなら、さらに貴重な外貨収入を失うことになるのであり、そのような選択肢は到底、ありえないからである。

 EUとロシアのガス供給関係、相互互恵関係を破壊することに利益を持つ存在は、近い将来シェールガス、オイルの輸出先を求めることになる米国政府と米国資本であろう。EU側としては、価格交渉のため、エネルギー供給多様化の一つとしてシェールガスを一部採用することはあるだろうが、しかし現時点ではいまだ米国のシェールガス・オイルを輸出し安定供給する態勢はできていない。少なくとも、まだ数年以上かかる。仮に数年後になっても、ロシアの天然ガスはパイプラインで送られており、船で運ぶLNGと比べ輸送コストは優位にあり、シェールガスに全面的に切り替わることは、まずありえない。
 したがって、EUにとってもロシアとロシアの天然ガスは尊重しなければならないのである。

 EUへの天然ガスの供給が止まる唯一の可能性は、ウクライナが欧州向けに送る天然ガスを途中で抜き取る事態である。かつてそのようなことはあった。米国の威を借りて、いい気になっているウクライナ新政府ならやりかねない。独・メルケル首相が、ウクライナ新政府を厳しく叱責し、ウクライナはシュンとなった。ロシアへ天然ガスの代金を支払わないで抜き取ることは、EUにとっては許されないことであり、もしそのようなことが起きれば、ドイツをはじめEUはウクライナを許さないだろう。

 「ロシアによるEUへの天然ガス供給」は、ウオール・ストリート・ジャーナルが指摘するEUに対するロシアの脅しの種になるのではなく、逆に対立を防ぐ要因として機能する。 
 ウオール・ストリート・ジャーナルは、よく知ったうえで、デタラメの報道をしている。ロシア情報、ウクライナ情報は、管理された嘘しか流さない態勢が機能している。 (文責:林信治)
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ウクライナで何が起きているか? [世界の動き]

 ウクライナで何が起きているか? 

 1)米国がロシアを封じ込む謀略

 ウクライナで起きていることは謀略であり、新たな戦争を起こしかねない危険をはらむ。そもそも、米国がロシアを封じ込もうとする謀略が第一の要因である。そのことをまず見なくてはならない。

 2013年4月米軍は、シリア政府軍による化学兵器使用を理由にシリアへの軍事介入を試みた。(実際にシリア政府軍が使用したかどうかさえ、いまだ不明である)。その際、プーチンはシリアに化学兵器廃棄を約束させ、口実を消し、軍事介入を回避させた。ある意味、見事な外交手腕を発揮した。

 米国は、2005年の「オレンジ革命」以来、キエフ政権の背中を押して、ロシア揺さぶりを準備してきた。米国の一つの目的は、ウクライナ政府に内戦を継続させ、ロシア―ウクライナ間の対立を激化させ続け、ウクライナのNATO加盟、ミサイルMIDを配備することである。ミサイル迎撃システムをウクライナのロシア国境に配備すれば、ロシアのミサイル網を大いに「無化」にできる。
 (ジョセフ・ナイ元米国防次官補が、9月1日「琉球新報」で「中国のミサイル技術向上で中国に近い米軍在沖基地が「脆弱」になり米軍にとっての利益が減った、次第に日本の管理下に移せ」と提言している。これと似た事態を実現しようとしている)。

 1961年のキューバ危機と似ている。「米国はミサイルと軍事基地でソ連を取り囲む権利はあるが、ソ連がキューバにミサイルを設置する権利はないいう信念を当時のケネディ政権は持ち」(チョムスキー)、米国は核ミサイルをトルコに配備した。この時の「信念」をオバマも変わらず持ち続けている。大統領の肌の色は変わっても、米国は変わっていない。当時、ソ連がミサイルをキューバに配備して対抗し、世界は核戦争の崖っぷちに立ったが、踏み出す手前で妥協が成立した。ケネディ政権のキューバ侵攻計画は中断し、フルシチョフはキューバからミサイルを撤去した。
 同様の重大な危険をはらむウクライナ危機は、多くの人々が知らないうちに現在も続いている。

 2)米国の操り人形――ウクライナの政変

 前ヤヌコビッチ政権は選挙で選ばれた政権だった。反ユダヤ、反ロシアを標榜する武装したウクライナの極右民族主義者、ネオナチらが、2014年2月22日クーデターを起こし政権を簒奪した。
 キエフ暫定政権は、欧米の支持をあてにした反ロシア政策を掲げ、連邦制を望む東部ロシア系住民を軍事的に攻撃し始めた。キエフ暫定政権にはビジネスとして民間軍事会社(PMC)のアメリカ人戦闘員も加わっている。

 ロシア系住民に対する弾圧に恐怖したクリミア住民は、3月16日にロシア編入を問う住民投票で9割以上が賛成した。弾圧を避け安全ためロシア編入を選んだ。東部二州の住民も当初は分離独立の意志はなく連邦制を志向したが、キエフ政府軍による弾圧が分離独立へと追い込んだ。

 キエフ暫定政府軍によるウクライナ東部への弾圧が始まり、事実上の内戦となった。5月25日、大統領選でポロシェンコ大統領が選出されたが、事態はまったく改善しなかった。ポロシェンコ政権も欧米のマリオネットであり、内戦継続し、事態はさらに悪化した。

 そんな時に、7月17日にマレーシア航空機撃墜事件が起きた。西側のメディアが総がかりで親ロシア派が撃ち落としたのだと一斉報道した。しかし、いまだに親ロシア派が「犯行」におよんだ決定的な証拠は示されていない。それどころか、ウクライナ政府軍の仕業とする報道も出てきている(ミッシェル・チョドフスキー)。

 欧米メディアは欧米政府の意向を受け、親ロシア派とロシアの仕業と騒ぎ立て、世界に印象づけ、そして欧米諸国は証拠もないまま、「ロシア経済制裁」を実行した。日本のメディアもロシア批判を合唱し、日本政府はロシア制裁に加わった。
 このようなときになすべきは、事件を口実に戦闘や戦争を起こさないことだ。経済制裁などしてはならない。

 ロシア経済制裁は、ロシアの株価を下げ、ルーブルを減価させ、資本は逃亡しており、ロシア経済に大きな被害、影響をすでに与えている。ロシアは、中国、ブラジルなどと経済関係を深め、制裁に対応しようとしている。

 8月14日にプーチンが「ロシアは戦争を望んでいない」というメッセージを発した直後に、ポロシェンコが「ロシア軍が国境侵犯した」とキャメロン英首相に電話し、これを英国メディアが報道した。しかし、何も具体的な証拠は示されず、実態は援助物資を運ぶトラックの列が国境を越えたのであり、誤報と判明する。一国の大統領がでたらめなデマを飛ばしたことになる。米英とウクライナは、停戦を望んでおらず、「混乱」を作りだし、それに乗じて軍事的な対立を激化させる米英の戦略が明確に姿を現した瞬間だった。

 ロシアにはウクライナ方100万人近い難民がすでに流れ込んでおり、国境地帯には難民キャンプがいくつもできている。これまでロシアは、挑発にのらず自制を続け、東ウクライナへの表立った武力介入を抑制し続けてきた。
 8月下旬、事態を打開するためだろう、プーチンは難民の一部やロシア人義勇兵を武装させてウクライナ東南部に送り込み、軍事的な優位を勝ちとることにした。これもまた危険な行為である。ロシア軍も一部国境を越えた。ロシア政府は、「引き返したものの、一部ロシア軍が国境を越えて迷い込んだ」ことを認めた。ロシアのチュルキン国連大使は、「東部ウクライナにロシア義勇兵がいる」と認めている。

 キエフ政府軍は、押し戻され劣勢に立たされ始めた。ウクライナ政府軍は財政危機から装備は古く士気も低い。8月28日には親ロシア派がアゾフ海沿いの都市ノヴォアゾフスクを掌握。29日には、ドネツク州の臨時州都・マリウポリが包囲された。
 その結果、ポロシェンコは和平に応じざるを得なくなった。プーチンは軍事的攻勢をかけ、強引にロシアの主張である「停戦」を実現させたことになる。
 
 最終的には、ウクライナ大統領府が9月5日、ポロシェンコ大統領の名前で声明を出し、停戦命令を出すと発表。5日にベラルーシ・ミンスクで行われたウクライナ、東部分離派、ロシア、欧州安全保障協力機構(OSCE)代表による会合の結果、停戦と和平計画で合意した。ただ、停戦合意はまだ危うい基盤の上に置かれているだけで、何か起こして停戦を破壊することも大いに起こりうる。

 3)米に従うなら、リビアやイラクが近い将来のウクライナの姿

 ウクライナは、天然ガスをロシアに100%依存し、経済的にも依存関係は深い。ロシアとの関係を破壊して、エネルギー供給、ウクライナ経済をどうするのか。ポロシェンコ政権の政策に現実性はない。
 ポロシェンコ大統領は、8月24日ウクライナ独立記念日に軍事パレードを挙行し、2015年から17年にかけ、3000億円の軍備増強を行うと発表した。戦争継続の意思の表明である。しかし、ウクライナの国家財政はすでに破綻しており、IMFから融資を受けたばかりだ。借金で首が回らない国が、さらに金を借りて戦争準備をする。しかも、その相手国が、自分がエネルギーの供給を100%依存しているロシア。
 ウクライナの、ロシアへの天然ガス未払い代金は3600億円。ガス代を払わないで、その上戦争を仕掛けるとなると、供給されなくなるのは目に見えている。ウクライナの冬はきびしく、ガスなしで冬を越すことはできない。国民を意図的に破滅に追い込むことになる。ポロシェンコは、米やNATOの指示に従い、意図的に危機を作り出そうとしている。

 ポロシェンコが、民族主義を煽り、ロシアから離れ欧米と親しくなれば情況はよくなると幻想を振り撒き、自滅的な戦争遂行に国民に鼓吹するのは、米国からの「支援」と指示があるからだ。米に従えば、無理も通る、なんでも免責されると考えている。
 イスラエルや安倍政権と政治路線が似ている。ウクライナがその指示に従えば、破滅国家となり内戦となり、NATOが前面に出てくる。そして惨事便乗型資本主義=新自由主義(ナオミ・クライン)がウクライナを荒らしまわる。リビアやイラクの姿が、近い将来のウクライナの姿となる。

 4)対立は、すでに「米国・NATO対ロシア」に転化している

 停戦合意は重要である。しかしまだ解決ではない。すでに、対立は「米・NATAO対ロシア」に転化している。
 経済制裁によるロシア経済への影響はすでに起きている。
 ラスムセンNATO事務総長は、ここ数ヶ月のロシアの動きは「ウクライナの主権と領土保全の侵害である」と強く非難し、対決姿勢を変えていない。極めて危険である。
 ウクライナは、EUとの自由貿易協定(FTA)が締結されようとしている。FTAによって、ウクライナはEUと米国の大資本の経済植民地、欧米の経済的後背地化していくだろう。いずれ破綻するし、今後も内戦が起こる危険性が続く。

 「ベルリンの壁解体の時、クリントンはゴルバチョフに、NATOを東方へ拡大しないと約束したが、クリントンはこれを破り、冷戦後NATOの東方拡大を続けてきた」(チョムスキー)。今後も、「米国はミサイルと軍事基地でロシアを取り囲む権利はある」という信念(=ウクライナのロシア国境にミサイル迎撃システム配備)が、世界の人々の平和と安全に対する不安定要因、危険となり続けるだろう。
 米国の危険な行為を暴露・告発しなくてはならない、日本政府に米国の戦争政策支持をやめさせなければならない。(文責:林信治)

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ガザ報告 志葉玲氏 [世界の動き]

ガザ報告

 9月10日、ヒューマン・ライツ・ナウ主催の集会があり、7月のイスラエルによるガザ侵攻を取材したジャーナリスト・志葉玲氏が報告した。志葉氏は、取材写真などもまじえ7月のガザで起きたことを生々しく報告した。
 下記はその報告だが、筆者が理解した限りでまとめたので、必ずしも報告のとおりではない。文責はまとめた者にある。

○9月10日HRNで報告する志葉玲  (320x268).jpg
<9月10日HRNで報告する志葉玲氏>

 
志葉 玲さんの報告

 日本のメディアの扱い

 ガザで何が起こっているかに対し、日本のメディアの反応は極めて鈍い。7月8日からイスラエルのガザ砲撃がはじまったが、その時点で大手メディアの特派員は、社命により撤退した。そのため、戦闘中のガザにいた日本人ジャーナリストは私(志葉氏)をふくめ、わずか3名しかいなかった。
 帰国後、ガザで何が起きたか、報告しているが、とりあげるTV局はほとんどいない。停戦合意にとなったので、「もはや終わった」という扱いである。
 また、日本の大手メディアは「コンプライアンス」から、残虐な写真は決して載せない。しかし残虐な現実は存在する。多くの民間人、女性、子供、老人が殺されている。その事実さえ積極的に報道しようとしない傾向が強まっている。日本政府は米国、イスラエル側に立っているのであり、大手メディアもその現実を自主的に受け入れているようである。

 明白な戦争犯罪

 イスラエルによる7月のガザ侵攻で、多くの犠牲者が出た。ガザの死者2,143人、うち子ども579人。一方、イスラエル側の死者は68名(うちイスラエル軍兵士64名、民間人4名)。死者数の一方的な差が、戦争の性格を物語っている。

 ガザで行われたのは、明らかな戦争犯罪である。

 戦争だからといって何でもやっていいわけではない。ジュネーブ諸条約など国際的なルールがある。
 例えば、医療従事者は保護されなければならない。民間人も保護されなければならない。あるいは戦闘員であっても捕虜は虐待してはならない、など。
 写真に示すが、国際赤十字の救急車が破壊されている。徹底して破壊されており、誤射ではない。従事者も殺された。あるいは、病院が爆撃されている。国際赤十字は医療活動を行っている場所をイスラエルに通知しているが、無視されて攻撃された。

 ガザ中部の病院を取材した。大人も子供も女性も老人も多くが死んだ。パレスチナは大家族制である。(写真の少年は)家族17人のうち13人が殺されたと語った。子供二人だけが生き残った例もあった。家族は避難しても戸主である父や兄だけは住宅に残る習慣があった。しかし、今回の爆撃はこれまで以上に住宅の徹底した大規模の破壊を行ったため、戸主である父や兄が爆撃で死んだというケースも多かった。

 病院にはけが人が次々と運び込まれる。同時に、遺体になったらすぐに運び出され、その日のうちに埋められた。暑い季節なのですぐ腐敗してしまう。それでも病院の遺体安置所はいつも満杯だった。
 葬儀を行うのも命がけである。葬儀で人が集まったところを狙って、頭上にイスラエルの無人攻撃機が現れ、狙って撃ってくる。記者もその場面に遭遇した。

 このような戦争犯罪は今回だけではない。2008年12月から2009年1月、2012年のガザでも同様の戦争犯罪が行われた。イスラエルの戦争犯罪は何も追及されなかった。そのため、今回のガザ侵攻でも同じような戦争犯罪が繰り返された。
   2008年末から2009年1月:「鋳られた鉛作戦」(イスラエル軍の作戦名)、1400人以上が犠牲
   2012年:イスラエル軍による空爆「雲の柱作戦」:
   2014年7月(今回)は「境界防衛作戦」、死者2143人、うち子ども579人、
       イスラエル側の死者は68名(うちイスラエル軍兵士64名、民間人4名)

封鎖されたガザ、孤立したガザ

 ガザ地区の面積は、東京23区の半分。170万人が暮らす。イスラエルとエジプトに囲まれた飛び地であり、孤立した地域。
 今回の取材のため、北部のエレズ検問所から入った。南部のエジプトと境を接するラファ検問所はエジプトのシシ政権であれば難しかろうと判断した。海外プレスのための専用バスをチャーターしイスラエルに申請しイスラエル兵士も乗り込んで入って行った。
 検問所は5か所しかなく、物資の搬入も検問所を通らなければならない。ガザは封鎖されている。負傷者や病人が数多くいるがガザから出ることができない。そのため、通常では死ななくてすむ人が簡単に死んでいく。

 武器が流入している地下トンネルを破壊することを、イスラエルは侵攻、攻撃の口実としている。
 そもそもガザが封鎖されていることが大きな問題だ。検問所からだけでは十分な物資が入ってこない。食料品や日常生活物資も地下トンネルを通じて入ってきている。それでも十分ではない。

 イスラエルによる封鎖は集団的懲罰行為であって、そもそも違法である。封鎖を解除することが何よりも重要だ。しかし、イスラエルを通じてしか物資が入らない、しかも不十分にしか入らない。イスラエルは意図的にそのような状態をつくりあげている。

 今回の侵攻によってイスラエルはガザのインフラを徹底的に破壊した。住居やインフラはすぐにでも再建しなければならない。しかし、イスラエルを通じてしか物資が入ってこないから、イスラエル企業の建築資材を買え!ということになる。アラブ各国やそのほかの国々からの援助で再建するが、イスラエル企業をもうけさせることになる。

 ハマスは停戦条件に封鎖解除を入れている。人々の生活のためぜひとも必要な要求だ。住民はそのことをよく知っている。爆撃・破壊があった後も、ガザの住民の多くはハマスを支持している。封鎖解除は正当な要求である。集団的懲罰行為として封鎖しているイスラエルにこそ罪がある。ガザの人々はハマスが自分たちの要求を体現していることを知っている。
 

インフラを破壊した!

 今回の爆撃の特徴の一つは、インフラや工場を徹底して破壊したことにある。
 ガザ港の爆撃に遭遇した。徹底して破壊され瓦礫の山になっており、停戦しても港はまったく使えない。再建するのに少なくとも数か月はかかるだろう。
 ガザ最大の発電所も破壊された。もともと300万kWの需要に対して200万kW しか供給できていなかったが、発電所破壊で一挙に電力不足となり、一日に1時間電気が使えるだけだ。住民の生活も産業活動も成り立たない。アイスクリーム工場や肥料工場が爆撃により破壊されたのも取材した。戦闘には関係のない工場である。このような工場は今まで攻撃されなかった。街中のビルも徹底的に破壊され、瓦礫の山になっている。
 イスラエルの狙いは、生活基盤の破壊であり、雇用の破壊であろう。抵抗意欲を失わせるためではないか。

戦争犯罪

 フザの街を取材した。フザはイスラエル軍に包囲され破壊された。ガザの若者たちが後ろ手に縛られたまま、ナイフでめった突きにされ殺された現場を取材した。血の付いた棒があり遺体には拷問の跡があった。ハマスの兵士か民間人かは不明であるが、たとえハマスの兵士であったとしても無抵抗の捕虜を虐待死、或いは殺すことは、国際法違反である。写真を示すが、臭わない分だけ残虐さは伝わらないので、よりマシだと考えてもらいたい。現地は腐臭でいっぱいだった。男たちは布で口鼻を覆い、腐臭による涙と鼻水を垂らしながら、唾液をしきりに吐きながら、腐乱した死体を移動し埋葬していた。フザの街は腐臭に覆われていた。

 いろんなひどいことがあったが、7月末、断食月のイイドの日、一時停戦の日だった。断食月でお祭りの日であり、子供たちは小遣いをもらい菓子を買いに集まっていた。その場には子供しかいなかった。そこへ無人攻撃機が現れミサイルを打って、7人の子供を殺した。
 ラファの国連の学校が攻撃され10人の子供が命を落とした。これも停戦中の出来事だった。子供しかいないところに無人攻撃機が飛んできて殺した。イスラエルはハマスが子供を盾にしていると言い訳したが、そのような事実はない。仮にそうであっても民間人を殺すのは戦争犯罪である。

イスラエルの攻撃の目的

 2014年4月にハマスとファハタが和解したことが、今回の侵攻の理由だろう。ガザでもヨルダン川西岸でも選挙でハマスが勝利した。西岸では米国とイスラエルが介入し、いまだファハタが自治政府を構成している。イスラエル(と米国)の目的は、ハマスを攻撃しハマスとファハタを分断することにあるし、そしてオスロ合意を押しつけることにある。
 イスラエルと米国はイスラエルに唯諾々として従う自治政府を求めている。
 今回のガザ攻撃でインフラ破壊を徹底して行ったのは、ガザの人々の生活基盤を破壊し、イスラエルに依存してしか生きることができないように追い込むことにある。

停戦合意で解決したのか?

 停戦したが、決して終わりではない。何も解決していない。
 前回の停戦でも同じだった。イスラエルは何度も同じことを繰り返している。欧米はイスラエルの戦争犯罪を免責している。 仮に、イスラム勢力、「テロリスト集団」が同じことをやれば、欧米は大騒ぎし、大がかりな戦争・侵攻をはじめるだろう。
 イスラエルの犯罪を欧米が免責していることが、何度も悲劇が繰り返される一つの理由である。ガザの悲劇が繰り返さないためには、国際社会が声を上げ、止めさせなければならない。イスラエルと米国を免責してはならない。同時に、日本政府が、イスラエルと米国の側に立っている事実を忘れてはならない。


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ロシア制裁に根拠はない、煽るのは危険だ! [世界の動き]

 マレーシア機のウクライナ上空での撃墜
 ロシア制裁に根拠はない、煽るのは危険だ!

 1) 撃墜は誤射!

 ウクライナ軍、もしくは親ロ派勢力による撃墜である可能性が高いが、どちらの勢力にしても、マレーシア機撃墜は誤射であろう。民間航空機を撃ち落とすことに双方とも何のメリットもないし、むしろデメリットだけだ。
 したがって、誤射以外にない。敵への国際的な批判を浴びせるために相手のせいにして撃墜することも考えられるが、そのような偽装は容易ではない。きわめて可能性は小さい。実際のところ、ウクライナ軍と親ロ派勢力が互いに、互いの仕業だと非難し合っている。

 2) 事件の背景

 次に考えるべき条件は、ウクライナ国内が戦闘状態にあることだ。ウクライナ政府は、国内勢力と対話による解決を追求することなく、ウクライナ軍が親ロ派地域と勢力に攻撃を行っている。この異常状態のなかで起きたということだ。ウクライナ政府は、独立等を求める東部、南部のロシア系住民に対して武力攻撃をしている。そもそも政治的選択を行おうとする住民に軍事的攻勢をすること自体に問題がある。

 3) 欧米の対応

 当事者が「誤射」を認めていないのは大きな問題である。オランダやマレーシアが事件の真相究明と謝罪、賠償を求める権利は当然保持している。しかし、真相究明の前に「ロシア制裁」が実行されるのは明らかにおかしい。
 危険なのは、欧米が誤射として冷静に対処しようとしていないことである。またウクライナの内戦状態を止めようとしておらず、一方的にウクライナ政府と政府軍の側に立っている。さらに問題なのは、事実を明らかにする前にロシアを糾弾し、すでにロシア制裁が行われていることである。
 マレーシア航空機墜落について、中国・新華社は7月18日、西側諸国の当局者らがウクライナ東部の親ロシア派の犯行とし、ロシアに紛争激化の責任があると結論付けたのは、明らかに性急だったとコメントした。冷静な反応だ!

 4)仮に親ロ派勢力の仕業としても、ロシア制裁に根拠があるか?

 1:マレーシア航空機撃墜にロシアに直接責任があるか?
 プーチン政権が撃墜という行為自体に関与していない、もしくは可能性は極めて少ない。

 2:仮に、ウクライナ内部の親ロ派勢力にロシアが武器提供を行ったとして、それは不法か?
 先ず、現在ウクライナ政府が、独立等を求める東部、南部のロシア系住民に対して武力攻撃をしている。むしろ、そもそも政治的選択を行おうとする住民に軍事的攻勢をすること自体に問題がある。
 武器供与は決していいことではない。しかしシリア情勢など見れば、抵抗勢力に武器提供は国際社会には、制裁されるべきという価値判断はない。シリア反政府勢力に武器を供与したサウジ、カタール、米国は非難されず制裁の対象になっていない。ロシアだけ制裁される根拠は存在しない。ダブルスタンダードである。
 「親ロ派勢力が撃墜した」、「ロシアが武器を供与した」事実はいまだ確認されていない。
 にもかかわらず、ロシア非難を一方的に行い、制裁を実行する根拠は存在しない。

 7月21日産経新聞は「ロシアのプーチン大統領は21日、マレーシア機撃墜事件について、ビデオ声明で“ウクライナ東部の戦闘が再開されていなければ、悲劇も起きなかっただろう”と述べた」と報じたが、この認識は正当である。

 5)ウクライナ内戦に米国が関与

 ウクライナ情勢には米国のネオコンが関与し、米国内、および欧州内に軍事緊張を高めて欧州の軍事を強化しようとするグループがいることに配慮すべきだ。
 ウクライナ内戦はそもそも、ロシアとの友好関係を重視するヤヌコビッチ政権をクーデターで転覆させたことから始まっている。ロシア担当のヌーランド国務次官補(夫がネオコンのロバート・ケーガン)が関与している。
 シリア内戦に参戦する計画を、ロシア・プーチンの巧みな外交によってつぶされたNATOタカ派は、ロシア潰しを計画した。ウクライナを右翼政権に変え、NATOの拠点にし、対ロシア前線基地にしようとしている。

 あらゆることを考慮するなら、ロシア制裁を煽る国際世論は、きわめて危険だ!
 対立を煽るな!冷静に対応せよ!(7月24日記  文責:林 信治)

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アメリカによる強奪、従ったPNPパリバと仏政府 [世界の動き]

 アメリカによる強奪、従ったPNPパリバと仏政府

 1)米、BNPパリバに罰金90億ドル 制裁国イランとの取引で

 CNNによれば、仏金融大手BNPパリバは6月30日、米国がイランやスーダンなどに科している制裁に違反した罪を認め、90億ドル(約9,000億円)近い罰金を支払うことで米当局と和解した。
 BNPパリバはマンハッタンの地裁で文書偽造と共謀の罪を認めた。近く連邦裁判所で、マネーロンダリング(資金洗浄)禁止法違反でも有罪を認める見通し。
 さらにニューヨーク州の金融当局はBNPパリバのニューヨーク支店に一部のドル決済業務を1年間停止するよう命じ、同社はこれにも同意した。
 米当局者によると、同社では捜査の結果、約30人が解雇の対象となり、一部はすでに退社している。
 ボナフェ最高経営責任者は「過去の不正行為を深く悔やんでいる」と述べた。

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<PNPパリバ以前の制裁金ランキング The Wall street Journal>

 米国政府が、外国銀行に対して米国方針に違反したとして、制裁として罰金を課し、今回PNPパリバが応じたのである。
 外国銀行への罰金額としては過去最大規模になる。2012年に英HSBCが同様の違反で支払った19億ドル、今年5月にクレディ・スイスが脱税幇助問題で支払った26億ドルをしのぐ記録的な規模となった。

 2)アメリカによる強奪、従ったフランス政府

 今年の2月頃から、「核開発するイランへの米国制裁や、スーダンへの米国制裁を無視して取引したPNPパリバに罰金を科す」話が出ていた。アメリカ政府が勝手に制裁を決めただけなのに、違反したからと言ってフランス最大手の銀行PNPパリバに制裁違反で罰金を負わせるなどありえないことだ。
 しかし、6月30日、PNPパリバは罰金を支払うことで米政府と合意したと伝えられた。

 この報道に、まず驚いた。
 アメリカ政府が勝手に決めた制裁に、なぜ従わなければならないのか! 「違反取引」というが、アメリカ政府が一方的に決めただけで、従う義務は何もない。
 90億ドルは米国が何かをして得たお金ではない。米国が何かの損益を蒙った訳でもない。「自分の方針に従わなかった」といって奪い取った金である。米政府による強奪である。
 この強奪に、PNPパリバも、そしてフランス政府も、今回は従うことにした。
 PNPパリバもフランス政府も、内心はどのように思っているだろうか?

 TPPでも同じような米国と米国資本の横暴が起こるのだろう。

 3)テロ国家米国によるテロ支援国家指定

 米国は現在、イラン、スーダン、シリア、キューバをテロ支援国家に指定し、4カ国との金融取引を厳しく制限している。米国で活動する外国の金融機関にも事実上適用される。
 ガザへの攻撃を行うイスラエルは、テロ支援国家に指定されていない。米国がテロ国家だからだ。
 米国のテロ国家指定に何の根拠もないし、従う義務もない。

 4)国際取引でユーロの使用拡大を呼びかけた (仏サパン財務相)

 「7月6日、フランスのサパン財務相は国際取引でのユーロの使用拡大について、ユーロ圏各国政府が方法を検討する必要があるとの認識を示した。」
 ファイナンシャル・タイムズは下記のように報じた。
 「米国が仏金融会社BNPパリバに対して制裁対象国(イラン、スーダン等)の制裁逃れを助けたとして90億ドル罰金を課したことに対し、フランスの政治的、経済的支配層は攻撃を行った。サパン財務相はBNPパリバの事件は我々に各種通貨を使用する必要性を解らせたと言いつつ、国際的支払通貨としての通貨のリバランスを呼びかけた。」

 このようなことが可能なのはドルが基軸通貨であり、米国金融支配が絶大だからである。ということは、この先ドルが基軸通貨としての地位を低下させ、対抗する中国経済の規模が大きくなり、ユーロがより中国経済と密接化した時、米国の支配力は弱まる。そうなったとき、このような「横暴」は成立しなくなる。

 5)米国一国支配への挑戦
 
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<7月15日、ブラジル、フォルタレザ、 BRICS首脳 開発銀行設立で合意 The Huffington Post>

 ブラジル北東部フォルタレザで7月15日に開かれたBRICS首脳会議で、BRICS5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)は、アメリカ主導の国際金融秩序に対抗し、発展途上国や新興国へのインフラ開発を支援する独自の開発金融機関「新開発銀行」の設立と外貨準備基金の創設を決定した。
 新開発銀行の設置は、世界銀行や国際通貨基金(IMF)が主導する国際金融の枠組みである第2次大戦後の「ブレトンウッズ体制」=米国一国支配への挑戦を意味する。
 世銀やIMFは戦後、貧困国や金融危機に陥った国への資金支援を通じ、世界経済を支配してきた。他方、近年の経済成長が著しい新興国は、欧米の支配、横暴に対する不満が募っていた。
 共同宣言には、軍事介入や経済制裁に反対する文言も盛り込まれるなど欧米主導の国際秩序に異を唱え、新興国を軸とした新たな国際秩序を構築していく姿勢を鮮明にした。米国の一極支配への対抗軸とすべきだと表明している。(文責:林 信治)

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アルプス電気会長、中国東莞工場で「侵略否定」発言,労働者は、操業停止し抗議! [世界の動き]

1)アルプス電気会長、中国東莞の工場で「侵略否定」発言
労働者は、操業停止し抗議! 発言撤回と謝罪を要求

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<中国広東省東莞市で1日、工場を視察していたアルプス電気会長による第2次大戦を巡る発言に怒り、操業を止めて抗議する従業員たち=工場関係者提供 朝日新聞デジタルより>

 中国広東省の東莞市で7月1日、日本の電子部品大手メーカー「アルプス電気」の片岡政隆会長(68)が、第2次大戦を巡る発言をきっかけに、反発した工場従業員らが職場を離れ抗議し、操業停止に陥った。
 中国メディアによると、片岡会長は2014年7月1日午前に開かれた工場幹部とのミーティングで、「日本は中国を侵略していない。欧米による植民地化を防ぎ、中国を守るためだった」旨を発言したという(朝日新聞デジタル)。片岡会長の発言内容について、アルプス電気は「一言一句まではわからない」としながらも、「いわれているような発言があったことは事実です」と認めるとともに、「真意が伝わらなかった」と述べている。
 片岡会長の発言を不満に思った中国人幹部らから、伝え聞いた従業員が仕事を放棄して会議室周辺などに集まり、撤回と謝罪を求めた。集まった従業員は1,000人程度に膨らんだ。
 片岡会長は午後2時ごろ正門で謝罪したというが、充分に伝わらず、操業停止、抗議活動は続いている。

 操業業停止に陥ったのは、広東省東莞市で電子部品などを製造する「東莞長安日華電子廠」と、同敷地内にある現地法人の「東莞アルプス電子有限公司」。「東莞長安日華電子廠」は1993年に、東莞市長安鎮対外経済発展総公司とALPS物流香港有限公司の合弁会社として設立され、20年以上アルプス電気の製造委託を請け負ってきた。

 7月4日、アルプス電気は、「7月1日以来、操業停止状態が続いていたが、部分的に操業を再開した」と発表した。「ただし全面復旧のメドはまだ立っていない」としている。騒動発生以来、同社が公式コメントを発表するのは初めて。

 ちなみに、アルプス電気は、片岡政隆会長の父で創業者の故・片岡勝太郎氏が1948年に兄弟とともに片岡電気(現アルプス電気)を創業。24年間社長、14年間会長を務め、電子部品のトップメーカーに育てた。
 片岡政隆会長はオーナー会社の二代目。家電大手・シャープを退職後、入社し、1988年6月に社長に就き、24年間にわたり社長を務め、2012年に栗山年弘常務に社長を譲り、会長に就任。
 2013年度(2013.4~2014.3)売上は、6,844億円。カーステレオメーカーのアルパインは子会社。通常、電子部品メーカーは直接市場で販売しないが、カーステレオだけは、自社ブランドを持ち、完成品製品として販売している。
 電子部品産業は大きく二タイプある。一つは、セラミック素材部品の京セラ、村田製作所、TDK、もう一つはアッセンブル部品産業であり、アルプス電気、日本電産などがある。アッセンブル部品は労働集約的産業のタイプが多く、中国・台湾・韓国企業との激しい競争にさらされてきた。多くは低賃金を求めて中国やアジアに工場を展開しており、アルプス電気にとっても中国工場は主力工場である。四季報によれば、アルプス電気グループは、同社と子会社87社及び関連会社8社より構成されている。日本本社に技術開発、資材、営業部門、欧米・香港・シンガポールに販売会社を、中国をはじめアジア各地に工場を展開する。


 2)日本の経営者も貧しい歴史認識

 片岡・アルプス電気会長の発言を聞いて、日本の経営者のなかにも誤った歴史認識を持つ者が増えているのが、あらためてわかる。
 日本国内で、新聞や週刊誌、TV でデタラメな反中、嫌中宣伝がなされていて、これを政府やジャーナリズムが止めようともしない。政府、特に安倍政権はむしろ、煽っている。その顔色をうかがって、マスメディアはデタラメな反中宣伝、でたらめな歴史を堂々と述べている。
 片岡政隆会長は、「日本は中国を侵略していない。欧米による植民地化を防ぎ、中国を守るためだった」旨を発言したものの、工場労働者が操業を停止し抗議するや、すぐに撤回し謝罪した。
 しっかりした信念に基づいた歴史認識を持っていないことが、暴露された。
 「日本は中国を侵略していない。欧米による植民地化を防ぎ、中国を守るためだった」という考えを、これまでアルプス電気社内の自分の周りの追従者にむかって話してきたし、それで得意になっていたのだろう。追従者にしか通用しない歴史認識、薄っぺらな歴史認識であることも、一緒に暴露された。

 「真意が伝わらなかった」のではない、真意は確かに伝わった 

 アルプス電気広報は、片岡会長発言、または会長の立場を擁護するためであろう、「真意が伝わらなかった…」と弁解した。
 その弁解は、いまだに事情を理解していないことを白状している。「真意は確かに伝わったのである」。真実を少しも知らない会長が、知らないからこそ人の心を踏みにじる発言をすることを、工場労働者は知ったのであって、真意は奥深くまで伝わっている。
 にもかかわらず、「真意が伝わっていない」と弁解するのは、片岡会長も、広報部も歴史を知らない、事態の深刻さを知らないことを告白しているのである。

 このような事件は、この先も続くだろう!

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ウクライナ危機とは何か? [世界の動き]

ウクライナ危機とは何か? 何が起こっているのか?

 ウクライナで何が起こっているのか知るためには、ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』を梃子に理解することが必要である。現代の危険は新自由主義にある。

 1)ウクライナで何が起こっているのか?

 ウクライナのヤヌコビッチ政権は選挙で選ばれた合法的な政権だった。これを欧米に支援された勢力がクーデターを起こした。ウクライナの右翼保守勢力は米と直接つながっており、武器も支給されている。ヌーラント米国務副長官(ウクライナ担当)が、ヤヌコビッチ政権が倒れる前の2014年1月に、次の政府代表を誰にするか相談した会話が暴露されている[YouTubeで]公開。ヌーランド女史は、イラク戦争の時、チェイニー副大統領の外交問題主席顧問だった人物。

中央の女性が米国務副長官ヌーランド、左が極右党首チャ-ニボク、右が現在の臨時首相.png
<中央の女性が、ヌーラント米国務副長官、左が極右党首チャーニボク、右がウクライナ暫定首相>

 ヤヌコビッチ政権打倒は計画的であって、2月22日(土)に実行された。ソチ・オリンピック閉会式の前日であり、ロシアが動くことができない日が選ばれた。オリンピック閉会式には米をはじめ欧州政府代表者は理由をつけて参加していなかった。2月22日、ウクライナ議会の建物に攻撃をかけ占拠したのはネオナチの民兵だった。

 ヤヌコビッチは決して反西欧主義ではなかった。西欧との関係拡大を主張する野党勢力の主張を容れ、EU加盟を提起するに至った。しかしウクライナ議会はこれを拒否し、欧米も到底実行できない加盟条件を突きつけた。すでにヤヌコビッチ政権打倒の計画が動きだしていたからである。それも選挙によってではなく、武力によって。
 
 ヤヌコビッチ政権を倒したウクライナ暫定政権は右翼保守政権であり、スボヴォダ党、ナチを信奉するファシストも加わっている。ウクライナ民族主義には、かつて侵攻してきたナチとともに反社会主義、ユダヤ人虐殺を実行した歴史的過去がある。「ナチはウクライナをロシア支配から解放した」とする右派政治勢力が、反ロシア親西欧を掲げ、ヤヌコビッチ政権の破壊を実行した。ウクライナ暫定政権が、街頭で抗議をする「極右」を公認する段階から、武装した「極右」を認め利用することで、これまで封じ込められてきたウクライナ社会の反ユダヤ主義が社会の表層に噴出してきた。ネオナチは、暫定政権の一部、権力者となった。

 暫定政権が最初に行ったのは、ロシア語を公用語から外し、反ロシア、民族主義、排外主義を煽ったことだ。ユダヤ人への迫害も行った。このことを、米国政府、イスラエル政府は一言も非難していない。

ヒトラー式で演説をするウクライナ極右政党の党首チャーニボク.png
<ヒトラー式で演説するウクライナ極右政党党首のチャーニボク>

 ウクライナ政府はそもそも非常に腐敗して、経済的に混乱した国だということをヨーロッパは知っている。クチマ前大津領、ユーシェンコ前大統領やティモシェンコ元首相などの政治家、支配者たちのやってきた結果である。彼らは社会主義解体時に国有財産を簒奪し、金持ちになった者たちであり、国家財政を食い物にしてきた。ウクライナ国家財政はすでに破綻している。自身の悪事をごまかすために反ロシア、民族排外主義、反ユダヤ主義を煽ってきた。この者たちとアメリカのネオコンのボスたちが結びついて画策したのが今回のクーデターである。

 クリミア住民は、暫定政権のロシア住民に対する無法な住民襲撃に不安を抱いた。3月16日にクリミア自治共和国でロシア編入を問う住民投票が行われ、96.77%がロシアへの編入に賛成し、クリミアとセヴァストーポリ特別市は正式にロシアに編入されることとなった。
 ウクライナが親西欧の国となり、NATOの基地がウクライナにできる可能性をロシアは懸念した。特にクリミアは黒海艦隊がいてロシアにとってその重要性は極めて高い。
 ただ今回の投票は、住民の自発的な意志である面が強い。ロシアが強制したというより、住民が平穏な生活が保持されることを望んだというのがより適切である。(住民投票による国境線の変更は、安易に容認されるべきことではない。ただし、米国政府は非難する資格はない。コソボで自身がかつて行ったことだ。)

 欧米日のマスメディアは、クリミアのロシア編入が物事の原因であるかのような描き方をしている。日本のすべての新聞、NHKは、欧米メディアの論調をそのまま報じている。クリミア編入ではなく、その前の米欧の支持を得たウクライナ政権の不法な破壊がそもそもの原因である。

 さらに混乱は拡大し、第二幕に入っている。5月2日、オデッサの労働組合の建物に右翼勢力が火を放ち46名を焼き殺した。ウクライナ暫定政権はこれに荷担した。
 世界の反応は恐ろしいほど鈍かった。米国とヨーロッパ諸国は、オデッサの蛮行を非難するよりも、ロシアがウクライナの親ロシア派住民を支援していると非難することに熱心だった。
 オデッサの惨劇は、右派セクターが犯した犯罪であるのに、ウライナ暫定政権には、真剣な捜査に乗り出す気配がまるでない。政権に右派が加わっているからであり、この虐殺は政権の意志だからである。
 
 5月11日、ウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州で、自治権の拡大の是非を問う住民投票が行われた。事前に行われた各種の世論調査によると、東部住民たちの約7割は、現状維持を望み、ウクライナにとどまることを求めているとされていた。
 ところが蓋を開けてみたら様相が違った。開票の結果、ドネツク州では89%、ルガンスク州では96%が独立に賛成票を投じた。武装した右翼が人々に危害を与え、ウクライナ暫定政権が容認している事態を見て、人々はウクライナからの独立を望んだのである。これは、原因ではなく結果である。
 東部住民の大多数は、なぜ「ウクライナからの独立」を望んだのか。5月2日のオデッサの惨劇をはじめ、マリウポリ、クラマトルスクなど、東部各地での右派セクターとウクライナ軍の暴力の行使に、激しい怒りと恐怖、反発を覚えたからである。

 5月25日にはウクライナ大統領選が行われる。そもそも合法的な政権を打倒しての選挙に正当性があるか、或いは戦闘状態のなかでの選挙に対する疑問はある。いずれにしても、民族主義と対立を煽り、ウクライナ解体の方向に既成事実を積みあげていくことになるだろう。

2)新自由主義のやり口を止めよう!

 そもそも、ウクライナで何が始まっているのか? ウクライナで米欧は何をしたいのか? 新たに独立し新興の国民国家として歩んできたはずのウクライナが、突如このようにバラバラに解体していくのはなぜなのか?
 
 米欧の新自由主義が新しい世界秩序を作り出そうとしている。第二次世界大戦で確定した国境線の引き直しを画策しているのであり、きわめて危険な行為である。
 そのやり方は、ウクライナのように右翼セクターを武装させそれまでの社会システムを機能不全に陥れ、既存国家を解体し社会をバラバラに分解し対立させ、そのうえで介入し新自由主義の新秩序をつくりあげようとしている。そのためには反ユダヤ主義、ネオナチも利用するし、その行為に目をつぶる。これらすべてを、情報を統制し世界の人々が気づかないうちに実行してしまうのである。
 ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』が明確にこれを説明している。金融資本による直接支配、新自由主義による草刈り場にすることを企図している。単に、「親米政権」をつくることが問題なのではない。莫大な利益を吸い上げるシステムを移植したい、ウクライナ国民の生活や将来など何も考えていない。

 新自由主義が現代的な「文明」を破壊する「悪」として我々の前に姿を現している。この新しい戦争、混乱を利用した世界再編の戦略を理解する必要があるその上で、新自由主義の行為を批判し止めなければならない。
  (5月24日記、文責・林信治)

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