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ハーグ仲裁裁判所は、仲裁ではなく対立を煽った [フィリピンの政治経済状況]

ハーグ仲裁裁判所は、仲裁ではなく対立を煽った

ドゥテルテ大統領.png
<ドゥテルテ大統領>

1)審理されるべきではなかった訴訟、法的拘束力はない裁定

 ハーグ仲裁裁判所は、7月12日、中国沿岸とフィリピンの間の“九段線”の内側にある様々な島々や岩に対する、中国の主張に不利な裁定をした。これに乗じてアメリカ政府は、中国に対する“国際法の尊重”要求をもっともらしく主張した。同時にペンタゴンは、挑発的にも、ドイツ連邦共和国海軍を巻き込み、中国を排除して、国際的海軍演習“リムパック2016”をこの地域で開始した。事態は益々険悪になりつつある。
 
 ハーグ仲裁裁判所とその裁定について、虚偽の宣伝が広がっている。
 ハーグ仲裁裁判所は、紛争中の両当事者と協力して、仲裁者の選任を促進するための、国際海洋法裁判所(ITLOS)所長配下にある官僚機構にすぎない。海洋法の仲裁機関は、当事国どうしが話し合いで紛争を解決する際の仲裁のために設置された機関であって、国内裁判所とかなり異なる。法的拘束力を持たない仲裁委員会が裁定を出す過程全体がそもそも違法だ。

 中国は、仲裁過程への参加も、仲裁委員会の管轄権を認めることも拒否し続けている。
 仲裁には、対立する主張の解決を求める両当事者(中国政府とフィリピン政府)が、お互いの対立する主張を解決すべく、中立的な仲裁人に救いをもとめることに同意する必要があるが、この手続きを欠いている。

 今回の場合、一方の当事国の中国が仲裁に同意しておらず、外交的な二国間交渉の継続を望んだにもかかわらず、アキノ前大統領政権がオバマ政権の指示のもと、一方的にハーグでの仲裁を進め、7月12日、仲裁廷の特別に選ばれた5人の裁判官が、中国とフィリピン間で対立している、南シナ海の、大半が無人の島々の一部に関して裁定を出してしまったのである。

 したがって、そもそも審理されるべきではなかった訴訟であり、裁定は無効であり、法的拘束力もない。そのようなことをすべて知ったうえで、中国非難の国際的宣伝を組織し対立をつくりだすために、フィリピン政府に訴えさせ、生まれた裁定である。

2)アメリカのアジア戦略

 東アジアは世界で最も成長を続けている地域だ。それゆえ南シナ海は経済的にも軍事的にも重要である。ここは、世界の日々の海運の約半分、世界の石油海運の三分の一、液化天然ガス海運の三分の二の通路であり、世界の漁獲高の10%以上を占めている。

 アジアへのリバランス戦略を掲げるアメリカは、世界の成長地域である東アジアを不安定な状態に陥れることで、この地域に対する影響力と支配権を確保しようとしている。日韓フィリピンとの軍事同盟を強化し、中国との対立構図を作り上げ、何らかの軍事行動、経済制裁実施が可能な状態を、計画的かつ戦略的につくりあげつつある。
 
 2013年まで中国とフィリピンは、島の紛争について外交的対話をしていた。2013年にアキノ政権が、対話をやめ一方的にハーグ仲裁裁判所に正式仲裁を請求し、以来、アメリカ軍による中国を意識した行動が行われるようになった。
 
 中国の重要だが脆弱な海上補給線、中国の経済的アキレス腱こそが、まさにアメリカ政府とNATOが、標的にしているものだ。それゆえ、アキノ政権に、ハーグ仲裁手順を一方的に開始するようにさせたのである。

 アメリカ政府は中国に対して「海洋法条約を守れ!裁定に従え!」と要求するが、アメリカ自身は海洋法条約に入っていない。批准どころか署名もしていない。その理由は、もしアメリカ政府が海洋法条約に入るなら、中国と同じような裁定をアメリカが食らい、従わねばならなくなるからだ。アメリカ空母の行動海域には、誰の許しも無用である、勝手にホルムズ海峡を通過し、世界のあらゆる海を自由に航行する。

 世界の覇権国であるアメリカは、アメリカ国益に反する裁定をつきつけられて権威を落とすぐらいなら、最初から加盟しない方が良いと考え、海洋法条約に署名していない。アメリカ政府は国際法を守るつもりなどない。イラク侵攻という重大な国際犯罪を犯したが、裁かれもせず、反省もしていない。

3)フィリピン政府には、アメリカの後ろ盾

 フィリピン政府の行為にはアメリカ政府の後ろ盾がある。
  
 1992年にフィリピン上院が撤退させたアメリカ軍を、アキノ政権は6年間の大統領在位中に、スービック海軍基地とクラーク空軍基地に再び招き入れた。2014年4月には、アメリカ政府との間に新たな防衛強化協力協定を調印した。

 アメリカ軍のフィリピン基地への帰還は、中国の世界的な影響力を封じ込めるためのオバマの“アジアへのリバランス戦略の一環であり、南沙諸島、スプラトリー諸島紛争に関するハーグ仲裁を開始するアキノ政権の決定は、オバマ政権により全面的に支援された。
 
 尖閣諸島に対する安倍政権の主張を支持し緊張を高めたのと同様に、アメリカ政府は、南シナ海の紛争中の領土問題を意図的に軍事問題化しようとしている。

 南シナ海での出来事は、アメリカ政府に安倍の日本も加わって、極めて入念に計画された事件であり、海洋法に関する国際連合条約の下で演じられているこの喜劇の当事者、主要関係者が一体誰なのかを知ることが重要だ。

4)日本政府の汚い役割

 今回の裁定では、仲裁委員会の5人の相互指名という、UNCLOS条約中の法的手順を遵守していない。フィリピンは、一人の裁判官を指名し、残りの4名を中国政府ではなく、当時の国際海洋法裁判所(ITLOS)所長だった柳井俊二氏が指名した。元駐アメリカ日本大使の柳井俊二氏は、安倍晋三首相の側近の一人であり、三菱グループの顧問でもある。
  
 アメリカと日本は、今回の裁定の不備、不法、強制執行の機能がないことなど意図的に隠しながら、裁定を無視する中国を「国際法違反の極悪な国」と非難して国際信用を失墜させるキャンペーンをおこなっている。裁定が出た後、アメリカ政府は「中国は裁定に従うべきだ」と表明した。日本外務省はマスコミに対し、中国が国際法違反の極悪な国であると宣伝するよう誘導している。日本のマスコミは、外務省の宣伝機関になっている。仲裁機関の機能を意図的に無視し、「裁判所」の「判決」が出たと書き、国内裁判所と同等の絶対的な決定であるかのような虚偽の報道を行っている。

 中国政府は、安倍政権が、ワシントンのために、汚らわしい傀儡役を演じていることをよく知っている。7月15日、モンゴルでの国際会議(ASEM)で会談した李克強首相に安倍首相が、海洋法裁定を受け入れるように求めた時、李克強は激怒し、「二国間問題である、日本は決して口を出すな!」と強い口調で応えた。
 
 米国が世界を引き連れて中国を批判しようとするが、喜んで乗っているのは日本だけで、欧州や東南アジアなどその他の国々は米国に同調してはいない。EUの首脳たちも英国でさえも、誰もこの件で中国を批判する発言をしていない。アメリカの同盟国オーストラリアは「そもそも本件は海洋法の仲裁になじまない」などと対立激化を押しとどめようとしている。
 このような事情を日本のマスメディアはまったく報道しない。

5)フィリピンでは?

 新たに選ばれたフィリピン大統領ロドリゴ・ドゥテルテが、中国との紛争をエスカレートさせようとするアメリカ政府からの圧力にどう対応するか、注目を集めている。
 なぜならば、ドゥテルテ新大統領は選挙前に、これまでの中国敵視・対米従属の国是を放棄し、中国と和解して米中双方と友好な関係を結ぶことをめざすと声明したからである。フィリピンが中国敵視・対米従属から対中協調・対米自立に転換していくのではないかという期待を抱かせた。
 ドゥテルテは、アキノ政権が拒否していた中国との直接交渉を再開すると語り、アキノとの「違い」を宣伝した。ドゥテルテ新政権は、裁定2日後の7月14日、フィデル・ラモス元大統領を特使に任命し、中国と交渉を始めた。

 海洋法機関は、当事者同士の和解を最優先し、和解結果の内容が海洋法にそぐわないものであってもそれを支持することになっている。中比が交渉で合意するならば、裁定は無効になり、「中国は裁定を受け入れ、埋め立てた環礁を元に戻し、南シナ海から撤退しろ」と求める日米などの主張も意味を失う。

 そもそもアキノが二国間交渉をやめ提訴したのに対し、再交渉に入っていることはすでに仲裁裁判所と裁定を無効にしていることを意味する。ただ、フィリピン政府は交渉で、裁定の実行を求めており、その点ではアメリカ政府の意向に従う立場を表明している。ドゥテルテ政権がこのままアメリカ政府の丸め込まれる可能性もある。ポピュリズムで当選したドゥテルテは、人気があるものの政治基盤はきわめて流動的なのだ。

 中国とフィリピンとの間での、中国と日本との間での、南シナ海や東シナ海の潮に濡れた不毛の島々を巡る意見の違いは、海洋埋蔵石油とガス獲得の問題でも、中国人漁師に、更に数百万匹の魚を獲らせようという問題ではない。

 これは、もっぱら南シナ海という東アジア諸国にとっての最も重要な経済地域・輸送路の平和と安定をいかに保つかという、安全保障にかかわる問題である。この地域で、いかに対立を拡大させず、軍事行動を起こさせないためにはどうすべきか? 対立をあおるアメリカ、便乗する日本の外交、軍事戦略をいかに止めるかという問題なのである。
 
 この点は日本国内でも同じ。東アジア地域の平和と安定こそ重要であるにもかかわらず、アメリカ政府の戦略にしたがって中国との対立は新たにつくられ煽られ、日米韓と中国の対立構図が徐々に確立整備されている。7月8日には在韓米軍への戦域高高度防衛ミサイルTHAAD配備が決定した。

 フィリピン国内では、フィリピン漁民が中国漁船に漁場から追い出された問題として、もっぱら宣伝されている。政府のみならず、野党も、左翼勢力も、フィリピン漁民支持から民族主義にあおられている面もあり、全体としてアメリカの対中国戦略に搦めとられつつあるのではないか。これら一連の動きは、極めて危険だ。ドゥテルテ政権の動向に注目が集まっている。(文責:林 信治)
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トルコ・クーデターの原因、失敗した理由 [世界の動き]

トルコ・クーデターの原因、失敗した理由

1)トルコ・クーデターの意味

 7月15日のクーデター失敗からの2週間を経て、この政治的事件の意味がより明らかになった。
 クーデター失敗を契機に、エルドアン政権は政権内からギュレン派を徹底して追い出し粛清している。ギュレン派は、クーデターがエルドアン政権の自作自演だと主張しているが、そうではあるまい。エルドアン本人がSNSを利用し国民にクーデター阻止を呼びかけた事実は、7月14日から15日にかけて、軍や政府機関、警察・諜報機関が支配下にあるかどうか把握できていなかったことを意味する。エルドアンはSNSで国民に支持を呼びかけざるを得ない事態に追い込まれたのであり、14日夜から15日未明にかけてクーデターによる政権打倒の危機が存在したのであった。
 
2)エルドアンによる権力掌握と粛清

 エルドアンは政権を掌握した後、7月20日、非常事態を宣言し、これまでにギュレン師支持派とされる軍人や裁判官ら1万8千人以上を拘束、中央省庁の官僚や教員ら6万6千人以上を解任や停職処分にした。軍の粛清が第一の目的であることがわかる。
 トルコ政府は、エルドアン大統領の政敵で米国に住むイスラム教指導者ギュレン師がクーデター未遂事件に関与したと断定し、トルコ政府は二国間の犯罪人引き渡し条約の規定に基づき、ギュレン師の送還をアメリカ政府に要求している。(日経:8月1日)
 
 注目すべきは、エルドアンが当初からクーデターは政権内のギュレン派であると特定しており、かつまたその背後にアメリカ政府内の好戦派、ネオコンがいると断定したことだ。ギュレン派は、これまでともにアメリカ政府の中東政策に沿って政権を担ってきたかつての盟友であるから、相手が何を考え実行したか、一瞬にしたわかったのであろうし、アメリカ政府の意図も読み取ったであろう。
 クーデターが起きた時、アメリカ軍は「静観」していた。トルコ基地内には、ロシアに向けた戦略核ミサイルが配備されている。にもかかわらずアメリカ軍は「静観」した。クーデターに対するアメリカ政府・軍の事前の承認があったことをうかがわせる。

 エルドアンが、軍人らを即座に逮捕・追放したのはそのリストを事前に持っていたからである。逮捕者や解任・停職処分の規模がきわめて大きいこと、それは軍内、政権内のギュレン派に対する粛清であり、徹底している。徹底しなければ、逆にエルドアンが倒される、そのように自覚しているからだ。徹底して軍内のギュレン派を粛清し一掃すれば、アメリカ政府はエルドアン政権を認めざるを得ないことを知っているからだ。

3)クーデターの原因と失敗した理由

 アメリカ政府内の好戦派・ネオコンにしたがって、トルコ政府が行ってきた中東政策が破綻したことがクーデターの原因である。エルドアン政権は、アメリカ政府、サウジ、湾岸諸国とともに、ISを利用してシリア・アサド政権を打倒に加担し、中東の支配者の地位を得ようとしてきた。
 しかし、この戦略は、2015年9月30日以降のロシア軍によるIS 空爆、シリアのトルコ国境地域のIS支配地域をアサド政府軍が奪還したことで、ISの兵站線は閉ざされた。ISは敗北し衰退しつつあり、ISを使ったアサド政権打倒は不可能になり、トルコの中東政策は破綻した。
 2015年11月のトルコ空軍によるロシアSu-24撃墜は、トルコーロシア間の政治・経済関係を破壊した。シリアを通じたアラブ世界との通商関係も途絶した。トルコへの外資投資は減少した。軍事費は増大しトルコ国債の信用は低下しつつあり、国際暴落の危険性が高まっている。アメリカの中東戦略に加担してきたことで、トルコ経済は停滞を余儀なくされた。
 アメリカ政府内の好戦派・ネオコンに唆されてロシアと戦争を始めたウクライナが、破綻国家になった姿を、エルドアンは間近に見ている。

 エルドアンは、アサド政権打倒が頓挫した新事態に対応せざるを得なくなり、悪化したロシアとの関係改善へと戦略の変更を決定したのである。
 この変更は、アメリカ政府内の好戦派・ネオコンの意に添わなかった。トルコ軍には歴史的に、アメリカ政府によるいくつもの密接な関係、支配の「手」が形成されてきた。「世俗主義」とは、トルコ政治にアメリカの支配力・影響力を発揮させる一つの政治的主張であった。
 今回のクーデターは、トルコ軍内の世俗主義を口実として、エルドアンの戦略変更を咎め、アメリカの中東戦略を貫き通させようとしたモメントとして、発現した。ただし、ISを利用してアサドを倒すアメリカの中東戦略は、すでに破綻が明らかであるので、トルコ軍内に「躊躇」が生まれ、クーデターに準備不足をもたらし、失敗におわった終わったのである。
 
4)エルドアン政権の戦略変更

 エルドアン政権にとって、シリアでの長期にわたる戦闘状態を継続できない。トルコが破綻してしまう。
 まずは、ロシアとの関係を改善するしか道はない。エルドアン政権は、すでにロシア機撃墜を謝罪した。8月9日、エルドアンはロシアを訪問する。ロシア産天然ガスをトルコ経由で欧州に輸出するパイプライン建設計画に対しても、エルドアンはこれまでの態度を一変させ、前向きな姿勢を示した。
 このパイプライン計画は、イラク・シリアを通ってパイプラインを敷設し欧州に天然ガスを輸出したい湾岸諸国・サウジの思惑と真っ向から対立する。アメリカ政府やサウジ・湾岸諸国によるイラク・シリア政権の打倒と破壊は、この計画とも関係している。

 トルコ政府は7月31日、軍参謀本部の傘下にあった陸海空軍を国防省へ移管、トルコ社会に影響力を持つ軍教育機関の廃止、大統領と首相が直接軍の司令官に命令を下す権限の付与などを発表し、トルコ軍の権限を縮小、大統領・首相への権限集中を決定した。

5)エルドアン政権は強固になったか?
 エルドアン政権の権力掌握、大統領への権力集中の過程が進行している。ギュレン派は権力から放逐されつつある。アメリカ政府が形成してきたトルコ軍内に張り巡らした「手」は、放逐されている。アメリカの中東政策の破綻が、このような形で従来の支配網を壊している。
 しかし、そのことはエルドアン政権の基盤が盤石になったことを意味しない。(8月1日記、文責:林信治)
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トルコ・クーデターの意味 [世界の動き]

トルコ・クーデターの意味

1)失敗に終わったクーデター 

 7月15日夜、トルコ軍将校の集団が軍事クーデターを行ったが、失敗に終わった。エルドアンはクーデターがギュレンとギュレン運動が引き起こしたと早々と決めつけ、ギュレン運動の軍人、司法関係者らを逮捕し粛清している。その規模はきわめて大きく、逮捕者数は8,000人を超えている。

 エルドアンは、クーデターを引き起こすのはギュレン以外にいないことを知っているし、ギュレンはCIAの工作員であり、背後にアメリカ政府がいることもよく知っている。なぜならば、2013年までギュレンもエルドアンもアメリカ政府の支持の下に一体で動いて来たからである。

 したがって、エルドアンによる粛清は、トルコ政府、軍内のギュレン運動関係者、すなわち米国の工作員がその対象である。クーデターを起こしたかどうか、参加したかどうかではなく、エルドアンは自身とは異なる米国の手先を粛清しているのであり、あらかじめそのリストを彼は持っている。

 トルコのCIA政治工作員フェトフッラー・ギュレンが、CIAの保護のもとペンシルバニア州セイラーズバーグに亡命して暮らしている。ギュレンのスポンサーにとって唯一の問題は、クーデターが成功しなかったことだ。クーデターは、エルドアンによる最近の劇的な「政治的態度の転換」に対する反応だった。これはCIAに忠実なトルコ国内ネットワークがひき起こしたものではあるが、明らかに準備不足だったように見える。

2)トルコに対するアメリカ支配の網

 ギュレンは、政治的イスラム教徒を、政権転覆の道具として利用するという、何十年もの歴史をもったCIA計画の一つの中心核だった、2013年に、イスタンブールや到るところで、反エルドアンの大規模抗議行動がおこなわれた。あの時、以前はエルドアンの公正発展党と結んでいたギュレンが袂を分かち、新聞ザマンなど、ギュレンが支配するマスコミで、エルドアンを暴君と批判した。それ以来、エルドアンは、ザマン紙や、ギュレンが支配する他のマスコミへの襲撃を含め、国内の最も危険な敵、ギュレンとその仲間連中の根絶に向けて動いてきた。これは、アメリカの中東戦略を誰が担うのかをめぐるトルコ政治における権力闘争にほかならない。

3)クーデター失敗のあと、どうなるか?

 一時的にはエルドアン支配が強化されるだろう。過去二年間、ギュレン運動は、エルドアンや、彼による諜報機関トップの粛清によって、影響力がすでに低下している。「国の守護者としてのアタチュルクの軍」などというものは、1980年代以来、とっくの昔に終わっている。

 今後、興味深いのはエルドアンの外交政策であろう。
 エルドアン政権は、アメリカに加担してIS を利用しシリア・アサド政権打倒を実行してきたが、2015年9月30日のロシアによるIS空爆開始により、その戦略の破綻が明白となり行き詰った、その結果外交政策の修正を余儀なくされている。

 ロシアとの和解、ギリシャ国境までの、ロシア・トルコ・ストリーム・ガス・パイプライン交渉再開。同時に、エルドアンは、ネタニヤフとも和解した。そして、最も重要なのは、エルドアンが、関係再開のためのプーチンの要求に応じて、トルコは、シリア国内での、ダーイシュや他のテロリストへの秘密支援や、トルコ国内での彼らの訓練、連中の石油の闇市場における販売などによる、アサド打倒の取り組みをやめることに同意したことだ。これはアメリカ政府にとって大きな地政学的敗北であるし、ギュレン運動にとってもトルコ国内の政治権力闘争での敗北を意味する。
 ギュレン運動によるクーデターは、権力闘争の敗北を前にして、暴発し、敗北を確定させた。
4)エルドアン、外交政策の転換を志向

 エルドアンがダウトール首相を首にして、忠実なビナリ・ユルドゥルムを首相に指名した2016年6月以来、エルドアンは政治的態度の転換を志向している。この転換に対しアメリカ政府は必ずしも承認を与えなかったのであろう、その表現として「クーデター」が起きたと考えるべきだろう。シリアに接するトルコ大統領エルドアンは、アメリカ政府のシリアでの反アサド戦略が現実的でないと判断し、修正を試みている。スホイ24撃墜に対しロシア政府へ謝罪し、さらには崩壊しないことが明かになったアサド政権を前提とした関係修復志向へと舵を切ろうとしているのである。

5)エルドアンは打倒されるか?

 今回のクーデターは、誰がアメリカの承認を得てトルコの政治的支配者になるのかという権力闘争である。現時点でみれば、エルドアンは打倒されないだろう。アメリカ政府はエルドアンを支持するしかない。エルドアンが、クーデターをギュレンによる企みだったと語った7月16日の早い段階で、ギュレンの敗北は決定した。このことは一時的には、ギュレンに対するエルドアンの勝利である。しかし、そのことはエルドアン政権が盤石になったことを意味しない。ISを利用しシリア・アサド政権を打倒するアメリカの戦略に応じ、中東の支配者になろうとしたトルコ・エルドアン政権の野望は破綻し、修正・転換を余儀なくされている。エルドアン政権にとっては、米国政府との調整もしなければならず、その前に自身しか政権を担う者はいないことをアメリカ政府に示さなくてはならない。

 CIAは面目丸潰れで、オバマとNATOは「民主的に選ばれたエルドアンを温かく抱擁して(原文通り!)」支持する以外になかった。エルドアン以外にいないし、エルドアンを排除すればトルコは混乱に陥る。したがって、誤魔化す以外になかったのである。

 民主的に選ばれたウクライナのヤヌーコヴィッチ大統領を、2014年2月に政権から追い払ったわけだから、「民主的に選ばれたエルドアン」という理屈は何の理由にもなっていない。CIAやネオコン連中が、キエフのマイダン広場でクーデターを実行した際、ヴィクトル・ヤヌーコヴィッチは「民主的に選ばれたウクライナ大統領」であることなど気にもかけなかった。

 エルドアンを支持せざるを得ないのは、トルコがNATO にどうしても必要だからだ。アメリカ政府は、その世界戦略上、特に中東での石油、そして今では天然ガスの流れを支配する上で、トルコを混乱に陥れるわけにはいかない。そのため、クーデターが失敗することが明白になった瞬間、オバマとネオコンの仲間が、“友人”エルドアンを「抱擁した」のである。(文責:林 信治)
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英、EU離脱! [世界の動き]

英、EU離脱!

1)6月24日、英のEU離脱を伝える

 6月24日午後、英国国民投票で、英国のEU 離脱が多数を占めたことを伝えている。離脱手続きに期間を要するので即日離脱ではないものの、英国民が離脱を選択したことに、世界の支配層、金融資本家は驚きを隠していない。
 金融資本や独占資本にとっては、市場が一部分断され投資効率が悪くなり、利益を得るには面倒になるので、離脱に反対していた。各国エリート層は皆反対していた。英国に進出した日立や、日産、トヨタも労働者に対して残留を訴えていた。

2)英国民はなぜ、離脱を選択したのか?

 英国も日本と同じで、新自由主義、経済のグローバル化=EU加盟で、格差が拡大し、中間層が没落し、地方の衰退が顕著だ。新自由主義は多くの国民を貧困化させる、その「真実」を現実の進行でもってやっと身に染みて知ったということだ。「自由」という言葉で、人々を麻痺させた。
 英国ではシティ・金融資本の支配、EU巨大資本の支配に対する怒りが相当広がっていたのだ。英国政府はこの怒りを軽く見ていた。堀田善衛によればEUの官僚の多くはかつての貴族が多数を占めているという。欧州巨大資本の代理人であるEU官僚に、英国民は我慢ならないのであり、離脱は英国民の反乱なのだ。
 英国はEUに加盟し、シティを含む英国資本は莫大な利益を得た。しかし、そのことは英国民の生活向上には決してつながらなかった。新自由主義の下で経済が拡大しても、1%が利益を享受するだけで99%は蚊帳の外に置かれる。さらに経済成長が低ければ、容赦なく切り下げられる。多くの英国民は、EU加盟がその原因と判断した。
 もとろん、EUから離脱すれば、労働者階級、中間層の収入が増えるわけではない。EU離脱によって外国資本の投資が減り、逃避も生じ、ある分野では経済活動は収縮するだろう。そのような場合、資本家は労働者階級、中間層に犠牲を押し付け、事態を乗り切る。したがって、英国民は厳しい現実が待っている。

3)同じだ!

 このような「事情」は、米国も同じで、新自由主義は地方の中間層、白人層を没落させ、格差拡大させ、人々の怒りを買い、大統領選でトランプやサンダースへの支持が広がったのだ。クリントンやブッシュなどの既存政治家は徹底的に嫌われた。米国民も、金融資本の支配、ネオコンによる世界のあらゆる地域で続く米軍による戦争にうんざりしているのだ。クリントンはネオコンやユダヤ資本とつながっている。もちろんトランプを選んだところで何も変わりはしない。
 このような事情は日本も同じなのだが、格差拡大する日本人は実におとなしく、怒ることも忘れている。かつてマッカーサーが「日本人は12歳の少年だ」とその「政治的な幼さ」を揶揄し利用したことがあったが、2016年現在もこの点は少しも変わっていないように見える。 (6月24日記)
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ドゥテルテ新大統領に期待できるか? [フィリピンの政治経済状況]

ドゥテルテ新大統領に期待できるか?

1)選出された理由

 フィリピンはアキノ政権下で年率6%前後の経済成長を継続してきた。その成長ぶりは、世界の成長地域である東アジアの中でも群を抜いている。しかし、経済成長はそのままフィリピンの人々の生活改善を意味しない。新自由主義の下での成長は、必ず格差を拡大する。フィリピンには取り残された多くの人々がいる。格差拡大に不満を持つフィリピン人は、アキノ政権の後継者である政治エリートの「お仲間たち」ではなく、「新味」のあるドゥテルテを新大統領に選出した。悪名高かった犯罪都市ダバオを強引な手段で「平和」な都市にしたという「実績」。あるいは、オランダに亡命中のフィリピン共産党(CPP)議長、ホセ・マリア・シソンを労働雇用担当閣僚に登用したいと提案。このようなパフォーマンスは、貧しい民衆をしてドゥテルテに期待を寄せさせたのは間違いない。もっとも「新味」があるのか、民衆の真の代表者なのかは、別問題である。

2)ドゥテルテ新大統領の基盤

 ドゥテルテ新大統領の政治的基盤はきわめて脆弱だ。彼は力強い政治運動、政治グループの支持で当選したわけではない。どこの国でも似たような現象が生まれているが、巧みなパフォーマンスで人気投票に近い選挙の勝利者になったと言える。特に効果的だったのが、既存のエリート政治家とは違うというパフォーマンスだ。
 パフォーマンスで勝利したことは、選出後、権益を享受している既存のフィリピン支配層、政府官僚からの介入とどのように折り合いをつけるかが問題である。どこの国でも同じだがフィリピンでも、フィリピン支配層は自身の利益のために政府を動かすいくつもの「手」を張り巡らせている。
 この点でドゥテルテは、フィリピン支配層や米政府との間に、特に対立を引き起こしてはいない。その調整はすでに完了しているのであろう。

3)「法人税を下げる」と公言

 ドゥテルテ新大統領は法人税を下げると公言している。新自由主義的な経済発展を構想しているし、フィリピンの支配層、とくに資本家層の代理人にほかならない。フィリピン資本家のみならず米日政府も支持する。
 また、選挙期間中、ドゥテルテは「反米発言」し、中国との関係改善を示唆したが、他方で米軍を再駐留をさせる米比新軍事協定を高く評価した。当選後、米比の安全保障体制を是認する態度を明確に示した。米政府はドゥテルテを批判せず静かに見守っている。すでに何らかの折り合いをつけているのであろう。
 また、フィリピン支配層や米国資本に、自分こそはミンダナオを開発できるとアピールし期待を集めている。ミンダナオは石油、鉱物資源が豊富であるが、過去の強引な侵略、開発は、住民の批判を浴び、MILFやNPAの勢力も根強い。ドゥテルテは、自分こそがミンダナオに和平をもたらし開発を進めることができるとアピールしている。この点もフィリピン支配層や米国政府に支持されるだろう。

 このように見れば、ドゥテルテ新政権はアキノ政権の下で達成した経済成長の上に、その路線を引き継ぎ大胆に発展させることを狙っているように見える。
 ミンダナオに和平をもたらそうとしているのは事実であろう、経済活動には和平が必要だからだ。CPPやNPA、またMILFとの和解、あるいは体制内への取り込みは、フィリピン経済のさらなる発展にとって必要になっている。治安を改善し警察・公務員の汚職をなくすことは、海外からのさらなる投資を呼び込む上で必要だ。
 ドゥテルテのパフォーマンスには、フィリピン支配層の要望が表現されていると見なければならない。
(6月24日記)

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マイナス金利の意味は? [2008-9世界経済恐慌]

マイナス金利の意味は?

1)波乱のスタート

 2016年は年初より、株式市場は波乱のスタートである。2015年8月の急落に続く大きなショックだ。今年に入って世界の株式時価総額は8兆ドルくらい減った。リーマン・ショックが起こった08年9月でも5兆ドルくらいだった。当時以上の株価下落が発生している。
 2015年末には、「新年は株価が順調に上昇する」との見方が支配的だった。新聞各紙の掲げた経営者の年頭の見通しを見れば明らかだ。しかし、その予想はいきなり外れた。プロの経営者の見通しは外れた。株価はいきなりの下落で始まった。しかもその後、乱高下が止まらない。
 株価下落の原因は、世界経済が変曲点を迎えたからである。2008サブプライム恐慌以降、大量の金融緩和により新興国を中心に世界経済は緩やかに上昇してきたが、大量の緩和はバブルを形成し、その破綻の局面を迎えている。日本だけ見れば、ゼロ成長であった分だけ、すなわち国内投資がきわめて低調であっただけ、日本経済はバブルに至っておらず、相対的に見れば健全である。しかし、日本経済はあくまで世界経済の一部であり、その結びつきはこれまで以上に一体化している。世界経済の変曲点は、日本経済をも支配する。

2)現局面に、どのようにして到達したのか?

 2009年以降、サブプライム恐慌からの回復過程における量的緩和の規模は極めて大きかった。資本主義は恐慌とバブルを繰り返しているが、恐慌からの脱出は必ず恐慌の規模以上の金融緩和によってなされる、すなわちより大きな恐慌を準備することによって恐慌から脱出しようとする。
 現在の金融混乱は、中国経済の減速、原油安が引き金になっている。大規模な金融緩和によって大量に余った資金は、中国経済の成長をあてにして大規模に投資された。2011年ころにはすでに減速しつつあったにも関わらず、あふれる資金は原油や資源開発に投資された。シェールオイル開発を加速させ、さらに多くの資金がつぎ込まれた。その結果、資源バブルがはじけたのは、実需の後退し始めた2011年ではなく、2015年8月であった。
 原油価格が急降下した。実際の原油需要は低下していたにも関わらず、4年間にわたって資金は開発投資され続けた。これを「バブル」という。これが資本主義である。
 バブルははじけて初めてバブルとなる。はじけないうちは投資しない資本は利益を上げる機会を失う。だから、はじけるまで誰もが競って投資する。そうして、爆発力を大きくした後ではじける。資本主義はこの資本主義的過剰生産恐慌から逃れることができないし、解決する力を持たない。あとから、「あれはバブルだった」、「資産を持たない者にサブプライムローンを組むのはおかしい」と誰もが指摘し批判する。しかし、事前に指摘し、投資行動をやめる者は一人としていない。「サブプライムローン」はあれほど批判されたたが、現在は、住宅ではなく車向けにすでに復活している。
 
 その結果が、原油価格の30ドルへの低下である。「原油価格の下落」という道筋を通って、金融危機が生まれかねない情勢となった。
 原油価格の下落は、産油国の政府財政を一挙に悪化させた。そのため、サウジアラビア通貨庁、カタール、クウエートなどの湾岸諸国が蓄積したオイルマネーを、世界株式市場、債券市場に投資してきたが、これを大量に一挙に引き上げ、政府赤字を補填している。そのことで、株価は乱高下し、金融市場は動揺している。オイルマネーが金融市場から引き上げるという「流れ」は、原油価格が上昇しない限り、続きそうだ。
 オイルマネーの動きを見て、あらゆる投資家のあいだで、運用リスクを避けるため投資の引き揚げ、手控えが広がった。これが「世界経済の減速化」をもたらした。

 原油価格の低下は、米国シェールオイル資本を直撃している。全体で100兆円規模とされる開発資金の大半は高利で調達しており、ハイイールド債などとして世界中の投資信託に組み入れられすでに世界中で販売されている。「サブプライムローン」と同じ仕組みだ。原油価格の下落により、シェールオイル資本が破綻すれば、大量の不良債権が生まれる。

 大量の緩和マネーが世界市場にあふれかえっており、何かのきっかけで過剰生産恐慌を引き起こす。どのような道筋を通って起きるか特定できないが、いくつもの可能性が横たわっている。「中国経済の減速」や「原油安」は、世界経済減速(=資本主義的過剰生産恐慌)の「原因」ではなく、あくまで一つのきっかけ、道筋に過ぎない。一つのきっかけを取り除いたら、別のきっかけが現れるだろう。小さな破綻が引き金となり、一斉に資金を引き揚げる事態に陥りかねない。2016年初から、世界の金融市場は、破綻の切迫に怯えている。

3)日銀のマイナス金利

 日銀の取るべき手段が、その選択肢が、いよいよなくなってきたということだ。
 市場が不安定になっている。しかし、中央銀行によって、これを押しとどめることができない局面に入っている。

 「今回の危機を回避するには、中国の減速や新興国の債務問題、とりわけ民間企業の債務問題の解決に目途がつけば」と言われ、また、「低水準な原油価格が上昇すれば危機は回避できる」といわれる。
 表面上の経済指標を追っかけていれば、そのような「希望的観測」が生まれるのは、いつものことだ。
 確かに、原油価格が上昇すれば、原油価格下落で破産する企業がなくなり、貸し付けている資金は不良債権にならず、貸し付けている金融機関、投資信託などを購入している投資家など、破産の危機は回避できるはず、と関係者が考えるのは「手に取るようにわかる」。
 しかし、同じ理屈で別のシナリオもあるはずだ。原油価格下落でシェールオイル資本が破産し、投資している世界中の金融機関や投資家が損を確定し、一部が破産すれば、直ちに原油価格は上昇し始める、とも言えるのだ。

 どちらになるか、誰もあらかじめ決めることができない。関係者の希望によって、あるいは中央銀行の金融政策によって決まらないのが、肝心なのである。
 資本主義の無政府性であり、資本主義は過剰生産恐慌を避けることができないという「真実」を、またしても確認せざるを得ないのである。(2月22日)
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アンバ・バーラから、カサナグの会総会へのメッセージ [フィリピン労働運動]

 アンバ・バーラ(バタアン労働組合連合)のエミリーから、三多摩カサナグの会31回総会に向けて、メッセージが送られてきました。3月5日の総会に送られてきましたので、少し遅れてしまいましたが、ブログに転載します。

**********


三多摩カサナグの会 第31回総会への連帯メッセージ

 2000年にカサナグの総会へ初めて連帯メッセージを書いてから16年が経ちます。その時私はまだ22歳で若く、気分はティーンエイジャーでした。その年の9月18日私は逮捕され、キャンプ・アギナルドに入れられました。もう随分昔の話です。

 それからはあっと言う間でした。私たちは歳をとり、肉体的にも弱くなっています。ですから、今、私たちに出来ることは限られてきています。しかし、あなたがたは今年もこうして、総会を開いています。

 私たちは、中国の敵対的戦略や資本主義体制に抗しながら、組織し闘う英知を持ってなんとかやり抜いてきました。そして、正に今、私たちは世界の英雄として存在してきたアメリカが弱体化していると確信しています。アメリカは中国との競争に四苦八苦しています。現在、様々な戦略で対抗しようとしています。

 そうです、私たちは現在若者が置かれている状況を改革すべく、限られた時間を有効に使いながら活動を続けたいと思います。私たちは最新技術であるインターネットを最大限活用しながらその作業を進めています。

 私たちには、若者を組織する必要があります。でなければこの資本主義独占体制を永続させることになります。私たちが受け継いだ闘いの炎を、若者たちに伝えなければなりません。この責務をやり遂げることは、辛く大変なことです。しかし、私たちが正しい戦術を持って、諦めることなく若者たちに接していけば、それは克服できると思います。これは、あなたがただけの問題ではなく、労働運動全体の問題です。

 私が二十歳の時、あるアンババーラのスタッフが私の家に来たことを思い出します。彼女は、毎日、朝となく夜となく私を訪ねては、職場で私たちが置かれている問題について話しました。それは私がアンババーラの事務所でフォーラムを受けるまで続きました。

 その後、私は会社での労働運動の指導者となりました。会社が倒産した時、私たちは直ちにピケをはり、5ヶ月間闘いました。退職金を手にしたあと、私は実家に戻り、母に「マニラに行って仕事探す」と話しました。しかし本当はマニラには行かず、マリベレスに戻って専従になったのです。その時の私は若く、自信に満ちていました。

 それでも、現在アンババーラ傘下の指導者や組合員を指導するのは、私にとって大変な仕事です。今組織化しようとしているデスク・トップアソシエイションには有望な指導者たちがいます。私たちに大切なのは、彼らとの信頼関係をどうつくるかです、最善を尽くしたいと思います。

 私の話をしてしまってすみません。しかし、皆さんには若者たちを組織することの大切さを理解してもらえると思います。何故、総会に向けたメッセージで、若者たちの組織化についてこだわっているのでしょう? 何故なら、彼らこそが労働運動強化に不可欠だからです。彼らには、語学力があり、技術を最大限使え、知識も豊富です。まだ自覚はしていないところがありますが、若い感性は想像力そのものです。

 私は、日本やフィリピンだけでなく、世界の労働運動で、闘いを継続するために若者たちを組織する必要があると思っています。私たちの世代が、闘いの成果を勝ち取るのは難しいでしょう。しかし、私たちが今日蒔いた種は、次世代によって水と「天然肥料」を与えられ、そう遠くない将来収穫されることでしょう。これが私の描く理想の未来です。夢を持ってその実現のために活動を始めましょう。階級のない社会、社会全体が子供たちを育む社会、社会主義的世界です。

 私たちが夢見る世界の実現に向けて最善の努力をしてもらえることに感謝します。心に闘いの炎を共に灯し続けましょう。困難ですが、実現できることでしょう。

 31回目の総会、本当におめでとうございます!
 世界の人びとの闘い万歳!
 私たちへのご支援に感謝します、またお会いしましょう!
 連帯して! 
 アンババーラスタッフ:エミリー、アナベル、デレク、ノエル

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これからは、恐慌局面 [世界の動き]

これからは、恐慌局面

1) 波乱のスタート

 2016年は年初より、株式市場は波乱のスタートである。2015年8月の急落に続く大きなショックだ。今年に入って世界の株式時価総額は8兆ドルくらい減った。リーマン・ショックが起こった08年9月でも5兆ドルくらいだった。当時以上の株価下落が発生している。
 2015年末には、「新年は株価が順調に上昇する」との見方が支配的だった。新聞各紙の掲げた経営者の年頭の見通しを見れば明らかだ。しかし、その予想はいきなり外れた。プロの経営者の見通しは外れた。株価はいきなりの下落で始まった。しかもその後、乱高下が止まらない。
 株価下落の原因は、世界経済が変曲点を迎えたからである。2008サブプライム恐慌以降、大量の金融緩和により新興国を中心に世界経済は緩やかに上昇してきたが、大量の緩和はバブルを形成し、その破綻の局面を迎えている。日本だけ見れば、ゼロ成長であった分だけ、すなわち国内投資がきわめて低調であっただけ、日本経済はバブルに至っておらず、相対的に見れば健全である。しかし、日本経済はあくまで世界経済の一部であり、その結びつきはこれまで以上に一体化している。世界経済の変曲点は、日本経済をも支配する。

2)現局面に、どのようにして到達したのか?

 2009年以降、サブプライム恐慌からの回復過程における量的緩和の規模は極めて大きかった。資本主義は恐慌とバブルを繰り返しているが、恐慌からの脱出は必ず恐慌の規模以上の金融緩和によってなされる、すなわちより大きな恐慌を準備することによって恐慌から脱出しようとする。
 現在の金融混乱は、中国経済の減速、原油安が引き金になっている。大規模な金融緩和によって大量に余った資金は、中国経済の成長をあてにして大規模に投資された。2011年ころにはすでに減速しつつあったにも関わらず、あふれる資金は原油や資源開発に投資された。シェールオイル開発を加速させ、さらに多くの資金がつぎ込まれた。その結果、資源バブルがはじけたのは、実需の後退し始めた2011年ではなく、2015年8月であった。
 原油価格が急降下した。実際の原油需要は低下していたにも関わらず、4年間にわたって資金は開発投資され続けた。これを「バブル」という。これが資本主義である。
 バブルははじけて初めてバブルとなる。はじけないうちは投資しない資本は利益を上げる機会を失う。だから、はじけるまで誰もが競って投資する。そうして、爆発力を大きくした後ではじける。資本主義はこの資本主義的過剰生産恐慌から逃れることができないし、解決する力を持たない。あとから、「あれはバブルだった」、「資産を持たない者にサブプライムローンを組むのはおかしい」と誰もが指摘し批判する。しかし、事前に指摘し、投資行動をやめる者は一人としていない。「サブプライムローン」はあれほど批判されたたが、現在は、住宅ではなく車向けにすでに復活している。
 
 その結果が、原油価格の30ドルへの低下である。「原油価格の下落」という道筋を通って、金融危機が生まれかねない情勢となった。
 原油価格の下落は、産油国の政府財政を一挙に悪化させた。そのため、サウジアラビア通貨庁、カタール、クウエートなどの湾岸諸国が蓄積したオイルマネーを、世界株式市場、債券市場に投資してきたが、これを大量に一挙に引き上げ、政府赤字を補填している。そのことで、株価は乱高下し、金融市場は動揺している。オイルマネーが金融市場から引き上げるという「流れ」は、原油価格が上昇しない限り、続きそうだ。
 オイルマネーの動きを見て、あらゆる投資家のあいだで、運用リスクを避けるため投資の引き揚げ、手控えが広がった。これが「世界経済の減速化」をもたらした。

 原油価格の低下は、米国シェールオイル資本を直撃している。全体で100兆円規模とされる開発資金の大半は高利で調達しており、ハイイールド債などとして世界中の投資信託に組み入れられすでに世界中で販売されている。「サブプライムローン」と同じ仕組みだ。原油価格の下落により、シェールオイル資本が破綻すれば、大量の不良債権が生まれる。

 大量の緩和マネーが世界市場にあふれかえっており、何かのきっかけで過剰生産恐慌を引き起こす。どのような道筋を通って起きるか特定できないが、いくつもの可能性が横たわっている。「中国経済の減速」や「原油安」は、世界経済減速(=資本主義的過剰生産恐慌)の「原因」ではなく、あくまで一つのきっかけ、道筋に過ぎない。一つのきっかけを取り除いたら、別のきっかけが現れるだろう。小さな破綻が引き金となり、一斉に資金を引き揚げる事態に陥りかねない。2016年初から、世界の金融市場は、破綻の切迫に怯えている。

3)日銀のマイナス金利

 日銀の取るべき手段が、その選択肢が、いよいよなくなってきたということだ。
 市場が不安定になっている。しかし、中央銀行によって、これを押しとどめることができない局面に入っている。

 「今回の危機を回避するには、中国の減速や新興国の債務問題、とりわけ民間企業の債務問題の解決に目途がつけば」と言われ、また、「低水準な原油価格が上昇すれば危機は回避できる」といわれる。
 表面上の経済指標を追っかけていれば、そのような「希望的観測」が生まれるのは、いつものことだ。
 確かに、原油価格が上昇すれば、原油価格下落で破産する企業がなくなり、貸し付けている資金は不良債権にならず、貸し付けている金融機関、投資信託などを購入している投資家など、破産の危機は回避できるはず、と関係者が考えるのは「手に取るようにわかる」。
 しかし、同じ理屈で別のシナリオもあるはずだ。原油価格下落でシェールオイル資本が破産し、投資している世界中の金融機関や投資家が損を確定し、一部が破産すれば、直ちに原油価格は上昇し始める、とも言えるのだ。

 どちらになるか、誰もあらかじめ決めることができない。関係者の希望によって、あるいは中央銀行の金融政策によって決まらないのが、肝心なのである。
 資本主義の無政府性であり、資本主義は過剰生産恐慌を避けることができないという「真実」を、またしても確認せざるを得ないのである。
 (2016年3月7日記、文責:小林治郎吉)

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辺野古報告 2月25日 [沖縄、基地反対]

辺野古報告 

 辺野古に基地をつくらせない実行委員会として辺野古に行きました。
 平田一郎によるその報告です。

2月25日、木曜 二日目
 ゲート前6時半到着 新しいジュゴンバルーンを膨らませてメーンゲートでまず、写真をパチリ。
 すぐ講じようゲートへ。

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<ゲート前のジュゴン・バルーン>

 まもなく、機動隊が列をなして面前に行列。こちらは150人強。
 150人の機動隊に強制排除され、犬猫のように策の中へ。ダンプ3台?などが進入。

 その後、懸命に柵を抜け出し、いったん同行者3人で、辺野古浜へ。今日で4,330日目。座り込み日数の看板が新しくきれいになっていた。

160225_1516-01 浜テント 4330日目.jpg
<辺野古浜テント 4,330日目>

 2人は船で海上抗議に。平田はカヌー行動へ。
 海上は風があったが、辺野古崎まで漕ぐ。だいぶ慣れてきた感じ。そこがあぶない。
 波が高かったが、長島の大浦側へ。昨日は強風で海上は中止 だったら しい。このところ雨と風に妨害されている。

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辺野古報告 2月27日 [沖縄、基地反対]

辺野古報告
第4日目 平田

 2月27日土曜 座り込み601日目。座り込み50人に機動隊150人が来ました。

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<瀬長さん司会>

160227_0703-01 撤去されたジュゴンバルーン.jpg
<撤去されたジュゴンバルーン>

 ゲート前にいる警察車に抗議しみんなで取り囲む。

 一週間、ブロックを積んで閉鎖を繰り返した場所に、警察の黒いワゴン車が駐車し続けている。この車が、一晩中エンジンをかけっぱなし。
 民間警備会社アルソックの警備員にも、座り込みをするわれわれにも、たっぷりと排気ガスを吸わせている。エンジンを止めろと強力に抗議。
 ワゴン車がゆれ始まった。エンジンが切れるまでゆれていた・・・
 そして機動隊150人が出動、強制排除、柵の中へ。土曜日にも進入してくるのか。防衛局は一貫性を失っている。昨日金曜は進入なしだった。

 9時過ぎ、機動隊200が出動。2回目の排除。バルーンまで排除された。7時す ぎに工事車両10数台が進入。瀬長さんの司会で集会再開。大城名護市議の挨拶、うるま市の島ぐるみ会議の宮城さんが歌を披露。京都の反ヘイト運動の若い女性が報告。全労協の仲間が挨拶。安さんの歌で立ち上がれ!で 休憩。

 安次富さん報告。観光バスか新基地工事の案内観光をしているので、辺野古漁港の一つのゲートを施錠を漁協がした。しん駐車場を考えている。。名護市議大城さんが辺野古には25000人が伊江島、本部、今帰仁の3村から強制収容所にいてはっきりとどこに墓を作ったか場所をおぼえている人もいる。遺骨収集法ができて名護市、県を通して追求してい。 すぐ後、機動隊150人か囲い込みダンプカー6台進入。


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 帰路の普天間、佐喜真美術館に向け辺野古出発。

 ゲート前にいる警察車に抗議しみんなで取り囲む。機動隊200が出動。バルーンまで排除された。7時すぎに工事車両10数台が進入。瀬長さんの司会で集会再開。大城名護市議の挨拶、うるま市の島ぐるみ会議の宮城さんが歌を披 露。京都の反ヘイト運動の若い女性が報告。全労協の仲間が挨拶。安さんの歌で立ち上がれ!で 休憩。帰路の普天間、佐喜真美術館に向け辺野古出発。

 普天間を見渡す嘉数高地でオスプレイ飛行を確認。那覇に向かい不屈館、瀬長亀次郎記念館へ。

160227_0934-01 土曜日の機動隊02.jpg
<土曜日の機動隊>

 翁長知事がたえず繰り返す、「銃剣とブルドーザーで奪われた土地」のBS NHKのVTRを見た。帰り間際に手に取った「民族の悲劇」、この本に、真和志村(現那覇市の一部)銘刈、伊佐浜、伊江島の土地強奪の詳細が書いてあった。まんがよりおもしろい本だ。強圧は闘いを生み出すという瀬長亀次郎の真骨頂のとても丁寧に書かれた本だった。

 翁長知事の父、真和志村長で歌人だった翁長助静、瀬長亀次郎、ともに1907年生まれ。
 助静氏を検索したら、タイムスの特集に「敗残兵が住民を避難壕から追い出し、食料を奪うのを何度も見た」と書い ていた。

 先に読んだ翁長知事著「闘う民意」1,500円 角川 2015年12月刊、第4章に助静氏の歌と体験の一部が書いてあった。
 95年小学生暴行事件の県民集会のときより多い人々が、教科書集団自決削除の抗議県民集会に結集した(と記憶している)。

 沖縄地上戦の体験は、僕が想像もできないほど深い悲しみ苦しみに満ちていると思った。
160301_0050-01 闘う民意 翁長雄市著 角川1502刊16022版.jpg
<闘う民意 翁長雄志著 角川>
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辺野古報告 2月26日 [沖縄、基地反対]

 平田さんから辺野古報告が送られてきた。

*******************
辺野古報告

 第3日目 平田一郎

  2月26日金曜 歌で座り込み集会 開始。いま150人。今日で600日目の座り込みだ。
 今日は風も弱く、薄曇りです。辺野古崎まで漕いで到着。監視行動。
 太平洋軍司令官ハリスが「工事は遅れて、2025年完成、抗議運動は拡大している」と議会に報告。後日、菅官房長官が否定に躍起になった。

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<辺野古ゲート前 座り込み 600日>

 まだ暗いうちにコンビニで会った糸数慶子さんが一番で挨拶、ジュネーブ女性差別撤廃委員会報告、遺骨収集法制定。ガマフヤーの具志堅さん辺野古収容所あとの集骨を訴えていると紹介。

 どういう風の吹き回しか、機動隊も工事車両も来なかった。
 防衛局は工事をさぼっている?

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 10時半にテント2へ。カヌーは今日は7艇で出航。辺野古崎まで漕いで40分、工事監視と抗議行動。
 作業船もなく、沿岸の 工事の動きもなく、ただ、ボーリングの作業が見られた。

 風も出てきて、長島の浜に上陸、サンゴのかけらが敷き詰められた浜は美しい。全部サンゴ。

 長島の浜で昼食後、灯台まで登って周囲を見渡すと工事区域がすべて見渡せる。
 海域をぐるっと囲むオレンジのフロートとオイルフェンスが許せない。日本政府が米軍に差し出した海と陸が腹立たしい。

 所々、オイルフェンス(黄色の横長の列)がビニールカバーが破れ、発泡スチロールが列をなしてむき出しになっている。
 前回着たときには、列をくるんだ結びの帯が10m以上はがれて海底に沈んでいるのを回収した。


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 辺野古崎には、2万5千人が45年6月以降、強制収用され、マラリアと飢えに苦しみ、数千人の墓地があり、い まだに遺骨が眠っていると
 地元の大城市議がゲート前でいつも繰り返し説明している。

 少し陽が差してきれいなサンゴ礁を2時半ごろ後にした。
 ゲート前に急ぐと、機動隊の動きがまったくなかったので3時に座り込み集会を終了したとのこと。
 明るいうちに、宿に帰った。

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<ゲート前であいさつする糸数慶子参議院議員>



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米大統領選、いつもと様相が違う! [世界の動き]

米大統領選、いつもと様相が違う!

1)一体、何が起きているのか?

 アメリカ大統領選挙が始まった。莫大な金を使い、人々を躍らせ騙し新しい支配者を選ぶ、壮大かつ愚かなショーが、いつものことだが一年近くも続くのか、うんざりだと、少しバカにして眺めていた。ただ、今回は様相が少しちがうのだ。

 共和党の「右派の良識ある三人の候補」、ジェブ・ブッシュ、マルコ・ルビオ、ジョン・ケーシックは、テッド・クルーズ候補の鋭い愚弄に突き刺され、ドナルド・トランプ候補の無秩序な罵倒に圧倒されている。その結果、ジェブ・ブッシュは、2月21日ネバダ州の代表戦のあと敗北を認め選挙戦を降りるところへ追い込まれた。この結果には驚いた。

Bernie Sanders.jpg
<民主党、バーニー・サンダース候補 >

 それ以上に驚いたのは、民主党代表選である。注目すべきは、民主社会主義者バーニー・サンダース上院議員が、予想以上の支持を集めていることだ。

 サンダース候補は、社会主義者と自称して大統領選を戦い、しかも支持を得ている。今までなら、集中的な「アカ」攻撃を受けつぶれていた。今回、本質的に「様相が違う」のはこのことだ。オバマさえ「社会主義者」、「アカ」と非難された。
 オバマは「チェンジ」といった。サンダースは「ポリティカル・レボリューション」と表現している。

 多数の小口の寄付者がサンダース候補を支持し、8年前のオバマ支持運動と似た様相を見せている。ただし、サンダース支持者らは「稀代の詐欺師」(ラルフ・ネーダー)であるオバマに裏切られた経験を持っている。

 「ヒラリー・クリントンはウォール街から大口の献金で操られたエスタブリッシュメント=支配階級だ」とサンダースは批判している。この批判は、正確であり見事に当たっている。クリントンは申し開きができない。
 クリントンは、イスラエル・ロビーと親しい。ネオコンとも親しく、彼らの危険な戦争を支持している。国務長官時代に何をしたか? ウクライナやシリアで代理戦争をしかけた。アメリカ政府内のネオコンと、クリントンは一体である。

 「全米エリートは、大統領選の今の展開にショック状態」なのだそうだ。本来ならば、ブッシュとクリントンの二者択一のはずだった。ところが、これまでのどの大統領選よりも予想もしない展開であり、劇的に「アウトサイダー」によってひっくり返された、という。

2)どうしてこんなことになったか?

2)-1、理由1:米国人が怒っているからだ!

 「米国人が怒っているからだ。最富裕層の所得が急激に増える一方で、賃金の中央帯は停滞したままだ。白人のキリスト教徒はマイノリティになった

 米国社会は、ウォール街とつながった少数のパワーエリートが支配しており、大多数の米国人が政治から排除されている現状に嫌気がさしており、エスタブリッシュメント(=支配階級)への怒りが溜まりに溜まっている。

 前回の大統領選でもその兆候は見えていた。アラスカのサラ・ペイリン知事が共和党の候補戦を混乱させ副大統領候補になった。地方に住む、白人層が支持した。この層はキリスト教右派支持層と重なり、堕胎反対、移民排斥を主張する共和党の支持者であった。地方に住む白人層は、ニューヨークなどの大都市の富裕層とは違って、貧困化し社会の発展から取り残されたと感じている。リーマンショックで破産し、家を失った人、没落した人も多数いる。

 共和党の支持層=地方の保守的な白人層、キリスト教右派の間に、米社会の富裕層、エリート層、ウォール街=支配階級に対する怒りが充満している。サラ・ペイリンはかつてその象徴だった。現在はトランプ候補やクルーズ候補が、この人々の怒りを背景に支持を集めている。
トランプ.jpg
<共和党、ドナルド・トランプ候補>

 トランプ候補は群衆を「魅了」し、2014年7月から世論調査で優位に立つ。トランプ候補もクルーズ候補も、一貫した経済学や経済政策を持ち合わせていない。論理の一貫しないけれども、目の前のエスタブリッシュメントたちを、罵倒、愚弄しまくったことで、疎外されたと感じている米国人の多くは「爽快感」を感じている。ただし、エリートに対する論理の一貫しない罵倒、愚弄は、いつどのように買収され収束するかわからない面をも併せ持つ。
 
2)-2、理由2:アメリカ民主主義制度の自己崩壊
 アメリカ大統領選は、莫大な金を使い、人々を躍らせ騙し新しい支配者を選ぶ、壮大かつ愚かなショーだ。金持ち、メディアを握る者、パワーエリートが操ってきた。この「やり方」をよく学び極端化させたのが、トランプやクルーズなのだ。マスメディアでの効果を狙い、大量の資金を投入し、これまでの大統領選挙でやってきたことの、そのまま発展、進化に他ならない。そのことを思い知らなければならない。

 目の前に展開している「罵倒」、「愚弄」にあふれた論戦、大統領選は、アメリカ民主主義のこれまでのやり方の帰結であり、発展である。米国の国民支配システムの「これまでの仕方、やり方」ににおいて、トランプとクルーズが「秀でている」からである。
 トランプ候補やクルーズ候補を批判して見せる保守本流は、自分たちがこれまでやってきたことの帰結であることを認識していない。
テッド・クルーズ.jpg
<共和党、テッド・クルーズ候補>

 この展開にショックを受ける者は、アメリカ民主主義がすでに形骸化し、富裕層、ウォール街、エリート層の操る政治にしてきた現実を、ただ認識していないに過ぎない。目の前に起きているのは、形骸化の頂点に達したアメリカ民主主義制度の自己崩壊、自己変質である。

2)-3、理由3:貧困化した民衆が増大するアメリカ社会

 この理由が、最も重要だ。

 民主党のサンダース候補は、30歳以下の若い世代から圧倒的な支持を得ている。富裕層が所得を急増させ続けている一方で、富豪の家族でない若者は、大学に行けば巨額の学資ローンを抱えなければならないのであり、高卒で働けば低賃金の仕事しかない。現代アメリカ社会は、何か災難にあえば、すなわちリーマンショックに遭遇したり、事故・病気になったりすれば、その先には破産が待ち受けている。希望がない社会である。
 アメリカ社会のこの深刻な変化こそが、サンダースを押し出しているものである。「アカ」攻撃の宣伝をされても、支持者たちは「何が悪いのか!」という態度なのだ。

 サンダース候補はクリントン候補を、ウォール街の代表者、富裕層の代表者、金融資本から大口献金を受けた候補者と批判している。まったくその通りであり、クリントン候補はこれまでと同じエリートの代表である。サンダース候補は、正面から批判し、人々の支持を集めているのである。
  
 内容は違うけれども、民主党でも共和党でも、エリート層に対する批判と怒りが集中している点では同じであり、いずれも貧困化、格差社会化した米社会に対する怒りと批判が、今回の予備選を支配している。

2)揺らぐ二大政党制の大統領選

 アメリカの二大政党制は、どちらの政党が大統領を出してもパワーエリートやウォール街による支配システムに変更がないように設計されており、そのように機能してきた。支配層の息のかかっていない候補を大統領選の前にあらかじめ排除するシステムである。
 候補者になるためには莫大な資金がいる、マスメディアにたたかれて放逐されないようにふるまわなければならない、・・・・様々な関門があって、「アウトサイダー」が大統領候補になるのを排除するシステムであり、これまで確実に排除してきた。

 少数政党も排除される。これまで、二大政党以外から大統領選に立候補したこともあったが、ことごとく失敗し、葬られた。ロス・ペローは1992年、無所属で出馬したが敗北した。

 エスタブリッシュメントやウォール街にとって、大口献金やマスメディアによるコントロール、人材供給により民主党、共和党を支配しておれば、だれが大統領になっても支配は揺るぐことはないと想定され設計されているシステムなのである。

 興味深いのは、サンダース候補は2015年民主党に加わり、トランプ候補は2009年に共和党に再入党したことだ。二大政党制をとるアメリカでは、アウトサイダーの政治家であってもいずれかの党に属し、党の大統領候補にならなければならない。

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<民主党 ヒラリー・クリントン候補>

 二大政党制はエスタブリッシュの支配システムに過ぎないけれども、この制度のなかで闘ってはじめて闘いになるとサンダース候補は判断し、民主党の大統領候補になる道を選んだのだと推測される。現存の制度を「バカ」にして無行動に陥るのではなく、現存の制度のなかで可能性を探ったのではないか。

 オバマが大統領になっても、支配は何も変わらなかった。変わったのは皮膚の色だけだった。しかし8年前、オバマに小口献金し、支持し、オバマを大統領にしたのは大規模なアメリカ民衆の運動だった。オバマは民衆によって選出されたが、民衆の代表ではなかった。そのことは、大統領になった後に、判明し、だれもが認識した。選挙運動に参加した多くの人は、その裏切られた記憶、失望した経験を持つのである。

 今回の予備選では、エリート層に対する怒りが激しく、貧困化した民衆の反乱が米社会の広範に広がり、「アウトサイダー」が勝つ勢いなのだ。

3)時代が変わる?

 これまでもこのような候補はいた。ポピュリズムによるスリル満点の壮大な政治的なショーが繰り広げられながら、有権者がショーから覚め現実をしぶしぶ認識した時期にこういった候補者たちは姿を消していった。
 しかし、今年は現段階までは、そのショーから覚めないまま終盤まで続いている。共和党の主流派がオバマ大統領を批判した口実が広まったことによって、トランプ氏とクルーズ氏の大衆迎合的な考え方に力を貸してしまい、どう対処していいのか窮し、「自縄自縛」に陥っている。

 米国の支配層、富裕層、エリート層が、これまで民主主義をもてあそび巨額の金額を使った政治ショーに仕立て上げ、形骸化させ、自分の都合よいようにコントロールしてきたそのツケが、自身の支配システムをコントロールできなくしている。その光景を見るのは、少々痛快だ。笑ってしまう。
 
 そもそも虚偽であった「アメリカ民主主義」システムがとうとう死滅していく様、腐敗きわまる姿として、歴史にその姿を刻むということなのだろうか。これまでは騙されていたが、もはや「幻想」を抱く者はいなくなるのか。

 今回の大統領選には、エリート層、すなわち米国の支配階級に対する人々のかつてない怒りが満ちているように見える。
 オバマを選んだ民衆は騙されて、幻滅を経験させられた。サンダース候補の予備選がこの先、どのようになるか不明だ。また敗北するかもしれない。
 ただ言えることは、いくつもの敗北を重ね、裏切られ騙され、そのような政治的過程を繰り返して、時代が大きく変わる、変革が起きるということではないか。

 米大統領選に注目している。(2月22日記、文責:林 信治)


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映画『太陽がほしい』を観る [元「慰安婦」問題]

映画『太陽がほしい』を観る
  
 11月2日、明治学院大学で班忠義監督映画『太陽がほしい』の上映会があり、観た。一部、二部 2時間44分。班忠義監督は20年間、中国の「慰安婦」被害者、戦時性暴力被害者を追い、撮りためた映像をまとめて作品にした。中国の山西省を中心とする被害者たちが名乗り出てから亡くなるまでの、日々の暮らし、生きた姿を描き出している。

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<高銀娥さん>

1)被害者は、安倍首相の嘘を暴く

 映画に登場する山西省の被害者たち、万愛花さん、尹林香さん、劉面換さん、尹玉林さん、高銀娥さん、郭喜翠さんらは、みな日本軍に捕まり、駐屯地やヤオトン、トーチカに監禁され、レイプされた。慰安所に入れられたわけではない、戦時性暴力被害者だ。被害が起きた村は、山西省の前線であり、慰安所もなかった。

 安倍首相は「慰安婦女性を強制連行した証拠はない」と発言し、2007年安倍内閣では閣議決定までした。日本の新聞、TV、週刊誌は、そのまま口移しに「強制連行の証拠はない」と報道している。しかし、山西省の被害者たちの被ってきた被害は、安倍首相の発言がまったくの嘘だと暴く。

 被害者は皆、日本兵の銃剣で脅され、駐屯地に連れていかれた。「強制連行」である。「強制連行」の証拠ばかりが目の前に映し出される。監督は映画で、安倍首相の言葉が嘘であることを暴いて見せた。もちろん、被害は「強制連行」だけが問題なのではない。

2)山西省の張双兵さん
 被害者が名乗り出るには、相当な苦労があったことを映画は感じさせる。20数年前に班忠義監督が現地を訪ね、証言を映像に記録したいと申し出たとき、被害者らは顔色を変え即座に家に逃げ帰り、戸を閉め切ったという。それは被害者たちが被害のあとどのように扱われてきたかを物語っている。
 監督は、現地で被害者を支援する山西省の小学校教師、張双兵さんと出会い、何度も通ううちに被害者と会うことができるまでになったという。
 名乗り出た被害者も立派だけれど、張双兵さんのような人こそまた立派ではないか。張双兵さんも、被害者を訪ねても、すぐには信頼してもらえなかったと語る。病気になった被害者を病院に運び、身の回りの世話もし、信頼される関係を築いてきた。
 映画は被害者と張双兵さんの関係を映し出す。張さんは田舎の教師で裕福にも見えない、権力にも縁のなさそうだ。「被害者の身の上に同情して被害を記録する活動を始めた」と語ってはいたが、そのような行動はなかなかできるものではない。
 証言をまとめ、戦時性暴力被害への謝罪と賠償を日本政府に求めるように地方政府に要請したが、日中友好、経済協力をすすめた当時の中国政府の政策に反するとされ、上司である教育長から咎められ圧力を加えられた。そのことが原因で奥さんはうつ病になった。張さんのきわめて人間的な行動は、家庭を破壊することになった。それでも張さんは、被害者の証言を聞き取る活動を続けてきた。映画は奥さんの姿もとらえる。
 こういう人が中国にいること、しかも地方にその事実に感動する。ある意味で勇気づけられる。さらには、自分にひきつけて考えなければならないと思う。
 監督が、張双兵さん、さらには奥さんの姿までとらえ映し出したところに感心した。この映画の良さの一つだ。予期しなかったろうが、こういう場面を逃さない監督のセンス、あるいは人間性を感じる。

3)万愛花を見舞う日本人グループ

 万愛花さんは、早くから名乗り出て証言をしてきた。山西省の被害者を支援する日本人のグループもいくつかあって、何度か現地を訪れているらしい。
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<万愛花さん>

 ある4,5人のグループが、病床にいる万愛花さんを訪ね、通訳らしい女性が「日本人としてすみませんでした」と謝る、一緒に来た男性は日本の男性を代表して謝るという。そして、病床の万愛花さんに向かい、参加した若い男性、別の女性も一斉に頭を下げる。
 善良な人たちなのだけれど、ちょっとした勘違いがある。万愛花さんは語る。「日本人個人に謝罪を求めているわけではない。大砲も、鉄砲も、弾薬も日本政府が準備し、戦争を起こしたのでしょう、だから日本政府に謝罪を求める」と。でもその言葉が聞こえないかのように、日本人個人の謝罪を求めていると初めから勘違いしていて、しきりに謝罪する。
 少し滑稽にも見えるその姿を、映画はそのまま映し出す。日本人グループにもいろんな人がいる。これもまた現代日本の実情の一つに違いない。そんな場面も逃さずとらえる監督の眼に感心する。決して非難のために描いてはいないこともわかる。
 映画は理念的に造るものではない。誰もがいろんな問題点や欠点を抱え生きている、その上で多くの人が世の中を、人々の関係をよくしたいと奮闘している。その姿、その現実を班監督は認めている、普通に生きている人々に対する監督の信頼を感じさせる。それはいいことだし、この映画の良さでもある。

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<袁竹林さん>

4)映画の発するメッセージ

 このように書いていくと、きりがない。映画全体を紹介しきれない。あくまで一面の一面だ。何しろ20年間撮りためた映像であり、いろんな場面がある。映し出された映像そのものにまず引き付けられるのだけれど、同時にその場面を取り上げた監督の視点の確かさにも気づかされる。この映画の特徴の一つなのだろう。監督の気持ちがよくわかる、手作り感を感じさせる映画なのだ。

 映画に登場した被害者たち、万愛花さん、尹林香さん、劉面換さん、尹玉林さん、高銀娥さん、郭喜翠さんらは、すでにみな亡くなった。その人たちがどのような被害を受け、被害に対する無理解のなかで生きて、そうして証言を残してきたその姿を、あるいは遺志を、私たちは映画を何度も見直して受け取らなくてはならないのだと思う。
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「日韓合意」―ー どうしてこんな拙速な合意が! [元「慰安婦」問題]

どうしてこんな拙速な合意が!
1)突然の日韓合意!

 2015年12月28日、日本軍「慰安婦」問題に関する日韓両国外相間の合意が発表された。たまたま、私は記者会見を見た。韓国政府による突然の態度変更とそれによる合意であり、驚いてしまった。韓国政府はそれまでの見解を撤回し、日本政府の主張を受け入れた。韓国政府側からすれば一方的な譲歩である。
 だから、被害者側からすれば、韓国政府の裏切りである。被害者の要求を無視している。人権尊重の観点からすれば、合意はその解決を放棄している。国連人権員会の勧告を無視している。
 韓国政府にとっては「とにかく合意することが目的」であったようだ。したがって「日韓合意」は、被害者も真の解決も無視して成立した日韓両政府の「談合」(金昌禄教授)、「手打ち」(吉見義明教授)であった。

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<2月5日(金)、衆院院内集会>

2)「合意」内容はどのようにひどいか!

日本政府は法的責任を認め、賠償せよ!
 岸田外相の語った合意内容があまりにひどかった。日本政府は法的責任を認めず、10億円出すが賠償ではない、「癒しの事業」だとした。内容は、日本政府の従来の主張通りになっていた。逆に言うと、韓国政府は、「法的責任」を認めたうえで謝罪し賠償せよという、これまでの主張を放棄していた。

歴史事実の認知、研究、教育を行え!
 今回の合意では、「…当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた…」と「河野談話」と同じ表現をとりながらも、河野談話が述べた「歴史事実の認知、研究、教育」については、一言も触れなかった。この点では「河野談話」からも大きく後退した。

「最終的かつ不可逆的に解決」
 最終的かつ不可逆的に解決かどうかは、韓国政府の合意ではなく、被害者に受け入れられるかどうかにかかっている。安倍首相が「最終決着」と述べ、「合意した後、蒸し返さないように韓国政府がちゃんと責任を持て」とあたかも韓国政府や被害者に条件をつけたが、そうではなく「最終決着」に責任を持たなくてはならないのは、日本政府、安倍政権である。問題は転倒しており、責任は転嫁されている。

「平和の碑」撤去要求をやめよ!
 在韓日本大使館前の「平和の碑」や、米国等で設置される記念碑は、慰安婦問題を解決しようとしない日本政府に対するグローバルな市民の批判と行動の表現に他ならない。したがって、「平和の像」の撤去が、慰安婦問題の解決ではない。日韓両政府は問題を転倒してとらえているし、「平和の像」撤去要求は責任転嫁でもある。

*********

 「慰安婦」問題の解決に当たって、国連人権員会はこれまで何度も勧告を出してきた。また2014年、第12回アジア連帯会議は「日本政府への提言」を提出し、解決の方向を示した。
 今回の日韓合意をそれらと比べてみれば、合意内容がいかにひどいかわかる。しかも、「合意」は被害者の了解なしになされた。「合意」は解決には程遠い。「内容」においても「やり方」においても、被害者を納得させるものではないし、解決する内容でもない。今回の合意では慰安婦問題を解決することはできない。

3)日本政府から韓国政府に責任が転換された?

 合意によって日本政府が実行するのは、実質10億円を出すことだけであり、合意履行にほとんど障害はない。安倍首相が被害者に直接お詫びの手紙を出すこともない。(12月28日岸田外相が記者会見で、首相の謝罪の手紙は?という記者の質問に答えて、合意の発表とおりであると答え、特に首相の手紙を準備していないとした)
 他方、韓国政府には、様々な「責任」が生まれたことになる。合意により被害者と支援団体、国民を説得する=押し付けるのは、韓国政府の仕事になった。
 10億円を受ける財団は韓国政府が設立するのだろうが、どのように運営していくかは被害者や支援団体の意向を無視して進めることはできない。すでに反対運動は広がっている。また、日本大使館前の「平和の像」の撤去は、韓国政府が関係団体やソウル市を、そして国民を説得するのだという。

 これまで韓国政府は、日本政府の法的責任を認め、公式謝罪と賠償を求めてきた。歴史事実として記録、研究、究明、教育を主張してきた。今回の「合意」でもって、これら主張をすべて放棄した。
 「合意」では、「慰安婦」問題は絶対に解決しない。今後に禍根を残す。

4)韓国政府はどうして譲歩したのだろう?

 日韓関係が悪いことが、米国で韓国の印象に悪影響を与えかねない、と韓国政府は受け取ったのであろう。韓国政府の譲歩は、何かしら日韓関係そのものの重要性を鑑みてのものではない。米国政府、特に安全保障グループからの圧力を考慮したように見える。
 韓国の中国接近に対して、米国政府内では批判が相次いできた。2015年9月「抗日戦勝70周年式典」に朴大統領が参加し、習近平、プーチンとともに天安門上に並んだ。その姿は、韓中ロ接近を象徴するものとして受け取られ、特に米国の安全保障関係者、米軍を大きく苛立たせることになった。
 また、韓国資本家、支配層にとって、TPPが妥結したことは衝撃だった。すぐには妥結しないと予想していたのだろう。自らを除外した大規模FTAの締結に、韓国資本、支配層は孤立感を深め、朴政権に米日との関係改善、同盟強化に重心を移動するように強硬に迫ったのではないかと推測される。
 とはいえ、韓国のGDPの4分の1に相当する中国との巨大な貿易を抱える韓国にとって、中国と距離を置くことも不可能。韓国政府は、中国との関係は悪化させずに、米国の懸念を振り払うことを指向したのではないか。そのための一つの行動が、「慰安婦」問題の拙速な合意なのではないか。
 したがって、「慰安婦」合意は、決して歴史認識における日本政府の主張に影響されたわけでもなく、あえて言えば日韓関係を改善するためでもない。そのような考慮は、より「低い順位」に置かれていると思われる。
 いずれにせよ、朴政権にとって、韓米関係、安全保障、経済的利害は、被害者の人権回復より優先事項である、ということだ。

5)この先どうなるのだろうか?
 
 日韓合意は、「慰安婦」問題の解決にとって、大きな困難となった。これまで被害者の立場に立って日本政府に解決を求めていた韓国政府が、一転してその態度を変えてしまった。
 「慰安婦」問題の解決のために、日本政府の責任を追及してきたのだが、これに加えて合意した韓国政府の責任も併せて追及することになった。
 「合意」でもって「慰安婦」問題の解決とさせないこと、「合意」では決して解決にならないことを、訴え広めていくことが、人権を回復していく私たちの運動の当面の目標になった。
 韓国内では、日韓合意に反対し、韓国政府に撤回を求める激しい批判と行動がすでに起きている。
 他方、日本国内では、「合意」の意味や評価がまだ十分に浸透しておらず、人権団体、政党、市民団体のなかでどのような態度をとるべきか、必ずしも明確でないような状況があるように見える。
 2014年第12回アジア連帯会議「日本政府への提言」をあらためて本当の解決だと確認しながら、解決しない日韓合意であると訴えと広く訴えていかなくてはならない。

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「やりきれない」判決 ロード事件 [米兵によるレイプ事件、犯罪]

米比政府の意向を慮った判決

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<性にかかわる暴力の連鎖を止めよう>

1)「やりきれない」判決

 12月1日、ジェニファー・ロード殺人事件に対する判決が、オロンガポ地方裁判所であった。この裁判は全国的に注目されており、長い判決は3時間にわたって全国テレビで読みあげられた。
 フィリピンではこれまで米兵の犯した犯罪の多くは、闇に葬られてきた。米軍による脅し、買収など様々な妨害に屈せず、裁判にまで至ることは極めて稀である。

 米兵によるレイプは米軍、米政府の脅しや買収で、裁判にまで持ち込まれることは極めて少ない。
 2005年、「ニコル事件」は、被害者と家族、支援者が、米兵スミスをレイプでフィリピンの裁判所に訴え、第一審で有罪を勝ち取った。しかし、その語、米政府は被害者と家族に対する脅しを繰り返し、最終的には被害者ニコルさんが告訴を取り下げ、スミスは釈放された。被害者と家族は米国に用意された住居で暮らしているという。

 今回の犯罪は、殺人である。被害者はすでに死亡しており、告訴を取り下げることはできない。そのような意味においても、米兵が犯した犯罪が、果たしてフィリピン法に従いキチンと裁かれるのかと、すべてのフィリピン人、フィリピン社会はこの裁判の行方に注目したのである。 

 オロンガポ地方裁判所74支所裁判長ロリーン・ギネス・ヤバルデ(Roline Ginez-Jabalde)の判決は、長かったけれども大方の予想通り、「悪い」内容だった。

 一言でいえば「明確に殺人と認められる証拠は認められない」というのだ。すべてのフィリピン人が、判決を聞いてため息をついた。「裁判所に期待を抱いて裏切られた」、はたまた「米軍と米兵の犯罪はフィリピンでは裁かれない」という意味か、いずれにせよ「やりきれなさ」を皆が感じたのである。

2)殺人罪がどうして裁かれないのか?
 ジェニファー・ロードは確かに殺されていた。
 2014年10月11日に、オロンガポ市のホテルの洗面所で頭を便器に浸漬した死体で発見された。首には押し付けられた跡があり、法医学調査によれば便器の縁に押しつけられたものと証明された。

 手を下したのは、米海兵隊ジョセフ・スコット・ペンバートン伍長であるのは間違いない。しかし「殺人者に値する罰を受けない」という裁判所判決はあらかじめ決められており、その理屈を述べるために3時間かけたのである。

 判決は、「殺人であったとことを証明する十分な証拠がない」と決定した。刑罰は一段階減じられ、わずか6~12年の禁固に処されただけだ。殺人なら、刑期は少なくとも20年間であろう。

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<ペンバートン>

3) 言い訳の判決理由

 言い訳めいた判決理由を見てみよう。
 判決は、起訴側が殺人となる3つ状況を確立できなかったとする。

 A)裏切り:法廷は、ジェニファー・ロードの殺害が予定されていなかった、とっさの事件であり、裏切りはなかったとした。ジェニファー・ロードが彼女の本当の性についてペンバートンを「だました」ので、ペンバートンが怒って暴行した犯罪に、情状酌量を認めるとしたのである。

 B)優勢な強さ:法廷は、起訴側は、容疑者が犠牲者より本当に強かったと証明していないという。法廷は、ジェニファーの生まれた性を引用し、26歳のジェニファーよりも19歳の海兵隊員ペンバートンが強かったとは言えないというのだ。

 C)虐待の濫用:ペンバートンが犯罪を犯したとき酔っていて、正常な精神状態ではなく、ペンバートン側に「合法の感情から生じる情熱と混乱」があると、法廷は決定したというのである。
 このような理由で殺人罪が成立しないのなら、何でもやり放題ではないか!

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<LGBT Pride>

 判決は、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の人々に対する差別と偏見に満ちたものであり、LGBT団体から激しい怒りと抗議が集中している。
 ペンバートンを殺人で訴えた弁護士ハリー・ロケは、「私は、非常に頭に来ている。判決はLGBTコミュニティに対して憎悪による犯罪を促すものであり、極めて差別的だ」と声明した。

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<On the wing of love>

5)フィリピンの主権が犯された

 今一つの人々の怒りは、果たしてフィリピンに主権が存在するのだろうかという疑問だ。
 これまで「米軍と米兵の犯罪はフィリピンでは裁かれない」という事例をいくつもみてきた。米軍の存在がいかに大きいか、支配的かということを、いつも思い知らされてきた。

 それ以上に情けないのは、米軍に一方的に押し付けられたのならまだしも、そうばかりではなくフィリピン政府が米国政府の意向に従い、今回は裁判所までがアメリカ、フィリピン両政府の意向に従い、判決を書いた現実である。フィリピンの裁判所が自発的に自主的に米兵の犯罪を正当に裁かなかった、犯罪者が米兵なのでこれを見逃した、進んで主権を放棄したという、事実である。

 1月12日には、フィリピン最高裁が米比防衛力拡大強化協定(以下:EDCA)の違憲かどうかの判断を避け、実質的に容認した。この一連の判決には明らかに関連がある。そこにフィリピン支配層の意思が明確に読み取れるし、背後には米国のアジア戦略が存在する。

 フィリピンの人々の人権を擁護しない、安全保障と称して米軍の駐留を認め地域の軍事的対立を激化させる、現在のフィリピン政府の選択した路線は、フィリピン人の生活と安全を脅かしその利害に反するものだ。
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フィリピン経済の現況 [フィリピンの政治経済状況]

マニラに「高級旋風」

 2016年には、フィリピンの一人当たりの国内総生産GDPは3,000ドルを超える見込みだ。3,000ドルは、中間層の消費が急拡大する節目とされている。しかしマニラ圏ではすでに8,000ドルを超えている。GDPは3,000億ドル(約36兆円)を超える。人口1億人なので、一人当たり3,000ドル。
 確かにマニラに、高級サービス、商品が増えた。中間層の増加を映すこのブームは今後も続くのだろうか?

 よく言うと「宵越しの金を持たない」、悪く言うと「貯金はしない、お金のある人に頼る」フィリピン人気質は、消費拡大に拍車をかけているように見える。

 様変わりなのは、一泊数万円の高級ホテルに外国人旅行者ばかりではなく、フィリピン人宿泊客が目立つことだ。マニラ湾岸に、高級ホテル「コンラッド・ホテル」開業し、SMインベストメンツ社が経営する高級ショッピング・エリアも併設するという。そればかりか、マニラ湾岸には、カジノリゾートが相次いで建設されているのだが、外国人旅行者を狙ったというのに、所得水準の上がったフィリピン人中間層が意外に多く訪れている。(日経1月12日)

フィリピン経済

 フィリピンの経済規模はこの10年で3倍に成長した。2020年にはタイと同規模になる。一人当たりGDPも、8年間で2倍強になった。マニラ首都圏では8,000ドルを超えている。
 2013年の経済成長率は、7%だった。2015年は6.5%程度。高成長である。原油安は、フィリピン経済にプラスに働く。

 フィリピン経済の強みは、増大し続ける労働人口。全人口は1億人、労働人口は4,100万人。平均年齢は23歳と実に若い。子供が多いわけで、近い将来、確実に労働人口が増える。そのため賃金が中国に比べても上昇していない。当面のあいだ、政府にとって年金や福祉予算の負担は極めて小さい。もともとそういう制度はないけれども。

 日系企業の多くは、フィリピン経済区庁(PEZA) 、経済特区に進出している。PEZAの日本案件認可件数実績も2010年代に急増した。中国の賃金上昇を受けて、フィリピンに進出企業も目立つ。
日本との貿易では、電気・電子、コンピュータ機器を含む機械類の割合が高い。
 フィリピンに進出した電子部品産業の層が厚くなってきたため、現地で部品を調達し組み立てることが可能になっている(電気・電子部品の日本からの輸入が減少している)。電気・電子産業が高度化し、部品産業、下請け企業などの「裾野」が広がっていると言える。

 自動車販売も急増している。日系自動車会社の独擅場。2015年には新車販売が30万台を超える。現在はタイとインドネシアに集中する自動車生産態勢から、将来的にはASEANの経済統合(関税低下)によるASEAN地域での生産分業と輸出をにらんでいる。

 サービス業では、ITサービス業が急増している。フィリピンは英語圏だから、コールセンターなどの音声サービス事業では、インド以上に売り上げを伸ばしている。この分野は、米国やオーストラリア企業が積極的に進出している。

 流通では、コンビニエンスストアが、マニラ首都圏で急増し、首都圏以外にも増えている。

 フィリピン経済の弱点は、インフラが整備されていないところ。経済が拡大していることもあるが、発電能力は慢性的に不足。石炭火力への依存度が高い。1990年代に民営化したが、電力不足がなかなか解消せず、電気料金が高い状態が続いている。
マニラは交通渋滞がひどく、なかなか改善されない。公共交通、高速道路、水道事業も民営化されており、企業が利益を上げる範囲でしか改善されない。そのためインフラ整備が経済成長に追いつかない。港湾施設なども不足している。

 フィリピン経済は、輸出向け電気・電子産業、サービス産業だけでなく、経済成長により都市中間層の形成と、1,000万人にものぼる海外労働者からの送金は約3.6兆円(GDPの1割を超える)もあり、国内消費市場も確実に伸びてきている。
 
 2016年5月に、大統領選挙がある。

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迷走するサウジアラビアとトルコ [世界の動き]

中東の危機とは何か?
迷走するサウジアラビアとトルコ

1)危機をしかけるサウジ
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<ニムル師>

 年明け早々、中東で緊張が高まった。
 サウジ政府は、シーア派の有力指導者ニムル師を処刑した。ニムル師は自由選挙実施とシーア派住民の多い東部地域の分離を主張していた。東部地域はサウジの油田が集中する。ニムル師処刑に抗議したイラン民衆の行動は、サウジ大使館への放火となった。サウジ政府は放火を口実に、イランと国交を断交した。サウジに同調しバーレーン、スーダン、アラブ首長国連邦というアラブ同盟諸国は、テヘランとの外交チャンネルを断ち切った。

 サウジ政府は、シリア、イエメン両国における対立を中東全体の対立に転化させるところへ踏み出したことになる。処刑と同じ日、サウジ政府はイエメンとの停戦合意を一方的に破棄した(ロイター1月4日)。

 サウジの狙いは、中東地域の「緊張」を「危機」にまでエスカレートさせることであるのは間違いない。対立は、決してスンニ派シーア派の宗派対立ではない。逆である。宗派対立を利用し、政治的対立をつくり出している。

 この30数年、サウジに蓄積した莫大なオイルマネーは、サウジが中東の覇者となることを夢想させた。シリアやイラク、リビアにおけるISによる代理戦争は、サウジによる中東新秩序の確立過程でもあり、その構想は米国の中東支配戦略に沿っており、イスラエル、トルコとの利害も一致している。

 サウジが、同じくワッハーブ派原理主義イデオロギーを共有するISに資金を提供し、武器を与えてきたのは公然の秘密である。ISの武力による恐怖政治は、サウジ社会が目指すモデルでもある。自身の姿に似せて世界を作り替えようとしている。

 サウジアラビア支配層は、どうして中東を戦争の危機に陥れるところに迷い込んだのか?

 それは、ロシアによるシリアへの軍事介入がISを撃退しつつあり、ISを使ったシリア政権転覆が失敗しつつあるからだ。ロシアが、IS やダーイシュやヌスラ戦線などの武装集団を打ち負かして、これらテロ集団と外国政府、特にアンカラとリヤドの、スポンサーのつながりを暴露したためだ。サウジがこれまで資金を投じISを支援し実行してきたシリア解体策が破綻しつつあるので、意図的に「混乱」をつくりだすことで、シリア戦略の敗北を食い止めようとしている。しかしそれは危険な行為であり、重大な対立と戦争を呼び起こす。

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<2015年9月4日、サウジのサルマン新国王とオバマ大統領>
 
 現況は、サウジにとっても極めて危険である。
 石油価格の低下によって、歳入の90%を原油に依存する政府収入は激減した。2014年、1バレル110ドルだった原油価格は30ドルまで低下(1月15日)。財政赤字は2015年GDPの15%にまで膨れ上がった。サウジの軍事費は政府支出の25%にまで達している。イエメンにも軍事介入しており、軍事費は膨らむ一方である。IMF試算によると、原油価格と軍事費がこのままの水準で推移すれば、5年でサウジ政府資産は枯渇する。
 財政赤字に苦しむサウジは、水道、電気、ガソリン両機の大幅値上げ、さらには5%の付加価値税、たばこ・糖分飲料に対する悪行税など新税も導入する。独裁体制に対する国民の不満を財政的に優遇することで抑え込んできたが、そのような政治は困難になりつつある(日経1月12日)。資金調達のためか、サウジアラムコを上場する。

 アメリカのシェールオイル資本をつぶすためサウジは減産を拒否してきたが、2016年春からはイラン原油が市場に出回ってくる。原油安は当分続きそうであり、サウジにとっては時限爆弾を抱えたようなものだ。サウジアラビアは迷走しているというべきだろう。

2)血迷ったかエルドアン

 迷走しているのはトルコも同じだ
 トルコ・エルドアン大統領は、アメリカ支配層の好戦派、ネオコンにそそのかされ、ロシア機を撃墜してしまった。そのことで、トルコがISのスポンサーの一人であると告白してしまった。エルドアン政権は、なりふり構わずアメリカの中東戦略に加担することで中東における新たな地位を得ようとしている。

 トルコは空爆にさらされているシリアのIS がイラクに退避できるように、イラク政府の反対にも関わらずトルコ軍をイラクに進駐させた。そして、イラク―トルコ国境を通じてISの兵站戦を確保し、ISの資金源である盗掘石油を輸出できるようにした。イラクに拡大することで戦線を立て直そうとしているのだ。

 同時に、エルドアン政権はイラクと国境を接するトルコ東南部地域のクルド人に対する軍事作戦を実行し大量殺戮を行った。

 トルコ国内外から、トルコ政府に対し、トルコ南東部での“虐殺と大量殺戮”を止め、クルドの町や都市への包囲を解くこと、同時に、自国民に対し戦争をしかけているとする非難の声が上がっている。
 “We will not be a party to this crime(我々は断じてこの犯罪に加担しない)”というタイトルの声明をトルコの大学教官たちが発表し、89の大学から1,128名、海外から、ノーム・チョムスキーを含む355名が賛同している。
コピー ~ エルドアン大統領(左)、ノーム・チョムスキー(右)ロイター.jpg
< エルドアン大統領(左)、ノーム・チョムスキー(右)>

3)敗走するIS 、転換したシリア情勢

 シリアへのロシアの軍事介入の成功は、シリアを一時安定させ、テロリストによる乗っ取りから救った。ロシアの軍事介入は、二つのことをなし遂げた。第一は、武装勢力による代理戦争で政権転覆させ崩壊国家にする米国の世界戦略を頓挫させた。米戦略に加担している英、サウジ、トルコ、イスラエルらの目論見も頓挫したことになる。第二は、米、サウジアラビア、トルコとテロ集団ISとの関係が誰の目にも明らかにしたこと。

 シリアで戦闘しているのは外国から来た雇兵、兵器は外国製で、狙いも外国のためだ。「反政府勢力」ではないし、したがって「内戦」でもない。シリアの代理戦争は外部勢力による侵略である。少し前のデータだが、シリアで戦っている傭兵の41%はサウジアラビア人、19%がリビア人、シリア人は8%にすぎない。したがって、これらの勢力は、反政府勢力として内戦終結後の「シリア連合政府」のメンバーに入ることはない。

 米、英、サウジ、トルコ、イスラエルは、ロシアが主導し国連で提起したIS 爆撃と、「シリア連合政府」に反対している。連合政府に、自分たちが指示し利用してきたスラム武装勢力を入れるよう要求している。

4)なぜロシアは、シリア政府を支援しISを空爆しているのか? 

 「アラビアのロレンス」は、オスマン帝国崩壊を早め、の地を植民地にするために、英国がアラブの独立運動を支援を装ったその卑劣で詐欺的な戦略を体現した人物である。オスマン帝国がアラブを手放した後、英仏は約束を破り植民地として分割し支配した。ロレンスは英国の植民地支配を実行した一人物であり、詐欺的な手口で成功裏に植民地化を成し遂げた。「詐欺的行為」は英米では「英雄」として扱われ、現代でも「英雄」として描かれる。

 欧米の支配層は歴史的に何十年も、シリアを含む中東諸国が自主独立する軌道から引き剥がそうとしてきた。オスマン帝国の崩壊とともに分裂した中東は、当初、英仏などの植民地主義者連中に支配されていた。宗主国とのつながりを断ち切り独立を求める民族主義者たちは蜂起し同時にソ連の支援を求めた。しかし、どんなことをしても権力の座につこうとした連中は、概して米英仏の支援を求めた。このような歴史的経過と枠組は、形を変えて現在も残ってきた。

 現代ではロシアは、シリアと同じように、オセチアやウクライナで、米国好戦派、ネオコンがしかけた代理戦争に苦しみ、これを打開しなければならない立場に追い込まれている。オセチアやウクライナにおける代理戦争を止めるロシアの正当性は、国連の場で、国際法で擁護される。その立場は、ロシアに、シリアの政権転覆を狙った米、英、サウジ、トルコ、イスラエルなどによる武装勢力を使った不法な代理戦争を止めさせ、国連で、「シリア連合政府」構想を提起させている。

5)アメリカが率いる有志連合、無法ゆえ「有志」

 シリアにおけるアメリカが率いる対IS有志連合の行動は、基本的に違法だ。国連安全保障理事会も、シリア政府も、「有志連合」多国籍軍にシリア爆撃の許可を与えていない。したがって、シリアの主権はあけすけに侵害されている。

 国連安全保障理事会も経ずに、アメリカが主導して無法に武力を行使するために結成しているから「有志連合」なのである。現代アメリカによる代理戦争を利用した世界軍事戦略は、国連さえ無視した単独行動主義、「無法」な行動となっている。

6)代理戦争をリビアに拡大
 石油とIS、 アメリカ-NATOによる、リビア戦争が差し迫っている

 ロシアの空爆でIS がシリアから敗退しつつあるため、ISはリビアに第2の拠点をつくろうとしている。アメリカはこれを許容している。

 2011年、アメリカ率いるNATOとイスラム武装勢力LIFGの共同作戦より、カダフィを殺しリビアを荒廃させた。リビアは、紛争と混乱状態のままISによって脅かされ、リビアの石油は外国資本の略奪の対象になった。

 ISが、いくつかの主要油田や精油所への入り口であるリビアのスルトに足場を築き、リビア石油を狙って他の地域へと拡張している。ISとアメリカ政府、NATOとの共同した作戦である。狙いは、北アフリカ最大で、スルトとベンガジの中間にある“リビアの宝、マルサ・エル・ブレガの石油精油所”攻略であろう。ISのやり方は、油田を支配し盗掘し資金を得て武器を買い戦闘をしかけることだ。ISは、スルトを第2のラッカ(シリアのIS首都)にしようとしている。

 リビア当局が、アメリカが率いる爆撃作戦、あるいは地上作戦を拒否しているにもかかわらず、ISと戦うという口実で、約1,000人のイギリス特殊部隊を派兵する計画で、更に数千人のアメリカ、フランスとイタリアの戦闘部隊が加わる。アメリカが率いるNATO軍は、政府や安全保障理事会による承認なしに、リビアで違法に活動する。

 米英はISと戦うのではなく、ISを支援して、シリアとイラクで継続している活動を複製し、リビアにISの根拠地を作らせ、インフラや政府の標的を攻撃し崩壊国家にする作戦が開始されるはずだ。
 シリアでの代理戦争の敗北を、北アフリカ、リビアに拡大し挽回することを狙っている。

 アメリカの戦略は、「偽旗作戦」であり、サウジ、トルコ、イスラエルが荷担しているのだから、私たちは実態を正しく見破らなければならない。
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比最高裁、米軍「駐留」再開を容認 [米兵によるレイプ事件、犯罪]

比最高裁、米軍「駐留」再開を容認 

 米軍の再駐留を認める「拡大防衛協力協定」(the Enhanced Defense Cooperation Agreement、以下:EDCA)が「違憲ではないか」という訴えに対し、フィリピン最高裁は1月12日、「最高裁は、違憲かどうかを判断しない」とし、実質的にEDCAを認める判断を示した。これにより、米軍はフィリピン国内に展開したり、基地を利用したりすることが可能になる。

 米比は2014年、中国の海洋進出を念頭にEDCAを結んだ。当協定が「憲法違反」として元上院議員らが提訴し、発効の手続きが止まっていた。最高裁は10対4対1の評決で「大統領が決めた協定であり、裁判所は立ち入ることができない」として訴えを退けた。4人の判事は違憲とした。

 この結果、EDCAは、両政府が詳細を詰め合意した後、発効する予定。EDCAは、艦船の停泊や合同軍事演習を可能にした98年のVFA訪問軍協定や相互防衛条約の拡大版であり、これらも含めて憲法には抵触しないという判断だ。

 フィリピン憲法は外国軍の駐留を禁じており、1992年米軍は全面撤退していた。駐留するなら上院が批准した条約で規定する必要がある。「新協定」EDCAが認めているのはあくまでも「一時的な軍事力の展開」との位置づけである。しかし、「一時的」は米比両政府が判断するのであり、実際には駐留できることになる。

 背後にあるのが、米比両政府の、南シナ海での中国への対抗だ。陸軍ばかりで海軍空軍をほとんど持たないフィリピンが、自国だけで対処するのは不可能であり、アキノ政権内、フィリピン支配層内では、米国の意向に従い再び米軍を受け入れるべきだとする声が高まっていた。

 今回の最高裁の判断は、「アキノ政権側からの圧力に最高裁が屈した」と、評価されている。
 米国は中東からアジアへの軍事力の「リバランス戦略」を掲げており、南シナ海に面するフィリピンは重要性が高い。協定締結と今回の「合憲」判断により、米軍にとって比国内での軍事施設使用に道が開けたことになる。

 フィリピン国内では、EDCA 廃棄、VFA廃棄、米軍駐留に反対する人々の運動が続いてきた。ロードさん殺人事件も、もとはといえば米軍が存在し、EDCA,VFAがあるからだと批判されてきた。
 今回の最高裁の判断に対して、女性団体カイサカ(Kaisaka)が、早速、声明を出している。以下に紹介する。

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最高裁決定は、フィリピンの安全を脅かす
       KAISA KA ・ 2016年1月13日

 1月12日の「米比拡大防衛協力協定」(以下:EDCA)についてのフィリピン最高裁決定は、フィリピンと東南アジア、東アジアの安全を脅かすものです。

 カイサカ(Kaisa ka: 女性の解放のための社会変革協会)は、最高裁が圧力に屈して、憲法の条文とその精神から離れ方向転換し、人々の安全を無視したと評価しています。

 EDCAについて、最高裁が大統領府に味方したことは、予想されていたことであり、多くの人を驚かせはしませんでした。司法省が「EDCAは合法である」と宣言するらしいという情報は、早くから漏れていました。国防省と外務省が、南シナ海に中国の行動に関するニュースとともにほとんど毎日、最高裁へやって来ていたので、アメリカ合衆国に有利にするようにという最高裁判断への圧力は、大きかったに違いありません。EDCAを認めることは、AFP軍装備をアップグレードし、米国の軍事援助を増加させることであり、フィリピンと米政府当局が深く結びつくという「運命」を選択することなのです。

 わが国の最高裁が、フィリピン政府の間違った「行政協定」合意=EDCAを、容認し何にもしなかったのは、嘆かわしいことです。 憲法 第VII条21節は、以下の通り、はっきり述べています: 「上院議員の少なくとも3分の2以上によって、意見が一致しない限り、条約または国際合意は有効ではない」、
 そして、第XVIII条の第25節には、次のように書かれています。「フィリピン共和国とアメリカ合衆国間の軍事基地に関する協定は1991年に満了した後、外国の軍事基地、部隊、または軍施設は、フィリピンに存在することは許されない。上院によって正式に同意された条約に基づく場合、あるいは他の国との条約について議会が要求し開催される国民投票で過半数承認される場合は、その限りではない」。EDCAを容認すると決定した最高裁は、憲法の条項、規定を露骨に違反した行為を、「正しい」「ふさわしい」と強弁しているのです。

 また最高裁は、EDCAがフィリピンにもたらす恐ろしい結果を無視しました。最高裁とアキノ政権は、米国がインドーアジアー太平洋の要所で、米国の覇権に挑戦するあらゆる勢力の出現をチェックする戦略に沿って、EDCAを推進してきたことを知っています。ライバル中国に対して、訓練しすぐに武器を取ることができるように、フィリピン軍を展開し軍装備を配備するために、EDCAを推進してきました。最高裁とアキノ政権が、南シナ海で中国への対抗を強く考慮しているのは間違いありません。しかし、中国との争いを解決する際に私たちがもしEDCAに頼る場合、米国軍事力が引き起こす荒廃に触れることは憚れています。

 米国との古い関係、基地群は、フィリピンを「米国の裏切り」に導きました。旧日本軍による最も残忍な攻撃を招きました。日本軍が進出してきた時、米国はヨーロッパ防衛を優先するため、私たちのもとを去りました。第2次大戦の後、数千のフィリピン人、特に女性と子供たちは、米軍基地の内外でアメリカの兵士の手で、虐待を受けました。

 EDCAは、フィリピン社会の米軍の基地化をもたらすでしょう、そして、もし米国が中国との戦争を推し進めるなら、フィリピンの安全保障は保障されないでしょう。 その代わりに、私たちには性的いやがらせ、暴行の犠牲者になるのであり、そして、通常兵器、化学兵器、生物武器の兵器庫を持つ影響を受けるのです。

 カイサカは、EDCAを廃棄するために、米国による戦争の枢軸へフィリピンが関与しないように、女性たちが強く団結するよう呼びかけます。

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1月6日、慰安婦問題 外務省行動 [元「慰安婦」問題]

 1月6日、外務省前で、12月28日の慰安婦問題、日韓合意に抗議するデモが行われ、ロラネット、ピースサイクルも参加した。
 その前に、内閣府に下記の要請書を提出した。

 今回の日韓両政府の合意は、被害者を抜きにした日韓両政府の「都合」による談合合意であり、このような内容では慰安婦問題は解決しない、禍根を残す。
  
 合意内容を見れば、日本政府の従来の主張のままであり、韓国政府の一方的な譲歩である。被害者の人権、国連人権委員会の勧告などは、全く無視されている。
 この時期に、このような譲歩を韓国政府、支配層がどうして行ったのか、その理由は何だろうか、不明なところがある。米政府の圧力が大きく関係していると思われるが、その圧力に一方的に支配、影響される韓国政府、支配層であったことに、あらためて驚きを覚える。

*****************************

安倍 晋三 総理大臣 様
岸田 文雄 外務大臣 様

日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書

 
 第二次世界大戦中における日本軍による「慰安婦」制度の過ちを日本国政府として認め、日本軍による性暴力の犠牲となった女性たちの人権を回復し、その反省の上に立って諸政策を行うよう、日本政府に以下のことを要請する。

 「慰安婦」問題を含む歴史問題に対して日本政府が取るべき態度は、各国の政府・人々と歴史事実を明らかにする努力を共同して行い、「慰安婦」問題を引き起こした当時の政治や軍のあり方について反省し総括し、歴史に対する共通の認識を作り上げ、それを人権尊重の現代政治や外交として再構築していくところにあると私たちは認識している。

 それができなければ何度、外交的合意を行っても解決しないし、信頼も生まれない。私たちにとっても人権尊重する日本社会を実現できない。
 日本軍「慰安婦」問題に関する12月28日、日韓両国外相間の合意は、解決するには程遠い内容であったし、合意は被害者の了解なしになされた。「内容」においても「やり方」においても、被害者を納得させるものではないし、すでに多くの人権団体から批判が沸き上がっている。
 合意を経ても、実際のところ先送りされており、今回の合意によって「慰安婦」問題は最終的に解決しはしない。

1. 日本政府は責任を認めよ!
 
 12月28日外相会談後の共同記者会見で岸田外相は、「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。 安倍(晋三)内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する」と合意内容を述べた。

 「軍の関与」は、河野談話の一節とほぼ同じ表現であり、安倍内閣も含めて歴代内閣が踏襲するとしてきた談話の表現を確認したことになる。
 そのうえで、「日本政府は責任を痛感している」と「国家の責任」を明確に認めた。ただし、両義的な表現であり、あいまいさを残している。
 これまでも日本政府は河野談話で「当時の軍の関与の下、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」を認めながらも、日韓賠償権協定で決着済であるとし「法的責任」を認めず、「人道的見地からの支援」事業を主張してきた。また、会見後の日本報道陣に対する記者会見で岸田外相は「これまでの立場と変わらない」と述べた。
 私たちは日本政府に、慰安婦問題に対する「法的責任」を明確に認めるよう、求める。

2. 歴史事実の認知、研究、教育
 
 今回の合意では、「…当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた…」と「河野談話」と同じ表現をとりながらも、河野談話が「……われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する」と述べた「歴史事実の認知、研究、教育」については、一言も触れなかった。この点では「河野談話」からも大きく後退している。
 日本政府は、「河野談話」で約束した「歴史事実の認知、研究、教育」を、「談話」以降20年間以上、行ってこなかった。それどころか、ネット右翼や右派学者、マスメディアを動員し歴史を歪曲し隠蔽してきた。この20年間、国内的国際的な約束である「河野談話」を日本政府は果たして来なかったのである。その「歴史経過」がすでに私たちの前に横たわっている。そのような「累積」した日本政府に対する不信も解決しなければならない。
 にもかかわらず、「歴史事実の認知、研究、教育」については河野談話より後退している。このような日本政府の対応では、到底被害者の納得する合意、解決とはなりえない。

 どのような行為に責任を痛感し、「心からのお詫びと反省」をするのかを明らかにするためには、女性たちを意に反して連行した事実を認めた「河野談話」を踏襲する意志を明確に示すとともに、慰安所設置の主体が日本軍であった事実、およびこれらの行為が人権侵害であったことを認めなければならない。

 日本政府に対し、政府保有資料の全面公開、国内外でのさらなる資料調査、国内外の被害者および関係者へのヒヤリングを含む真相究明、および義務教育課程の教科書への記述を含む学校及び一般での教育を奨励していくことを求める。
 また、歴史の事実や日本の責任を否定する公人の発言には、日本政府として、断固として反駁することを求める。

3. 「癒しの事業」ではなく、賠償とすること!

 今回の合意では、「日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒す措置を講じる。具体的には、韓国政府が、元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し、これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し、日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心を傷の癒しのための事業を行う…」としている。
今回の合意にあるによる約10億円の支出は、日本政府による「癒し」の事業としている。人道的見地からの支援である。日本政府が「責任を痛感」したうえで、日本の国庫から拠出されるのであれば、明確に「賠償」とするように求める。

4. 「平和の碑」撤去要求をやめよ!
 合意は、「韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する」としている。
 在韓日本大使館前の「平和の碑」や、米国等で設置される記念碑は、慰安婦問題を解決しようとしない日本政府に対するグローバルな市民の批判と行動の表現に他ならない。性暴力根絶や、被害者の名誉と尊厳の回復こそ、人権の世紀、21世紀の課題であるとするグローバルな市民の心情が表現されている。
 したがって、「平和の像」の撤去が、慰安婦問題の解決ではない。日韓両政府は問題を転倒してとらえているし、「平和の像」撤去要求は責任転嫁でもある。「平和の像」撤去要求の撤回を求める。

5. 被害者の合意なしに解決しない! 最終決着しない!

 「慰安婦」問題の解決は、日本政府の「解決策」が被害者に受け入れられるかどうか、が極めて需要だ。なぜならば、国家間の謝罪と賠償なのではなく、日本軍「慰安婦」被害者の日本国に対する個人賠償請求権の問題だからである。そうであるにもかかわらず、日韓両政府は被害者の意思の確認もせず、一方的に合意を発表した。今回の「合意」は被害者の同意が欠けている。
 「最終的かつ不可逆的に解決される」かどうかは、韓国政府の合意ではなく、被害者に受け入れられるかどうかにかかっている。
 
 安倍首相が「最終決着」と述べ、「合意した後、蒸し返さないように韓国政府がちゃんと責任を持て」とあたかも韓国政府や被害者に条件をつけるかのように言っているが、そうではなくて「最終決着」に責任を持たなくてはならないのは、日本政府、安倍政権である。ここでも問題は転倒しており、責任は転嫁されている。安倍首相も外務省も、「被害者に受け入れられる解決案を提示する」その意味を、理解しなくてはならない。
 このことからしても私たちは「今回の合意は解決とならない」ととらえている。実際のところ問題は先送りされるし、解決には至らない。

 日韓両国外相の合意だけで「最終的かつ不可逆的な解決」などできないし、最終的な解決を「慰安婦」被害者の頭越しに両政府が取り決めることはできない。しかも被害者は韓国だけにとどまらない。私たちはフィリピンの元慰安婦被害者、戦時性暴力被害者と交流してきた。アジアの「慰安婦」被害者と向き合うことを求めてきたし、この時期にあらためて求める。

6. 国連等の国際社会に対する働きかけを控える?

 「国連など国際社会でたがいに非難、批判することを控える」と日韓両政府が表明したことは、「慰安婦」問題を、歴史的なかつ現代的な女性の人権問題だと認識していないことを示している。国連人権員会はこれまで何度となく、日本政府に慰安婦問題の解決を求めてきた。その意味が少しも理解していないし、国連人権員会の勧告の趣旨をないがしろにするものである。

 岸田外相は早速、国連ユネスコ記憶遺産への日本軍「慰安婦」に関する記録の登録する市民団体の活動は、「国連など国際社会でたがいに非難、批判することを控える」合意に反すると発言した。
 本来であれば日本政府こそが、重要な世界遺産として自ら推進すべき事業である。日本政府が保有する資料の全面公開し、国内外でのさらなる資料調査し、国内外の被害者および関係者へのヒヤリングなど真相を究明する事業を進んで実施し、二度と繰り返してはならない記憶遺産として登録する活動に、積極的に取り組まなければならない。そのような対応をして初めて日本政府は世界の人々の信頼を回復することができる。
 国連人権機関の勧告を真摯に受け止め、女性の人権の確立、日本軍「慰安婦」制度の歴史の記憶化に向けた国際社会の取り組みを妨害しないことを日本政府に求める。

2016年1月06日
フィリピン・ピースサイクル

フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)

代 表  大森 進


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今年中に解決へ踏み出してほしい [元「慰安婦」問題]

 11月2日の日韓首脳会談で、両首脳は、早期妥結に合意した。また首脳会談後も、日韓外務省局長級会談は続いている。そのため、今回は要請先に、石兼公博 外務省アジア大洋州局長を追加しさせてもらった。
 私たちは、本年中に解決に向けて大きな動きが生まれるのではないかと期待している。
 「アジア女性基金」はすでに失敗が明白になった。日本政府は、「アジア女性基金」の延長のような、解決案を出さないようにしていただきたい。
 安倍首相、外務省は、この機会に一歩踏み出し、「慰安婦」問題を解決していただきたい。そのことで歴史に名を記していただきたい、そのように切望している。

 急に冬らしくなり、官邸前は、冷たい風が吹いた。

 以下の要請書を提出した。
********************
安倍 晋三 総理大臣 様
岸田 文雄 外務大臣 様
石兼 公博 外務省アジア大洋州局長 様

日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書
 
 第二次世界大戦中における日本軍による「慰安婦」制度の過ちを日本国政府として認め、日本軍による性暴力の犠牲となった女性たちの人権を回復し、その反省の上に立って諸政策を行うよう、日本政府に以下のことを要請する。

1.日韓首脳会談が開催されたこの機会に、「慰安婦」問題を解決するように求める
 
 11月2日、三年半ぶりに日韓首脳会談が開催され、引き続き日韓局長会議が行われ、慰安婦問題解決に向け、日本韓国政府間の協議が続いている。
 日韓首脳会談で、「両首脳は、今後も協議を継続し,本年が日韓国交正常化50周年という節目の年であることを念頭に、できるだけ早期に妥結するため,協議を加速化するように指示することになった」と合意した。

 加えて、安倍首相は「大切なことは、お互いに合意をすれば、その後はもうこの問題は再び提議しないということだ」と述べ、「最終決着」を言明した。

 すなわち、安倍首相は「早期妥結」と「最終決着」を公約したことになる。

 私たちは、「早期妥結」と「最終決着」の合意を歓迎する。「慰安婦」問題解決に向けて機が醸成しつつあり、安倍首相にはこの機をとらえ、解決にぜひ踏み出してもらいたいと切望している。

2.日本政府が法的責任のない「人道的措置」にこだわるかぎり解決はない

 しかし、日韓首脳会談以降、報道される日本政府の主張は、従来の主張と変わっておらず、これでは機をのがし解決できないのではないかと、不安にかられている。

 安倍首相を含め日本側は、1965年の日韓請求権協定で個人の請求権問題は解決済みと主張している。「日韓請求権協定で解決済みである、したがって法的責任はなく、それゆえ人道的措置で対応する」(11月11日、外務省・石兼公博アジア大洋州局長)というこれまでの姿勢を崩していない。法的責任を認めない謝罪、法的責任を認めない「人道的措置」である限り、「慰安婦」問題を解決することはできない。そのことは「アジア女性基金」で失敗し、すでに証明されている。

 他方、韓国政府は、「慰安婦問題は反人道的な不法行為であるため、韓日請求権協定で解決されたとみることはできず、日本政府の法的責任が残っているというのがわが政府の一貫した立場である」(11月11日、韓国外交部、李相徳(イ・サンドク)東北アジア局長)とし、被害者や韓国の国民が受け入れることができる解決策の提示を求めている。
 
 私たちは日本政府が、「1965年の日韓請求権協定により個人の請求権問題は解決済み」という主張に縛られる必要はない、と考えている。なぜならば、日韓請求権協定を超えて、被害者個人に賠償することが可能であることは、日本の法廷によって明らかにされているからである。

 2007年、中国人「慰安婦」訴訟において最高裁判所は、サンフランシスコ平和条約第14条(b)及び日中共同声明第5項における「請求権を放棄する」の意味について、被害者の個人賠償請求権を「実体的に消滅させる」ものではなく、「裁判上訴求する権能」を失わせるにとどまると解するのが相当であると判示しています。この最高裁判所の論理は、日韓請求権協定第2条1項の解釈にもそのまま当てはまる。それゆえ日本政府が自発的に被害者に対し謝罪し、証としての賠償することは可能である。(11月18日「慰安婦」問題解決オール連帯ネットワーク提出の「緊急要請書」より)

 したがって、安倍首相、外務省が従来の主張に固執することなく、解決に向け一歩踏み出すよう、要望する。
韓国の李局長(右)と石兼局長=(聯合ニュース) (320x299).jpg
<右から、石兼局長、韓国の李局長=(聯合ニュース)から>
 
3.個人賠償請求権の問題:被害者に受け入れられる解決を!

 「慰安婦」問題が「最終決着」できるかどうかは、日本政府の「解決策」が被害者に受け入れられるかどうか、にかかっている。なぜならば、国家間の謝罪と賠償なのではなく、日本軍「慰安婦」被害者の日本国に対する個人賠償請求権の問題だからである。

 安倍首相は「お互いに合意をすれば」と言ったが、「お互い」とは両国政府間だけでの合意では無理で、被害当事者の同意でなければ「合意」、すなわち安倍首相の言う「最終決着」とはなりえない。日本政府は「慰安婦」被害者と向き合わなければならない。安倍首相、外務省は、ここのところがまったく分かっていない。

 安倍首相が「最終決着」と述べ、「合意した後、蒸し返さないように韓国政府がちゃんと責任を持て」とあたかも韓国政府に条件をつけるかの如く言っているが、そうではなくて「最終決着」に責任を持たなくてはならないのは、日本政府、安倍政権である。安倍首相も外務省も、「被害者に受け入れられる解決案を提示する」その意味を、理解しなくてはならない。

 もっと言うならば、安倍首相、外務省は、「慰安婦」問題を、日韓政府間の交渉問題ととらえている。そうではない。「『慰安婦』問題は単純な両国間の問題ではなく、普遍的な女性人権の問題である」(11月13日、朴槿恵大統領)。この点でも、安倍政権の見識は、国際的な人権尊重の水準に達していない。

 私たちは、日本政府に、韓国を含めたアジアの「慰安婦」被害者と向き合うことを求めてきたし、この時期にあらためて求める。そして、被害者に受け入れられる解決を!求める。

4.被害者に受け入れられる解決とは何か?

 では、被害者が受け入れられる解決とは何か?
 2014年、第12回アジア連帯会議が提唱した「日本政府への提言」は、次のように指摘し、「事実認定と具体的措置」を求めた。

 「被害者が望む解決で重要な要素となる謝罪は、誰がどのような加害行為をおこなったのかを加害国が正しく認識し、その責任を認め、それを曖昧さのない明確な表現で国内的にも、国際的にも表明し、その謝罪が真摯なものであると信じられる後続措置が伴って初めて、真の謝罪として被害者たちに受け入れられることができる

 日本軍「慰安婦」問題解決のために日本政府は、

1.次のような事実とその責任を認めること
 ① 日本政府および軍が軍の施設として「慰安所」を立案・設置し管理・統制したこと
 ② 女性たちが本人たちの意に反して、「慰安婦・性奴隷」にされ、「慰安所」等において強制的な状況の下におかれたこと
 ③ 日本軍の性暴力に遭った植民地、占領地、日本の女性たちの被害にはそれぞれに異なる態様があり、かつ被害が甚大であったこと、そして現在もその被害が続いているということ
 ④ 当時の様々な国内法・国際法に違反する重大な人権侵害であったこと

2.次のような被害回復措置をとること
 ①翻すことのできない明確で公式な方法で謝罪すること
 ②謝罪の証として被害者に賠償すること
 ③真相究明:日本政府保有資料の全面公開
       国内外でのさらなる資料調査
       国内外の被害者および関係者へのヒヤリング
 ④再発防止措置:義務教育課程の教科書への記述を含む学校教育・社会教育の実施
      追悼事業の実施。誤った歴史認識に基づく公人の発言の禁止、および同様の発言への明確で公式な反駁等

 私たちは、上記の提言で求めた「事実認定と具体的措置」が、被害者に受け入れられる解決だと考えている。安倍首相、外務省が、「被害者に受け入れられる解決案」に、踏み出すことを要望する。安倍首相の主張する「最終決着」への道である。

2015年12月02日
フィリピン・ピースサイクル

フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)

代表:大森 進

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ロードの正義を求める叫び声は、オロンガポに鳴り響いた [米兵によるレイプ事件、犯罪]

ロードの正義を求める叫び声は、オロンガポに鳴り響いた

 米海兵隊員によるロードさん殺人事件が2014年10月11日に起きて一年がたった。フィリピンでは多くの民主団体、人権団体が、フィリピン人の人権がないがしろにされる現状を批判し、米海兵隊員の犯罪をフィリピン法で裁くことを要求している。このような犯罪が起きる原因は米軍の存在、米比軍訪問協定が原因であるという批判も高まっている。一年経ったが、「ジェニファーに正義を!」と訴える運動は広がりを見せている。

****************
米兵による殺人事件に人々の怒りは納まらない

1)オロンガポの悲劇

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<右からハリー・ロケ弁護士、ロードさんの家族>

 アメリカ国旗がオロンガポ市スービック湾海軍基地から降ろされた最後の時は、1992年11月24日だった。アメリカ海兵隊員と水夫の最後の一群がこのスービック海軍基地を出発した日でもあった。
 ある米国兵士の運命が今年の同じ日に、決定されることになるのは、まったくの偶然だろうか。

 オロンガポ地域事実審裁判所(RTC)74支所の判事ロリーン・ジネス・ヤバルデ(Roline Ginez-Jabalde)は、拘留された米国の海兵隊伍長の殺人公判で、評決を伝えている。被害者ロード遺族の弁護士ヴァージニア・スアレスによって、ジョセフ・スコット・ペンバートン伍長は、2014年10月にトランスジェンダー、ジェニファー・ロードを殺したとして訴えられた。

2)ジェニファーに正義を! 一周忌のデモ

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 オロンガポ市――中央ルソン、サンバレス(Zambales)州のこの街から、未だ悲嘆にくれている遺族は、殺人事件を国に忘れて欲しくないと訴えている。トランスジェンダー女性、ジェニファー・ロードさんの死体が、オロンガポのモーテルで発見された一年後を経て、11月8日日曜日に、300名の支持者、友人、性権利を求める団体のメンバーが、遺族とともに、「メモリアル・ウオーク」を行った。

 デモ参加者は、それぞれの旗、バナーを持って、ロードさんが最後に目撃された場所であるモーテル、セレゾン・ロッジ(Celzone Lodge)の前を行進した。

 ロードさんの死体は、ある外国人が借りたモーテルの部屋のトイレで、従業員によって発見された。その外国人は、後に目撃者によって米国の海兵隊の伍長ジョセフ・スコット・ペンバートンと特定された。
 ロードさんの遺族は、地域裁判所のロリーン・ギニス・ヤバルデ(Roline Ginez-Jabalde)判事が、12月14日までに判決を出すのを待っている。米比軍訪問協定によってあらゆる米兵の審議は1年間で完了するが、その最終日に刑事訴訟は終了する予定だ。

 遺族は、ロードの墓を訪れ、一周忌をしのんだ。
 「苦しみと犠牲の一年でした。今現在、私が求めるのは、ただジェニファーのために正義を得ることです」、「私の悲しみは、容疑者ペンバートンがフィリピンの法律できちんと裁かれ投獄されるまで終わりません」と、犠牲者の母であるジュリータ・ロード(Julita・Laude)は語った。

 「ジェニファー・ロードの一周忌は、私たちすべての苦しめる不正の一年間だった」、「ナナイ(Nanay)、ジュリータ(Julita)、ミシェル(Michelle)、マロウ(Malou)たちロードの姉妹の言語に絶する痛みと苦しみの一年を意味する」と、遺族の弁護人の一人、ヴァージニア・ラクサ・スアレスは語った。

 「遺族は、最近の出来事の展開が、正義を実現しにくくするのではないか、と心配している、というのは、ライラ・デ・リマ司法長官が来年上院に立候補するために辞任し、代理を務める司法省官僚が指名されると、ペンバートンの殺人事件に影響するかもしれない」と、遺族の主任弁護士ハリー・ロケ(Harry Roque)は指摘した。

 ロケ弁護士は、「ニコル」事件(2005年の米兵によるフィリピン女性強姦事件)に関係した法律弁護団の一員であった時から、この当局者が「はっきりした利害関係」があると指摘してきた。
 ロケ弁護士は、ペンバートン弁護団が「検察側証拠により無罪である」と主張しており、裁判所でなされる最後の主張に疑問を呈した。

3)事件はどのように起きたか?

 ちょうど2014年10月11日真夜中、ロードの死に関するニュースは、激しい情熱がほとばしるように流布し、夜明けの静寂を破った。

 地方警察は電話に応じて、セルゾン・ロッジの部屋に急行し、きちんとベッドと枕が積み重なっているのを発見した。しかし、警官は、部屋のトイレ内でロードが死んでいるのを見て、飛び上がった。彼女の頭は便座のなかに押し込まれていた。 挫傷は、犠牲者の首の回りに見えた。 彼女の舌はわずかに突き出ており、彼女の髪はもつれていた。
 数時間後に、アメリカの科学捜査調査官は犯行現場に到着した。そして、近所の人たちは事件が普通の犯罪でないとようやく理解した。

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<女性団体ガブリエラのデモ>

 ロードさんの死は、アメリカ兵士がフィリピン人女性を強姦した2005年の「ニコルさん事件」を彷彿させた。このような事件は、フィリピンの都市では何度も起きて来たのである。

 ただ今度はだけは少し違った、ジェニファーは強姦被害ではなく殺されていた。

 問題を複雑にしているのは、ロードさんがトランスジェンダーであったことだ。殺人の詳細が少しずつ明らかになると、彼女の死は地域だけでなく国際的にもメディアを通じ人々の注目を集めた。
 地方警察は、ロードさんを見た最後の目撃者から一外国人の捜索を明らかにした。目撃者、セルゾンの部屋係員エリアス・ガラマスと、ロードさんの友人でバービーと称するトランスジェンダー女性は、後に裁判所で容疑者ペンバートンを特定する証言をした。
 30人もの目撃者は、3月23日に始まった裁判の間に、政府検察官によって示された。

 ロードさんの死体が見つかった二日後には、警察と米海軍は海兵隊員が殺人に関して米艦で拘留されていることを確認した。

 目撃者バービーは、米海軍犯罪調査サービスによって示された写真からペンバートンを特定したため、ペンバートンと殺害の関連が明確になった。

 19歳のペンバートンは3,500名の米海兵隊の一員であり、オロンガポ市の近くの軍トレーニング・サイトを含むフィリピンのいくつかの地域で行われた10日間の軍事演習に、海軍兵士とともに参加していた。
 ペンバートンは、第9海兵隊、第2大隊に属する対戦車ミサイル部隊のオペレーターだった。犯罪へ関与した後、彼は米艦ペリリュー(Peleliu)に乗船し演習に参加している。

 犠牲者の死に関するニュースが伝えられた後、ロードさん遺族に対する支持と同情の声が、すぐに沸き起こり、すぐさま米軍兵士による殺人事件として、街頭での抗議行動が行われた。事件の根本原因は米軍の存在であるという批判が広がった。

 一連の抗議運動は、アキノ政権に、容疑者ペンバートンを米国軍艦からアギナルド基地(フィリピン軍本部)拘置施設に移すように求めた。フィリピン政府が拘束し裁判するのが、フィリピンの主権だからだ。

 ロードさんを思い起こす日はいつも、激しい感情で満たされた。3日目にロードさんの母(Julita)が斎場に到着したとき、家族の悲しみは頂点に達した。 彼女がジェニファーの死を知ったのはその時が初めてだった。
 苦しみの中で、ロードの姉妹(Marilou)は、10月15日にオロンガポ市検察官のオフィスで、ペンバートンに対する殺人告訴を提出した。ロードさんの姉妹は、主要な助言者、弁護士ハリー・ロケ・ジュニアと3人の警官を連れて行った。

 数日後に、ロードさんのドイツ人フィアンセ、マルク・スエセルベック(Marc Sueselbeck)は、最後の敬意を払うために到着した。
 ロードさんが埋葬されたあと、スエセルベックはペンバートンが拘留されていたアギナルド基地のフェンスをとび越えたため、出入国管理局によって強制退去とされ、すぐに出国させられた。

 殺人罪で刑事告訴される理由が発見され、政府の検察当局が市検察官エミリーフェ・デ・ロス・サントスによって率いられることになった後、12月15日、ペンバートンは正式に殺人事件として起訴された。殺人は保釈できない罪であり、最高40年の禁固によって罰せられるべき罪である。

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<追悼 ジェニファー・ロード >

4)正義のための彼らの闘争において、遺族は孤立していない

 11月8日日曜日にメトロマニラ・マカティ市で、レスビアン、ゲイ、バイセクシャルとトランスジェンダー(LGBT)コミュニティのメンバーは、ヴァクラッシュ(Vaklash)と呼ばれているイベントで、ロードさんの死を悼むために集まった。
 LGBT組織(Bahaghari)によって出された声明によると、「ロード殺人は他の人たちに対する一人の男の犯罪を超えている」、「これは、米国の利益に反対し立ち上がるフィリピン人に対する犯罪であり、私たちの主権の問題だ」とバハグハリ(Bahaghari)スポークスパースンであるアーロン・ボネッテ(Aaron Bonette)は語った。

5)裁判闘争

 証人席のペンバートンは、自衛のためロードさんの首を締め抑えつけたが、殺害するつもりはなかったし、殺害していないと発言した。ペンバートン弁護人フローレスは、ペンバートンが、ロードさんが身体的に男性であるとわかったあと、争いになったと語った。ペンバートン側は、検察側証拠の不備を指摘したりして、有罪判決から逃れようとしている。

 他方、遺族側のスアレス弁護士とロケ弁護士は、法廷がペンバートンに対して有罪の評決を下すと確信していると語った。「ペンバートンが有罪判決を下されたら、私たちは、彼をフィリピンで服役させることを求め続ける」、「もし、無罪になるならば、彼が直ちに国外外退去にされ、上級裁判所に上訴できなくなる、それはすべてのフィリピン人にとって損失であり、フィリピン主権の侵害である」と、スアレス弁護士は語った。


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トルコによるロシア機撃墜の意味 [世界の動き]

トルコによるロシア機撃墜の意味

 エジプト・シュクリ外相は、11月25日、都内で日経新聞のインタビューに応じた。
 「イスラム過激派との戦いにおいて、資源を有するあらゆる国が努力しなければ相手を打ち負かせない」と述べ、「シリアへ軍事介入するロシアの役割は重要である」と、トルコなどを念頭に、テロ対策に協力的でない国に不満を表明するとともに、ロシアのIS空爆を明確に支持した。

 また、「ロシアの介入でシリア情勢がより複雑になる」との見解を退けた

 「イスラム国支配地域で産出する石油の違法取引がテロの資金源になっている」、  「誰が石油を購入しているのか、誰がテロリストの国境越えを許しているのかを考えなければならない」と、ISの資金源を支えている盗掘原油取引の問題を指摘した。「直接言及を避けながらも、トルコなどがテロ対策に十分協力していないことへの不満をにじませた。

 エジプト政府は、現実的にISの脅威を感じており、IS撃退への各国の包括的アプローチの重要性を述べ、「複雑に見える事態」に対する極めて冷静な判断を述べている。

 また、日経(11月26日)は、「トルコはISをシリアのアサド政権をたたくことに利用する思惑もあったとみられる」と述べ、トルコ政府が実質的にISを支援している事実を認めている。

 11月25日、ロシア外交筋は、トルコによるロシア機の撃墜は、偶発的事故ではなく「意図的な行為だった」と述べた。確かに偶発的事故ではない。

 そもそもロシア機Su-24撃墜に対するトルコ側の主張は最初から破綻している。ロシア側はSu-24がトルコ領空へ入ったことを否定しているが、仮にトルコ側が主張するコースをロシア軍機が飛行していたとしても、領空を侵犯したのは4~17秒秒程度。10回も警告する暇はないし、撃墜に正当性はない。
 ロシアの外相は計画的な撃墜だとしているが、その推測はおそらく正しいだろう。

1)トルコの主張
 
 トルコ政府は自軍のF-16戦闘機が撃墜したロシア軍のSu-24について、「トルコの領空へ向かっているので5分の間に南へ進路を変更するように緊急チャンネルで10回にわたって警告したが、ロシア軍機は1.36マイル(2.19キロメートル)の地点まで侵入、1.17マイル(1.88キロメートル)の距離を17秒にわたって飛行したので撃墜した」としている。

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<カタールの国策メディア、アル・ジャジーラが明らかにした撃墜時の飛行状況>

 WikiLeaksなども指摘しているが、この数字が正しいならSu-24は時速398キロメートルで飛行していたことになる。この爆撃機の高空における最高速度は時速1,654キロメートル。飛行速度はあまりにも遅く、非現実的だが、もし最高速度に近いスピードで飛んでいたなら、4秒ほどで通り過ぎてしまう。4秒間に10回も警告はできない。いずれにしろ、トルコ政府の主張は最初から破綻している。まるまるトルコの主張を受け入れても、シリア領内で撃墜されたとしか考えられない。(この項、「櫻井ジャーナル」2015年11月25日より引用)

2)ロシアの主張

 ロシア政府はSu-24がトルコ領空を侵犯したとするトルコ側の主張を否定している。「ロシア軍機はISを攻撃してから帰還する途中で、トルコとの国境から1キロメートルの地点を高度6,000メートルで飛行し、国境侵犯はしていない。 ロシア軍機はトルコにとって何ら脅威を与える状況ではなく、逆に撃墜時にトルコのF-16はシリア領空を侵犯した」とも説明した。
 実際に、ロシア機にトルコを攻撃する意図がないのは明白である。トルコに対してなんら軍事的脅威になっていないのも、また明白である。

3)ロシア機撃墜は、偶発的事故ではない

 トルコはロシア機撃墜をいまだ謝罪していない。偶発的事故ならば、「謝罪」し事態の収拾をはかるはずだ。謝罪さえしない態度は、偶発的事故でないことを証明している。
 トルコ・エルドアン大統領の強硬な姿勢の背後には、アメリカ好戦派、ネオコンの支持があると推測される。トルコ一国でこのような強硬な態度をとれるものではない。トルコ政府が独自の判断でロシア軍のSu-24爆撃機を撃墜できるとは考え難く、少なくともアメリカ支配層の一部が承認、あるいは命令して実行された可能性が高い。

 航空機の領空侵犯はどの程度の問題か?  実際のところ、領空侵犯はむしろ頻発している。
 イスラエルは何度もシリア領空を侵犯している。トルコ機はここ数年頻繁にギリシャの領空を侵犯している。アメリカ軍機は、世界中の国々の領空を頻繁に侵犯している。今回の領空侵犯に対し、「即座に撃墜されても文句は言えない」とアメリカ・オバマは言明したが、その言葉は、アメリカ、イスラエル、およびトルコの行為にそのまま跳ね返ってくる。そのことに頬かむりした上で、トルコを支持し、事態を誤魔化すために、そのように言った。

4)トルコはISを利用しアサド政権打倒を画策してきた

 トルコが、ISなどの武装勢力を利用しアサド政権を倒そうとしていたことは明白だ。トルコはロシア空爆によって、トルコ政府が武器支援してきたシリアの反政府勢力、ISもふくめた武装反政府勢力が撃退されるのを、目のあたりにして焦っていた。
 この点からしても、トルコによるロシア機撃墜は偶発的事故ではなく、計画・準備されたものと言える。

 トルコはISを利用しアサド政権打倒を画策してきたが、それはアメリカ支配層の戦略と同調していた。

 撃墜されたSu-24パイロットを救いに来たロシア軍ヘリを、トルクメン人武装組織が対ヘリ戦車ミサイルで撃墜したその映像が何度も流れている。またパラシュートで脱出するパイロットを狙撃している。これらは明らかな国際法違反である。
 トルクメン人武装組織は、アルカイダ系ヌスラ戦線と共同してアサド政権に対する武装攻撃を続けてきた。トルコ政府の支持しているこの組織が、テロ組織であることを証明している。
 
 武器、対ヘリ戦車ミサイルはアメリカ製であって、アメリカ政府、トルコ政府が、この反政府武装組織に武器を支給していることも明白だ。このような行為は侵略である。

 アサド政権が、独裁政権であり気に入らないからと言って、他の政府が武装勢力に武器を供給するのは、明白な侵略行為であり、国際法違反だ。そのことは常識である。日米欧のマスメディアはそのことをまず批判しなければならない。

 例えば、サウジやカタール、クウエート、湾岸諸国は、シリア以上に人権が保障されない独裁国家である。あるいはイスラエルは反動国家、侵略国家である。だからといって、ある外国政府が、反政府勢力を支援し武器を供給し、それら政府の打倒を画策することなど、してはならない。

5)「フランスとロシアの協力を破壊する!」

 フランス・テロ事件により、オランド政権は地中海へ空母シャルル・ドゴールを派遣し、仏爆撃機がISへの空爆を開始した。ロシアとの協力がはじまった。フランスのIS 空爆への参加、ロシアとの協力は、アメリカにとって都合が悪い。アメリカが支援し利用してきたISが壊滅してしまう。

 トルコはNATO加盟国であり、仮に、ロシアとトルコが戦争になれば、NATO加盟国はトルコを支援し、ロシアに参戦しなければならない。フランスもNATO加盟国である。トルコによるロシア機撃墜は、情勢を混乱させ、フランス・ロシアの協力を破壊する意味がある。

 アメリカ支配層の戦略は、EUとロシアを対立させ双方の疲弊をはかることにある。

 現時点ですでに、EUにとってロシアとの関係悪化はメリットがない。天然ガスの大半はウクライナを通じてEUに送られている。安価で安定した供給体制ができている。またロシアはEUにとって重要な市場でもある。

 アメリカ支配層好戦派、ネオコンは、ウクライナの反ユダヤ主義者、ネオ・ナチなど反政府勢力に武器を供給し、ヤヌコビッチ政権を打倒した。ネオ・ナチが政権をとったウクライナは、ロシアに戦争を仕掛け、そのおかげでウクライナは、アメリカの言う事を聞くしかない財政の破綻した崩壊国家になってしまった。
 アメリカ支配層はウクライナ危機をつくりだし、ロシアとEUの関係を破壊しようとし、なかば成功した。

 ウクライナ危機の深化、ロシアとの更なる関係悪化は、EUにとってメリットはない。
 シリアが崩壊国家になることは大量の難民が押し寄せるのであり、EUにとって、メリットはない。
 
6)ISを利用したアサド打倒計画は破綻しつつある

 ISがこれまでの組織と違うもっとも大きな特徴は、豊富な資金源を持っている点にある。したがって、高価、高性能な武器を購入し、戦闘員に給料を払うことができるし、これまでの武装勢力とは比べものにならないくらい大規模な戦闘を仕掛けることができる。

 シリアの戦乱は外部勢力が、アサド大統領を排除し、自分たちに都合の良い傀儡政権を樹立しようとしたことが原因である。問題を解決する最善の方法はそうした勢力が内政干渉をやめることだ。そうすれば「空爆」などは必要ないのだが、外部から戦闘集団が送り込まれている状態で、もはや話し合い解決などは不可能な情況になっている。資金源の盗掘石油の販売を止め、兵站ラインを断つことこそ有効だが、アメリカ、トルコ、イスラエル側は、こっそりと石油の販売ルートをつくり、ISの兵站ラインを守ってきた。

 しかし、ロシアのIS空爆により、アメリカ、トルコ、サウジなどの「有志連合」によるISを利用したアサド打倒計画は、破綻しつつある。 アメリカ支配層が、手先として使ってきたアル・カイダ系のアル・ヌスラ/AQIやそこから派生したISを、ロシアが9月末から空爆で叩きはじめて計画が破綻しかけているのだ。

 ISは、力を大きく失いつつある。パリやチュニジアなどでテロが起きているのは、それがISのなしうる唯一の対応だからである。

 ロシアは、IS 司令部や武器庫への空爆から、盗掘している原油採掘所、製油所、輸送トラックへ爆撃し始めた。ISの資金源は盗掘原油であり、月約48億円にも上る。資金源を絶つことは当たり前のことだ。これまでアメリカが決してしようとしてこなかったことだ。

 ロシアの効果的な空爆に対し、アメリカのとりうる対応は何か?  「事態を混乱させる!」ことであろうか。
 その意味でも、トルコによるロシア機の撃墜は、アメリカの利益にかなっている。

7)ISが力を失っていくことによって、中東におけるアメリカの影響力は後退しつつある
 
 これまでのアメリカのIS空爆は何の効果もなかったことが暴露された。それどころか、ISを裏で支援してきたと疑われている。実際のところ、アメリカは武装勢力を利用し、代理戦争を仕かけ、崩壊国家をつくり出してきた。イラク、アフガン、リビア、ウクライナなどで実行してきた。崩壊国家をつくりだせば、圧倒的な軍事力を持つアメリカはその地域における支配力が強まる。アメリカ支配層のなかの好戦派、ネオコンの戦略である。
 したがって、ISが力を失っていくことによって、中東におけるアメリカの影響力は後退しつつある。

 この点からしても、アメリカの好戦派、ネオコンは、シリアでの失敗を誤魔化すため、事態を混乱させる必要があった。トルコ・エルドアンをそそのかし、ロシア機を撃墜させたと推測される。

8)ロシアの空爆、パリのテロ、トルコのロシア機撃墜、

 情勢は決して複雑化してはいない
 
 エジプト・シュクリ外相の言う通りである。
 
 これらによって、情勢は複雑化してはいない。日本のメディアや報道はすべてがすべて、アメリカ情報をそのまま流す。「多くのことが起きて、事態が複雑化し、わけが分からない、テロが恐い、米・ロシアどっちもどっち」という論調である。何も考える力がない、ジャーナリズムとしてまったく失格、役立たずであることを証明している。高橋和夫・放送大学教授はこう言っていた。「アメリカのいうことは9割信用できる。ロシアのいうことは1割」。
  
 アメリカ、サウジ、トルコらの「有志連合」は、国連を無視して、勝手にISやヌスラなどの反政府武装勢力、テロ組織に武器を供給し、代理戦争を仕かけ、自分が意のままに操れる崩壊国家をつくり出そうとしている。やっていることが国際法無視のあまりにも卑劣なことなので、国連ではなく「有志連合」を組織し、代理戦争を仕かけている。
 以前は、国連はアメリカの支配を貫く「道具」の役割を果たしてきたこともあるが、現在、アメリカをはじめ「有志連合」がシリアでやっていることは、これまでの国連の理念、国際法をさえも無視した無法行為であり、それを知っているから、国連さえ無視して、「有志連合」で単独行動をしているのである。 

 ロシアは、9月末に国連総会でプーチンが演説したように、国連の理念に基づいて、国際法を遵守し、テロ組織ISやヌスラ戦線の排除を提案し、シリア政府、イラン、イラク政府の了解を得たうえで、空爆している。さらに、そのうえでテロ組織を排除した後のシリア連合政府構想を提示している。
 
 「アメリカもロシアもどっちもどっち」などと言っている者は、事態をまったく理解していない者か、あるいは意図的にアメリカの無法をごまかそうとしている人だけである。

 日米同盟を重視する日本の支配層は、アメリカ支配層とその無法な世界支配に従っている。日本の支配層にきわめて近い、日本のジャーナリズム、学者は、アメリカと日本の支配層の言い分をそのまま繰り返している。

 さて、シリア・中東の事態は、決して複雑化していない。
 ロシアの軍事的介入、ISの兵站と資金源を断つ、トルコ国境の兵站線の封鎖、これらによるIS撃退、その後のシリア連合政府の樹立、この道筋以外に解決がないことが、この間の推移で、よりはっきりした。

 ISへの兵站線として、トルコ国境がほとんど開放されている状況に終止符を打たなければならない。シリアのトルコ国境近くの拠点を撃退すれば、IS の力は、確実に急速に、衰える。トルコに邪魔させてはならない。盗掘した原油の販売・購入をさせないこと、武器の搬入を止めるなら、ISの撃退は容易である。そのことに国際社会が合意し、協力することが、何よりも重要だ。

 アメリカ、サウジ、トルコらの「有志連合」は、ISを支持し、シリアを崩壊国家にすることをたくらんでいる。すなわち、各国の包括的アプローチの破壊を狙っている。それを許さないこと、が重要だ。
 今回のトルコによるロシア機撃墜もそのような意味を持っている。
 
 以上が、「トルコによるロシア機撃墜の意味」である。(文責:林 信治)



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ジェニファー・ロードに正義を! [米兵によるレイプ事件、犯罪]

ジェニファー・ロード:
フィリピンの人々に対する継続的な犯罪のもう一人の犠牲者
KPD 声明  


 殺人容疑者・米国海兵隊ジョセフ・スコット・ペンバートン上等兵の手によるジェニファー・ロードの陰惨な死は、米国-フィリピン相互防衛条約委員会(MDB)総会と同時だった。 殺人者は、ごく最近のフィリピン-アメリカ陸海空共同の上陸演習直後に、来た。ペンバートンは、12日間の軍事演習Phiblex 15に参加した3,500人の米海兵隊員の一人だった。

 426以上のさまざまな軍部隊の共同演習が今後予定されていることを知るなら、フィリピン人は不安にかられるだろう。共同演習は最近の米比相互防衛条約(MDB)会議で達成された決定の一つである。 フィリピン最高司令官であるノイノイ・アキノ大統領は、国を代表して、米海兵隊兵士によるフィリピン人に対する最近の犯罪にもかかわらず、数百以上の部隊の共同軍事演習を米比相互防衛条約(MDB)により承認した。人々はそれを知り、怒りにあふれている。米軍の存在が人的にも物資的にも増大しており、米軍国主義に反対している多くのフィリピン人にとって、重大な侮辱である。

 最近、米兵による犯罪に再び光が当てられ、1999年締結の米比相互軍訪問協定(以下:VFA)が注目されている。VFAは、2012年以降、その検討が長引いており、最近署名された米比防衛協力協定(USRP)は、最高裁判所でまだ合憲性がまだ判断されていない。 両方の条約、協定が問題とされているのは、フィリピンにおける米軍(人員、武器、器材)のプレゼンス増大と、米軍とフィリピン軍の共同軍事行動が続いている現状の根拠たりうるのか、という点にある。

 VFA第5条は、フィリピンの米軍関係者によって、その職務以外でなされた、犯罪の管轄権問題と関係したあらゆる法的責任を規定している。 VFAは、犯罪を犯した米軍関係者に対する司法権を、フィリピン政府に対し許諾している。しかし、アメリカの兵士の逮捕・検束権は、米国政府に帰属する。ジョセフ・スコット・ペンバートン上等兵は、犯罪の調査まで、おそらく前米海軍基地であるスービックのドッグにいる軍艦USSペリリューで、彼の上官によって現在も拘留されている。

 さらにまた、VFAには、どんな米軍関係者に対するでもどんな刑事事件の判決も一年以内になされなければならないと規定している。さもなければ、米国はもはや法廷に被告を出廷させる義務はなくなる。

 フィリピン国家警察(PNP)は、ペンバートン上等兵に対して殺人容疑を提出した。しかし、このこと自体は、ペンバートンの拘束権を米国からフィリピンへ移すのを強要しない。仮に身柄を移す場合にも、刑務所または拘置所の位置と条件について米国の同意がなければならないと、新任のAFP参謀長グレゴリオ・カタパング将軍は、臆面もなく説明し、米軍のもとへの保護を正当化したのである。

 私たち、民族民主連合(KPD)は、警戒を呼び掛ける。 ペンバートン事件の取扱いは、2005年米・海兵隊員ダニエル・スミス陸士長がフィリピン女性ニコルさんを強姦し訴えられた「ニコル」事件と、同じように処理される可能性が高い。スミスはフィリピンの裁判で有罪判決を下されて、ほんの数日2、3日マカティ市刑務所に入れられた。伝えられるところでは、ニコルさんが告訴を撤回したあと事件が解決されるまで、スミスは米国当局によって連れ去られて、アメリカ大使館内に保護された。

 ペンバートンによって犯された犯罪は、非常に凶悪だが、事件は犯罪を超えた問題を孕んでいる。本当の重大な問題は、VFAとフィリピンの管轄権である。すなわち、フィリピン国内で犯罪を犯したアメリカ兵に対するフィリピンの国家主権である。2005年のダニエル・スミス伍長の場合は、フィリピンの管轄権を確認したが、フィリピン主権はVFAによって保証されなかった。

フィリピンと全世界の人々のために、ジェニファー正義を勝ちとろう!
 
 米国は、世界で一番の軍隊を持つ経済大国である。
 その好戦的な姿勢は、フィリピンだけでなく世界の多くの国に対し継続的に行使される米国の軍事力で維持されている。フィリピンは、フィリピン政府の従属によって、米国の新植民地として、およびアジア太平洋地域と世界を支配する米国軍事力の一拠点として機能している。

 フィリピンは2020年までにアジア太平洋地域での米海軍と米空軍の60%を展開する「リバランス戦略」のため、米国の軍事力を増やし、米軍事力を展開するホスティングの役割を米国に指定されている。

 これは、米比相互防衛条約(EDCA)と恒久化されようとしているVFAの背後にある政治的理由である。そのような状況下では、米軍関係者によるフィリピン人に対するより多くの犯罪が予想される。しかし、最も気がかりなことは、フィリピン政府が、世界にたいし軍国主義、帝国主義の目的と計画を描く米国の共犯者であることだ。そのため、フィリピンの人々は、このプロセスに引きずり込まれつつある。
 米国の帝国主義、軍国主義の計画に対して一致団結して闘おう!

 ジェニファー・ロードのための正義を! フィリピンの人々のための正義を!
 米国の軍国主義に抵抗しよう!
 EDCAを取り消そう! VFAを廃止しよう!

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金石範の話を聞く [読んだ本の感想]

金石範『火山島』出版・復刊 記念シンポジウム

 11月8日(日)、成蹊大学で、金石範『火山島』出版・復刊記念シンポジウムがあった。『火山島』は、1948年済州島で起きた四・三事件を描いた小説である。約20年かけて1997年に完結した。

 2015年に『火山島』全巻の韓国語訳が初めて出版されたという。韓国の人たちは、『火山島』をどのように読むのだろうか? 

 当日、翻訳者である金煥基(東国大学日本学研究所長)さんが挨拶した。日本でもオンデマンドではあるが、岩波書店から『火山島』が復刊される。韓国語出版と復刊、そして金石範90歳、それらをすべて記念したシンポジウムである。
 金石範さんも出席し挨拶した。

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<挨拶する金石範>
 
 2015年10月16日、韓国・朴政権は金石範の入国を拒否したという。その理由は、2015年4月、「済州四・三平和財団」平和賞の初代受賞者に選ばれた金石範が、授賞式で事件当時の政権を批判したことが関係している。済州島で住民を虐殺した警察や政府関係者の人的な関係、および政策を引き継ぐ保守勢力がいまだに朴政権の一部を構成し、影響力を持っているからだ。
 現在もなお、金石範と作品『火山島』は、韓国社会に全面的に受け入れられておらず、したがって「歴史の空白」を埋めるべく闘っているのである。

 4人のパネラーがそれぞれ報告した。
 あるパネラーが、金石範の『火山島』は、歴史の空白を文学が埋めたと指摘した。まったくその通りである。済州島四・三事件を金石範は、政権によって隠蔽され、歴史資料もなく、現地取材に訪れることもできないなか、書き継いできた。小説『火山島』を追いかけるように、2003年盧武鉉政権になってやっと真相究明、済州島四・三事件が何だったかを、振り返る事業がはじまっている。

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<11月8日、金石範『火山島』シンポジウム 於 成蹊大学>

 当日のパネラーの一人によれば、金石範の作品は、「『日本文学』ではなくて、『日本語文学』と呼び直すべき」(鶴見俊輔)なのだそうだ。楕円の新たな軌跡をなぞり、楕円をあらためて説明しなおそうとするかのようで(花田清輝、『楕円の思想』)、どうでもいいことを論じているのではないかと思えることもあった。

 そのなかで、金石範の話が印象に残った。パネラーたちの報告の後、立って挨拶した。「90歳を祝われるのは嫌だ、しかし、『火山島』が韓国語で出版されたこと、復刊もされること、今日も多くの方に参加いただいたことに感謝する」と語ったうえで、金石範の挨拶は沖縄・辺野古の話になった。

 三、四日まえ(11月6日?) 沖縄・辺野古で新基地建設に反対し資材搬入を阻止するため座り込んでいる人たちを、警察がごぼう抜きにするに場面を見た、しかも沖縄県警察ではなくて、警視庁から派遣された200名の警官だった。本土から派遣された警察官が、基地に反対する沖縄の人々を排除する、弾圧する。金石範は、これを見て済州島の四・三事件を思い浮かべたのだという。済州島へも本土から来た警察や右翼集団が済州島の人々を虐殺した。その光景を思い浮かべたという。
 「侵略」そのものではないか。「侵略」と呼ばなくてはならないのではないか、という。

 金石範は続けてこう語った。「歴史書によれば、明治になった後、『琉球処分』があったとしている。しかし『処分』はおかしかろう。『処分』とは、汚いものをゴミ箱に捨てる、不要なものを処理するという意味ではないか! 日本政府の琉球支配確立に当たって、反対する沖縄の人々を抑えつけ、無理やり言うことを聞かせた歴史的事件を、『処分』という言葉で表現するのはおかしい、『琉球侵略』、『沖縄侵略』と呼ぶべきだ」

 さすがに文学者ではないか! 何と言葉を大切にすることだろう!

 『火山島』出版・復刊記念のシンポジウムでの自身の挨拶に、沖縄の辺野古基地反対を語る、反対する人々に自身の気持ちを重ねて語る。この作家はどこまでも現実を生きる作家だ、金石範の特質が如実に示されているのではないか、そのように思って聞いたし、あらためて感心もしたのである。 (文責:児玉 繁信)



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安倍政治とは何か? [現代日本の世相]

安倍政治とは何か?

1)安倍一強体制の確立

 安倍一強体制はどうやって作り出されたのか。小選挙区制を利用した自公両党と安倍政権が大いに活用した結果が、自民一強、安倍一強をつくり出した。
 選挙における公認権は官邸が握り、政党交付金は自民党総裁に権力が集中する。従来の派閥は力を失ってしまった。その結果官邸がすべて支配する政治となった。安倍首相周辺の少数政治家と官僚に権力が集中している。
安倍政権は、さらに大手マスメディアを政権運営の装置として支配下に入れて、国民を情報コントロールしている。

2)自民党は典型的な右派政党になった

 安倍政権は典型的な右派政権になった。
 対外的には、タカ派の主張を行い、ナショナリズムの強調し、過去の侵略戦争を正当化する歴史修正主義を掲げ、軍事力で相手を抑えつける=積極的平和主義を唱えている。第二次世界大戦の結果、決定した国境線の変更を、日本政府は主張している。海外からは、極めて危険な右派政権と見なされている。
 国内的には、平等よりも、競争と自助努力を優先する。成長戦略は、労働法制の規制緩和と法人税減税である。

 これまでの自民党、すなわち1955年体制時代から続いてきた自民党は、典型的な包括政党であって、イデオロギー的に言えば右から中道の考え方まで併存してきた。その「併存」は、経済成長の上での利害調整で可能となった。

 1992年のバブル崩壊以降、日本経済は低迷しもはや高度成長は見込めない。そのため自民党政権は、新自由主義、格差拡大で利益を確保する路線に切り替え、イデオロギー的には右一色になった、ということである。

3)代議制民主主義の機能不全

 今回の国会包囲デモが拡大・持続したことは、国民の政治意識の高まりを反映したと言える。しかも、国会や政党・議員への不信感を訴える主張が多かった。国民の多数が納得しないなかで与党は、立法作業を強行した。
 一方、国会包囲デモの声を代表する政党・議員がいなかったし、国会の審議は国民の疑問に答えるものではなかったことも、明らかになった。現在の日本の代議制民主主義、政党と議員は、国民の声を反映しないシステムになってしまい、機能不全に陥っている。
 デモとして表現された国民の声は、安保法案成立以降、どのように継続した運動を組織するかが課題になっている。対抗運動は継続して初めて政治運動となることができる。

4)形骸化した国会審議

 国会審議、議員間討論がまったく低調であって、いかにもレベルが低いし、内容がない。どうでもいい形式へのこだわりがあり、審議は時間数だけで測られる。
 実際のところ、本会議は機能せず、委員会でほぼ審議が決着する。与党議員は官僚の事前調査に頼り切り、本会議ではほとんど何もしない。野党は、政府与党を質疑で追い詰めようとする、揚げ足取りをしようとする。その結果、行われるべき法案の逐条審議が行われない。
 結局、日程闘争と国対政治の裏交渉だけが大きな役割を果たして、形骸化した審議で終わる。

5)「新三本の矢」は、まやかし
 安倍内閣は、新三本の矢を発表した。「強い経済で名目GDP600兆円」、「子育て支援で出生率1.8」、「安心につながる社会保障で介護離職ゼロ」。

 一言で言えば、「新三本の矢」はまやかしである。実現するつもりもなければ、その根拠もない。口当たりのいい、ただの宣伝文句である。

 安保法案を成立させたので、安保から経済、国民生活向上に政策転換したかの如く装い、支持率回復を狙っているのだろう。

 第一に、これまでの三本の矢の評価がない。アベノミクスが掲げた、2%の物価上昇→賃金上昇→消費拡大というメカニズムは作用していない。特に賃金はほとんど上がっていない。金融緩和の出口戦略=財政赤字の処理は全く手つかずだ。企業は内部留保をため込むばかりで国内へ投資しない。新しい矢を放つなら、これまでの矢の行方を確かめてからにすべきだ。

 第二に、GDP600兆円を掲げたが、いつ、どのように達成するのかもなければ、時期の目標もない。実現は相当困難だがそのための手段は明示されていない。「3%成長を続ければ2020年度には実現できる」と官僚は説明するが、この20年間3%成長したことはない。ここ数年の潜在成長率は0.3~0.4%でしかない。

 第三に、出生率1.8は、結婚したい人がすべて結婚し、生みたい人がすべて生んだ場合の出生率なので、これまた実現はほとんど不可能である。支援制度なし目標だけ。
第四に、介護離職を防ぐには公的介護施策の充実が不可欠で、そのためにはより大きな財源が必要だが、そんな準備もない。これも掛け声だけ。

 「新三本の矢」は、実現の裏付けがまったくないし、安倍政権自体がその約束・目標を守るつもりがない。目くらましである。国民をバカにしている。(文責:林 信治)


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8月の変調は何だったか? [世界の動き]

8月の変調は何だったか?

1) 国際経済の現局面、不安定な状態が続く

 米国の金融緩和の出口戦略=「利上げ」が近くなり、国際金融市場が動揺し、急拡大してきた新興国経済から資金引き揚げが続き、混乱が起きた。約10年ごとに恐慌を繰り返す資本主義経済の典型的なかつ一般的な「症状」であり、恐慌を避けることができない資本主義の根本的な欠陥を示して見せた。

 現局面は、中国を含む新興国経済が調整局面に入ったことで、世界経済全体で不安定な状態が続いている。新興国経済はこの先、破綻するのか、時間をかけてゆっくり回復するのか、不明ではある。おそらく、時間をかけた調整局面が続くのではないか。先進諸国経済の好況はまだ汲みつくされていない(=いまだバブルに至っていない)ので、世界経済全体が恐慌に陥る可能性は小さいと思われる。

 しかし、たとえ新興国経済がソフトランディングしたとしても、目の前の急激な恐慌を回避したに過ぎず、根本的な解決ではない。その分、回復まで長い時間を要するだけであるし、そのことは新たな好況=バブルを準備し、次の崩壊=恐慌を大きくするだけである。
  
2) 2008-09サブプライム恐慌の回復過程はどのように進んだか?

 米国、日本、EUの金融緩和=流動性の大量供給は、サブプライム恐慌時の流動性危機に対し大きな意味を持った。なりふり構わず国家が金融資本に公的資金を注入した。破産した国民一人一人は自己責任だから救わないが、金融資本は「大きくて潰せない」「潰れると影響が大きい」ので、救うのである。「百年に一度」の危機と称して、この無法を実施した。

 ただし、金融緩和の規模は途方もない。これを、米国、日本、EUが同期させて実施してきた。「百年に一度の危機」なら何でも許される!! FRBは崩壊したクレジット市場の補完を意図した信用緩和(credit easing)だけでなく、外需刺激のために大幅な長期金利引き下げ、それに伴うドル安を狙った大規模資産購入(large scale asset purchases)を実行した。

 米国、欧、日の金融緩和によって、資金が中国をはじめBRICS、東南アジア諸国などの新興国に流れ込み好況の膨張を助長した。新興国経済の急拡大、とりわけて中国経済の拡大がサブプライム恐慌からの回復を早め、その痛手を短期間で癒した。「百年に一度」の危機の落ち込みから急回復したのは、中国をはじめ新興国経済の急拡大のおかげである。

 もともとリーマンショック後、拡張的な財政・金融政策を採用する新興国が多かったが、その効果がFRBのアグレッシブな金融緩和の波及によって増幅された。その結果、新興国には大きなひずみを蓄積した。中東諸国をはじめ実質的なドルペッグ制をとる諸国も多く、減価するドルに対して自国通貨が大幅に上昇するのを避けるため、実体経済に比して極端に緩和的な金融環境を甘受した。これらの結果、2009年半ばから、ブームに沸く新興国を牽引役に、世界経済は回復を始めた。

 しかし、米国金融緩和の出口=利上げ時期が近づくと、先進国の金融緩和で大量に新興国に流れ込んだ資金の還流が始まり、新興国ブームの崩壊がもたらされる。現在は、この新興国バブルがゆっくりと崩壊しつつある調整局面である。その過程は「ゆっくりと」続いている。

 一言で言えば、米国はアグレッシブな金融緩和によって新興国バブルを作り出すことで外需を刺激し、住宅・クレジットバブル崩壊で低迷する内需を補い、立ち直っていったということである。こうしたバブル代替メカニズム(=より大きなバブルによって恐慌から回復する)によって世界経済に回復がもたらされた。

3) 世界経済の現局面

 膨張を続けた新興国バブルは2011年半ばにピークを打ち、崩壊過程に入るが、FRBが一連の量的緩和(QE)を続けていたため、急激な崩壊が避けられていた。他方、一連のQEは、シェールガス開発などの資源バブルを膨らませてきた。新興国バブルが崩壊過程に入った2011年に同時に、原油価格は急落しても不思議ではなかったが、一連のQEが生み出した過剰流動性が商品市場に流入し、2014年半ばまで高水準の原油価格が維持されたため、世界各地で資源開発に精を出し、開発バブルまで拡大したのである。現在の原油安・資源安は、中国をはじめとする新興国経済の悪化で需要が低迷しているだけではなく、資源バブルにつぎ込まれた過剰流動性によって過大な供給が生み出され、増幅されたバブルの一つがはじけたことを意味する。

 資源に投資した資本は、すでにいくつか損を確定している。シェールオイル開発に投資した日本の商社は、三菱商事、三井物産、住友商事など2015年期末期に大きな損を確定している。それは一例である。シェールオイル揮発や資源開発に投資した世界の資本のうちのいくつかは、投資を引き揚げ損を確定している。資本流出の大きな一つの流れである。

 米国はゼロ金利解除が可能な状況になり、FRBの利上げへの転換へと当面している。ところが、利上げが新興国からの資本流出圧力となり、急激な新興国バブルや資源バブルの崩壊に拍車をかけ、世界経済に影響を及ぼしかねない事態になっている。
 ただし、新興国バブルと資源バブルの残骸が世界中にあふれているが、現段階ではすべてが「露わ」になっているわけではない。

 「新興国のせい」という問題ではない。回復が急であった分だけ新興国に蓄積した「ひずみ」は大きく、2014年になって新興国経済を調整局面へと追い込み、2015年8月にその小さな嵐が来た。
これが、8月の世界経済後退の要因、背景を成すものである。

4)この先、どうなるか?

 世界経済は一体化がいっそう増しており、サブプライム恐慌からの脱出手段として米国、日本、EUの金融緩和=流動性の大量供給がいかに大きかったか、そのことを認めなければならない。すなわち、資本主義経済はこのような循環を避けられないのであり、したがって8月の世界経済後退をやり過ごすとしても、その過程自体がこれまでの大量の金融緩和、大量供給の上で、10月の中国の追加利下げ、12月の欧州金融緩和(予告)と続く際限ないマネー供給による回復であって、大量金融緩和の大きさに比例した、深い大きい次の恐慌を準備しているのであり、その爆発力を高めている。いずれ、2008のサブプラム恐慌の繰り返しは避けられない。8月の世界経済の変調は、そのことをあらためて証明してみせた。(文責:小林 治郎吉)

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デスクトップ社の争議 [フィリピン労働運動]

 フィリピン・バタアン経済区にあるデスクトップ・バッグ社の労働争議について、アンバ・バーラ(バタアン労働組合連合)のエミリーから、報告が来ました。

   ****************

 三多摩カサナグ会に
 親愛なる皆さん、お元気でしょうか?

現在の私たちの闘い――
デスクトップ・バッグ社から追い出された71名

 この2015年7月に、デスクトップ・バッグ社の49人の労働者は、国家労働関係調整委員会(以下:NLRC、労働争議第一審裁判)事務所に、訴訟を起こしました。

151026 デスクトップ労働組合準備会委員長(左)と書記 - コピー (415x525).jpg
<デスクトップ労働者協議会DEAの代表と書記、DEA総会で > 

 経営者が、労働法第100条が述べる「収入の削減は認めない」に違反したからです。日給手当として9ペソ、24ペソ、36ペソ(1ペソ=約2.5円)とランクのある「仕事手当」を受けることを、上述の労働者たちは、2~3年の間、楽しみにしてきました。 一部の労働者は通常の機械でないハイヘッドマシンを担当していたので、当然「仕事手当」が出ると考えていました。労働者たちによると、これが「仕事手当」を受ける理由となる金型です。 労働法第100条には、次のように書かれています。

 100条:給付金の削除、または削減の禁止。 本法においては、この条項の公布時に、どのような方法であれあらゆる手当を削除、または削減すると解釈したり、従業員を楽しませる利益を削減、または削除すると解釈すべきものは、存在しない。

 デスクトップ社は、昨年から「仕事手当」を与えるのを止め、そして今年になって、残りの労働者の手当を削減しました。 49名の労働者により起こされた訴訟は、経営陣が労働者の手当を削り続けたため、8月には71名になりました

 初の審理は、9月16日に開催されました。  それは、NLRCによって指令される出席義務のある審理でした。 決定権のあるNLRC委員会によると、この訴訟は、その時労働組合が存在しないという特別な場合でしたので、労働者全員が上述の必須の審理に出席しなければならなかったのです。

 9月10日 、 原告労働者らは、会社に彼らの休暇申請を提出し始めました。いくつかの休暇申請は彼らの生産リーダーによって許可されました、しかし、スーパーバイザー・レベルにおいて、労働者の休暇書式は許可されませんでした。

 労働者たちは決定権のあるNLRC委員会の前で宣誓することができるように公聴会に出席する必要がありますし、提出した訴訟をおろしていないと主張しなければなりません。出席しないならば、起こされた訴訟は却下されます。
 他方、経営者は多くの労働者が生産現場から去り持ち場を離れると生産が立ち行かないとして、上述の休暇申請を拒絶しました。 彼ら71名すべてが必須の審理に行くのを許可すれば、生産は立ち行かなくなるというのです。
 もし、NLRC(労働争議第一審裁判所)へ出席するための休暇が会社によって受理されず、審議出席のため休めば生産サボタージュとして解雇されるのなら、労働者には裁判を起こす権利が、実質、与えられていないことになります。

 初の必須の審理に、71名は審理出席を義務付けられます。 経営陣代表も、なぜ71人の労働者の手当を削減し、あるいは廃止したかについて説明するために、出席していました。 審理の後、労働者は、労働者協会設立するため必要な申請をするために、労働雇用省(以下:DOLE)のオフィスを訪れ、デスクトップ従業員協会(DEA)を申請し、その日のうちに、認定書またはDOLE登録書式を受け取りました。

デスクトップ従業員協会(DEA)は、労働組合準備組織に当たる。フィリピンでは、労働雇用省に申請し、経営者、労働雇用省、労働者代表の三者で協議の上、労働組合代表選挙を行い、労働者の過半数の支持を得て、初めて労働組合として労働雇用省(DOLE)、経営者に認定される。それまでは労働組合準備会であり、交渉の対象ではない。

DOLEの認定書またはDOLE登録書式:労働組合代表選挙に至る手続き、書式の一部


 一方、9月17日に経営陣は、それぞれの通知とメモで、「労働者たちが9月16日に無許可で離席したことを説明する必要がある」と通告しました。もし説明がないなら、労働者は全員、生産サボタージュに等しい生産停止につながる計画的な集団休暇で告発され、経営陣によって解雇されるというのです。

 労働者たちは、個々に説明する書面を送りました。会社公聴会と会議が二回あり、会社側調査によれば、9月16日の労働者たちの計画的な集団休暇は深刻な生産低下をもたらしたとして、10月3日経営者は、解雇通告の文書を提出したのです。その後にも労働者たちは説明の書面を送りました。

 71名の労働者たちは、単純労働者ではありません。71名のなかには、労働者協会(DEA)の代表、副代表、一部の執行委員を含んでいます。このことは、公正でなく、不法な解雇なのは明らかであり、なおかつ組合弾圧に他なりません。実際のところ、集団休暇と経済サボタージュとは、まったく違います。経営者は、71名の労働者全員がその日のNLRCに参加するために公聴会に出席しただけであることを知っていました。追い出された労働者の多くはDEAの役員であることからすれば、経営者の隠された計画は労働組合潰しが、本当のところです。解雇は、「罰」としてはあまりにも厳しいものです。労働者が、無許可離脱であるか、無断欠勤かにかかわるだけで、その場合は実際のところ、3~5日間の労働停止の懲戒処分程度です。

 経営者は、労働者を追い出す前に、労働者たちが合法的に労働組合準備会を結成していることを知っていましたし、そもそも経営者は労働組合を破壊しようとしていました。そのことを私たちは、知っています。

 私たちは今日現在、不当労働行為の件で労働雇用省の事務所に申請する前の、仲介と調停のプロセスのうちにあります。経営者の利益減少なのか、労働者の手当削除なのか、公聴会で審議中です。ULPでの私たちの最後の公聴会は、10月29日に設定され、デスクトップ社が71名の労働者の復職を拒否した場合、私たちは、会社が関与した不当労働行為であるとして、すなわち労働法248条違反として、NLRCに提訴します。

 この時のために、私たちアンバ・バーラ(バタアン労働組合連合)は、デスクトップ社の労働者を支援しています。仕事がなく収入がないこの時点での家族や労働者の抱えている問題をどのように解決していくか、彼らが訴訟を提起するのを助けていくか、が大切なのです。一部の人は、妊娠した妻、学校に通う子供たち、病気の両親、など多くの問題を抱えています。 私たちは、労働者を様々な点で助けたいと望んでいると同時に、私たちにはこの瞬間にも、多くの限界もあります。
  
  *********
追伸:
 台風は、私たちにそんなに被害を与えていません。しかし、事務所の屋根が強風のため一部動いてしまいました。屋根を8年間修理してこなかったから、そもそも弱かったです。屋根はすでに固定しました。しかし、大きな台風が再び襲ったら、屋根が飛んでしまうのではないかと恐れています。そうならないことを祈っていますが。

 ここまでにします。皆さんによろしくお伝えください。そして、前号のニュースレターを送ってくださいましたが、ペンが同封されていました。ありがとうございました。お礼まで。
 団結して
 エミリー  21015年10月22日
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ロシアによるIS空爆で、シリア情勢は大きく変わった [世界の動き]

 9月末から始まった、ロシアのIS攻撃は、シリアと中東の情勢を大きく変えてしまった。
 どのように変えたか、整理してみた。

1)成果を上げたロシアのシリアIS 攻撃

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 < ロシア国防省が公式サイトで公表した巡航ミサイル発射の映像(10月7日)=AP>

 9月末からロシアによるIS空爆は多大な成果を上げた。 
 シリア国内の選定した目標に対する最初の四日間の精密照準爆撃で、ロシアの戦闘機が発射したKh-29L空対地レーザー誘導ミサイルは、標的に、2メートルの精度で命中し、主要なIS司令センターや弾薬庫や、重要インフラを破壊することに成功した。ロシア国防省の写真入り公式報告によれば、Su-34爆撃機が重要なIS前哨基地である、アル-ラッカ州アル-タブカ近くのIS特別訓練キャンプと弾薬庫を攻撃した。“弾薬庫が爆発した結果、テロリスト訓練キャンプは完全に破壊された”とロシア国防省広報担当官は述べた。ロシアSu-25戦闘機は、シリア、イドリブの「イスラム国」訓練キャンプを攻撃し、爆発物ベルト製造作業所を破壊した。
 アルカイダ系列のアル・ヌスラ戦線等、他のテロ集団の主要前哨基地も攻撃したと発表した。

 空爆だけでなく、ロシアが巡航ミサイルを実戦で使用した。ロシア国防省によるとミサイルは約1,500キロメートル離れたカスピ海に展開している4隻の巡洋艦から計26発発射。11カ所の標的をすべて破壊した。
 ロシア軍は10月7日以降もシリア北部や中部での空爆を継続。9月30日の空爆開始からの8日間で112カ所の軍事関連施設を破壊したと発表した。
 ロシアの「イスラム国」空爆は相当な成果をもたらしている。

 「イスラム国」のほか、「アル・ヌスラ戦線」「ジェイシュ・アル・ヤルムーク」のなどのテロ組織の戦闘員3,000人以上が、シリア政府軍の攻撃とロシア空軍の空爆を恐れて、シリアからヨルダンへ逃げたと伝えられている。

 ロシアによるIS空爆は、アサド政権の要請によるものであり、国連事務総長と相談の上で実施した。巡航ミサイルによる攻撃を前に、ミサイルが通過するイラン、イラク政府に事前に了解を取り付けている。したがって、ロシアの行動は国際法を遵守する姿勢を見せている。

 イラク当局者らは、米軍による対イスラム国作戦に不満を募らせており、今後はロシアとの協力を強める考えを示している。ロシア、イラン、イラク、シリア4か国はIS 掃討のための情報を共有することでも合意した。今回の組織の立ち上げは、イラクで米国の影響力が低下しつつあることを示している。イランは地上戦部隊、精鋭部隊である革命防衛隊の派遣も決めた。ロシアに呼応し、イランは地上部隊を送ったと伝えられた。シリア政府軍は、反政府勢力が支配する第2の都市アレッポ攻略を開始した。アレッポはトルコ国境に近く、ISの兵站はトルコ国境に開かれている。アレッポを攻撃すればISの兵站を絶つことができる。
 トルコ国境近くの北西部シリアでのIS掃討が、今後の情勢を決めるだろう。

 「シリアで我々は国際法を尊重した戦いを展開しており、国連憲章に厳格に遵守して行動している。我々はシリアの合法的な政権から、テロとの闘いに対する公式的な支援要請を受け、これを受理した。」(キンシャク・ロシア駐シリア大使)

 昨年9月以来、アメリカはISを攻撃するとしてシリアを空爆したが、事前にシリア政府の要請があったわけでも国連の承認を得てのことでもなかった。独断で他国の領土を空爆した。これは国際法上、侵略である。
 その責任を回避するため、混乱の現実がアサド政権の責任であるとして、アサドの退陣を要求するとともに、反政府勢力に武器援助を行っている。そればかりか、米国特殊部隊の派遣も公言している。
 これは内政干渉であり、侵略であり、明確な国際法違反である。

2)ロシアの空爆の成果は、米国の空爆がアリバイであることを暴露した

 一方、ロシアの空爆によって、アメリカが過去1年半ほど「イスラム国」を空爆してきたとする行為は、真剣に行なわれていなかった事実が明白になった。「1年半で16,000回も空爆し、そのために5億ドル使った」(ファイナンシャル・タイムズ)とされる。わざと外して空爆してきたのではないか? というシリアやイラクの人たちの「疑念」は、疑念ではなく事実であることが、暴露されたのだ。

 また、米国がISの兵站を封鎖しないことにも疑いが深まっていた。ISの資金源の大半は、盗掘した原油の販売収入による(月約48億円)。この収入がなければISは戦闘を継続できない。盗掘原油は、エルドアン・トルコ大統領の息子が経営する会社に買い取られ、イスルラエル経由、またはARAMCO経由で販売されている。

 米国が、油田や輸送トラックを空爆すれば資金源を絶つことは容易にできた、あるいは販売を止めれば容易に資金源を絶つことができた。空爆よりももっと簡単である。しかし、米国は1年半以上も放置してきた。そもそもISを根絶する意思がないことが暴露された。(かつて米国は、イラン・モサディク政権が石油会社国有化したとき、販売を止めモサディク政権を苦境に陥れた。)
 
 ロシアの空爆は、このようなアメリカの空爆がアリバイづくりであったことをも暴露したし、同時にそもそもアメリカ政府はISを支援しており、ISはアメリカ政府の「駒」ではないかと疑う中東の人々の疑念が、ほぼ確信にかわったのである。
 
3)あわてた米国、影響力を失った

 「アサド政権」の打倒を最大の目的としているアメリカとイギリスは、「激しい怒り」をあらわにして、ロシアを非難している。しかし、その論拠が怪しいし、慌てぶりだけが目立つ。

 ロシアからのIS空爆協力呼びかけに対し、カーター米国防長官は10月7日、「ロシアが何を言おうと、我々はロシアと協力することには合意していない」と強調。かろうじて非難の根拠として「IS掃討をうたいながら、穏健派反政府勢力を空爆した」と述べた。
 カーター国防長官は、「穏健派勢力とはどの団体だ」と聞かれて、答えることができなかった。

 シリアやイラクでは、ISを操っているのはアメリカだと皆知っている。知らないのは欧米日の国民だけである。欧米日のマスメディアは米政府の宣伝をそのまま垂れ流し、嘘をついてきた。欧日政府も追従した。ロシアの空爆は、米日欧マスメディアの嘘、腐敗ぶりも暴露した。

 本当のことを暴露されて慌てている米国の姿が映し出された。カーター米国防長官の怒りは、真実を暴露されたことに発している。

 今問題となっているのは、穏健派反政府勢力? そんなものが存在するのか、という疑念である。

 シリアの「穏健派反政府勢力」=自由シリア軍は米国の軍事援助を受け入れており、アメリカ政府の「駒」になっている。しかも「自由シリア軍」の多くはISに合流しており、ISと自由シリア軍の区別さえつかなくなっている。米国の軍事支援は、ISに流れている。米政府機関DIAもその事実を認めている。

 ガーディアンは記事でこう報じている。「自由シリア軍の反政府派連中は、イスラム原理主義集団アル・ヌスラ戦線に寝返った
 
 実際ロシアは、ISを爆撃したが、アメリカ政府が怒っているのは自分たちが支援してきたISを爆撃したからである。ただ、その事実を、公に口に出して言えないのでカーター米国防長官はただ怒ってみせたのである。

 要するに、米国が慌てたのは、密かに支援してきた自分のテロリスト連中を、ロシアが空爆し、その効果を台無しにしたからだ。

4)ロシアの空爆とシリア連合政府の提案

 プーチン大統領は、9月29日国連演説で、「シリアの合法政府への支援、リビアにおける国家構造の再建、イラク新政府への支持、そして幅広い国際な反テロ連合の結成を呼びかけ、そこで国連の果たすべき役割」を述べた。プーチンは国連の理念にしたがってシリア問題に対処すべきだと提案した。

 ISは住民ではなく「外国から来た武装組織」であり、テロを繰り返している。ISによるシリア侵略であって、「内戦」ではない。ロシアはシリア合法政府アサド政権の依頼により、侵略者ISを掃討することを、国連の果たすべき役割、理念として主張している。この主張を、陰でこっそりISを支援してきたアメリカ、イギリス、イスラエル、サウジアラビア、トルコは、公に反論することはできない。

 プーチン大統領は、IS掃討だけでなく、「その後のシリア連合政府構想」を提示し、米国やサウジアラビア、トルコなど関係国と協力を呼びかけている。表向きこれらの諸国は断る口実はない。実際に、ISを利用している米国、トルコ、サウジであり、これらの後ろ盾、黒幕と交渉しなければ事態は解決しないことを、ロシアは知ったうえで提起している。
 ロシアの権威は高まった。

5)欧州は態度変更を迫られる

 これまでEUは、アメリカ政府のシリア・アサド政権退陣要求を支持し、反政府勢力を支援してきた。その結果、シリアからの大量の難民に苦しんでいる。EUに難民の洪水を解き放ったオバマ政権の狙いは、実に極悪非道である。EUは米国に追随したから、「しっぺ返し」を受けた。難民問題を通じてEUを衰退させようとするオバマの恐ろしい狙いを、遅ればせながら認識したのである。

 IS掃討と次のシリア政府構想だけが、難民問題を解決する唯一の方法であることを、EUは理解した。 したがって、EUはアメリカ政府に追随してきたその態度の変更を迫られており、ISを撃退した後のシリア政府構想についてのプーチンの現実的な提案に興味を示している。

6)シリアやイラクでロシア支持が広がる

 ロシア軍が攻撃しているISにしろ、アル・ヌスラにしろ、シリアの体制転覆を目的に雇われた戦闘員である。米国が武器支援し、サウジ、トルコ、湾岸諸国が資金を出している。

 シリアやイラクは、ISなどの武装勢力によるテロ、代理戦争に苦しんできた。ISは雇われた戦闘員が外国から来て攻撃しているのであり、住民は支持していない。「内戦」でさえない、内戦とは、国内の反政府勢力と政府間での戦争だが、ISは住民ではなく外部から来た武装勢力である。

 この「代理戦争」はアメリカ政府好戦派(=ネオコン)が、アフガン戦争以降、採用してきたやり方、やり口である。リビアでは成功した。NATOとIS・アルカイダ系武装組織が実際に協力し、カダフィ政権を倒した。リビアを崩壊国家にした後、資源を略奪し、人々を無権利状態に陥らせ、新自由主義が支配するのである。
 
  ***********
 
 ロシアの空爆を、シリア政府だけでなく、イラクやイランの政府、さらにクルド勢力も歓迎しているが、シリアの体制転覆を目指している国々=アメリカ、サウジ、トルコ、湾岸諸国は不快感を隠していない。

 ロシアのIS空爆は、不当な外部からの武力介入、武装攻撃の撃退であり、シリア政府、イラク政府だけでなく、シリアやイラク国内、さらには中東で広く支持を集めている。
 それと裏腹に、シリア国民、イラク国民は、アメリカを主とする連合軍のIS 空爆は「役に立たない」、ISの後ろ盾はアメリカだ、と明確に認識されつつある。

 アメリカ政府はこれまで「ISを空爆する」と表明してきたが、表向きの発言であり、実際のところ裏でISを支援し、シリアを内戦状態して崩壊国家にすることを目的にしてきた。

7)思いのほかシリア国民の支持が高い「アサド政権」

 ところでロシアは、「アサド政権」を支援し、政権の崩壊を防ぐ意志をはっきりさせている。「アサド政権」の打倒を目標にしているアメリカには絶対に許すことのできない暴挙として映る。このため欧米のメディアでは、国民を残虐に抑圧する独裁政権の「アサド政権」こそ、「イスラム国」のようなイスラム原理主義勢力が拡大した原因であり、国民の支持を完全に失った「アサド政権」の打倒こそ急務であるとのキャンペーンを展開している。

 ところが、「アサド政権」の国民の支持率が思っても見ないほど高い事実が次第に明らかになった。2012年、カタール政府は世論調査機関と契約し、「アサド政権」の支持率を調査した。その時の支持率は55%であった。

 2015年9月に英大手の世論調査機関『ギャロップ』が調査したところ、圧倒的に多数のシリア国民がアメリカこそ「イスラム国」を支援する敵であると認識している事実が明らかになった。調査したのは西側の商業機関であり、調査結果にアサド政権の「圧力」は及ばない。

 シリアから大量の難民が出国しているが、彼らはアサド政権を支持していない、あるいは拒否して出国しているのではない。 外国からの武装勢力が戦闘状態を作り出し生活できないから、止むを得ず逃れ出国しているのである。

 アサドが退陣するかどうかは、シリア国民が決めるべきである。アメリカやイギリスに、サウジや湾岸諸国に、決める権利はない。

8)イスラエルは?

 アラブ世界で、現在のところ、エルサレム解放を掲げているのは、イラン、シリアだけになっている。サウジや湾岸諸国はもはやそのつもりはない。イスラエルにとって、シリア・アサド政権を退陣させ、混乱した崩壊国家にするは、イスラエルによるアラブ侵略を推し進めることであり、脅威を取り除くことである。そのために、イスラエルはシリアの反政府武装勢力を支援している。

 イスラエル政府はアサド体制打倒を要求し、そればかりか倒すためならアル・カイダ系武装集団と手を組むと公言している。実際に負傷したアル・ヌスラ戦士がイスラエルの病院で治療されている写真が暴露された。

 イスラエルが、アサド政権打倒のため、米国、サウジやトルコ、湾岸諸国と協力している事実も明らかになった。「アラブ対イスラエル」の対立構造がすでに変化してしまったこともはっきりしたのである。(イスラエルは、2014年ウクライナ・ヤヌコビッチ政権を武力で打倒したネオナチ、反ユダヤ勢力を支持した。現代では、シオニズムも変質している。)

 ただイスラエルは、今回のロシアのIS空爆、特にカスピ海のロシア軍から発射された巡航ミサイルが、正確にISの司令部や武器庫を破壊したのを見た。もちろんこの巡航ミサイルはイスラエルにも届く(航続距離2,500km)。ロシア軍の武器の威力に恐怖したことだろう。

 10月18日、シリアの領空を侵犯しようとしたイスラエルの戦闘機をロシアの戦闘機が要撃、追い返したとイスラエルやレバノンで報道されている。国境を越えて侵入した場合は攻撃すると警告した。イスラエル軍はこれまでISなどシリアの体制転覆を目指す戦闘集団を助けるため、国境を越えシリア政府軍側に対する空爆を繰り返してきた。侵略を繰り返してきた。ロシア戦闘機は、そのような攻撃・侵略は許さないと警告したことになる。

 ロシアはこのような対応を、国連の理念に基づいて実行したと主張している。

9)今後?

 焦点は、トルコ国境地域の戦闘の推移にある。ロシアが空爆し、シリア政府軍がアレッポやラッカに向けて支配を拡大している。ISの本拠地ラッカ、ISの支配地域は、いずれもトルコ国境近くにある。
 ISや反政府武装勢力は、トルコ国境に拠点を置いている。なぜならば、トルコ国境は武装勢力にとって兵站線が開かれているからである。
 アレッポやラッカなどの地域の戦闘の推移、反政府勢力をトルコ国境からどれだけ切り離すかどうかが、今後の焦点になる。ISの力を削ぐには、兵站を閉じることである。

 ラッカを中心とするシリア東部のISは弱くなり、イラクに越境逃避するだろう。イラク政府はロシアと協力しイラクのIS 掃討をはかるだろう。イラク政府はすでにロシア軍の空爆支援を受けたいと公式に表明している。この時点で、シリアは内戦後の再建と政治協議の時期に入り、戦闘の中心はシリアからイラクに移るかもしれない。

 イラクでは議会が、ロシアにISISの拠点を空爆してもらうことを依頼する決議を10月中に可決することをめざしている。米軍司令官はイラクのアバディ首相に会い「ロシア露軍に支援を頼むなら、米軍はもうイラクを支援しない」と通告した。イラク軍の司令官は「役に立たない米軍の支援を受ける必要はもはやない」と断言している。

 いずれにせよ、シリア問題での中東におけるロシアの権威は高まっており、シリア問題解決に向けてロシアはアメリカ、サウジ、トルコ、イランを含めた会議を呼びかけている。それは国連の理念に従った線上での提案であり、各国とも拒否することはできないであろう。また、シリアは合法政府であるから、ISの力が破壊されれば、アメリカもイギリスもアサド退陣を要求できなくなるだろう。IS掃討後に、アサド政権も含め、シリア国民連合政府形成に参加する団体、組織が集まり、次のシリア政府を形成するプロセスが始まるだろう。
 そしてこの地におけるアメリカの権威は、大きく後退するだろう。 (文責:林信治)


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日本国債、格下げ [現代日本の世相]

日本国債、格下げ

 9月16日、スタンダード&プアーズ(S&P)は、日本国債を「AA-」から「Å+」に格下げした。

 日銀が国債を買い続ける現状では国債市場にほとんど影響しないが、日本国債を大量に抱える邦銀のドル資金調達金利は上昇し、資金調達がより困難になる。S&Pは、国債格下げと連動し、みずほ銀行や三井住友銀行も格下げした。

 安倍政権は、「アベノミクス新3本の矢」を発表したが、そこには「財政再建」、「増税」、「歳出削減」の文字はなかった。
 かつての10%、20%の高成長が続けば、財政は容易に再建されるだろう。しかし、そのようなことはありえない。財務官僚には、いまだに高成長の発想が抜けていない。「新三本の矢」は、「3%成長」を前提にしている。しかし、現時点での日本の成長率はわずか0.3%なのである。

 財政官僚の頭のなかは、「もはや、増税や歳出削減というまっとうは手段での財政再建はあきらめた。成長夢物語にすがるしかない」という事なのだろう。(日経新聞10月22日)

 法人税を増税するつもりはない。むしろ減税しようとしている。高額所得者への累進課税を強化するつもりもない。結局、成長戦略への夢物語に希望をつなぎつつ、財政再建は放置し、日銀が国債を買い続ける状況から抜け出せなくなるのだろう。その悪無限的地獄へ、一日ごとに嵌まり込みつつある。

 そして最終的には日本国民がその債務を背負うことになる。国民皆保険制度、医療制度、年金制度は崩壊する、すでに減らされた教育・福祉予算はさらに減らされる。日本のグローバル企業や資産家ではなく、日本国民が債務を背負う。
 ギリシャ国民は年金が削られ、窮乏生活を強いられている。しかし、ギリシャの大手海運業者は通常に業務をこなし収益を得ている。
 そのため、日本政府が財政破綻した後、犠牲になるのは日本国民であって、日本全体ではない。ギリシャ国民の姿は、近い将来の日本国民の姿なのである。(文責:林信治)

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「南京大虐殺」資料が世界記憶遺産に [世界の動き]

「南京大虐殺」資料が世界記憶遺産に
登録されたことを真摯に受け止めるべきです

 
 10月9日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)は重要な歴史文書などを認定する世界記憶遺産に、中国が申請した旧日本軍による「南京大虐殺」に関する資料を登録したと発表しました。
 選考基準は真正性と世界的重要性の有無で、今まで「アンネの日記」やフランスの「人権宣言」など348件になるといいます。今回の登録では「シベリア抑留」(引き揚げ記録「無鶴への生還」)、等も採択されました。これで日本では「山本作兵衛炭鉱記録画」など、計5件となるようです。これらの決定に対し「シベリア抑留」などは歓迎するが、「南京大虐殺」については日中間で見解の相違、完全性や真正性で問題ありとして中国政府に抗議し、ユネスコに対しても政治利用されることがないようにと外務省の河村泰久外務報道官は改善を求めたと、報道されています。(10月10日 毎日新聞)
 「シベリア抑留」の被害体験は歓迎するが、「南京大虐殺」の加害事実については争うという態度です。

 これに先立ち、10月2日、菅官房長官は、「日中間の過去の一時期における負の遺産をいたずらに強調しようとする」と不満を述べていましたが、ついに10月13日には記者会見で、ユネスコに拠出金停止・削減などの対抗措置を検討し、事前に協議できない現状の登録制度の見直しを働きかける方針を固めたといいます。(10月14日 朝日新聞)

 これに対し、中国の華春莹副報道局長は、「公然の威嚇」であり、「国際社会は南京大虐殺が日本の軍国主義によって引き起こされた歴史的事実だと認識」「拠出金を停止しても、歴史の汚点を消し去ることはできない」と述べています。安倍政権の歴史認識に疑いを持っているからこその強調であることを理解すべきです。

 原爆ドームやアウシュビッツの世界遺産登録に反発し、アメリカやドイツが同様に「金は出さない」と表明したら、世界はどう思うでしょうか。今回の件は安倍政権が世界的に見ても歴史的に見ても、世界の歴史認識から大きくはずれた典型的な右翼政権になったことを国際社会に宣言したに等しい行為です。日本政府は公開していない大量の「南京大虐殺」の資料を一貫してかくして来ました。今こそ、それを公開し、事実に向き合うことを求めます。


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